軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第135話 ポルクス、ゲットだぜ

女神に操られたポルクスとの戦いが終わった翌日。

俺達は宿で一番広い部屋を借り、ほぼ全員がそこに集まっていた。

俺や十二星は勿論、瀬衣少年やテラ、ルーナ、更にベネトナシュまでがそこにいる。

しかしほぼ全員、なんて言い方をした時点で分かったかもしれないが全員ではない。

まずレオンだが、あいつは戦いが終わった後に帰ってしまった。

慣れ合う気はない、と言っていたがあいつらしいと言えばあいつらしい。

それともう一人……ポルクス襲来前に姿を消したディーナもここに居ない。

あの時は長いトイレだな、程度にしか思っていなかったのだが戦闘が終わっても姿を見掛けず、勿論トイレにもおらず、完全に行方を晦ませてしまっていたのだ。

だから現在ここには、レオンとディーナを除く全員が集まっている、という事になる。

……それと一つ。結構これは嬉しい誤算だが『アルカイド』を解除したら発動中よりは大分『俺』寄りの思考に戻る事が出来た。

やはりアレは本来のルファスを呼び覚ましてしまうらしく、強くはなれるが俺にとっては結構自爆に等しい技だったらしい。

多用は禁物、と言いたい所だが魔神王とやり合う時が来れば使わざるを得ないだろうな。

「では、其方等はもう人類と争う気はないのだな?」

「そうだ。魔神族の本質を知ってしまった今、負けるのが分かっている出来レースに身を投じる気はない」

俺の問いに答えたのは魔神王の息子であるテラだ。

それにしてもこの野郎、腹立つくらいイケメンだな、おい。

勇者である瀬衣少年が完全に存在感を喰われてしまうくらいに『俺が主人公だ』と顔に書いているような美形ぶりである。

瀬衣少年も『この人が勇者でいいんじゃないかな』と呟いており、ちょっと自信喪失してしまっているようだ。

もし何も知らない奴に俺達の戦いをファンタジーのゲームだと説明して、この中で誰が主人公が答えろと言ったら多分こいつを選ぶ。そのくらい王道美形勇者っぽい顔だ。爆発しろ。

「そのような事を言って、本当はルファス様に恐れを為しただけではないのか?」

アイゴケロスが挑発するようにテラを煽る。

確かこいつは前回ブルートガングで会った時にテラに一杯食わされてたな。

とはいえ、これは少し大人げない。

「そうかもしれん。情けない話だが俺ではとても勝てないだろう」

一方こちらはあっさり認め、挑発に乗る素振りもない。

おお、大人だ。

イケメンで冷静で大人とか、何だこいつ。

何かこっちが悪役集団みたいだから、もう少し欠点を出してもいいんだぞ?

