軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

101.不労所得

次の日の昼、アウルムダンジョン前。

ダンジョンから出てきた村人たち、そしてまばらにみる冒険者たちの姿。

全員がほくほく顔になっているのを、俺は遠目で眺めていた。

「驚いたな、まさかダンジョンのドロップ量そのものが増えるとは」

横に立つクリントがセリフ通りの驚き顔をしていた。

村に広まった話を聞いてまたまたシクロから駆けつけてきたクリント。

最初は半信半疑だったが、ダンジョンに潜った村人、そして買い取り屋・燕の恩返しから話を聞いて信じざるをえなかった。

実際に数字が出るのなら疑う余地がない。

「こう言うことは今までになかったのか」

「私が知る限りないな」

「……その、ダンジョン最下層の特殊ドロップというのは?」

アウルムの事を知っているか分からないから、できる限りぼかしてクリントにきく。

「ダンジョン最下層? 神隠しの事か」

「神隠し?」

「ああ、世界中で何年か一回そういうことが起きるのだ。時間も場所も冒険者もばらばら、共通しているのはダンジョンの最下層でレアモンスターを倒したあとに失踪するってことだ」

「神隠しか」

「すぐに戻ってくるものもいればそのまま姿を消して二度と戻らないものも多い――まさか!?」

クリントが更に驚いた顔で俺を見つめる。

「ああ」

「そうなのか。さすがサトウさん、運がいい」

運か。

アウルムもいってたっけ。ダンジョンの一番下の階でレアモンスターを倒したら0.000000001%の確率でその階段が現われる、その確率を通って自分のところに人間が来たのは300年ぶりだと。

昨日、あれからもう一度アウルムにあってきた。

レアモンスターを倒して、階段を出した。

同じ日のうちにまた0.000000001%をくぐり抜けてきた俺にアウルムは驚いたが、俺はそんなに驚かなかった。

ドロップS。

この世界で俺だけが持っている、 ユニーク(たった一人) の特殊スキル。

それによってドロップは100%、ドロップする物の品質は他よりも高いし、ドロップしない相手からも特殊な物をドロップさせる。

0.000000001%でも、ドロップSにかかれば100%になる。

だから運がいいとかじゃない。当たり前の現象だ。

クリントが村人たち、ドロップ倍増でにわかに活気づく村の様子を眺めながら、感慨深げに口を開く。

「ひょうたんからコマが出た、とはまさにこう言うことを言うのだろうな」

「え?」

「インドールの村人を助ける為だけにサトウさんに依頼したのだが、まさかこのような事になるなんて思いもしなかった」

「 運がよかった(、、、、、、) んだよ」

「そうだな、運がよかったんだ」

並んで村人を眺める俺達。

ふと、クリントがなにかを横に――俺の目の前に差し出してきた。

筒状に丸めた紙だ。

「これは?」

「運が良かった事がもう一つ。昨日の昼にサメチレンとの話にケリがついた」

クリントから紙を受け取って開く、複雑な文言は契約書みたいで、下の方に二人分のサインがあった。

「インドールは完全にサメチレンと関係が切れた。これの前にドロップ倍増が向こうに伝わってたらもう一悶着あっただろうな」

「なるほど、それは運がよかった」

紙を筒状に丸め直して、クリントにかえす。

肩を並べたまま、笑顔で未来への希望をともす村人たちをみる。

中には他からきた冒険者もいる。少しずつだがダンジョンを中心にした商活動が活発になっている。

金鉱山の村としてインドールは軌道に乗りつつある。

俺の役目は終わった、と確信した瞬間だった。

クリントとわかれて、村長の家にやってきた。

「いかがいたしましたかな恩人様」

村長は茶をだし、慇懃な態度で俺を迎え入れてくれた。

「そろそろかえろうと思ってるんだ」

「帰るとは? ど、どこへでしょう」

にわかに慌て出す村長。

「シクロだ、気づけばだいぶ長いこと家を空けてしまったからな」

「い、家でしたらこのインドールに。ちょうどみんなで恩人様の屋敷を建てねばと相談しておったところですぞ」

「屋敷って……」

苦笑いした、そんな事を相談してたのか。

「いいよ、そんなの」

「ですが、恩人様はこの村にとって――」

「低レベルは縛られない」

必死に説得を試みようとする村長だが、ドアがいきなり開いてイヴが入って来た。

自前のウサミミに色っぽいバニースーツ。

彼女はスタスタと俺の横にやってきて、すわっている村長を見下ろした。

「し、縛られないというのはどういう事ですかな」

「ダンジョンが低レベルを待ってる。他のダンジョンが」

「他のダンジョン……」

「一つのダンジョンと、自分達のワガママで低レベルを縛り付けておくのはよくないこと」

「むっ……」

村長はイヴに睨まれてたじろいだ。

イヴの目は珍しく真剣だった。

「そ、そうですな……我々のワガママで恩人様をこんなところに引き留めるのはいけませんな」

「わかればいい」

「でしたら我々の気持ちだけでも受け取って下され!」

一度引き下がったような村長は、まるで食い下がるように言ってきた。

「気持ち?」

「感謝の気持ちです。村のものたちが是非といっております」

感謝の気持ちか……。

別にそんなのがほしくてあれこれやったわけじゃないけど、かといって断るものでもない。

「わかった、気持ちはもらっていく」

「おお! ありがとうございます! さっそく皆に知らせなければ。最初の分だけでも恩人様がお帰りになる前にお渡しせねば」

村長は立ち上がって外に飛び出した。

自分の家なのにもかかわらず、俺とイヴを置き去りにして飛び出していった。

「せっかちだな。というか感謝の気持ちってなんだ? 最初の分とかいってるけど」

「うさぎしってる」

「そうなのか?」

イヴがこくりと頷く。

「うさぎの耳は地獄耳」

ぴょこぴょこ、とイヴのうさ耳が動いた。ちょっと可愛い。

「王様はロバみたいな言い方だな!」

「1%」

「1%?」

「この村の税金の1%を低レベルの取り分にするって」

「気持ちが重かった!」

思わずつっこんだ。

「っていうか、1%ってどれくらいになるんだ?」

「そこまではうさぎ知らない」

「そりゃそうか」

どれくらいになるんだろうな、とイヴと首をかしげ合う。

「年間で何千万くらいだね、あっ、ドロップが倍になったから億超えるね」

あとから買い取り屋の立ち上げをしきるイーナからその数字をきいて、この後年間で億単位の不労所得があるということに俺は仰天したのだった。