軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

81:まるで冒険者時代に、戻ったみたいだよなって話

リザードマンの戦士たちが向かった洞窟はダンジョン化していた。

中に入ってみると、途中、罠など発見したので彼らの安否を心配していたが、最悪の事態と言うべきか、やっぱりと言うべきか、リザードマンたちは魔物の大軍に囲まれていた。

そこはこの手のダンジョンでたまにある、魔物が大量に発生している、罠に近い部屋だった。

広さはカイルの屋敷か、教会の敷地くらい広い。

自然洞窟タイプのダンジョンなので、扉を抜けたらだだっ広い部屋には驚くだろう。

恐らく、リザードマンたちが部屋に入ったときは、数匹の魔物がいるだけだったと思われる。それらを深追いして、部屋の中心近くまで踏み込むと、四方八方の隠し通路から魔物が湧き出すという寸法だ。

部屋の隅に追いやられ、辛うじて身を守っていたリザードマンたち。

レイドックは即座に叫んだ。

「キャスパー姉妹はすぐに彼らを援護! 残りは敵の殲滅!」

「「「了解!!!」」」

するとエヴァが半歩踏み出した。

「道を開きます! 〝白色熱線〟!!」

彼女が放ったのは、光と炎の混合魔法で、白く輝く光線を撃ち出す魔法だ。

直進性が強く、まわりに被害を出しにくい魔法だが、魔力消費が大きい。

広い部屋を数百の魔物が埋め尽くしていたため、白色熱線はまるで絨毯を切り裂くように、リザードマンの正面まで敵が焼けて蒸発した。

「エヴァ! 魔力回復薬の残りを考えろ!」

「大丈夫! 今からは控えます!」

「よし! エヴァが切り拓いた道を辿ってリザードマンたちの前に出るぞ!」

魔力回復薬の材料が尽きたので、錬金することが出来なかった。手持ちの分しかないが、先のカエル戦でほとんどを使ってしまったので、魔力の消費はよく考えないとまずい。

俺たちは白色熱線によって出来た、焼けた道の上を疾走し、リザードマンが追い込まれていた部屋の隅まで一気に移動する。

「シュルル! 彼らに状況説明を任せた!」

「うん!」

俺の横で槍をふるっていたシュルルが、リザードマンたちへと駆け寄る。

彼らのほとんどは傷ついており、もう少し到着が遅かったら死者が出ていたところだろう。

「シュルル! 人間と一緒とはどういう事だ!?」

「細かい説明はあと! このことは村長も承知してるから!」

「なんだって!?」

「彼らは強いから、みんなは身を守る事だけに専念して! 怪我が酷い人はヒールポーションを! 軽い人はマリリン……あのおっぱい聖女の治癒魔法を受けて!」

「おっぱ……本当に村長の許可があるんだな?」

「約束する」

「わかった! みんなシュルルの言うとおりに!」

文句を言いたそうな戦士もいたようだが、シュルルの話し掛けたリーダー格が指示することですぐに動き出す。

よかった。ここで後ろから味方に攻撃されたら洒落にならなかったからな。

それにしてもおっぱい聖女て……。

まぁ間違ってはないな。うん。

「よし! モーダは姉妹のフォロー! リーファンは中衛を守れ! ソラルとジタローは撃ちまくれ!!」

「あいさ!」

「ジタロー! レイドックに当てないでよ!?」

「任せてくだせぃ! どりゃああ!」

二人の弓矢が包囲する魔物に穴をあけていく。

すると治療を受けていたリザードマンがぼそりと呟いた。

「凄い……たった二人で魔物をすり減らしていく!」

そこに蒼い閃光が閃いた。

「さて、俺も全力を出させてもらうか」

もちろん、レイドックである。

奴の剣が閃く度に、何体もの魔物が細切れになっていく。

まあ、魔物っても、オークやジャイアントスパイダーとかだからな。数がいくら揃っていても俺たちの敵じゃない。

俺も魔力に負担をかけない程度にレイドックをフォローする。

「背中がお留守だぜレイドック! 〝風刃千刻〟!!」

レイドックの裏を突こうとしていた魔物の集団を、風の刃で一掃。

すると奴はニヤリと笑った。

「はん! お前が大人しくしてるタマかよ! 背中は任せた! ただ魔力には注意しろよ!」

「言われるまでもない!」

俺はポーション瓶を差し込んでいるベルトを撫でる。

そうだ、カエル戦では出番のなかった錬金兵器を使ってみるか。これなら魔力消費がほとんどない。

俺のポーション瓶はリーファンに頼んで作ってもらった特製だ。

特徴としてはガラスより硬く、試験管型で、魔力量で好きなタイミングで割ることができ、かつ割れたガラスは安全に消滅する。

かなりクセのある作りだが、冒険者時代に投擲技術を磨いた俺にはとても使い勝手がいいのだ。

「レイドックどけ!」

「おう!」

レイドックはどうしてと言い返すこともなく、さっと横に移動してくれる。いつの間にかツーカーの仲になっていて、少し笑みがこぼれそうになる。

