作品タイトル不明
193.反応の限界
次の日、ニホニウムダンジョン、地下七階。
前の日のテストで加速弾の大まかなテストがすんだ。
そこで出した結論を――俺は満足出来なくて、夜中ふとんに入った所でパッと飛び上がった。
強敵にはめっぽう強いけど、周回には不向き。
本当にそうなんだろうか。
それをチェックするために、朝一で加速弾を村から取ってきて、ここに入った。
今、俺はアブソリュートロックの石で無敵モードになってる。
無敵のまま地下七階を歩いて回って、モンスターを集めている。
ダンジョンは階層ごとにモンスターの上限数が決まっている。俺以外ほとんど冒険者がいないニホニウムでモンスターがあふれかえらないのはそれが原因だ。
無敵で攻撃をうけたまま歩いて回って、モンスターを全部一箇所に集めてから、テストを始めることにした。
モンスター、雷マミーから距離を取って、アブソリュートロックの無敵を解除して、ポケットからレイアを出した。
すぐさまレイアに加速弾を撃って加速させる。
俺以外のものでも加速弾が適用されるのは最初に試したスライムで判明してる。
「むっ……」
体に少しばかりの衝撃が来た。レイアが俺に「装着」してきたからだ。
加速状態で装着してきたことで、普段よりも幾分か衝撃が強い。
速度が速いというのはそういうことだ、圧倒的な速度は衝撃の強さに比例する。
とは言え攻撃ではないのでガマンは出来た。
次の瞬間、レイアの四本アームが伸びていって、銃をもって通常弾を連射した。
もはや乱射に近い、残像、いや分身が見える程の超スピードでアームが動き回り、火炎弾の連射でマミーを次々と撃ち倒していく。
超高速オールレンジ攻撃だ。
俺の目にも止まらない程の殲滅スピードを眺めながら、考える。
レイアにやらせたのはいくつか理由がある。
まずは効果時間の把握だ。
自分が加速状態だと実際の効果時間を把握するのはきわめて難しい。時間感覚が加速して完全に別物になるからだ。
そしてこういう系統のものは効果時間が生命線だ。
アームの動きをじっと見る、その速さを評価する。
ステータスに換算すると速さSSS……いやSSSS……いやSの5つあるくらい超越したスピードだ。
俺自身経験したから分かる、加速状態に入ると疑似的な時間停止状態だ。
時間停止で出来る事はこの加速弾も大抵は出来ると考えていい、そうなら効果時間はますます重要になる。
思考を巡らせている内にマミーが全部倒れた。
アームはまだ動いてる、加速状態のままだ。
モンスターはもういない。
大軍への殲滅速度はリペティションを上回ってる。
リペティションは「絶対」だけど、単体魔法だ。
今みたいな数だと使おうとすれば一体一体に掛けていってかなり時間がかかる。
ふむ、周回に向かないわけでもなさそうだ。
アームはまだ動いている、どことなくレイアが手持ち無沙汰に感じる。
とは言え向こうが加速状態、何か追加でやってもらおうにも声が届かない。
……いや。
最初にレイアのアームを試したときの事を思い出す、彼女に任せて、俺はただダンジョンを闊歩したときの事。
レイアのアーム――いやレイアは、俺とダイレクトに繋がっていて意思だけで命令する事ができる。
人間、どんなに早口の人間でもスピードが速い人間でも。
結局の所、思考の速さについていってない。
死に際に見える走馬灯でもあるように、脳の思考は圧倒的に早いのだ。
俺は考えた、すぐにレイアが動き出した。
4本のアームが壁に向かって銃を撃った、通常弾を連射した。
マシンガンよりも早い銃声の後、弾痕が壁に六芒星を描いた。
俺が思い描いたもの、レイアにやらせたもの。
今度は絵描き歌レベルで漫画のキャラクターを描かせる。
簡単な一筆書きのかわいいキャラクターが壁に描かれた。
このテストで判明した。
思考なら、ほぼ加速状態のレイアの動きと同等だ!
俺じゃなくてレイアに使った方がいい場面もあるかも知れない。
そう判断して、頭の中でつけた加速弾の有用性を1ランク上げた。
ちなみに効果時間はほぼ一分、ますます使えるものだと思ったのだった。