軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35:幼馴染みに偶然再会って、何かのフラグかって話

「俺の契約が開拓村に住み込むという条件なのは承知してる! だが! 頼むからカイルに……カイルと一緒に行かせてくれ!」

「いいぞ?」

……。

「え?」

「いや、むしろなんでお前だけ残るなんて発想が出てきたんだ?」

なぜか、妙に不思議そうにこちらを覗き込んでくるギルド本部長。

え、あれ?

「いや、だって俺の契約って、一部特定地区に住み込むって話だろ?」

「ああ……そういう事か。リーファン説明してやれ」

「あ、うん。えっとね。確かに契約上は開拓村に長期滞在なんだけど、それって、村の名前と紐付けられてるんだよ」

「え? っつーことは……」

「うん。村の名前は仮名のままだったけど、途中からゴールデンドーンってしっかりと変更されてるから、むしろイヤでも付いていかなきゃ行けないんだよ」

「マジか……」

俺は一体、何を心配していたのやら。

「がはははははははは! 若いなクラフト!」

「うっせー」

俺はちょっと口を尖らせてそっぽを向いた。ちょっとマイナっぽかったかな。

「しかし、本当にクラフト君はカイル様が好きねぇ」

「好きというか、ほっとけないだろ、あいつ」

「まぁね。でもご病気が完治されてからは、急に元気になったよね?」

「それだけ、カイル様の病が重かったと言うことだ」

ペルシアが痛々しげに答える。

「あいつは元々、ああいう溌剌とした性格だったんだろ。だったら余計見守ってやらんとな」

「うん! そうだね!」

「もちろんだ!」

「よくわからんが、その調子で頼むぞ! がはははははは!」

俺の無駄な心配も解消され、俺達は生産ギルドを後にした。

「そう言えば、クラフト君は用事があったんだっけ?」

「ちょっと行きたいところがあるだけだ。二人は帰って良いぞ」

リーファンとペルシアが顔を見合わせ、深いため息を吐いた。

「あのね、クラフト君。ペルシアさんがわざわざ来てくれてる意味、わかる?」

「え? 護衛だろ? だからリーファンと一緒に帰ってくれていいぞ」

「はぁ……クラフト。本当に貴様は自覚が足りんな」

「え?」

「クラフト君……君はもう辺境伯閣下にとっても、カイル様にとっても、生産ギルドにとっても、重要人物なんだよ」

「あー、まぁなんとなくはわかるよ」

「わかってないと思うなー」

「いやいや! 街の外ならともかく、俺は元冒険者だぞ!? しかも今の俺はそうそう一般人にやられないって!」

「そういう問題じゃ無いんだ、クラフト」

「えー?」

どうやら、俺の認識は二人の認識と大きくずれがあるらしい。

いやいや、街中で危機に陥るほど、俺は甘ちゃんじゃないぞ?

「これでも常に命のやり取りをしてきた冒険者を四年もやってきたんだがなぁ」

「わかったわかった。それはそれとして付いてってやるからどこに……あ」

ん?

「まさかとは思うが、なんぞいかがわしい店にでも行くつもりだったか?」

「え!? クラフト君!?」

「いやいや! 違うから! 孤児院に行くだけだっつーの!」

「孤児院?」

「そうだよ!」

「なんで?」

「言っただろ? 俺は孤児院育ちなんだよ! ここじゃないけど、経営は同じ教会だろ? 少し寄進しにいくだけだ!」

「ああ、そういう」

「なーんだ。隠れて良いことしたい年頃だもんねー」

「よくわからんがその言い方はやめろ! 急に恥ずかしくなってきたわ!」

「あはは! 冗談冗談! さ、行こうか!」

先に歩き出すリーファンとペルシア。

なんで主導権握られてんの!?

解せぬ!

俺は頭を捻りながら、二人の後を追うのであった。

「亞人がいるぞー!」

「うわー! 汚い亞人だー!」

「それ石を投げろ−!」

教会から少し離れた墓地脇にある、孤児院に近づいたときだ、騒がしい子供の声が聞こえてきた。

低い塀の敷地で何かの作業に追われている孤児に向かって、裕福そうな子供たちが、敷地外から石を投げ込んでいたのだ。

懐かしい光景ではあるが、面白い風景では無い。

「虹光障壁」

俺は孤児院の塀の上に沿って、淡く虹色に輝く魔力の障壁を展開した。

発動が早く、ほぼ全ての属性攻撃を防ぐ便利魔法だが、魔力消費が大きいという欠点がある。

ドラゴンのブレスを防いだ”万里土城壁”や”土隆盾”とは全く性質の異なる防御魔法だ。

魔法は適材適所が重要なのだ。

「なんだこれ!?」

「これ魔法だ!」

「誰だよ! しらけるなぁ!」

「あ……あそこ」

「え?」

俺は手を腰にあて、わざとらしくやれやれという態度を見せつけると、裕福そうな子供たちは「わー!」と逃げ出していった。

敷地内の孤児は大丈夫かと顔を向ければ、目をキラキラと輝かせた子供達が、わらわらとこっちに寄ってくる。

「すげー! なんだこれ!」

「光る壁?」

「かっこいい!」

「あそこのローブの魔術師さんが発動したみたいだよ。凄いね!」

「そこのおっさんが出したのか!?」

「おっさん呼ぶな! まだ二十歳だよ!」

凹んでいるかと思ったが、割と逞しい孤児達だな。

それにしても少ないな?

