軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

244:爆弾は、最後にやってくるって話

領都ガンダール。

カイルの父ちゃんが治める、ベイルロード辺境伯の領都である。

久々に来たけれど、前回よりかなり発展している様子だ。

城壁だけでなく、市壁の多くに、錬金硬化岩の補強が入っているのがわかる。

ジタローが飛び跳ねながら街を見回す。

「うひょー! なんか前より賑わってるっすね!」

「そうだな、市壁の区画が増えてるみたいだな」

「なんか馬車と倉庫ばっかりっすね!」

貿易の一大中継地点となっているためか、馬車が数多く停められる商業区域が増設されていた。

うん。さっきから、何百台の馬車が行き交ってんだよ。へたしたらゴールデンドーンより多いんじゃねぇのか?

……いや、考えてみたら当たり前か。

いくら街道を整備したところで、ゴールデンドーンは王国でも端の端。アキンドーんところみたいに、護衛とか揃えてる商隊でもないと、そうそう行き来しようとは思わんよな。

それに、ゴールデンドーンから輸出するもので、かさばるのは食料系だけなんだよな。主に小麦。

ちなみにクラフト小麦と呼ばれていることは忘れた。忘れたっていったら忘れたの!

ポーション類は、小麦と比べれば単価が高くなる。桁違いに。大量に買い込むにも資金に限度があるだろう。

一方、ガンダールは辺境伯のお膝元であり、ゴールデンドーンからの荷物の終着点であり、通過点だ。ゴールデンドーンで買うより割高でも、ここで買うのが一番安全だからな。大半の商人はここで仕入れることになる。

気合いの入った一部の商人だと、リーファン町まで来て、仕入れ価格を抑えるやつもいるようだが。

ゴールデンドーンまで直接仕入れに来るのは、大商人や大きなキャラバンが多いんだよね。

そんな事情があるからか、都市ガンダールは非常に賑わっていた。

物見遊山のおのぼりさんになりかかっていたとき、エヴァが冷たい視線を向けてくる。

「辺境伯のところには行かないんですか?」

「恐ろしいこと言うなよ! カイルもいないのに行くわけないだろ! ここはただの通過点だよ!」

昔、オルトロス父ちゃんと二人っきりになったことがあったが、あの空気感は耐えられん!

なんかカイルに思うところがあったように見えたが、貴族の腹の内なんて予想もつかねぇっての!

ところがここで、ペルシアが空気の読めない発言を始めた。

「だが、マイナ様がいるのだ。お父上であるベイルロード辺境伯にご挨拶するのは普通のことではないか?」

うおーい! 余計なことを!

どうやって誤魔化すか、おろおろとしていると、マイナがペルシアの袖を引いて、首を横にふるふると振った。

「よろしいのですか? マイナ様」

「ん」

「そうですか、わかりました。おいクラフト! マイナ様はお父上様にお会いにならなくてもいいそうだ!」

「見てたからわかるわ!」

なんで自信満々に報告するんだよ! 騎士の義務みたいなもんか!?

リーファンが俺に耳打ちしてくる。

「マイナ様に気を使わせるのって、大人としてどうなのかな?」

「う……やっぱそう?」

なんとなく、気を使わせた感じはしたが、端から見ててもそう感じたのか。

俺の表情を読み取ったのか、エヴァもあきれ顔である。

「貴方が今なにを考えてるか手に取るようにわかりますよ。気のせいではなく、確実に貴方が悪いです」

「き……きつい」

「親切な忠告だと思いますけど?」

「あ、はい」

呆れた表情で見下ろしてくるエヴァの瞳に、なんかちょっとドキっとしてしまった。

俺のことを考えての忠告なんだよな。

もしかして、俺ってお姉さん系が好みだったりして……いやいや、変なことは考えるな!

