軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第129話 ポルクスは七英雄をくりだした

スキル『 先を往く者(アルカイド) 』。

それはきっと、本来ならばこの世界に存在しないはずのスキルだ。

当然だ、何故ならこのスキルはバグっている。

世界を創世した女神が決めたレベル1000という天井、それを破壊してしまうのだから。

ベネトナシュとの戦いで得た……否、思い出したこのスキルを発動する事で俺のレベルは1000を超え、その先へと飛翔する。

気分が高揚して俺の意識が好戦的に、相手を傷付ける事を厭わぬ暴力的な思考へと傾く。

俺が俺でなくなり、 余(おれ) へと変わる。

だが流石にあの時ほどの急上昇は見込めないらしく、 余(おれ) のレベル上昇は1500で止まってしまった。

予想以上に低い……だが、今はこれで十分。

余(おれ) のレベル上昇に釣られ、十二星もそのレベルを跳ね上げるのだから。

唯一レベルが上がらないのがリーブラだが、しかし彼女には彼女だけのパワーアップ方法がある。

「アーマメント・セレクション! 『アストライア』!」

ブルートガングより射出された追加武装が飛来し、空中でリーブラとドッキングする。

これでリーブラ以外の全員がレベル1000、かつリーブラは完全武装だ。

対する相手はレベル700~1000が数百体。

竜王も計算に含めると総合戦力差は笑えるほどに大きいだろう。

……と、普通は思うだろうな。

だが舐めてもらっては困る。覇道十二星は 余(おれ) が女神に挑む為に揃えた最強のメンバーだ。

この程度の劣勢も跳ね返せないような奴など入れていない。

確かに互いのレベルを合計して考えるならばその差は大きい。こちらは俺を含めて7600。

一方向こうは軽く数十万を超えるだろう。

だが残念だったな。こちらは足し算ではなく掛け算なのだ。

余(おれ) がこうして本来の力の一端を取り戻せた今、ようやく十二星も本気を出す事が出来る。

今まで済まなかったと思う。 余(おれ) が不甲斐ないばかりに窮屈な戦いをさせてしまった。

だがもう、その心配はない。鎖は解き放たれた。故に……。

「余に従う覇道の星に命じる。今こそ其方等の全力を余に魅せよ」

アルゴナウタイ? 二百年前に 余(おれ) に従っていた精鋭を召喚するならばともかく、反乱を恐れて無難な英雄しか出していないのでは、ただの寄せ集めだろう。

七英雄に従っていた奴等は出ているようだが……笑わせるな。其方等など物の数ではない。

力を合わせて 余(おれ) を倒したなどと伝えられているようだが、それは全くの誤りだ。

真実は、遠方からの援護射撃に徹していた臆病者の集団。

余(おれ) と直接戦う事をアリオト達に押しつけ、自分達は安全圏からビクビクと攻撃していただけの軟弱者の集団でしかない。

最後はどうなったんだったかな?

……ああ、思い出したぞ。確か、あまりに目障りだから纏めて焼いてやったんだったかな。

「足が震えているぞ、英霊共。死しても尚、余の恐怖を忘れられぬか」

「な、何を……!」

「ああ、ところで――其方等、誰だったかな?

顔と名前が全く思い出せん。許せよ? 印象に残らん相手の顔は三歩歩けば忘れてしまう鳥頭なのだ」

「なっ……な……!?」

余(おれ) の嘲りに英霊達の顔が怒りと羞恥で歪んだ。

ま、挑発はこの程度でいいだろう。

といっても、一人一人の顔を覚えていないのは事実なのだがな。

実際、覚えるにも値しない。所詮は黄金の林檎でレベル『だけ』を上げた雑魚共だ。

二百年も前に 余(おれ) に敗れた連中が今更未練がましく出てきて、それで徒党を組めば勝てるとでも思ったか?

