軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

238.レベルカンスト、所要時間3分

「あっ、リョータ様!」

声のする方に向かって行くと、ミニ賢者がちょうど小悪魔を倒したのが見えた。

向こうもこっちに気づいて、パタパタと駆け寄ってくる。

「みて下さいリョータ様、これ」

「それは……砂金か。さっき倒したヤツのドロップか?」

「そうです!」

「それよりなんでダンジョンにいきなりはいったんだ?」

「呼ばれましたから」

「呼ばれた?」

「はい、女の人の声に……ってあれ?」

それまで普通に会話していたミニ賢者が思い出したように目を見開いた。

「そういえば……ダンジョン入ったのに消滅してません。どうして……?」

「それはこっちの台詞だ」

「あれれ……」

ミニ賢者は自分の手を不思議そうにみつめた。

「多分だけど、もうユニークモンスターになってるんじゃないのかな」

「もう?」

「見た目は変わってないけど、能力だけはついたってパターン。そういうのもなくはないから」

「そうなんですか」

「ああ」

俺ははっきりと頷いた。

「テストしてみるか?」

「テスト?」

「別のダンジョンに行ってみるんだ。ダンジョンの出入り、階層の上り下り。それで消滅するかどうかのテスト」

「なるほど」

「どのみちもうダンジョンに入ってしまったんだ。このままずっとここにいるわけにも行かないだろ」

ミニ賢者にする提案はとても気軽な感じで、「散歩にでも行こう」くらいの温度感。

なぜなら、俺はもうほぼ確信しているからだ。

テルルダンジョン、地下一階。

アウルム一階からいったん屋敷に戻って、それからここに飛んだ。

いろんな事を考えて、ここが一番テストに向いてると思った。

アウルムは入るたびにダンジョンの構造が変わる、そこでテストするのは迷惑きわまりない。

まったく迷惑を掛けないという意味ではニホニウムが合っているが、そこはナウボードもなければドロップもしない。

いろいろ考えて、ミニ賢者をつれてテルル一階にきた。

「消滅しませんでした……」

改めて驚き、言葉を失うミニ賢者。

アウルムの時は「呼ばれて」ふらふらと入った、その後ハッとした。

消滅かどうかを意識して階層・ダンジョン移動をしたのはこれが初めてだから、自然とこういう反応になる。

「だな。ほかに何か変わりは無いか?」

「えっと……力が弱くなったような……」

「力が? ナウボードでチェックしてみるか」

「はい」

頷き合って移動して、ナウボードに移動した。

ステータスをチェックする機能の持ったボード、テルルのような冒険者の多いダンジョンだと、公共サービスのようにただで使える様に設置されている。

そこにやってきて、ミニ賢者の能力をチェックした、すると。

「あれ?」

―――1/2―――

レベル:1/50

HP E

MP E

力 F

体力 F

知性 E

精神 E

速さ F

器用 E

運 F

―――――――――

ミニ賢者は自分の能力を見て驚きの声を上げた。

「低いな」

「これはおかしいです、レベル1に戻ってるなんて」

「もっと高かったのか?」

「はい。毎日一生懸命お仕事してたから」

「ふむ」

リョータの村のモンスターは毎日インドールや、近くの村や町からのゴミを受け入れて、それを処分している。

ゴミはたまにゴミのハグレモノ――フランケンシュタインに孵る事もあるだろうから、その分経験値が溜まる。

それを思えば、レベル1なのは俺でもおかしいって分かる。

「生まれ変わった、ってことなんだろうな」

「そうなんですか?」

「ああ。よし、ちょっとこのまま待ってろ」

「え? はい、わかりました……」

不思議そうに小首を傾げるミニ賢者を置いて、俺は転送ゲートを使っていったん屋敷に戻った。

倉庫から、使い道がなくて溜まっていたクリスタルを大量に持ち出した。

ダンジョンマスターがドロップした装備アイテムでドロップする様になるクリスタル。

レベルがカンストした後、余分な経験値を具現化して貯蔵するクリスタルだ。

それを大量に持って、再び転送部屋を使ってテルルの一階に戻る。

「あれ?」

ナウボードの前に来たが、ミニ賢者はいなかった。

どうしたんだろうとダンジョンの中を探してみると――いた。

ミニ賢者はダンジョンの入り口にいて、出たり入ったりしていた。

まるで反復飛びをするかのように、ぴょんとジャンプして出て、またジャンプして戻る。

それを繰り返して――嬉しそうにしていた。

その光景を冒険者が見ていた。

「あれミニ賢者だろ? モンスターの」

「見た目はそうだけど……なんでダンジョンを跨いでるのに消滅しないんだ?」

「みろよ、あの首輪。あれリョータ・ファミリーのものだぜ」

「ってことはまたリョータがらみ? すげえな、アイツが絡むとハグレモノでもダンジョン出入り出来るようになるのか」

感動してる冒険者達をおいといて、俺は 静かに(、、、) はしゃいでるミニ賢者に近づいた。

「お待たせ」

「あっ、すみませんリョータ様、あそこを勝手に離れたりして」

「いやいい。気持ちはわかる。それよりもこれを」

「これは?」

「経験値だ」

そう言って、持ってきたクリスタルをミニ賢者に渡した。

クリスタルは受け取られた直後から、手のひらにのった雪のようにすぅと溶けて無くなってしまった。

「わっ、こ、これは!?」

「心配するな、壊したとかじゃない、これはこういうものだ」

「あっ、そうですか」

ミニ賢者は見るからにホッとした。

俺は持ってきたクリスタルを次々と渡した。

訳わからないって顔をしながらも、ミニ賢者は次々と受け取った。

受け取ったそばから消える経験値クリスタルを、消えなくなるまで渡す。

その間、わずか三分。

「これでもういっぱいか」

「はあ……」

「よし、ナウボードだ」

キツネにつままれた気分のミニ賢者を連れて、さっきのナウボードの所まで戻る。

「もう一回やってみろ」

「わかりました……えええ!?」

―――1/2―――

レベル:50/50

HP C

MP B

力 C

体力 C

知性 B

精神 B

速さ C

器用 B

運 C

―――――――――

「まあ、こんなものだな」

ミニ賢者のステータスは平均的に高く、かなり強いものだった。

「す、すごい……」

それを見た本人は絶句し、俺を尊敬する目で見つめてきたのだった。