軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

255:仲間の動向は、常に気になるよなって話

俺の名前はレイドックだ。もちろん覚えてるよな?

自称ゴールデンドーン最強のパーティーのリーダーをやっている。

現在は臨時パーティーを組んで、王国のお偉いさんを護衛して帝国に向かっているところだ。

久々にエヴァのいない旅だからか、ソラルの距離が近い。

おっと、俺は節操というものを知っているからな、人前でいちゃつくようなことはしない。まぁ、全員から見えない配置になったとき、少しばっかり距離感が近くなることはあるが、彼女なんだからいいだろ?

なにより俺は周りに配慮するということを知っている。

先行偵察で、みんなから距離が離れたときに、ソラルが俺の腕に絡みついてきた。

「なんとかエヴァとクラフトがくっつかないものかしら?」

ソラルはエヴァがいないときに、必ずこれを言う。俺としても二人はお似合いだとは思う。

(俺の知ってる限りだと、エヴァってかなりクラフトの好みだと思うんだよな)

エヴァが俺に惚れているような言動をしているが、恋愛経験が少ないときに陥る、憧れの一種だろうと、俺は考えている。

そもそも俺にはソラルがいるから、彼女の気持ちには答えられないわけだが。

「まぁ、なるようにしかならんか」

「このままクラフトとパーティーを組んでくれないかしら」

「キャスパー三姉妹が抜けてもいいのか?」

「う……それは……」

俺とソラルは最上位紋章を手に入れた関係で、ガチの連携がとれるのは三姉妹だけだ。今一緒にいる、ベップ、バーダック、モーダの実力を疑うわけではない。むしろこの三人の実力はめきめきと上がって、現在でもゴールデンドーン上位のパーティーだろう。

それでも、俺とソラルと三姉妹の全力にはついてこれない。それだけ上位紋章の能力が飛び抜けているのだ。

「そもそもクラフトは冒険者じゃねーしな」

「時々忘れそうになるわね。それ」

「商業ギルドで叫びながら錬金してるか、大冒険してるか、だいたいどっちかだからな。意味がわからん」

「ね。冒険者って言われてもしょうがないでしょ」

「あいつの話だと、もともと生産ギルドには、常駐の冒険者的な立ち位置で雇用されたみたいなんだよな。むしろ錬金術ができるようになったほうがイレギュラーなんじゃないか?」

「改めて考えると、余計に訳わかんないわね」

あの二人を確実にくっつけようと思ったら、エヴァが生産ギルドに入るとか。だめだ、あれだけの魔術師を冒険者ギルドから抜けさせるとか、上層部が発狂するぜ。

本当はクラフトを俺達のパーティーに入れるのが最高なんだが……。

「クラフトを冒険者ギルドに戻すなんて話が出たら、生産ギルドが総力を上げて邪魔するだろうな」

なにより国のお偉いさんがたが許さんだろう。万が一クラフトが生産ギルドを抜けるなんて話になれば、それこそ王国に存在するありとあらゆる組織が引き抜き合戦を始めるのは目に見えてる。口にするのもはばかられるぜ。

偶然の結果論だが、クラフトが生産ギルドに所属したことは、もっとも穏健でベストな状況だったんだな。

「エヴァはあれだが、リーファンとかはどうなんだろう?」

野次馬的な視点だが、クラフトとリーファンの関係性も少々気になる。エヴァとは別の意味でお似合いだと思うからだ。

俺の呟きにソラルが「うーん」と唸る。

「あの二人もいまいちわからないのよねぇ。意識してるようなしてないような。ただ、端から見ると仲のいい姉弟ってところよねぇ」

「それが一番しっくり来るな」

クラフトに興味があるやつと言うと、他にもいる。

「リザードマンのシュルルはどうなんだろう。少なくともシュルルがクラフトに惚れてるのは間違いないだろ」

「あのね、レイドック。私はクラフトの相手を探したいわけじゃないの。エヴァを誰かとくっつけたいのよ」

「あー、なんかすまん」

色々考えているうちに、本質を見失っていたようだ。クラフトは放っておいてもいい人を見つけるだろうが、エヴァに関してはなにかしら手助けしてやらないと、拗らせてしまう気がするんだよな。

