軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

236.村ごとユニークモンスター

フィリンダンジョン協会、マオを訪ねて来た俺――なんだが。

協会長のマオは俺の膝の上に座っていた。

普通は向かいなのに、何故か膝の上。

「あの……マオさん?」

「マオでいいの」

「はあ……いやまあそれはいいんだけど……なんで俺の膝の上?」

「マオがここに座るのはいやなの?」

「いやでも無いけど……」

フィリンダンジョン協会長マオ・ミィ……と肩書きを並べればものすごい偉い人だが、見た目はエミリーよりも更に小さい、というか幼い。

俺の膝の上に乗っかってる姿はもう親戚の子どもにしか見えないのだ。

だから、いやとかはない。

ただ訳が分からなくて戸惑ってるだけだ。

だが、俺は学習したぞ。

セルとかで学習した。

こういうのは突っ込んでもまともな答えが出てこない、と。

「……ゴホン。今日は頼みがあってきた」

「なんでもいうの。マオ、なんでもしてあげるの」

「ランタン地下20階、あそこのワインを私用で大量に使いたい」

「うん? あそこはご自由にって言ってるはずなの」

「それはあそこの番兵の人から聞いてる。でもちょっと、ていうかかなり多い量がいるから、断っておかなきゃって思って」

「……」

マオはじっと俺を見つめた。

膝の上に乗ったまま、振り向いて肩越しに俺を見あげてくる。

「どうした」

「惚れ直したの!」

「え?」

マオはパッと起き上がって、俺の前に立った。

キラキラした目で俺を見つめながら。

「いますぐ人手をあつめるの? 500人でたりるの?」

「いやいやそこまで必要じゃない。俺一人で大丈夫だ?」

「そうなの?」

協力の申し出を辞退したらマオの表情が沈んで、悲しそうになった。

彼女の様な幼くてかわいい子にそうさせるのも不本意だから、俺はつい、

「一緒に来るか?」

といってしまった。

「行くの! 何をするのか見たいの!」

表情は一瞬で反転、遠足前日の子供の様にはしゃぎだした。

モンスターの村、リョータ。

転送部屋経由でインドールにいき、そこからここにやってきた。

「……すごいの」

「うん?」

振り向く。

俺の後ろにタルを乗せた馬車(インドールで調達した)があり、その上にマオが乗っている。

そのマオが目を見開いて半ば絶句している。

「フィリンからシクロ、そしてインドール。あっという間の移動なの」

「ああ、あの屋敷の機能なんだ」

俺は普通に答えた。

それはこの世界に元から存在してたものだから、普通に答えた。

「前は幽霊屋敷だったんだけど、その幽霊を倒したらあの転送部屋の機能がついてきたんだ」

「はわ……すごいの」

「で、ぼちぼち見えてきたあの村は――」

「知ってるの!」

マオはパッと起き上がった。

馬車の上で立ち上がって、興奮した表情を浮かべた。

「ハグレモノの村、リョータなの! あそこにいろんなハグレモノが住んでて、ちゃんとお仕事もしてるの」

「よく知ってるな」

「調べましたの!」

エッヘン、と胸を張るマオ。その仕草も可愛らしい。

なるほど調べたか。

何のために、とは聞かなかった。

聞いたらそれがやぶ蛇になっていらん真実を知ってしまいそうだったから。

誰かさん(セル) のせいでそう思ってしまった……というか。

「……」

「どうしたの?」

小首を傾げるマオ、俺は「いや」と適当にごまかす。

微妙にセルとマオがかぶる瞬間があるんだよな。あっち寄りのタイプだろうか。

そうじゃないことを祈りつつ、村に向かう。

「おはようございます!」

村に着くと、クレイマンが出迎えてきた。

「加速弾は今日もちゃんと再生してます――あれ? どうしたんですかその馬車」

「ああ、これは酒だ」

「お酒ですか?」

「俺が作った酒。みんなに差し入れだ」

「――ありがとうございます!」

一呼吸の間、ワンテンポひっぱった後、クレイマンは大喜びで頷いた。

「みんな! リョータさんからの差し入れだ!」

クレイマンが大声で叫ぶと、ハグレモノ達がわらわらと集まってきた。

顔見知りのモンスター達、彼らは差し入れが酒だと知って盛り上がった。

早速宴会が開かれる事となった。

荷馬車ごと、ボドレー・リョータは村の中央に運ばれた。

「うめええ!」

「すげええ!」

「こんなの飲んだ事ねえ!」

ボドレーはモンスター達にも大好評だった。

宴会は盛り上がり、そして――。

翌朝、村に一泊した俺が見たのは、昨日とはまったく違う光景だった。

モンスター達、みんなが昨日までとはまったく違う姿になっていた。

今にも姫騎士を襲いだしそうなオークは三匹の子ぶたみたいなラブリーな姿になった。

ちっちゃいゴブリンがすらりと伸びて、腰布じゃなくて特攻服、こん棒じゃなくて釘バッドをもっていた。

そして――

「おはよーだよー」

俺の顔の高さで飛んで、羽で羽ばたいているスライム。

「お前は……」

「スラぴょんだよー」

「そうか、お前羽がはえたか」

「うん!」

「そうか。ところでお前、双子かってくらい仲が良いスライムの仲間いなかったけ」

「私はここです」

反対側から声がして、振り向いた――俺はさすがにびっくりした。

そこに立っていたのは一人の美少女。

正統派メインヒロインかってくらいの、清純な美少女だ。

「えっと……君は?」

「スラにゃんです。おかげさまでユニークモンスターになれました」

「それで人間になったのか……」

スライムから人間、これにはちょっと驚かされた。

が、改めて村を見回した。

テンションがあがってるモンスター達、ぱっと見た限り、一人残らずユニークモンスターになっている。

なっている。

「驚いたの、びっくりなの! ボドレーを飲ませたらみんなユニークモンスターになったの!」

ついさっきまで村の中を回ってきていたのか、パタパタとマオがハイテンションで俺の前に戻ってきた。

「すごいの、これってものすごい事なの」

ボドレーの効能に、品種改良に携わったマオは大興奮だった。