軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第93話 カストール、ゲットだぜ

「私のカードはAです。よってディーナ様の順番はスキップされます」

「あっ、酷い!」

「我は……出せるカードがないな。山から引かせてもらおう。……ふむ、ハートの3か」

「あ、3がないや。じゃあ3枚引くね」

ウィルゴが皇帝の所に行っている間、ひたすら暇なだけの俺達は現在、錬金術で作ったトランプに興じていた。

今やっているのはアメリカンページワンと呼ばれるもので、基本的なルールはUNOに近い。というかぶっちゃけUNOだ。

前の人が出したカードと同じマークか数字のカードを出し、また特定の数字には特殊な効果がある。

例えばリーブラが出した『A』は次の人の順番を飛ばす。アイゴケロスが出した『3』は次の人が同じ3を所持していなければ三枚引かせる、てな具合だ。

そして出せるカードがなければ、出るまで山札から引くのもUNOと同じであり、より早く手札を0にした者から上がっていくわけだ。

ちなみに一番に上がったのはカルキノスで二番がスコルピウスだ。

つまり俺達は今、三位争いをしている最中である。

そしてアリエスが出したのは『8』。これはどのマークの時も出す事が出来て、出した後にマークを指定する事が出来る。

「スペードを指定します」

「では余はこれだ」

スペードを指定され、俺は手札からスペードの5を出した。

こいつは特に何の効果もない。

次にリーブラはスペードの9を出し、ディーナから悲鳴があがる。

9の効果はリバース。つまりディーナへと順番が回らずに再び俺へと回る。

少し哀れだがディーナの手札は残り一枚。下手に順番を回すと上がられてしまうのでリーブラのやり方は正しい。

「あっ、これで上がりです」

だが残り一枚はアリエスも同じだった。

彼は最後のカードであるスペードの6を出し、これで三位が決まってしまった。

いかん、これは下手すると俺のドベも有り得るぞ。

「ところでルファス様、このトランプというものは商品化しないのですか?

上手くいけばBigな収入源にもなると思うのですが」

「こんな単純な札などすぐに真似されるだけだ。大した稼ぎにはならんよ」

カルキノスの質問に俺は手持ちの札を見ながら答える。

この世界には著作権なんてものはない。よっていいものはいくらでもパクリ放題だ。

だからドワーフなんかはそれを嫌って、特許というシステムを自分達で作ったのだろう。

多分ブルートガングだけは著作権に似たものも存在してるんじゃないかな。

そんな事を考えながら俺はようやく手持ちの札を使い切り、上がる事に成功した。

やれやれ、今回は四位か。微妙な順位だな。

「ルファス様!」

丁度俺が上がったタイミングでドアが開き、ウィルゴが入ってきた。

ようやく皇帝からの礼と守護竜の治療が終わったのだろう。

思っていたよりも少し長かったが、まあ暇潰し用のトランプを作っておいてよかったって所か。

しかしウィルゴの顔は何やら焦りが含まれており、俺はすぐに考えを改める。

これは……何か面倒事が発生したな。

「どうした、ウィルゴ」

「お話ししたい事があって……でも、その前にルファス様に合わせたい人が」

「ふむ?」

俺はソファから立ち上がり、ドアまで歩いていく。

すると、外には白いコートを羽織った海賊風のイケメンが立っていた。

見覚えはないが、妙な懐かしさを感じる。

多分だが、彼は俺の知り合いなのだろう。少なくとも俺はそう感じている。

どれ、少し記憶を掘り返してみるか。最近では切っ掛けさえあれば『ルファス』の記憶を引っ張り出す事もあまり難しくなくなってきたからな。

俺はしばし己の内に意識を傾け、俺の知らない記憶を探る。

――…………。

こいつは……。ああ、そうだ。思い出した。こいつは確かカストールだ。

覇道十二星の一つである『双子』の兄の方で、魔法と物理の両方をバランスよく扱えたはずだ。

ゲーム時代は『妖精兄妹』という魔物名で、妹とワンセットだったがこちらでは完全に独立して動いているらしい。

その分ステータスも俺の知らないものになっているわけだが。

【カストール】

レベル 800

種族:妖精

属性:木

HP 32500/55000

SP 2300/9800

STR(攻撃力) 4208

DEX(器用度) 2100

VIT(生命力) 3005

INT(知力) 6000

AGI(素早さ) 3995

MND(精神力) 800

LUK(幸運) 1092

装備

頭 ――

右腕 アンカーランス(STR+1200 AGIー200 両手使用)