冥府から還って来た所で結果は変わらん。再生怪人は弱いのがお約束だ。

故、早々に去ね。

「スキル・エクスコアレス」

無論、今まで出来なかった事が出来るようになったのは 余(おれ) も同じだ。

特定の組み合わせでしか習得出来ないスキルは数あるが、そのうちの一つである『スキル・エクスコアレス』の威力をここでお披露目といこう。

習得条件はモンスターテイマーとアルケミストのレベルが200を超えている事。

その効果は……スキルの融合だ。

例えば『クリティカル時に敵をスタンさせる』スキルと『絶対にクリティカルヒットする』スキルを同時に発動したとしよう。

結果、それは『絶対に敵をスタンさせる』スキルへと変わる。

本来これはテイマーと魔物とで行うものだが、この世界にそんな縛りなどない。

ゲームでは最初から決められた特定の組み合わせでしか機能しなかったこのスキルだが、それも関係ない。 余(おれ) が使えると思ったらそれは使えるのだ。

女神の決めた設定など知らんし守る義務もない。 余(おれ) のルールは 余(おれ) が決める。

本領を発揮した十二星の力、その眼でしかと見届けるがいい。

……なあ、アロヴィナスよ?

*

ルファスの命令と同時に十二星は飛び出していた。

力が全身に漲り、主の声が背中を押す。

負ける、などという考えは微塵もない。勝利への確信しかない。

何故なら自分達の後ろには絶対たる黒翼の王がいる。彼女が魅せろと命じてくれた。

これに応えずして何が十二星か。何が部下か。

自分達の数十倍にも達する軍勢を前に、アリエス達は僅かも臆さずにそれぞれの得意とするスキルを同時発動した。

「いくぞ、リーブラ、スコルピウス!」

「妾に命令しないでよお!」

「合わせますよ!」

サジタリウスが吠え、それにスコルピウスとリーブラが応える。

この一瞬、彼等と敵対する英霊達は見た事だろう。

三人の背後に輝く、射手と天秤、蠍の星を。

そして、それが重なり合う刹那を。

「飛べ!」

まずサジタリウスが弓を放ち、リーブラがそれを掴んで敵陣の中央へと転移した。

それに一瞬注目が集まった瞬間にスコルピウスが 猛毒のブレス(グラフィアス) を発射し、リーブラ諸共敵全員を猛毒で犯す。

しかしリーブラにそれは通じない。当たり前だ、彼女はそもそも生物ですらなくゴーレムなのだから。

毒で犯された英霊達が一瞬にして光のフィールドに閉じ込められ、放たれるのは天秤の一撃。

弱者は耐える事すら許されない破滅の輝き。その名は――。

「ブラキウム!」

初手にして最大規模の殲滅技を放つという大盤振る舞い。

十二星最大の火力を誇るその攻撃を前に、HP99999以下の雑兵は問答無用で抹消される。

絶対防御スキルなど意味がない。絶対回避スキルなど認めない。

殲滅の輝きは聖域を守護する選定の一撃。あらゆるスキルに優先されて貫通する、一段階上位のスキルだ。そのダメージ値は必ず99999カンストし、軽減すら不可能だ。

たったこれだけで無数にいたアルゴナウタイが残り二割以下にまで減らされ、だが攻撃が終わった後も安心する暇などない。

「アイゴケロス!」

「行くぞアリエス!」

今度はアリエスとアイゴケロスが互いの背を守るように立ち、牡羊と山羊の星が重なり合う。

アリエスの全身から放たれるのは虹色の炎。

それがアイゴケロスの黒い波動と絡み合い、黒い炎と化して周囲へと拡散した。

その効果は、炎が続く限り継続する割合ダメージと、そして治療不可能という呪われた特性の混合。

つまり、この炎は防御を貫通してどんな敵にもダメージを刻む上に治療すらも許さない。

それは実質的に最大HPを破壊しているに等しく、炎に焼かれた英霊達が次々と倒れていく。

「何をしている! 相手はたかが数人だぞ!」

「かかれ! 数で圧殺するのだ!」

英霊達もやられてばかりではない。

過去に最強の名を欲しいままにしたドラゴン達がブレスを吐き、レベル1000のソードマスターが大地をも裂く斬撃を放つ。

だがその前に立ち塞がったのは十二星の壁、カルキノス。

彼はカバーリングで全ての攻撃を受け止め、そしてニヤリと笑った。

「Welcome to the hell(地獄へようこそ)!