「クラフトの話になっちまうが、あとはマイナ様――」

「ダメよ、レイドック。それ以上考えたら」

「お、おう」

どうやらマイナ様とクラフトの関係を深追いするのはよろしくないらしい。口を出すのも禁止といったところか。こういうのは女性の意見に従うのが一番だろう。

カイル様や国王陛下からしたら、マイナ様とくっついてくれるのが一番と考えていそうだが、もはやクラフトは権力で押さえつけられるようなやつじゃなくなってるからな。

生産ギルドに留まってくれるよう、裏から手を回すくらいしかできなそうだ。

「結局のところ、クラフト次第か。考えても無駄だな」

「私はエヴァの話をしてたんだけどね」

「う、すまん」

へばりついてくるソラルの額に、軽く唇を当てたりして機嫌を取る。

そんなときにクラフトから通信の魔導具で連絡が来た。

定時連絡ではない。なにかあったのだろうか。

『レイドック、今いいか?』

「ああ、かまわない。”精神感応・クラフト”」

魔導具の力で、クラフトの視界が共有される。向こうは俺の視界が映ってることだろう。

『……相変わらず、ソラルと仲が良さそうだな』

「すまんソラル。少し離れてくれ」

クラフトには俺の視界。つまりソラルのドアップ顔が見えたのだろう。少し気恥ずかしくなって、ソラルをそっと押しのける。

「それで、どうした?」

『あー、数日中に世界樹の確保に動く予定なんだが、そっちの行程はどうかなと』

「順調ではあるが、帝国の帝都につくにはもう少しかかるな。俺とソラルだけが先行するならどうとでもなるが、その場合は転移門を運べない」

転移門は厳重に梱包され、馬車に載せられている。エヴァかクラフトがいれば、空間収納で運べたのだがな。贅沢な悩みだろう。

『そうか。転移門が設置済みなら、来てもらうつもりだったんだよな』

「仮に帝都についたとしても、実際は戦後処理の話し合いに時間がかかるだろ? そのうえで安全に転移門を設置するなんて、だいぶ先の話だな」

『そりゃそうか。わかった。こっちでなんとかしてみるが、最悪の場合は……』

「わかってる。どこかに隠した状態で設置する。そのときは転移門を一つ使い潰すことになるけどな」

『そのあたりはヴァンがなんとかするだろう』

国王陛下に責任と予算を押し付けるつもりか、あいつは。陛下はクラフトにもカイル様にも甘いから、問題はなさそうだけど。

「いざというときは、駆けつけられるように意識して動いておく」

『ああ。助かるよ』

「しかし、俺を呼ぶような懸念があるのか?」

『錬金術師の里が確認していた魔物が、敵対する可能性が大だ』

「……無理そうならすぐ呼べ」

『そうする』

通信が終わると、俺は全員に事情を話し、ルート設定を少しいじる。これでいざというときは森の奥など人目につかない場所に転移門を設置できるだろう。

指示を聞いていた魔術師のバーダックが、眉根を寄せている。

「向こうになにがあったんだ?」

「あー、世界樹があるだろう場所に、ヤバそうな魔物がいるらしいが、突っ込むことになったそうだ」

世界樹関連の話は、国家が関わっているので、通信を受けた俺以外にはぼかして情報を伝えている。

「援軍要請か?」

「いや、俺達が預かっている転移門は一つしかないからな。合流しないことになった」

「大丈夫なのか?」

「ま、大丈夫だろ。向こうにはノブナもペルシアもカミーユいる。前衛だけでも相当な戦力だからな。そこにクラフトやエヴァも加わるんだ。油断してなきゃ魔族でも問題ないさ」

「それもそうだな」

俺とバーダックが頷き合っていると、王国の精鋭兵が突っ込んできた。

「お前らも、クラフトらも、少しは自分の実力を自覚しろ!」

俺達は顔を見合わせて、やれやれと肩を落とすのであった。