左腕 ――

体 空賊の衣装(木属性魔法使用時の消費SP減少)

足 ――

その他 空賊のコート(物理ダメージ半減)

ふむ、妹とセットになっていないステータスは俺も初めて見るが単騎でもそこそこいけるな。

だがやはり元々は妹とセットだったからか、総合的な強さは装備込みでもアリエス未満だ。

タイプとしては前衛もこなせる魔法攻撃型で、役割としてはサジタリウスと少し被り気味かな。

まああっちは純粋なスピード&魔法攻撃特化に対し、こちらはある程度の前衛もこなせるわけだから住み分けは出来ていなくもない。

しかし言っちゃ悪いが微妙なステだな。器用貧乏ならもうアリエスがいるし。

というか魔物扱いの頃は装備なんて付けてなかったはずなんだがな……そもそも魔物は装備なんか出来ないはずだし。

もしかしてこれ、俺がアリエスやアイゴケロス専用の装備作ってやればあいつ等も今より強くなれるんだろうか?

しかし今気にするべきは、HPのこの妙な減り具合だ。

「お久しぶりです、ルファス様。いつか戻られると信じておりました」

「うむ、息災のようで何よりだカストール」

カストールは俺の前に跪き、頭を下げる。

第一印象は悪くない。見た目はイケメンで少し気に入らないが、アリエス達のように問題を起こしたわけでもなくカルキノスのように変なキャラをしているわけでもない。

これは遂にきたか? ボケだらけで突っ込み不在のパーティーにようやく加入してくれる常識人枠が。

「あらあ、カストールじゃなあい。何でこんな所にいるのよお?」

「Long time! 二百年ぶりですねカストール」

既にトランプ勝負から抜けているスコルピウスとカルキノスが俺の後ろから顔を出し、カストールへ声をかけた。

更にそこにアリエスとリーブラも加わり、ひょこっと顔を覗かせた。

どうやらビリ争いはアイゴケロスとディーナの二人のようだ。

横目で見れば二人は手札を睨んで唸っている。

「ところで随分消耗しているようだが?」

「その件なのですが……申し訳ありません! ルファス様より預かった『天へ至る鍵』を先日魔神王めに奪われてしまい……!」

……天へ至る鍵? なんぞそれ?