……あ、悪役集団だったか。

「ルファス殿! 魔神族が目の前にいるというのに討たぬのですか!?」

「昔の余ならば構わず討っただろうが、今の余は白旗を上げている相手を攻撃するほど非情ではない。どうしてもやりたくば其方がやるといい」

「え……いや、それは、その……」

エルフの兄さんが何か叫んでいるが、それは軽く流しておく。

とはいえ、別に人類が魔神族を倒そうとするのを止めはしない。彼等の立場で物を見れば投降していようが魔神族……しかもその王子となれば到底許せる相手ではないだろう。

だから俺はそれを肯定もしないが否定もしない。やりたいというなら当人同士で戦えばいい。

しかしエルフの兄さんはそれ以降は何も言わず、黙り込んでしまった。

まあ、大方俺が二百年前みたいに『魔神族殺すべし』と襲い掛かるのを期待していたってとこだろうな。

というか他人の視点を持つ今だからこそ言えるが、昔の俺はいくら何でも非情すぎだ。余裕がないと言ってもいい。

世界を壊せる力があって容赦がなくて、その上冷酷非情……ハッキリ言おう。裏切られて当たり前、見限られて当たり前だ。

問題は、俺が確実にそれに近付いてしまっているって事だ。

「リーブラ、ディーナは見付かったか?」

「いえ。昨晩からずっと索敵しているのですが全く。

恐らくはもう、この街にはいないと考えられます」

「……そうか」

ディーナが何処に行ったかはリーブラの探知能力をもってしても把握出来ていない。

彼女はエクスゲートで何処にでも逃げる事が出来るわけだから、リーブラの探知域外に出るのも簡単だろう。

こうなると当然、何故このタイミングで逃げたかという疑問が生じるわけで、その答えはポルクスにあると睨んでいる。

ポルクスは何か、ディーナにとって都合の悪い情報を持っているのではないだろうか。

だからディーナが逃げた、と考えれば辻褄は合う。

「ではそうだな……まずはディーナの事について話し合うとしようか。

幸い、今ここには『ウェヌス』としての奴を知る者達もいる事だしな」

「ディーナ、ですか?」

俺の言葉にポルクスが首をかしげる。

どうやら聞き覚えはなさそうだ。

すると、リーブラが紙を取り出してその上に高速で何かを描き始めた。

そして完成したのは、白黒の写真と見紛うばかりに精巧に描かれたディーナの顔だ。

お前、そんな事出来たんかい。

ポルクスはその紙を受け取り、まじまじと見る。

そして、ダラダラと冷や汗を流し始めた。

「……ルファス様……この人、最近までいたんですか?」

「うむ。二百年前にも居た参謀と名乗っていたがぶっちゃけ嘘である事は既にバレバレだったな」

「な、な、な……何考えてるんですか!? これ、女神様のアバターですよ!?

服装が違うだけで、何の捻りもなくアロヴィナス様そのまんまの外見じゃないですか!」

な、なんだってーーー!?

「というか、ルファス様を封印した張本人です、これ!

二百年前の戦いの時、アリオト達に協力して亜空間封印の術使ってたの見ましたよ、私!」

な、なんだってーーー!?

というか、こっちはマジで予想してなかった。

ぶっちゃけディーナ=女神のアバターは結構予想出来てたのだが、まさか俺の封印にまで一枚噛んでるどころか、やらかした本人だったとは。

あー、なるほど、道理でディーナが逃げ出したわけだ。

あの 女(アマ) 、ポルクス接近に気付いた時点でこうなる事を予感して、さっさとトンズラこきやがった。

いくら存在感が薄かったとはいえ、これは迂闊という他ない。

「というか何でそんなのを参謀にしちゃうんですか!? 嘘って分かったなら解雇しましょうよ!」

「いや、泳がせておこうかと」

「馬鹿ですか?! 馬鹿なんですね!?

泳がせるっていうのはこっちが相手の嘘に気付いている事を相手に知られてない場合にやるべき事であって、知られている状態でやっても意味はありません!

リーブラ、貴女もよ! 何で貴女がいてこんなアホな事になってるのよ!」

「高山よりも深く反省しております」

「それ反省してないわよね!? 深いどころか上に登ってるわよねえ!?」

「もうすぐ大気圏を抜けます」

「このポンコツ!」

ポルクスが凄い剣幕で怒り出し、俺は何とも言えない感動を味わっていた。

おお……凄いマトモだ。今までみたいなマトモ(笑)じゃなくて、本当に常識的な思考の持ち主だ。

これだよ、これ。十二星に足りなかったのは。

この冴えわたる突っ込み。彼女こそが俺の求めていた人材だったか。

「……ルファス様、後でちょっと、復活してから今日までの出来事を覚えてる限り話して頂けますか? ルファス様の事だから多分、いえ、絶対に何か見落としてますから、これ」

ポルクスは懐から紙を出し、何かをメモしている。

横目で軽く覗いてみたが、どうやらここまでの会話で得た情報を纏めているらしい。

随分マメな奴らしいな、ポルクスは。

「全く……ルファス様の脳筋は昔からとはいえ、頭が痛いわ。

貴方達もルファス様のやる事を全肯定するんじゃなくて、ちゃんと進言しなさいよ。何のための十二星だと思ってるの」

「無論、全身全霊を賭して仕え、主の望む事全てを叶える為の……」

「黙りなさい山羊。十二星の存在意義はルファス様の不足を補う事。

ルファス様は圧倒的な力を持つけど、それでも全能ではない。だから出来ない事を埋めるために様々な個性を持つ者を集めて覇道十二星を組織し、己の手足としたのよ。

特に行動に関してはルファス様は昔から何も考えずに突っ走る脳筋だったんだから、誰かが側でブレインを務めなきゃいけないのに、よりによって、そのブレインの位置に潜り込まれるだなんて……」

