軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

249:知ることをできないと思っていたことを知ると、戸惑うよなって話

エリクシル開拓伯であり、ゴールデンドーンを作ったカイルは、魔族の手によって死を迎える。

だが、死の直後の状態で肉体と魂を固定化することで、完全な死を回避することに成功。

カイルを復活させるべく、魔術師の隠し里を見つけ、情報を得て、今度は錬金術師の隠し里を探し出した。

メンバーは俺、マイナ、ペルシア、リーファン、ジタロー、ジャビール、リュウコ、エヴァ、カミーユ、マリリン、ノブナ、チヨメ。途中からリリリリーも加わった。

目的の世界樹はまだ見つかっていないが、代わりにとんでもないものを発見してしまう。

滅ぼされたであろう錬金術師の里で、さらに隠された研究室の床に、小さく小さく刻まれた文字だ。

「クラフト・ウォーケン」

俺の名前が、隠し部屋の床に刻まれていたのだ。

これが今回の物語の始まりである。

廃墟と化した錬金術師の里に沈黙が降りる。

最初に重苦しい空気を切り裂いたのはジタローだった。

「なんでクラフトさんの名前があるんすかね?」

「俺も知りたいわ!」

全員が同じ疑問を持ってるだろうよ!

あまりに当然の疑問に、逆に肩の力が抜けてくる。そこで国王陛下のヴァンが言ったことを思い出す。お前らは笑っていろと言ったことを。

俺は独りごちる。

「うん。そうだな。まずはこの状況を楽しもう」

自らの顔を、両手で頬打ち。背筋を伸ばす。

「よし! 理由はわからんが、ここになんかあるんだろう。この床石を良く調べてくれ!」

そこで、はっと顔を上げたチヨメと、大きく頷いたカミーユの二人が、読むのが難しいほど小さく名前が彫られた床石を調べていく。

チヨメがすぐに立ち上がる。

「この床石、外れるナリよ」

「やっぱりか。罠とかは?」

今度はカミーユがこちらに顔を向けた。

「ない」

俺は全員を見回したあと、頷く。

「よし、開けてみてくれ」

「了解」

カミーユがゆっくりと床石の一枚を引き抜いていくと、中には小さなスペースがあり、そこに一冊の本が仕舞われていた。

「本? 日記?」

渡された本の表紙には、手書きで「日記」とだけ書かれている。

錬金術師の里だし、てっきり錬金術関係の凄い品物がでてくると思ったのだが。いや、それだと俺の名前の謎がわからんか。

俺が読もうかとも思ったが、全員が気になるだろう。メイドで、ドラゴントゥースウォーリアーで、ホムンクルスで、人造魔物で、使い魔のリュウコに日記を手渡す。

「リュウコ、読み上げてくれ。興味のないやつは、他の場所の探索を頼む」

当然だが、全員が聞くことになった。

「立ち続けるのも疲れるでしょう、地上でお茶の支度をいたしましょう」

「お、おう」

リュウコとリーファンが素早くテーブルや椅子を並べ、ついでにお茶と軽食まで並べてくれた。手際が良すぎる。

まるで絵本の読み聞かせでもするような状態になってしまったが、肩ひじを張り続けるよりもいいだろう。マイナなんて最前列で完全に絵本待ちの子供だし。

「それでは失礼して読み上げさせていただきます」

こうして読み始めた日記だったが、その内容は戦慄するものだった。

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妊娠してた。

あまりにも嬉しくて、飛び跳ねたら 里長(さとおさ) に怒られてしまった。

それを聞いたブットにも、しこたま叱られる。

当たり前だよね。反省。

でも、里をあげてのお祝いはやり過ぎだと思う。

さらに、徹夜禁止令が出てしまった。

うーん。暇です。

研究の続きが気になって寝れないんですけれど。

そうだ。せっかくだからこれを機に日記でも書こうと決意して、今ペンを手に取っています。

こうでもしないと、こっそり研究ノートとにらめっこしちゃいそうだからね。

うん。

いきなりくじけそう。前回の日記から一月くらい過ぎてしまった。

研究ノートの方は進んでるんだけどね。

いえ、進んではないかな。世界樹の侵食は止まっていないから。

やはり龍脈を流れる 霊気(プネウマ) の濃度変化の観測値をもう一度測定し直して……ってこれは研究ノート案件だった。

向こうに書こう。

ブットの足音が聞こえます。これは徹夜を叱りに来た足音だ!

お腹が大きくなってきた。

ふふ。男の子かな、女の子かな。

ブットは毎日お腹に耳を当てては、私の体調を心配してくれている。嬉しいけど、落ち着いて。

里の人はとてもお腹の子に期待している。里で一番と二番の錬金術師の子供だから、仕方ないとは思うけど、どっちでも元気に育ってくれればそれでいいの。

黄昏の紋章を切望してるのはわかるんだけど、プレッシャーになるから私はともかく、私の子にそれを求めるような言動はやめさせないと。

魔力が凄い。

まだ生まれてもないのに、魔力を感じられるレベル。

ブットが生まれるときも同じだったと聞いた。

つまり、この子もブットと同じかそれを上回る魔力を持ってる可能性があるのね。

将来が楽しみだけど、里の人が盛り上がりすぎてるから、もう少し抑えてくれてもいいんだよ?