俺は土下座しかねない勢いで謝るカストールを見ながら記憶を掘り返すも、全く該当する名前が出てこない。

ゲームには少なくともなかったよな、そんなアイテム。

俺も膨大なアイテムの名前を全部暗記しているわけではないが、重要なものは一通り知っているという自負はある。

だがそんな名前のアイテムはなかったはずだ。

ダンジョンのどんな扉でも開ける一回限りの使い捨てアイテム、ダンジョンキーとかなら知っているが。

とりあえず後でディーナに聞こう。あいつなら多分知ってるだろう。

それよりこいつ、魔神王さんと一戦やったのか……そりゃ無茶ってもんだよ。

このステータスじゃ逆立ちしたってあれには勝てん。

「よい、気に病むな。ディーナ、こやつを手当てしてやれ」

「ま、待って下さい。もうちょっとで上がれそう……」

「あ、我の上がりだ」

「…………」

どうやら無事に勝負も付いたようだ。

ビリになってしまったディーナがトボトボと席から離れ、こちらへと歩いてくる。

とりあえずカストールとは初対面だろうし、紹介しておくか。

「カストール。こいつはディーナといい今の余の参謀を務めている。

二百年前もいたと本人は言っているが影が薄くて真偽が分からん。

色々怪しい奴だが仲良くしてやってくれ」

「そ、それは……大丈夫なのですか?」

「まあ悪い奴ではない。多分な」

俺の色々とぶっちゃけた紹介にカストールが顔をしかめるが、怪しいものは怪しいのだから仕方ない。

下手に取り繕ってもどうせ後で矛盾が出るし、そもそも俺はそんなに口が回らない。

ならいっそ、最初からぶっちゃけた方がマシというものだろう。

ディーナが後ろから俺を呆れたように見ているがスルーする。

「こっちはウィルゴ。パルテノスの後継で新しい『乙女』の星だ。

まだ未熟ではあるが素質はいい。仲良くしてやってくれ」

「はい、わかりました」

ウィルゴは特に怪しむべき部分もないので普通に紹介する。

ディーナとの差が酷いって? 日頃の行いの差だ。

「さて、それでは何があったかを聞こうか」

俺はウィルゴへと視線を移し、彼女の話したい事とやらへ話題をシフトさせた。

何やら厄介事の気配がするが、聞かないわけにもいかない。

「はい、実は……」

そしてウィルゴの口から語られたのは予想に違わず厄介な出来事が発生した、というものであった。

守護竜を殺しにきた亜人四人に彼等が語った現人類への憤り、差別への嘆き。そして背後にいるレオン、か。

これは……あれだな。どう考えても現人類への宣戦布告が近いうちに行われそうだ。

そもそも守護竜を攻撃する事自体が既に宣戦布告に等しい。

要するに、人類に分類されていてもおかしくない魔物達が我慢の限界を迎え、人権寄越せと決起したわけか。

更にリーブラから語られたサジタリウスの裏切りの理由もこれとほぼ一致しており、レオンが彼等を煽っているのは簡単に想像出来る。

あいつ、魔神族と人類を纏めて敵に回すつもりか?

「どう思う?」

俺は後ろに控える十二星達に意見を聞いてみる。

すると全員が揃って、ほぼ同じ答えを口にした。

「短慮としか」

「foolですね」

「救いようのない馬鹿です」

「僕もちょっと無いかな、と思います」

「死ねばいいわあ」

「無計画すぎます」

リーブラ、カルキノス、アイゴケロス、アリエス、スコルピウス、ディーナが容赦なくレオンの無計画ぶりを罵倒するがぶっちゃけ俺も同じ意見だ。

うん、もうね。馬鹿かと。阿呆かと。

他はともかくとしてベネトナシュがいる事をあいつ忘れてるんじゃないだろうか。

そりゃ今のメグレズやメラクくらいなら何とかなるだろうよ。レヴィアやブルートガングにだって勝てると思うよ?

けどベネトナシュと魔神王を同時に敵にするとかアホの所業以外何者でもない。

こう言ってはなんだが、レオンはもう放置しても自滅するんじゃないかな。

ただ、可愛そうなのはその自滅に巻き込まれる他の亜人達だ。

彼等は追い詰められた末にレオンの言葉に乗せられてしまったわけで、レオンと一緒に全方位からフルボッコにされるのは不憫に過ぎる。

レオンだけならあえて泳がせて、ベネトナシュと魔神王にボコボコにされてボロ雑巾になった所を回収してしまえばいいのだが、これでは他の亜人が余りに哀れだ。

「でも変ねえ。レオンはともかくサジタリウスってそんなお馬鹿さんだったかしらあ?

情勢くらいは見れる奴だと思ってたのに……買いかぶってたのかしらねえ?」

「ん~、確かに妙ですね。ミーの知るサジタリウスはもっと慎重でcoolだったはずです」

会話から察するに、どうやらレオンは元々そういう奴らしい。

まあこれに関しては前から言われていた事だし、ベネトナシュと似たようなタイプなのだろう。

だがスコルピウスとカルキノスの反応から見るにサジタリウスは違うようだ。少なくとも全員が違和感を覚える程度には。

つまり、まだ何か裏があるという事だ。

あるいはレオンに協力せざるを得ない事情でも抱えているか。

リーブラにわざわざ伝言を伝えたのだって意味不明だ。罠を張るなら自分がいる事を俺に伝えない方がいいに決まっている。わざわざ『自分はレオン側に付きますよ』なんて言うのは『レオン側に俺がいるから気を付けろ』と言っているようなものだ。

これは次の目的地は決まったようなもんだな。

次はレオンとサジタリウスを回収する為にあいつ等のいる場所へ向かう。

そして真意を改めて俺から確認するしかあるまい。