軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

257:希望は、自分で掴み取るもんだよなって話

突撃メンバーである俺、ペルシア、リーファン、ジタロー、エヴァ、カミーユ、マリリン、ノブナ、チヨメの九人が先頭に転移門をくぐって、錬金術師の里側へと移動する。

最初は王国から強いメンバーを加えると言った案も出たのだが、今の俺達についていける人物となると、国の重要人物となるので人選が難しく、さらに連携がどれだけとれるかも不安だったので、結局その案はなくなった。

そのかわり、転移門を守る意味でもこの周辺に騎士たちが待機してくれている。

追加の突撃要員ではなく、逃げる場合のフォロー要員だ。

さらに、いざというときにはレイドックたちが転移門を使い捨ててやってきてくれることになっている。

貴重な転移門が犠牲になるので、国王陛下であるヴァンが使用を渋ったのだ。

その気持はわかる。オリハルコンはそう簡単に手に入らない。ミスリル鉱山はあるが、アダマンタイトがなぁ……。

レイドックたちはまだ帝国に到着もしていないので、現在は隠れた場所でいつでも転移門を設置できるように待機してくれている。

その話を聞いたときのノブナだ。

「あたしたちだけで誉れを独占するのよ!」

さすがミズホ武士。名誉に貪欲である。

俺が冒険者だったら、同じことを思っただろうが、今の立場は錬金術師で生産ギルドの一員だ。使えるものはなんでも使う所存である。

錬金術師の里に設置した転移門周辺に待機する騎士たちの他に、ジャビール先生とリュウコが控える。

先生の通信の魔道具は俺と同じで、受信だけでなく発信もできるから連絡要員だ。この魔道具、通信相手との距離でも魔力の消費量が変わるので、俺だけでなくレイドックたちとも距離が近いこの場所に来てくれたのだ。

王国の騎士たちよ、しっかり先生を守れよ!

リュウコは俺の使い魔でもあるので、魔道具を通すと双方向の通信が可能だ。ただし先生と違って発信は俺にのみとなる。彼女も先生と同じく連絡要員兼、先生の護衛となる。

基本的に、ゴールデンドーン……エリクシル領のことはそこの住民でかたをつける。王国の支援があるほうが特別なのだ。俺達の手でカイルを取り戻す!

決意を胸に錬金術師の里の跡地から、最後の絶壁を登っていく。

準備期間の間に、長いはしごを打ち付けてくれているので、遠回りする必要はない。ペルシアだけ、二足鳥の手羽先で器用に登っていったのは凄かった。 獣騎兵(ビーストライダー) の紋章は伊達じゃないな。

なんとか崖を登り切ると、少しだが植生が見受けられる。

奥の方には低木なども見受けられるほどだ。

狭い台地といっても、それは大陸規模で見た場合で、俺たち人間の感覚ではかなり広い台地のようだ。

そして、台地の上に俺たちが集まると、奥から魔物の叫びが響いてくる。おそらくニーズヘッグの 縄張り(テリトリー) に入ったことで、警告されているのだろう。

お前たち、ここで引き返せ……と。

本当ならニーズヘッグのことはそっとしておいてやりたいが、俺たちにはやらなければならないことがある。

「行くぞ!」

「「「おう!!!」」」

俺たちはフォーメーションを組んで、走り出した。

しばらく走ると、正面に黒い物体が見え始める。

「あれがニーズヘッグか!?」

俺は”遠見”の魔法を使って、それを確認するが……。

「巨木……真っ黒な巨木だ」

俺たちが求めていた、青々と茂る世界樹ではなく、黒く呪われた巨木。呪われた世界樹であった。

俺が絶望に膝をつきそうになると、ノブナが力強く支えてくれる。

「まだなにもわかってないのよ! 決めつける前に行動するのよ!」

折れかかった心が、その言葉で奮い立つ。

「そうだな。呪われてるかなんてまだわからない。しっかり調べてやらないとな」

「そのとおりなのよ。そのためには――」

ノブナが世界樹を指差す。

黒い葉が茂っているだけと思っていたが、よく見ればなにか巨大な生物がいる!

