軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

182.悪魔サタナキア

コバルトダンジョン、最下階45階。

俺は完全臨戦態勢で立ちつくしていた。

今日、ここにダンジョンマスターが出るという予告が出ている。

ライナスの一件で一階を封鎖した件でこの街のみんなに迷惑をかけた。

ダンジョンマスターは出現するとダンジョンの他のモンスターが完全に消えてしまう。そうなれば俺のやった事とあわせて、短期間でダンジョンで冒険者達が稼げなくなったって事になる。

それを防ぐため、稼げない期間を少しでも減らすために、俺はダンジョンマスターがでたらすぐに倒すためにここで待ち構えていた。

半日くらい待って、空気が変わった。

他のモンスターが消えて、同時に冒険者達も潮を引くように引き上げていって。

ここに俺だけが残った、直後。

ダンジョンマスターが現われた。

青紫の肌色にはだけた上半身、腰に巻いた布。

ドラゴンの様な羽に体とほぼ同じくらい長い角。

コバルトのダンジョンマスター、悪魔サタナキアだ。

サタナキアは巨大な剣を振り下ろしてきた。見切って半身で避ける。

ズシン!

剣が地面を叩いて、ダンジョンが縦に大きく揺れた。

「ものすごいパワーだ……正面からじゃ分が悪い」

俺は二丁拳銃に弾丸を込める、まずは小手調べに――。

「ぐほっ!」

背後から衝撃が来た。

つんのめって倒れそうになるところ、一歩踏み出してぐっとこらえる。

振り向く、そこに三人の冒険者がいた。

いずれも魔法使いの格好をした女性だ。

女性達はうつろな目をして、魔法の杖を掲げて詠唱をしている。

「なんだってこんな時に!?」

吐き捨てて、全力で横っ飛びした。

悪魔サタナキア、あらゆる女性を意のままに操るという能力がある。

どんな女性であっても例外はない、生物学的に女である以上その支配からは逃れられない。

速攻倒すために情報を仕入れた俺はそれを知ってる、他の冒険者はもっと知ってるはずだ。

それでも女の冒険者はいる。

「まったく! いつだってこういうのが!」

魔力嵐なのにダンジョンで遭難した魔法使いの事を思い出して、吐き捨てる俺。

魔法をガードし、サタナキアの剣を更に躱して、二丁拳銃に回復弾を装てん。

四人の猛攻を避けつつ、女冒険者達に回復弾を連射。

回復弾の融合弾、睡眠弾。

そのうち二人に当たって眠らせたが、一人は魔法障壁を展開して弾を弾いた。

「くそっ! さすが45階までくる魔法使い、反応が早い!」

果たして操られている内は自身の反応速度なのかどうかが分からないが、俺は吐き捨てながら次の弾を装填した。

そして照準をつけて、トリガーを引こうとした瞬間。

「あれ? 私どうして?」

「正気に――ぐはっ!」

女冒険者はそう言って、不思議そうな顔をして周りをきょろきょろしたが、手は杖を突き出し、魔法を放ってきた。

燃え盛る火炎がうねりをあげて俺を包む。

「うおおおお!」

全身を焼く炎を。反射的に腕をクロスさせ、身をかがめてガマンする。

精神が未だにSSになってなくてかなりのダメージを負った。

顔を上げる、サタナキアと目があった。

勝ち誇った顔をされた。

今度は女冒険者をみる、「えへへへ」と子供の様な無邪気な笑顔を浮かべつつ、次の魔法を詠唱していた。

あらゆる女を操るサタナキア……そうか表情と動きを矛盾っぽくしたんだ。

一瞬支配から逃れたのか、と思った俺はまんまと罠にはまってダメージを受けてしまった。

だが、それさえ分かれば。

「ご、ごめんなさい! 私そういうつもりじゃ」

「二度目はくらわん!」

飛んでくる炎の魔法を冷凍弾の連射で中和しつつ、更に回復弾の連射で睡眠弾をぶち込んだ。

魔法障壁が間に合わなくて、女冒険者は今度こそ眠らされ、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。

これで後はサタナキア――。

「――っ!」

腹が焼けつくようにいたかった。

見ると内側から生えてきたかのように、炎と氷と石、三本の槍が腹を貫いていた。

「なぜ……」

振り向く、そして分かった。

眠りに落ちた三人の冒険者が放った魔法だ。

彼女達は寝ている、顔は完全にすやすやと寝ている状態だ。

だが体は動いている、冒険者として攻撃を放っている。

まるで夢遊症の様な感じで、サタナキアに操られたままだ。

「だったら動けなくするだけだ!」

弾を入れ替える、今度は出し惜しみなし。

強化弾を5発装てんした上での拘束弾、それを撃って、リロードして、また撃ってリロードする。

最大効力の拘束弾を三人に打ち込んだ。

ひかりの縄が三人を縛りあげる。拘束されてもしばらく銃口を突きつける。

油断しないように少し見てると、今度は確実に動けない事を確信。

そうしてからサタナキアに向き直る。

巨大な翼と角の悪魔。

向こうは未だに無傷、プレッシャーも強いまま減ってない。

だけど。

「これで一対一だ」

もう負ける気はしない。

二回も不意を突かれて、その度に集中力を上げた俺は、もうこいつに負ける気がしない。

振り下ろされる巨大な剣を皮一枚で避けて、刀身を沿ってクロスカウンターのパンチを叩き込む。

吹っ飛ぶサタナキアに猛スピードで追いついて、今度はゼロ距離から銃弾を連射する。

通常弾の融合弾、貫通弾。

通常の数十倍の貫通力を持った弾丸を連続で腹に叩き込む。

弾丸はポーリングのようにサタナキアの腹をえぐり、やがて貫通する。

「――」

名状しがたい怒りの声を上げて、サタナキアはドラゴンのような翼を振ってくる。

それをがっしと掴んで、左右に引きちぎった。

次は角を――いやいや。

首をもたげた嗜虐心を押さえ込む。

不意を二回突かれてちょっとカッとなったが、 そんな事(いたぶる) をしてる場合じゃない。

長引けばまた不意を突かれかねない、何よりその間ダンジョンからは何もドロップしない。

意趣返しなんかよりも、とっととこいつを倒すことにした俺は。

角が放ってくる最後っ屁を避けて、眉間にありったけの貫通弾を叩き込んだ。

コバルト全45階の支配者、あらゆる女を操る悪魔サタナキアを無事、出現とともに討伐に成功したのだった。