軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

108.ファミリーとファミリー

次の日、アウルムダンジョン地下一階。

この日も俺はクリフに同行して、彼の狩りを見守っていた。

まだちょっとぎこちないけど、それでもだいぶ慣れてきたみたいだ。

後は時間と共に自分のために狩ることになじんでいくだろう。

ブラック企業につかまった様な男を助け出せて、俺はほっとし満足した。

クリフの事は一件落着、ダンジョンを出たらシクロに帰ろう。

そう思っていると時間が来た。

ダンジョンの中に鐘が鳴り響く。

澄んだ音色、黄金で出来た鐘特有の音色。

黄金のダンジョンアウルムからとれた黄金で作った鐘。

それを決まった時間に鳴らすことで、冒険者がダンジョンに入る時間を知らせる仕組みだ。

それを聞いたクリフはモンスターを倒して、砂金を拾って俺のところに戻ってきた。

「お疲れ、どうだ?」

「多分昨日よりは……」

クリフはそう言いながら手のひらにドロップした砂金を乗せて俺に見せた。

自己申告したとおり、今までドロップした分で早くも昨日の稼ぎを上回っている。

レベルカンストのドロップCだ、しかもこのアウルムは俺が攻略した後だからドロップそのものが倍になってる。

これくらいの稼ぎはある意味あたり前と言える。

「よかったな」

「本当にリョータのおかげだ」

「気にするな」

俺もブラック企業にいたから、そういうのを見過ごせないってだけだ。

そんな事を話しているうちにまわりの景色どんどん変わっていく。

クリフはその度にビクッとする。

「ローグダンジョンはこれがやっかいだよな、新しい冒険者が入ってくるたびに居場所が変わる」

「そ、そういうものなんだな」

「これも慣れれば便利だ、ほら」

言ったそばからダンジョンの出口に飛ばされた、向こうにダンジョンに入ろうとする冒険者が並んでいる。

「タイミングがよければこのまま出る事も出来るってことだ」

「便利だな」

「リョータ!」

いきなり名前を呼ばれて、それと同時に誰かに抱きつかれた。

さらにはまわりの景色もかわって、ダンジョン内のどこかに飛ばされた。

誰かが入って来て俺に抱きついたんだな、と冷静に状況を判断しつつ抱きついてきた人を見た。

「マーガレット」

「お久しぶりですわ」

抱きついてきたのは空気の姫、あのマーガレットだった。

彼女は相変わらずふわっふわしてて、上品で美しく姫の格好をしている。

「久しぶり、どうしたんだ?」

「新しいダンジョンの噂を聞いてやってきましたの。あえてよかったですわ、リョータに見せたい物がございましたの」

「見せたい物?」

マーガレットはまわりをきょろきょろして、ダンジョンの中に設置されたナウボードを見つけて、俺から離れてボードに向かって行った。

それを操作するのをながめながら、彼女に近づいていく。

ステータスを表示しつつ、彼女は、ふわっとした上品な微笑みを俺に向けて来た。

「リョータのおかげでこうなりましたの!」

―――1/2―――

レベル:99/99

HP F

MP F

力 F

体力 F

知性 F

精神 F

速さ F

器用 F

運 F

―――――――――

―――2/2―――

植物 A

動物 A

鉱物 A

魔法 A

特質 A

―――――――――

「おお!」

表示されたのは、俺が予想した通りのステータス、99でカンストしてドロップAになったステータスだった。

この世界に転移してきた直後の俺とまったく同じタイプのステータスだ。

アウルムダンジョン地下一階。

俺はクリフと一緒に、マーガレットたちの戦いっぷりをみていた。

たち、というのは彼女が四人の男とパーティーを組んでいたからだ。

姫の格好のマーガレットに合わせたからか、四人ともいかにも騎士って感じの格好をしている。

その四人が小悪魔に攻撃をしかけた、卓越したコンビネーションでしかけて、弱らせ、追い詰める。

「姫」

四人のうち一人が振り向きマーガレットに声をかけた。

マーガレットは頷き、出会った時とまったく同じように重たそうに剣を引きずって小悪魔に向かって行き、男達が弱らせ、拘束している小悪魔にトドメをさした。

砂金がドロップされた、ドロップAであっさりとドロップした。

マーガレットファミリー。

俺の頭にそんな言葉が浮かび上がった。

戦闘能力オールFだがドロップオールAのマーガレットをフォローし、とにかくまわりが削ってトドメだけを彼女に譲る戦法。

それが成り立つマーガレットのステータスと、その見た目と雰囲気。

俺が知ってるネプチューンファミリーとも俺の亮太一家とも違うタイプだが、うまく回るだろうなってちょっと見ただけで確信した。

そんなマーガレットたちは次のモンスターに向かって行く。

