軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

41:子供達が成長するのは、あっと言う間だよなって話

ある日の事、ジタローが家を尋ねてきた。

「クラフトさん、一緒に狩りにいきやせんかい?」

「狩り?」

錬金硬化岩を扱える後進が育ち、比較的時間に余裕が出来た頃の話だった。

なんで狩り?

「実は、森の奥に、大型のイノシシが群れを作ってるって話を聞きやしてね。見つけた狩人仲間は別の用があるとかで、譲ってくれたんでさあ」

「へぇ。イノシシね。しかしなんで俺なんだ?」

儲けが減るだろうに。

「いえ、結構な数がいるらしく、運んでもらえないかと思いやして。ああ! もちろん儲けは折半で良いですぜ!」

「そういうことか。ま、たまには身体を動かしたいから良いぞ」

「やったぜ! ありがとうございやす!」

今、この街では食料品の値段が跳ね上がっている。特に肉類は需要に供給が追いつかず、かなり高価になっている。狩人の(忘れていたが)ジタローが狙うのは当然の流れだろう。

ちなみに、物価は他の街より高いが、所得はそれ以上に増えているので、基本的には問題無い。

ゴールデンドーン町は超超超が付くほど、好景気なのだ。

なお、ゴールデンドーン開拓地は、さすがに村の規模を遙かに超えているので、町と呼ばれることが多くなっていた。

「ところで、イノシシって群れを作るものなのか?」

「あいつら一夫多妻なんで、稀に凄い数のメスを引き連れた群れが出来る事があるんでさ。そんだけオスが強いんでしょう」

「なるほどな。……そうだ、孤児達を一緒に連れて行こう」

「子供達をですかい?」

「ああ、エドは剣技を、サイカは弓。カイがとワミカが魔法を使えるようになったからな。一度実戦させても良いだろう」

「そりゃいいですね。俺とクラフトさんがいりゃあ、安全ですし」

「だろ? よし、アズールに事情を話してくる……いや、ジタローが伝えてきてくれ」

「了解でさぁ!!」

元気よく飛び出すジタロー。

アズールは本気でレイドックに気があったわけでは無いし、そもそもレイドックにはソラルという恋人がいる。一度落ち込んだジタローだったが、今では元気にアズールに貢いでいる。

もっともアズールは、熱心な教徒だと思っているようではあるが……。

そりゃ教会への寄進と言って渡せばそう取られるだろうよジタロー。

どうでもいい話だが、ジタローとリーファン。それにアズールと子供達はスタミナポーションを減量していない。ジタローには言っていないが、毎日上手いこと、飯に混ぜるように手続きしてある。

なので、村人の中でも飛び抜けて成長しているが、本人に自覚はあまりない。

こちらも準備を終わらせて待っていると、ジタローが子供達四人だけでなく、見知らぬ大人を数人引き連れてきた。

「お待たせしやした」

「そちらの方は?」

「実は、途中で狩猟ギルドから頼まれた、新しい移住者の狩人なんでさぁ。ちょっとこの辺の森を見せてやってくれと」

「なるほど。俺は構わないぞ。別に素人って訳じゃないんだろ?」

彼らの服装と装備は、一般的な狩人の格好で、どれも使い込まれている事が窺えた。

「へい。それは大丈夫でさぁ」

「俺はクラフト、よろしく」

「あなたがクラフトさんですか、よろしくお願いします」

「そうだ、これどうぞ」

俺は薄めていない伝説スタミナポーションを全員に配る。

「もしかして、これはもう手に入らないと噂の、究極スタミナポーションですか?」

「究極かどうかは知らんが、今商店で購入出来る物より、効果が高いのは確かだな」

現在、村人に安価で販売しているスタミナポーションは、特製の薄め液で効果を弱めた物だ。弱めたと言っても、王国で流通しているスタミナポーションよりは効果が高い上に、持続時間が丸一日になるよう調節した物だが。

元の薬草量を考えると、どうしてこんなに効能があるのか、既にミステリーの域だが、きっと錬金釜や紋章のおかげだろう。深くは考えない。

なお、ヒールポーションとキュアポーションに関しては効果を薄めていない。その代わり、販売額はかなり高額にしてある。住民登録済みの人間が怪我をした場合、教会に行くと無料で処方してもらえるような仕組みにしてある。(実際にはお布施があるが、そこは気持ちなので)

マナポーションは、ある程度効果を薄めた物を、冒険者ギルドにのみ販売している。残念ながら、元開拓村で頑張ってくれていたギルド支部長は移動する事が出来ず、現在は別のギルド長が派遣されていた。