サジタリウス、準備はいいですか?!」

「任せろ!」

サジタリウスが『アスケラ』を発動し、カルキノスへと付与する。

それと同時に蟹と射手の星が交差し、倍返しの一撃が攻撃を行ってもいない敵すらも含めた全体へ目掛けて拡散発射された。

「アクベンス・エクステンション!」

受け止めた攻撃を倍返ししつつ、それを敵全体へと発射する。

本来カルキノスは近接攻撃しか行えないが、しかしルファスの後押しを受けてサジタリウスとのスキル融合を果たした今はその制約すらもない。

薙ぎ払われた鋏からは幾筋もの光が矢となって拡散発射され、敵陣を蹂躙する。

その理不尽過ぎる反撃に更に英霊達の総数が削られ、まだ悪夢は終わらない。

パーティーはまだ始まったばかりなのだ。

「合わせなさいよお、カルキノス!」

「OK!」

スコルピウスとカルキノスが同時に鋏を出し、一体の巨大なドラゴンへと襲い掛かる。

そして繰り出されるのは、超高速の斬撃の嵐。

同じ武器を扱う者同士、何だかんだで呼吸は合うのだろう。

強固な鱗を持つはずの竜が一瞬にして細切れと化し、無惨な肉片へと変わる。

「サジタリウス、援護を!」

「来ると思って準備していたぞ!」

続いて交差するのは天秤と射手。

リーブラが全砲門を開き、サジタリウスも弓を構える。

そして放たれる、矢と破壊光の嵐。

『アスケラ』の効果で光と矢が拡散し、枝分かれして散らばる。

幾千、幾万にも及ぶ射撃が全てを焼き払い、眼前にある者全てを薙ぎ払った。

「アイゴケロス!」

「承知!」

カストールが愛用のアンカーランスを地面に突き刺し、竜巻が発生する。

それに巻き上げられた英霊達を、今度は上から放たれた闇の閃光群が一斉に貫いた。

だが終わりではない。落ちる直前に巨大な炎の塊と化したアリエスが突撃し、地面への落下すら許さずに再び空へと巻き上げたのだ。

そのままアリエスは掌から炎を出して飛翔し、次の敵を蹴り飛ばしては飛翔してまた次の敵へ攻撃を加える。

そして着地した時、そこにはリーブラとサジタリウス、スコルピウス、カストール、アイゴケロスが待機していた。

「同時攻撃いきます。準備はいいですか?」

「誰に言ってるのよお。スクラップにするわよお?」

「タイミングを合わせろよ」

「纏めて薙ぎ払うぞ!」

リーブラが砲門を展開し、スコルピウスが大きく息を吸う。

アイゴケロスの眼が輝き、カストールが錨を振り上げる。

アリエスが炎を集約させ、サジタリウスが弓を構える。

そこから同時に発射されるのは、既に死んでいる英霊達すらが『死』を予感する同時砲撃だ。

「フルファイア!」

「グラフィアス!」

「デネブ・アルゲディ!」

「五十の名を持つ神!」

「メサルティムVer.3!」

「アルナスル!」

六つの攻撃が混ざり合い、ルファスのスキルにより融合され、絶対必中の極光となって敵陣を貫いた。

一方、自主的に攻撃を行うスキルのない蟹さんは肝心な所で出番がないので、とりあえず鋏を投げた。

その閃光が通り過ぎた時、そこには残っている英霊はもういなかった。

竜王と、その上に乗る妖精姫だけが残り、しかし彼女の余裕は崩れない。

妖精姫が指を鳴らすと、今倒されたばかりの英霊達が一斉に蘇り、再び十二星の前に立ち塞がる。

だがそれを前にしてルファスが嘲笑した。

「ふむ。ならば次は余が魅せよう」

彼女が呟き、指を動かす。