「……」

ふと、俺の横から微妙な空気が流れてきた。

一緒になって見ていたクリフが、すごく微妙な顔でマーガレットたちを見つめている。

「どうした、顔色が険しいぞ」

「あれ……いいのか?」

「うん?」

「あれって、前の俺と同じように見えるんだけど……」

「……ああ」

なるほどそういうことか。

まわりの連中が弱らせてメインがトドメをさす。

たしかにクリフやあの男のやり方と同じかもな。

「……」

クリフの顔色は優れなかった、それを見て振り切ったばかりの過去を思い出したんだろう。

なにか言わなきゃ、と思っていたら。

次の小悪魔が倒され、マーガレットはドロップした砂金を拾って、騎士の男達と向き合った。

「はい、ラト、ソシャ、プレイ、ビルダー」

名前を呼び、手のひらで砂金を四等分して差し出した。

「「「「ありがたき幸せ」」」」

騎士たちは本物の騎士なのだろうか、四人一斉に片膝をついて、マーガレットから砂金を 賜った(、、、) 。

文句のつけようがない、姫とその臣下、って感じの光景である。

「え……」

それに戸惑うクリフ。

「渡す……のか」

「マーガレットはあの男、あんたの隊長と違うって事だ」

「そ、そうだな。しかしなぜ……」

「リョータ!」

クリフが戸惑っていると、砂金を騎士たちに渡したマーガレットがまた抱きついてきた。

タックルするかのように俺の腰に抱きついてきて、そのまま懐から見あげてくる。

「わたくしの戦い、見て下さいました?」

「ああ、やるじゃないか」

「全てリョータのおかげですわ」

「あの人たちは?」

「わたくしのファミリーですの、こういうステータスだと話したら一緒に戦わせてくれ、ってお願いをされましたの」

「向こうから来たのか」

「ええ」

「ドロップを渡したのは?」

「それはリョータの真似なんですね」

「うん?」

「え?」

首をかしげる俺、同時にクリフがびっくりして声を上げたのが聞こえた。

「わたくしがここまで来れたのはリョータのおかげですの。自分が持っているものを惜しげもなくわたくしに与えてくれたリョータ。その真似をしているだけなんですの」

「俺は大した事はしてないけど……」

「そんな事はありませんわ!」

抱きつくのをやめて、一歩引いた距離から見あげながら、力説してくる。

気品に満ちた秀麗な顔はオーラと――気迫さえ漂っていた。

「リョータのおかげですわ、誰がなんといおうと――たとえリョータがそう言っても、私はリョータのおかげだと言い続けますわ」

「……そうか、ありがとう」

「それで……あの……」

「うん?」

「わたくしのファミリー、リョータのファミリーに加えさせてほしいですの」

「俺の?」

「はいですわ」

はにかみながら俺を見つめるマーガレット。

「ファミリーを、俺のファミリーにってことか?」

マーガレットがはっきりと頷いた。

子会社、二次団体。

そんな言葉が頭の中に浮かび上がってきた。

「残念ながらわたくし一人では戦えませんの。あの人たちがいらっしゃらないと何も。だから、このファミリーごとリョータの一家に加えさせてほしいですの」

「なるほど。そういうことなら――歓迎するよ」

「ありがとうございますわ! 亮太一家傘下、マーガレットファミリーをこれからもよろしくお願いしますわ」

マーガレットは大喜びで、更に、俺に抱きついたのだった。

「……」

午後になって、ダンジョンを出たところの広場。

この広場もだいぶ手が加えられていた。

もともと民家のど真ん中に出現したアウルムダンジョン、その民家の残骸が撤去され、噴水がつくられ、まわりにダンジョンにまつわる商店の建築が進んでいる。

武器屋や道具屋、それに買い取り屋などだ。

インドールもダンジョンを中心に発展している、そう確信させる変化だ。

そこで俺はクリフと向き合っている。

「それじゃお別れだ、俺はシクロに帰る。何かあったらいつでも連絡してくれ」

クリフの一件が片付いた。

マーガレットへの誤解も、彼女が俺に告白してきた時に真横から聞いていたので、自分の元隊長――あの男と違うって分かった。

だから全部解決したと判断した俺はシクロに帰る事にした。

「リョータ……いや、リョータさん」

「さん? いきなりどうした」

「俺も……そのうちリョータさんの傘下に加えて下さい! 多分 二人(、、) 程度の少数ですが……お願いします」

二人。

クリフには仲間がいる、あのブラックな男のところで一緒に耐え抜いてきたもう一人の仲間が。

その人を助け出す、っていう宣言だ。

「わかった、頑張れ」

「はい! ありがとうございます!」

すっかりと俺に敬語を使うようになったクリフ。

俺がしたこと、マーガレットが見せた可能性。

クリフはきっと、仲間を助け出せるだろう、と確信めいた気持ちに至ったのだった。