「こんな貴重な物をいただいても良いんですか?」

「俺とジタローだけで大丈夫だとは思うんだが、いざという時は子供達を守ってやってくれ」

「わかりました。それではありがたくいただきます」

念のための保険だ。

全員が服用したのを確認したあと、俺達は森の奥へと踏み入った。

「やはり、辺境の森は深いですね」

「そうだな。ジタロー、もう少し歩きやすいように頼む」

「わかりやした」

先頭を歩いていたジタローは硬ミスリルのマチェットで、下生えを払っていたのだが、途中から邪魔な枝も落としてもらうように頼む。

「お、おい見ろよ、あんな太い枝を簡単に」

「ああ、剣も凄いが、力もとんでもないぞ」

猟師達が小声で話していた。

ジタローほどでは無いが、あの街に住むのであれば、近いうちに似たようなことが出来るようになる。

「……ん? こいつぁ……」

「どうしたジタロー?」

「恐らくオークの集落がこの先にありやすねぇ」

「またかよ。減らしても減らしても沸いてくるなあいつら」

「え? それはまずいですね、一旦戻り——」

猟師達が何かを言いかけていたが、俺は妙案を思いついたので子供達に話を振ってしまい、猟師の話は聞いていなかった。

「ちょうどいい、お前達ちょっと倒してみるか?」

「え!? いいのか兄ちゃん!?」

「ちょっと! イノシシ狩りって話じゃ無かったの!?」

「魔物怖い……」

「んー、楽しそー」

エド、サイカ、カイ、ワミカがバラバラの返答を寄越す。

「今のお前達なら大丈夫だ。エド、お前がきっちり前衛をこなせるならだがな?」

「大丈夫! やれるさ!」

「よし、決まりだ」

「え!? あの!? 子供達に相手をさせるんですか!?」

「なに。やばかったら手伝うさ」

俺は空間収納していた子供達の装備を取り出して全員に配った。

エドは剣と盾を構え、サイカが弓をつがえる。

カイとワミカがそれぞれに杖を握りしめた。

「……なんか妙に装備が良いような?」

「そりゃ、全部硬ミスリル製だからな。服も錬金強化した糸で編んだもんだから、並みの鎧より強いぞ」

絶句している狩人達。

確かに子供には贅沢な装備ではあるが、怪我をさせたくないからプレゼントしておいたのだ。冒険者を目指すのであれば、使える装備だろう。

「じゃあ、強化いくよー」

ほわほわとした口調で強化魔法をカイとサイカに掛けるワミカ。恐らくだが、神官か付与魔術師の素質がありそうだ。

「よし、カイが先制で魔法を放ってくれ」

「え、僕が?」

「他にいないだろ?」

「そ、そうだね」

ジタローに案内され、オークの群れが見渡せる位置へと移動。六匹ほどの小さな集落だった。

「なんだ、少ないな」

「え!? いやいやクラフトさん! 相手はオークですよ!? ゴブリンだって子供には荷が重い!」

「大丈夫だって。ほらカイ。やってみろ」

「ううう……頑張ります」

俺の贈った、リーファン特製の、魔石を贅沢に使用した杖を掲げて、カイが唱えた。

「氷柱!」

うんうん。森の中では良いチョイスだぞカイ。

油断していたオークの一匹に、大人の腕ほどのツララが突き刺さる。充分致命傷だ。

魔術師系の紋章が持てると良いな、カイ。

「はあ!? あんな子供が攻撃魔法!?」

「しかもかなりの威力だぞ!」

そりゃ、毎日マナポーションがぶ飲みして、人の何百倍も練習してるからな。このくらい出来ないと困る。

ちなみに教えているのは週一で、他の日は宿題だ。

「疾風点破!!」

次に弓技を放ったのはサイカ。魔法の才能はあまりなかったので、今はソラルに家庭教師をしてもらっている。こちらも伝説スタミナポーションのおかげで、人の数百倍練習しているだけあって、子供ながらに強力な技を放てるようになっていた。

さらにオークの一体が倒れる。

「よーし! あとは任せろ!」

飛び出したのはもちろんエドだ。

「豪腕豪打! 落葉流閃!」

エドもあまり魔法が得意で無かったが、代わりに剣技が得意だったので、レイドックに家庭教師を頼んでいた。実際にはレイドック達だけでは無く、冒険者達が面白がって仕込んでいるので、冒険者ギルド全員で孤児達を育てているようなものだ。

当然放つのは、初級冒険者がようやく覚えるような剣技だった。

獣人特有のしなやかさで、軽やかに放つ技は、並みの冒険者を凌駕している。

「はぁ!? 嘘だろおい!」

「紋章も無いのに剣技だってぇええええ!?」

「うげえええええ!?」

まぁ、驚くよな。

孤児院で動物の解体を手伝っていたりしたからだろう、特に精神的問題も無く、オークを片付けていく子供達。

「うーん。状況判断がちと甘いな」

「そうっすねぇ」

俺の呟きにジタローが頷く。

応えながらジタローが弓を放つと、子供達を狙って隠れていたオークがドサリと倒れた。なお、オークの頭は弓の威力に吹き飛んでいる。

「あっ!?」

「ゴメン、エド! 私の警戒が甘かった!」

「くそっ! 俺も戦闘に集中しすぎてた。悪い」

「それがわかってれば十分だ。次から注意しろよ」

「おう。気をつけるよ」

「はい、クラフトさん」

「よしよし。じゃあ、魔石だけ取っておけ。お前達の小遣いにしていいぞ」

町に帰ったら、ジタローに頼んで狩猟ギルド経由で買い取ってもらえばいい。

「え? ほんと!?」

「ああ」

「やった!」

子供達が笑顔でオークの胸ぐらにナイフを突き立てていく。

微笑ましい光景だな。

「お……恐ろしい……ゴールデンドーン恐ろしい……」

そこはせめて、頼もしいと言ってくれ。