四人で、全員獣人か。

どうやらブドウを潰して液体を樽詰めしているようだった。

孤児にとって、教会から与えられた仕事をこなすのは日常だ。

「……もしかしてクラフト君?」

「ん?」

騒ぎを聞きつけたのか、ぼろぼろの建物から飛び出してきたのは、教会の服装を身に纏った、キツネの耳と尻尾を持つ獣人だった。

ん?

なんかあの耳のワンポイントに見覚えが……。

あ!

「アズール!? お前アズールか!?」

「やっぱり! クラフト君! 随分と目つきが悪くなりましたねぇ」

「ほっとけ。お前はあんまり成長してないな」

「どういう意味ですか!」

「い、いや、悪い。それよりその服装は?」

「私、あれから神官見習いになったんですよ」

「マジか!? 凄いじゃないか!」

獣人が神官見習い?

教会は亞人差別撤廃を昔から訴えていたが、それにしても革命的に凄いことだぞ!

「知り合い?」

「ああ、孤児院にいたとき一緒に暮らしてたアズールだ」

「こんにちは。そちらは騎士様?」

「いや、人付き護衛だ。かしこまる必要は無い。私はペルシアだ」

「あ、私はリーファンだよ」

「失礼しました。挨拶が遅れました。この孤児院を任されているアズール・イグレシアです。よろしくお願いします」

「はー。しかしまさかアズールがガンダールにいるとはなぁ。しかも神官見習いとは、世の中わからん」

「それよりも、クラフト君はどうしてここに?」

「ああ、ちょっとあぶく銭が手に入ったからな。寄進に来たんだが……」

俺は孤児院を見回す。

墓地横という立地。ぼろぼろの建物。孤児達の服装もつぎはぎだらけだった。

「こりゃ、ちょっとやそっとでどうにかなるレベルじゃねぇなぁ」

「お恥ずかしいです……あ。それよりも、中にお入りください! お茶をお出ししますね!」

「兄ちゃん! さっきの魔法もっかい! もっかい見せてよ!」

魔法で興奮してしまった男の子が、俺にまとわりついてくる。

なんかこういう感じは懐かしいなぁ。

適当に頭を撫でて相手をしていると、他の子供達が連れ二人に興味を持ったようだった。

「……同い年?」

うん、そう見えるよね、お嬢ちゃん。

「これでもお姉ちゃん、君たちよりも年上だからね!?」

別の男の子がペルシアの持つ二本の剣に気付いたようだ。

一本はペルシアが元々持っていた良質の剣であり、もう一本は硬ミスリル製の業物だ。

なかなか見る目があるじゃないか、小僧。

「すっげぇ剣だ! それに美人!」

「そっ!? そうか!?」

リーファンとペルシアに対する子供達の態度の差よ。

俺は風魔法で、子供達をくるくると回転させて、目を回している間に、アズールに案内を頼んだ。

「みんなもひと休憩しましょうか」

「ふあーい……」

「目が……でも楽しい……」

「世界が回るー」

うん。元気でよろしい。

アズールの用意したおやつに、子供達が気を取られている間に、俺達はアズールと会話を進める。

とても簡単に神官見習いになった経緯を教えてもらった。

「なるほど、それは頑張ったな」

「そんな事無いですよ。教区長様が尽力してくれたからですよ」

「昔はお転婆だったのにな」

「そ、それは言わないでください……」

「しかし、最初は寄進してすぐ帰ろうと思ってたのだが……」

建物の中も、まるで修復が追いついていないようで、かなりみすぼらしかった。

おそらく慣れない大工仕事で誤魔化しているのだろう。

「私がさっと応急処置しちゃおうか?」

「リーファン様。お気持ちありがとうございます。ですが、それは不要なのです……」

「何か理由があるのか?」

「はい。実はここはもうすぐ閉鎖される予定なのです……」

「そうなのか」

これも良くある話だった。

教会は慈悲深い組織ではあるが、孤児院は金食い虫だ。どうしてもそういう話は出てくる。

恐らく墓地の拡張でもするのだろう。

孤児が四人しかいなかったのも、その辺が絡んでいるのだろう。

「それで、今後の予定は決まっているのか?」

「子供達は。ですが、全員バラバラの孤児院に送られる予定で……」

それまでおやつに夢中だった子供達が急に顔を上げた。

「俺やだよ! ずっとアズ姉ぇと一緒にいる!」

「私もみんなと離れたくない!」

「僕もだよ!」

ひしと抱き合う五人。

教会は獣人などを含めた亞人を差別しないが、世間は別だ。

「……なあリーファン。新しい村に教会と孤児院の誘致って出来るか?」

「カイル様がクラフト君の提案を受けないわけないからね」

「ふむ……なぁアズール。もし、お前達を開拓村にまとめて連れて行きたいって言ったらどうする?」

「え? それは皆全員という意味ですか?」

「ああ」

「え!? みんなと一緒にいられるなら、どこでも行くよ!」

「私も!」

「みんな……でもね、開拓地っていうのはですね……」

アズールは開拓地の厳しさを知っているのだろう。

子供達に諭すように語り出す。

「まぁ待て。開拓村と言っても、カイル……様直下の新しい村だ。ドラゴン騒動は知ってるか?」

「はい。もちろんです。ワインの仕込みが忙しいのに、昨日子供達にせがまれて見学に行きました……え? 開拓村って……」

「そうだ。カイルの直轄開拓地だ。もちろん俺もいる」

「あんな恐ろしい魔物がいる地域に!?」

「とっくに退治したっつーの。首を見ただろうに。それに優秀な冒険者が山盛り滞在してるから、下手したらこのガンダール並みに安全だぞ? それに俺が守ってやる」

「え?」

俺は今までの経緯を、アズールと子供達に説明してやった。