ポルクスがイライラしたように言い、それから咎めるように十二星を見る。

しかし俺にとっては結構重要な新事実が発覚して、軽い驚きを感じていた。

そうか……脳筋だったのは俺だけじゃなく、『ルファス』もだったのか。

ポルクスの視線に曝された十二星は特に悪びれもせずに答える。

「だって僕、そんなに頭よくないし……」

「我も」

「妾がルファス様のやる事に異議を唱えるわけないでしょお?」

「ミーもちょっと考えるのは苦手でして……」

「いやあ、私も頭脳労働担当ではないからなあ」

「俺もあまりそういうのは得意ではない」

アリエス、アイゴケロス、スコルピウス、カルキノス、カストール、サジタリウスの返事にポルクスは頭を抱えて「こんの脳筋共……」と唸った。

そうすると今度はウィルゴが申し訳なさそうに委縮してしまい、それを見て慌てて「あ、貴女が悪いわけじゃないのよ」とフォローを入れていた。苦労人タイプだなあ。

それからポルクスはリーブラを睨むが、それと同時にリーブラは首を180度回転させて視線を逸らした。

「リーブラ。私がいない間に参謀を出来そうなのと言えば貴女くらいでしょ。

何でルファス様の迷走をそのままにしたのよ」

「聴覚システムに異常が発生しました。何を言っているのか聞き取れません」

「随分と都合のいいシステムね。このポンコツメイド」

ポルクスは呆れたように溜息を吐き、それから今度は俺を睨んだ。

「ルファス様」

「う、うむ?」

「私が戻ったからには、今後は私がルファス様の行動を管理します。

予定などを立てる際も、まずは一度私に相談して下さい。いいですね?」

「え? いや、しかし……」

「い い で す ね ?」

「……うむ」

単純な強さという面で言えばポルクスは俺の足元にも及ばない。

だが何故か、俺は彼女に頭が上がらないらしい。

多分、二百年前もこうして彼女に色々怒られたり、手綱を握られたりしていたのだろう。

ああ……これが参謀(真)か。

今にして思うと、ディーナがいかに参謀の仕事をサボっていたのかが分かる。

「とはいえ、ちょっとこれは反省すべき点ねえ……よりにもよって、ルファス様を封印したお馬鹿さんだったとはねえ。

妾はそうとも気付かず、あいつと一緒にトランプやったりしてたのねえ……へえ、へえ……!」

「我はそうとも気付かずに紅茶の淹れ方について談義していたのか……!」

「アンタ等どんだけ呑気なのよ……」

スコルピウスとアイゴケロスが拳を震わせ、怒りを露わにする。

しかし言っている事は何か間抜けだ。

他の十二星も似たようなもので、何だかんだで全員が複雑な顔をしていた。

アリエスとウィルゴは怒りよりも騙されていた悲しみの方が強い、という顔をしており、リーブラはまるで最初から予期していたように納得したような顔をしている。

そういえばディーナを一番疑っていたのはリーブラだったか。

「となると、つまり彼女を捕らえて話を聞き出せば一気に女神様に近付くという事か。

……付き合いは長くないが、そんな悪い娘には見えなかったがな」

「気を付けなさい兄さん。女は魔物よ。上っ面なんていくらでも取り繕えるわ」

カストールに対し、ポルクスがこの世の真実を語る。

うん、そうだよな。女ってマジで怖い。

まあスコルピウスとかは生物的に魔物だけどな。

「ふん。貴様の事だ、大方『何を考えているか分からぬ部下を抱えるも一興』などと言いながら薄々勘づきながら放置したのだろう? 身内に甘いのは相変わらずか、マファール」

「ぐぬっ」

ベネトにグサリと核心を刺され、のけぞりそうになった。

うん、図星だよ畜生。

『腹に何を抱えているかも分からぬ参謀、というのも面白い。物騒な部下を持つのも、ある意味では定番だ』……これが、ディーナと一度戦った後に俺が吐いた能天気な台詞である。我ながらアホ丸出しだ。