するとそれに合わせて復活したばかりの英霊達が一斉に浮き上がり、抵抗すら出来ず強力な念動力によって空中に磔にされた。

そこにルファスが手を翳し、彼女の横に黄金に輝くマナが収束される。

姿を見せたそれは、黄金に輝く太陽の弓だ。

……もっとも、そのサイズは余りにも巨大で、この弓に番えるような矢が存在するかは甚だ疑問ではある。

だが番えるものは別に矢でなくてもよい。

この魔法の効果は属性最大魔法にしては珍しく直接相手を攻撃するものでなく、どちらかといえば支援系に属するのだから。

その効果は次に発動される魔法の威力を数倍に跳ね上げるというもの。即ちこの弓に番えるべきは魔法。

そしてその増幅度は、発射するまでにかけた時間で決定する。

「――『金の弓番える予言者』!

そして焼き尽くせ、『ソーラーフレア』!」

ルファスの宣言と同時に日属性でも上位に位置する破壊力と熱量を誇る攻撃魔法が発射された。

解き放たれた黄金の小型太陽は英霊達を呑み込み、一瞬で成層圏を抜けて虚空の果てへと飛翔する。

その速度は光すらも上回り、巻き込まれた全ての敵対者を遥か遠く離れた太陽系の果てへと強制退場させる。

否、それだけではない。放たれたソーラーフレアは『金の弓番える予言者』の効果により、その規模までもが増大していく。

直径百mを超え、一㎞を超え、十㎞を超え百㎞を超え、本物の太陽には遥か及ばないものの圧倒的な熱量と重力を持つ小型惑星規模の疑似恒星へと変貌を遂げた。

行く先にある数々の衛星、彗星、惑星を滅却し、押し潰し、そしてやがて太陽系を抜けた遥か先にて大爆発を起こした。

いかにアルゴナウタイといえどこれを受けて生きてはいられまい。

ソーラーフレアだけでも既に殆どが蒸発していたというのに、更に宇宙の遥か遠方へ運ばれた挙句に小型太陽の爆発にまで巻き込まれたのだ。

HPにして99999を上回る猛者は何人かいた。ドラゴン達はその九割が十万超えだ。

だがそれでも尚だ。

それでも尚、彼等は一撃で消え去った。

「さて、もういいだろう女神よ。いくら数を揃えようと余を倒す事は出来んぞ」

「そのようですね。全く、呆れた化物ぶりですよ。

ダメージ上限すら無視するとは、どういう理屈ですか」

女神のその言葉こそが、今行われた理不尽に対する解答であった。

そう、『アルカイド』を発動したルファスはダメージの上限を無視している。

彼女の目には今、英霊達に与えられた数十万という馬鹿げたダメージ数値がしっかりと見えていたのだ。

だがそれでも余裕は崩れない。崩れない理由がある。

「しかしお忘れではないでしょうね? その貴女すらも打ち倒した英雄がかつて存在していた事を」

ポルクスが微笑み、再び召喚を行う。

だが次に召喚するのは先程までのような雑兵ではない。

それはルファスにも匹敵する輝きを放つ四つの星。

あの吸血姫とも並び称され、二百年前に覇王の野望を阻止した歴史上でも最強の英雄達。

まず現れたのは鎧を着込んだ無双の戦士。

あらゆる剣技を極め、剣の腕ならばルファスすらも上回ると称された 剣の王(アリオト) 。

次に舞い降りたのは白い体毛に包まれた巨大な 熊の獣人(ドゥーベ) 。

三番目は全身を甲冑で包んだミズガルズ 最高の錬金術師(ミザール)

最後に姿を現したのは、小柄な体躯に似合わぬ戦闘力を秘めた 冒険王(フェクダ) 。

かつて七英雄と呼ばれた勇者達。

彼等が再び現世へと戻り、その剣先をルファスへと向けた。