そういえば、初恋は孤児院の若いシスターだったような。孤児院の幼なじみで狐獣人のアズールに、シスターを見てるとやたら怒られた覚えがほんのりあるなぁ。

あれ? あのシスターも性格がきついタイプだったような……。

いやいやいや!

俺は頭を強く振って、一瞬浮かんだよこしまな考えを追い出した。

エヴァは仲間! 友達! さらにレイドックに惚れてるのが確定!

変なことを考えちゃだめ! 絶対!

……一度意識してしまったからだろうか、俺を軽く睨んでいるまつげの長さに気づき、妙にどきどきしてしまう。

「貴族と会いたくないという気持ちはわかりますが、そもそもカイル様と普段から気さくに会っているわけですし、それ以前に国王陛下とも気安い関係を……」

そこでエヴァの動きがピタリと止まり、俺を覗き込むように顔をずいっと近づけてきた。

ちっ、近い!

「人の話をちゃんと聞いていますか? 先ほどから様子がおかしいようですが。もしかして体調を崩したのではないですか? 少し顔が火照っているように見えますし」

そのまま流れるように、俺の額に手を当てるエヴァ。

真っ正面に彼女の顔がどアップに!

冒険者とは思えないほど、肌綺麗!

吐息が掛かるほどの距離で、思考が乱れる!

そうだ。こんな近距離で彼女の顔を見てるのが悪いんだ。

俺は視線を真っ直ぐに下に下ろす。

……。

うん。この距離から見下ろすと、双丘の大きさが実感できるんだなぁ。姉妹なのにマリリンともカミーユともサイズに差があるんだよなぁ。エヴァはちょうど真ん中サイズで、バランスの取れた……。

ぎゃああああああああ!

消えろ! 俺の邪な魂よ!

内心でパニックになっている俺を横目に、エヴァの妹カミーユが瞳をきらめかせながら走り寄ってきた。

「お姉。クラフトは病気。不治の病。看病しないと死ぬ」

「ええええ!?」

「ごめん。不治は言い過ぎた。でもしばらく寝かせるべき」

突然現れ、意味のわからないことを胸を張って言い切るカミーユ。張るほど胸はない彼女だけどな!

だめだ。思考がおかしくなってる。

脳がバグって停止している俺を無視して、二人の会話は進む。

「風邪でしょうか? 少し熱っぽいような気もしますし」

「今すぐ宿にいって、お姉が添い寝……違う。つきっきりで看病すべき」

「つきっきり!? そんな。男性と二人でなんて」

「チャンス」

「な、なにがなんのチャンスなんですか!?」

「いい加減、お姉が気持ちを自覚――」

そこに飛び込んでくる人影。

リリリリーだった。もさっとしただらしない格好のせいで、最初幽霊でも飛び出してきたのかと思ったぜ。

安心しろ、ただの変態だ。そして変態が叫ぶ。

「ちょーっと待つんご! マイダーリンの看病はウチに任せるっちゃ!」

「「「マイダーリン!?」」」

思わずハモった俺たち三人を無視して、リリリリーがにじり寄ってくる。

「ぬふふふふ。ジャビール御大に聞いたなりよ。紋章官の戯れ言だと思われてた”黄昏”の紋章持ちで、貴族領の立ち上げに尽力した功労者。ジャビールちゃんとの共同論文を多数発表してる件。小麦、硬化岩、ポーション各種を量産してるから大金持ちじゃけん! もちろん貴族とも強力な つて(・・) があるなりよ!」

まくし立てる彼女の勢いに動きの止まる俺たちだが、それを無視してさらにリリリリーが続ける。

「しかも良く見れば、顔も悪くないっちゃ。魔術師的な もやし(・・・) 体型でもなく、かと言ってマッチョでもないのは高得点っす! ぬふふふふ」

そんな全身をなめ回すような視線でこっち見んな!

「小生は決めたなりよ! クラフト・ウォーケンの嫁になるっちゃ! マイダーリン! 可愛い私を養って! 研究費も出して! ついでに住まわせて!」