だがなあ、どうもあいつの事は敵とは思えないんだよ。

「ともかく、これからやるべき事は主に四つだ。

まずは残る十二星であるアクアリウスとピスケスの捜索。

そして消えたディーナの追跡。

後は、魔神族から妖精への転生の方法を探る……か」

「四手に別れる必要がありそうですね」

「うむ」

戦力分散は普通なら悪手だ。

だが……まあ、全く問題はないだろう。ハッキリ言ってここにいる面子は過剰戦力もいい所だ。

黒翼の覇王(おれ) に 吸血姫(ベネト) 、魔神族の王子にその側近。十二星の主力陣に、後オマケの勇者一行。

改めて考えると何だこのカオスパーティー。

本気になれば一日で世界征服出来るわ、これ。

ちなみに征服じゃなくて破壊なら一瞬な。マジこええ。

「私は勿論転生方法を探るチームに入るわ。

私がいないと始まらないだろうしね。

……それに気になる事も一つあるわ」

「俺とルーナもそちらに行かせて貰おう」

「ポルクスが行くならば私もそちらへ行こうか」

「じゃあ私もそちらに……。あまり戦力的にお役に立てそうもありませんし」

まず最初に方針を決定したのは妖精兄妹とテラ、ルーナの魔神族組、そしてウィルゴだ。

まあ彼等の目的を考えればこれは至極当然の事だろう。

ウィルゴも危険地帯に行かせるよりは妖精兄妹と一緒に待機してくれた方が安心出来るので、これも問題ない。

「アクアリウスがいるのは確か灼熱地帯ムスペルヘイムだったな。

となると、火に抵抗力のあるメンバーが最適だろう。

……よし、こちらにはアリエスとスコルピウスが向かってくれ。

万一戦いになった時に備え、アクアリウスに相性のいいカルキノスもここだ」

ムスペルヘイムは灼熱地帯と言われているだけあって、さぞ熱い場所なのだろう。

俺達は全員多少の炎などで参るほど柔ではないが、しかしそれが長く続けばあるいは熱中症くらいにはなるかもしれない。

となると、炎に対して高い耐性を持つアリエスとスコルピウスが最適となる。

カルキノスはまあ、対アクアリウスの主力だな。火属性二人だとアクアリウスとの相性が悪すぎる。

「えええええ!? そんなご無体な! 妾はルファス様とご一緒しますわあ!」

「蠍ざまあ」

「リーブラァァァァ!!」

案の定スコルピウスがゴネるが、とりあえず無視する。

最近はこいつの扱いにも段々慣れてきた。

次に居場所の分からないピスケス捜索チームだが、ならば探索能力の高い二人を投入すればいい。

「ピスケスの捜索にはリーブラとサジタリウス、サポートにアイゴケロスを付ける。

戦いになる事はないと思うが、くれぐれも気を付けてくれ」

「任務了解しました、マスター。必ずやエロスを連れて帰ります」

ピスケスって呼んでやれよ。

まあ、ここは大丈夫だろう。リーブラとサジタリウスならきっとやってくれるはずだ。

「勇者一行は独自に動いてくれ。其方等は別に余の部下でもないしな。

其方等が最善と思う行動を取ってくれればいい」

「は、はい!」

瀬衣少年の行動はあえて指定しない。何故ならその方がよくなる気がするからだ。

彼は何というか、いい意味で予想外の行動をしてくれる。

俺との和解を結ぼうとする、などは最たるものだろう。他の奴ではその発想すら浮かぶまい。

異世界人だからこそのトリッキーさと、常識に囚われない発想に期待したい。

そして最後に残るディーナ捜索だが、これはあえて俺一人で行こうと思う。

戦力的にも問題はないだろうし、それにあいつとはゆっくり話し合ってみたいしな。

……と、思っていたのだが。

「おいマファール。私を忘れていないか?」

「……其方、付いてくる気か?」

「ミョルニルに残っても暇だからな。貴様の動きを観察していた方が面白そうだ」

どうやらベネトが付いてくる気らしい。

え? 大丈夫か、これ。いきなり襲い掛かってきたりしない?

ベネトは嫌いじゃないし、むしろ尊敬すらしてるんだが、いつ攻撃してくるか分からないから怖いんだよな。

ともかく、これでチーム分けは終わりだ。

後は目的地に向かう為の足をどうするかだな。

田中と、それから鈴木を改造するとしてまず二チーム分。

後は勇者一行を含めてもう二チーム分欲しいな。俺とベネトは最悪、なくても自力で飛んでどうにか出来るけど。

まあベネトは飛ぶというか跳ぶだけどな。

「後は目的地へ向かう為の足だな」

「それならば私にお任せ下さい、ルファス様」

「ん?」

もう一台ゴーレムを造ろうかな、と考えていた俺だがカストールの自信のありそうな声に思考を中断する。

どうやら彼は何か空を飛べる乗り物か何かを所有しているらしい。

カストールはポルクスと眼を合わせると、小さく頷く。

「いくぞポルクス!」

「ええ、兄さん」

「合体スキル――『英霊達の旗艦』!」

カストールとポルクスが手を繋ぎ、虚空へ掲げる。

すると二人の手から光が溢れ、天井を貫いて空高く飛翔した。

物理的な破壊力はないらしく、貫通とは言ったが別に天井は壊れていない。

それからしばらく待つと、空の上で光が集まり、巨大な空飛ぶ船が顕現する。

町の人々は何事かと空を見上げ、空を飛ぶ非常識な船に瞠目していた。

これは……凄いな。

RPGといえば終盤で登場してワールドマップを移動する空飛ぶ船が定番だが、それを実際にやってしまうとは恐れ入った。