「まずあれを倒すのが先なのよ! 我は願い奉る。冥府よりおいでませ! 火車童子!」

彼女が呪符と取り出すと、どこからか燃える馬車の車輪のようなものか現れ、地面に細い炎の道を刻みながら、世界樹へと転がり走っていく。

そして世界樹から「ずるり」と這い出てきたのは巨大な蛇……いや、竜?

ドラゴンと蛇を足して割ったような姿に、小さな羽が生えている。

まさか飛行するのか!?

おそらくニーズヘッグはドラゴンの一種。それが飛ぶとなったら、とてもじゃないが敵わない。

だが、その心配はなさそうだ。ニーズヘッグは転がってくる火車を身を捻って避けたからだ。しかし、その動きは俊敏。どうやらあの羽根は自重を軽くする役目らしい。

十分やっかいだな!

地上スレスレを滑るように滑空する、竜頭の大蛇。それがニーズヘッグであった。

突っ込んでくるニーズヘッグを俺たちはギリギリで避ける。眼の前に壁のような体が猛スピードで横滑りしていくさまは生きた心地がしねぇ!

そんな中、ジタローが転がりながら半身を起こした。

「尻尾はうなぎみたいっすね! ”雪中兎見(せっちゅうとけん) ”」

放たれた矢が、うねるニーズヘッグの尻尾にカーブして命中。見たことのない技だが、命中特化の技と見た。

マタギの紋章を手に入れたジタローはマジでつええぜ!

だが、あの巨体には威力不足なのか、動きはほとんど鈍らない。

「やっぱ固いっすね!」

「無理はするなよ! お前は牽制してくれるのが一番助かる!」

「ういっす!」

Uターンしてくるニーズヘッグの顔に矢を連射して、攻撃を嫌がらせに切り替えるあったり、さすがの狩人である。

カミーユが俺を守るように双剣を構えた。

「クラフト、作戦」

「お、おう。今考えてる」

「急いで」

作戦と言われても、こうも障害物のない広い場所だと、動きが早く巨体のニーズヘッグを倒すのは至難の業だぞ!?

敵の機動力を奪うのは……無理だな。あの重量の魔物が滑空するように動いているのだから、止めようがない。

トリモチは大量にあるが、地面から浮いてるから設置して誘い込むこともできない。

遠間からちまちま遠距離攻撃を当てて削るか?

いや、ジタローの矢でもほとんどダメージが通らなかった。威力を重視すればこっちの隙がデカくなって逆にやられる。

大神官(アークビショップ) の紋章持ちであるマリリンの速度増加なんかの支援魔法が何重にも掛かってるから、辛うじて攻撃を避けれているだけなのを忘れてはいけない。

「くそっ! どうやって敵の機動力を削ぐ!?」

思わず悪態をついた俺の横に、手羽先にまたがったペルシアが並んだ。

「それならば、私に任せろ!」

二足鳥で走り出したペルシアが、あっという間にニーズヘッグと並走する。

「おお!」

「喰らえ! ”乾坤突破”! ”騎旋修羅突”!」

いつの間にか構えていた、巨大な 騎乗槍(ランス) を敵の頭に雨あられと突き出すと、ニーズヘッグが回避しようと動きがにぶる。

そういえば、準備期間のあいだにリーファンに武器を作ってもらっていたな。あのランスがそうか。

残念ながらオリハルコン製ではないが、ドラゴン素材を混ぜた硬ミスリル製である。

国王のヴァンに渡したオリハルコンは転移門用に無駄遣いできない上に、俺が錬金したオリハルコンはカイルの所有物なので、使えなかったのだ。

それでもさすがにドラゴン硬ミスリル製である、あのニーズヘッグにもダメージが入っているようだ。

獣騎兵(ビーストライダー) の紋章は伊達じゃないな!

「ふはははははははは! 遅い! 遅いぞ! ニーズヘッグとやら!」

うん。

あれさえなきゃなぁ。