最近魔力酔いが酷い。

魔術師系の妊娠だとたまにあるらしいけれど、つわりより辛い。

それを聞いたブットが薬を作ってくれた。生まれるまで子供の魔力を圧縮して抑えてくれるものらしい。

世界樹の研究を三日休んで、開発してくれた。

さすが里一番の錬金術師。頼りになる。

それはそれとして、魔力圧縮の錬金薬が気になる。今度ブットの研究ノートを見せてもらおっと。

子どもの名前に悩んでる。

ブットは錬金術に関係する名前がいいんじゃないかと言っていた。

私は、ブットと私の名前を使ったほうが良いんじゃないかと思ってる。

メンブアットとイェンザを上手く使って……。

メンィンザ……イェット……ブットンザ……うん。私の案は諦めよう。

男の子の場合と女の子の場合も考えないと駄目なんだよね。これは大変だ。

里のみんなから、ゆり籠をプレゼントされた。

わざわざ下山して探してきた、最高のツル科植物で編み込まれた逸品。

これ、衝撃吸収する錬金薬に漬け込んであるよね? 嬉しいけど大げさすぎない?

その錬金方法も教えてほしいな。

さらに無記入の金属プレートが用意されている。

名前と生まれた日付を刻み込むんですって。

今の私は、とてもニヤついてることでしょう。

私を診察していた医者とブットが、お腹の子供の魔力がとんでもないことになってると言ってきた。

どうやら魔力圧縮薬のせいらしい。

生命に影響はないし、現時点では適正魔力だから、むしろ良い影響しかないのだけれど、念の為生まれたあとに解除薬を飲ませたほうがいいそうだ。

飲ませない場合、いつまでも魔力圧縮してしまい、場合によっては魔法を使うのに支障がでる可能性があるらしい。もっともよほど相性の悪い紋章でも刻まない限りは問題ないそうだけれど。

ワインの入った樽を想像してほしい。

普通のワインであれば、栓を抜けばコップにワインがでてくるが、圧縮されドロドロとした状態のワインだと、栓を抜いてもゆっくりとしかでてこない。

ブットの仮説だと、相性の良い紋章ならば、逆に魔力圧縮状態のほうが最高の魔力効率を叩き出せるそうだけれど、そんな博打をする気はないです。生まれたら解除してもらいましょう。

錬金薬は個別調整なので、生まれてからゆっくり作ってくれることになりました。

医者から出産予定日を告げられる。

すると、里の外にでている住人にも伝えられ、その日に集まることになった。

さすがに大げさだし、恥ずかしいよ!

私の文句は受け付けられなかった。

予定日より早く子供が生まれた。

男の子だった。

無事に生まれてきてくれてありがとう!

ブットが喜びのあまり泣きじゃくっている。夫があんなに泣いてるのは初めて見ました。

里全体も大騒ぎ。住人全員が揃ったら宴会だそうで、すでに準備が始まっている。

少し恥ずかしいけれど、私も嬉しい。

ブットと相談して、名前を決めました。

クラフトです。

メンブアット・ウォーケンとイェンザ・ウォーケンの子、クラフト・ウォーケン。

それがこの子の名前。

大魔法文明時代の言語形態で、ものづくりの意味を持つ。

うん。いい名前だ。

ブットが早速ネームプレートに名前と日付を刻印し、ゆり籠に貼り付けていた。

私の可愛いクラフト。

新しい夢が出来ました。クラフトと一緒に世界樹を研究し、世界を救うことです。

プレッシャーになるから言わないけど、やっぱり黄昏の紋章が発現するといいな。

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リュウコがゆっくりと日記を下ろす。

「日記はここで一区切りされています。そして次のページから荒れた字体になっております。この先からは状況が一変したようですね」

リュウコが説明してくれるが、頭に入ってこない。

それよりも、俺が錬金術師の里で生まれた?

母親の日記?

押し寄せる情報量に脳の処理が追いつかない。

混乱する俺をよそに、エヴァがつぶやく。

「つまり、クラフトさんの年齢を考えると、二十一年前まではこの里は存在したことになりますね。それがなぜこんな状態に……」

リュウコがすぐに答える。

「それはちょうどこのあとから記されているようです。読み進めますか?」

俺が戸惑っているのに気づいているのだろう、リュウコが気遣うようにこちらに顔を向けた。

「あ、ああ。頼む」

やや反射的ではあったが、俺は続きを読むように促す。

そしてこの先の内容は、さらに驚愕すべき内容であった。