「喰らえ!」

俺はナイフを投擲する要領で、ポーション瓶を投げる。

魔力で調整され、ちょうど魔物にぶつかると同時に瓶が弾け、中身が飛び出した。

そして空気に触れた瞬間、何十倍もの体積となって、魔物を包み込んだ。

「なんだこりゃ!?」

「触るなよレイドック! そりゃトリモチだ!」

「なんとまぁ……おお! 勢い余ってぶつかった奴まで巻き込まれてるぞ! ははは! こりゃ楽だ!」

「あんまり沢山使うと、味方も巻き込むのが玉にきずか」

「よしクラフト! 俺の横に投げられると迷惑だ! 奥の奴らに投げてやれ!」

「了解!」

こっそり作って置いた、錬金トリモチは成功のようだ。

もちろん、同時に溶かし薬も作ってあるので、敵の一時捕縛にも使えるだろう。

顔にぶつかってしまうと窒息してしまうので、人間相手に使うのは少し迷うところだ。

だが、魔物相手なら、遠慮する事はないな!

「クラフト! もう少し広い範囲で使えないか?」

バーダックが背後にやってきて、敵の固まっているあたりを指す。

魔術師の紋章を持たない魔法使いであるバーダックは、魔法を無駄撃ちしないよう努めている。その彼がこう聞くのだ、意味があるのだろう。

「できるが、それだと粘着力が弱くなって、すぐ逃げられるぞ」

「一瞬で構わん」

「ちょっとまってくれ」

俺は錬金トリモチのポーション瓶を手のひらに置き、錬金魔法を追加する。

「〝錬金術:効能希釈容量増大〟」

使ったのは錬金薬を薄めてかさ増しする錬金術だ。

錬金釜を使えば大量にできるが、今は魔法のみで錬金しているので、ポーション瓶一つずつやるくらいしかできない。

戦闘中だしな。

素材がなく、紋章の囁きが少なかった初めの頃は、こんな感じで錬金してたなぁ。

本来、薬の量が増えるのだが、少しアレンジして空気に触れた後の体積が増えるようにした。

先ほどより、広く大量にトリモチがまき散らされるかわりに、効果は弱くなっているだろう。

「よし! いくぞバーダック!」

「頼む!」

俺はレイドックたちが数を減らしている前線の背後に、錬金トリモチ改を投げた。さきほどと違い、魔物の頭上あたりで破裂させると、十匹近くの魔物を覆うようにトリモチが広がった。

「投網みたいだな」

「よくやったクラフト! くらえ! 〝業炎弾〟!!」

おそらくバーダックが使える最上位になるだろう、爆炎魔法がトリモチで動けなくなっている魔物たちの中心で爆発した。

「おおそうか! トリモチで逃げられなくなった奴らが一網打尽か! 頭良いなバーダック!」

「ふっ。クラフトの作ったものがよかっただけだ。もう一発いくぞ!」

「おう!」

新たに敵集団を殲滅すると、余裕ができたのか、リーファンが少し力を抜いて横に立つ。

「クラフト君、気付いてないかもしれないけど、これ結構凄い発明だよ」

「そうか?」

味方も巻き込むような兵器は使い所が難しいだろ。

「それ、逆にいうと、今みたいに使い所を考えたら凄く使えるて事だからね?」

なるほど。一理ある。

そんな感じで、この手のダンジョンでたまに見つける、大量の魔物が控えている部屋だったが、俺たちはたいした時間もかけずに攻略を完了した。

「すげぇ……なんなんだこの人間たちは」

「一〇〇を大幅に超える数だったんだぞ? 信じられん」

「三〇〇はいたんじゃないか?」

「さすがにそこまではいなかっただろ」

「どちらにしてもこの数の魔物を短時間で傷一つなく倒すとは、人間は恐ろしいな」

いやいや、流石に王国にいる平均的な冒険者と一緒くたにされても困るぞ?

ああ、そもそも平均がわかってないのか。

「あー、皆さん、自画自賛じゃないけど、あの青髪の剣士を中心にした俺たちは、王国……人間の中でもかなり出来る方だからな」

「そう、なのか?」

「ああ。でもなければ、人間の生存圏から遠く離れた森に入ってくるのは難しいだろ?」

「たしかにそうだな」

「人間、礼を言うよ」

「ああ。こちらも村では世話になったからな。そうだ、沼で起きたことは聞いたのか?」

「シュルルから聞いた。パラライズバロンフロッグの大軍と、タイタンデュークフロッグが出たらしいな」

「ああ。みんなで力を合わせて撃退したんだ」

「そうか……俺たちがいない村を守ってくれたんだな。改めて礼を言う」

リーダーだろうリザードマンと固く握手を交わす。

「素敵だったよ! クラフト様!」

ズドーンとシュルルが飛びついてきた。

胸から。

「ちょ!? シュルル!?」

「やっぱりクラフト様は最高! 戦士の中の戦士だね!」

「魔術系でも、戦士って言うのか?」

「勇気あるものの事を戦士という。クラフト、君は間違いなくそうだろう」

「あ、ありがとう」

戦士のリーダーに褒められてくすぐったく思うが、柔らかい感触のせいで、噛みしめられないよ!