軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

145.T○Sさんの平日

トゲトゲが無事加入した事で、一旦屋敷に戻ってきた。

ダンジョンとはまったく違う雰囲気、エミリーが維持管理している温かくて明るい我が家。

そこに初めてつれて来られたトゲトゲ……ぬいぐるみサイズのニードルリザードは不安げにきょろきょろした。

「大丈夫だよトゲトゲ、ここがあたしの家で、今日からトゲトゲの家になるんだから」

アリスがトゲトゲをなだめる。同時に他の三体――プルプルとホネホネとボンボンの三体がトゲトゲに近づいて、コミカルな動きとボディランラージで何かを伝えた。

モンスター型のぬいぐるみが四体、みようによってはアニメ――それも何かのスピンオフでほのぼの空気を出してるタイプのアニメに見える。

センパイの仲間に励まされ、トゲトゲから不安が消えてなくなった。

「お帰りなさいご主人様」

転送部屋の前でそんなことをやってると、我が家の番犬、ケルベロスが騒ぎを聞きつけてやってきた。

「ただいま。屋敷は何事もなかったか?」

「えっとですね、変な押し売りっぽい人が来たけど、吠えたら逃げてったよ」

「押し売りか。どんな風に吠えたんだ」

「こんな感じ――」

ケルベロスは天を仰いで咆哮した。

瞬間まわりがビリビリする、アリスの仲間のぬいぐるみ四体が吹っ飛ばされる。

咆吼だけでかなりのものだ、モンスターを狩るゲームに例えるとダメージを受けるタイプの強い咆吼だ。

そんなのをされたら大抵の人間は逃げ出すな。

「こんな感じです」

「そうか。よくやったぞケルベロス」

「えへへへ……」

人間よりも一回り大きな体、まさに巨体といっていい獰猛な番犬は、俺に撫でられて嬉しそうにした。

尻尾がはち切れんばかりに振られてて、もっともっと、とアピールしてきてる。

そんなに嬉しいならもっとしてやりたいが。

「仕事に戻る、夜帰ってきたらまたしてやるからしっかり番犬しろ」

「うん! 任せてよ!」

ケルベロスは更に尻尾を振って去っていった。

犬である彼はご主人様に仕事を任せられることにより喜びを感じる。

今も、番犬として頼られて尻尾をブンブン振り回してる。

それにあてられた廊下や壁がちょっぴりへこむが……それはまあ愛嬌ってところだ。

番犬としての役目を果たすために去っていくケルベロス、それを見送って俺もダンジョンに戻るか、とおもったら。

アリスがケルベロスの後ろ姿をじっと見つめていた。

「どうした」

「ケルちゃん……モンスターだよね」

「ああ」

「……倒してもドロップしないね」

「ハグレモノだからな」

何を今更、って感じでアリスを見る。

そんなアリスはケルベロスをみて、そして吹っ飛ばされた後とことこ戻ってきた四体の仲間モンスターをみる。

「もしかして……」

アリスは、何かを掴んだような顔をしていた。

テルルダンジョン、地下一階。

もやしをドロップするスライムがうごめく階層に、俺とアリスが一緒にやってきた。

「みててねリョータ」

「ああ」

みてほしいものがあるといって連れてこられた俺は、銃をしまい腕組みをして、完全に観戦モードに入っている。

アリスは一歩進み、四体のモンスターを召喚した。

「プルプル、ホネホネ、ボンボン、トゲトゲ。行って」

するとそれまでぬいぐるみサイズだったモンスター達が本来のサイズに戻る。

モンスターとしての本来のサイズ。

本来の姿か、といえばそうではなかった。

サイズは元に戻ったが、フォルムはデフォルメされたままだ。

アリスの仲間である証拠に、四体ともデフォルメされた可愛い姿で召喚された。

四体は一番近くにいたスライムに向かって行き、攻撃をしかける。

四対一のたこ殴り、あっという間にカタがつくかと思いきや。

「ストップ」

アリスの号令で、四体が一斉に攻撃をやめた。

攻撃されたスライムは反撃を続けるが、四体は攻撃を止めて防御したり回避したりしている。

「どうしたんだアリス」

「いいから見てて――ゴー!」

何かを見極めるようにじっとスライムを見つめた後、アリスは攻撃再開の命令を出した。

それに従って攻撃を再開するモンスター達、あっという間にスライムを倒して、もやしをドロップさせた。

「おー、やっぱり」

アリスはなにやら納得した顔でつぶやき、仲間モンスターを率いて次のスライムに向かって行った。

スライムを狩っていった。

今までと同じように攻撃して、途中で止めて何かをまったり、あるいはストレートに倒したり。

何度かみてると。

|タイミングをうかがってる《、、、、、、、、、、、、、》。

そんな感じがした。

それに気づいた直後、もう一つ気づく。

ドロップが、100%だ。

アリスのドロップはC、正確に言えば本人はFだが、仲間モンスターがトドメを刺した場合のドロップがC相当になる。

Cというのはそんなに高くない数字、ドロップ率も50%あるかどうかってところだ。

それが……100%になってる。

アリスがタイミングを計ってるのと決して無関係ではないぞ、と俺はおもった。

「アリス」

「なに?」

「しないようにも出来るのか?」

「あっ、もう分かっちゃった?」

アリスにはニコニコしながら、仲間モンスターを率いて次のスライムに向かって行った。

指示を出して、倒す。

今度は しっかり(、、、、) ドロップしなかった。

次のスライムもドロップしなかった。

次も、次も、その更に次も。

ドロップは一切しなかった。

もはや間違いない。

「分かるのか? ドロップする相手が」

「ちょっと違うね、ドロップするタイミングがわかっちゃったんだ」

「タイミングか」

「うん、何処で倒せばドロップするのかって。さっきケルちゃんをみたとき『ずっとしない』ってのを感じたから、もしかしてって思ってさ」

「ハグレモノはしないのか……まるで乱数調整だな」

「え? らん……なんだって?」

「こっちの話だ」

ゲーム用語はこの世界の人間には通じないんだった。

「すごいなアリス」

「うん、リョータのおかげ」

「俺の?」

「うん!」

アリスははっきりと頷いて、四体の仲間モンスターをぬいぐるみに戻して、抱き上げた。

「トゲトゲが仲間になったからあたしそれがわかる様になったんだと思う。手伝ってくれたリョータのおかげだよ」

「そうか」

「ありがとうねリョータ」

ニコニコしながらお礼を言うアリス。その腕の中でぬいぐるみたちもボディランラージで同じような意思を伝えてきた。

仲間の召喚術士は、またちょっと進化したみたいだ。