軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

241:変革は、突然だよなって話

あれから数日経った。

隠者たちと連日の話し合いの末、結局は転移門を設置することに。

俺が”通信”の魔導具を使ったとき、パラディオたち隠者がひっくり返るほど驚いていた。

さらに魔導具をメンバーの大半が持っているのを見て、気を失いかけるほど驚愕していたのは、ちょっと面白かったな。

あんまり自覚がなかったが、それだけレアだってことを改めて認識した。

すでに国王陛下であるヴァンには許可を得ている。

接続先は、最初にミズホ神国と繋げた場所だ。あそこはゴールデンドーンの市壁外にあるし、すでに錬金硬化岩の壁に囲まれているから、いざというときの対処も楽だからな。

ゴールデンドーンと王都の精鋭が警備に駆り出されているらしい。そのことは隠者たちには伝えてある。当然の対処だろうと受け入れてくれた。

隠者の庭園側も、当然防犯の事情があり、里の中央部から少し離れた場所に転移門を設置することになる。

そのときのパラディオたちとの会話。

「まずは転移門を囲む防護壁の建築からだな。この島はそれなりに巨大だが、本土と比べたら当然資源は少ない。強固な物を作らねばならぬから、完成まで一月ほどみて欲しい――」

「それなら錬金硬化岩を使えばすぐだぞ。火山灰は大量に仕入れたばかりだし、砂利なんかは困らないだろ?」

「錬金強化岩?」

「見せた方が早いな。リーファン頼む」

「うん。任せてよ!」

空間収納から見本に必要な資材を取り出すと、隠者たちが興味深げに取り囲む。こういう研究が大好きなところを見ると、魔術師の隠し里なんだなと実感するな。

「ふむ。これが錬金術の薬剤、それに火山灰と石灰か。あとは砂利と水が全ての材料か?」

「ああ。これを正しい比率で混ぜ合わせて……あ!」

俺はここで材料に不安があるのを思い出す。

「しまった。パラディオさん。この島で、石灰は入手可能か?」

「石灰? ああ。大きくはないが石灰岩は取れる」

「よかった! 薬も火山灰もたっぷりあるが、石灰はそんなになかったんだ!」

「この島の一部は珊瑚礁でできているからな。古い地層には珊瑚礁が変化した石灰岩が存在する」

「なら問題は解決だ!」

その後、見本に作った錬金硬化岩の自由度と強度に驚いたりしていたが、島の職人にも手伝ってもらって、転移門を囲う防御壁の建築がすぐに始まった。

今回は急ぎなので、水分蒸発薬をふんだんに使って、あっという間に完成。

住民は呆れていたが、大丈夫。知らなかっただけだから、すぐ慣れる。

パラディオが苦笑しながら呟いた。

「はたしてこの状況になれて良いものか……」

貿易なんかが始まれば、これがすぐに日常になるから安心してくれ!

俺の内心を読んだのか、リーファンが突っ込んできやがった。

「安心出来る要素が一つもないよ!」

「えー」

ともかく、こうして転移門の設置が完了した。

隠者の庭園側も警備のための魔術師や兵士を配置。住民たちも立ち会いたかったようだが、隠者たちにより里で待機となる。まぁ当然と言えば当然か。まずは安全確認と、挨拶である。

魔術師たちに見守られる中、俺は転移門を起動する。

うん。つながったみたいだ。

確認ついでに転移門をくぐると、背後で一瞬「あっ!」とか聞こえた気もするが、すでにゴールデンドーン側なので、声は聞こえなくなっている。

ゴールデンドーン側では、アルファードと……知らないイケオジと、イケメンの三人が並んでいた。

イケオジは顔に大きな傷のある年配だが、筋肉隆々で威圧感が凄い。イケメンの方は国王のヴァンと同じかそれより少し若い感じかな。二人ともヴァン直属の聖騎士鎧を着用しているので、王都の聖騎士なのだろう。

なぜか、俺を見たアルファードが苦笑している。

「クラフト……なんでお前が最初に出てくる」

「ん? いや、ちゃんと動作してるか確認したくて」

「確認なら他の者にやらせんか!」

「え? だって安全確認しなきゃだし」

「安全確認ならなおさらだ! 馬鹿者!」

言ってる意味がわからない。安全確認なんて、設置した俺以外の誰に誰がやるというのだ。

「……まぁいい。貴様にはなにを言っても無駄なようだ」

なぜか見捨てられたような発言をされた! なんか納得いかねぇ!

とりあえず、話を先に進めよう。

「通信で伝えたとおり、隠者の庭園からは、代表のパラディオさんと護衛の魔術師と剣士がそれぞれ一名やってくる。問題ないか?」

「ああ」

アルファードの許可を得て、俺は転移門を使って里にとんぼ返りすると、こちらでもメンバーが苦笑していた。

「もしかして、怒ってる?」

俺が恐る恐る質問すると、リーファンがあきれ顔で腰に手をやる。

「向こうで誰かに怒られた?」

「アルファードに……」

「はぁ。ならいいよ。でも、もうちょっと考えて動いてね」

「お、おう」

考えた結果、俺が行ったんだが……。それをいったら余計怒られそうだったので黙っとこっと。

話を逸らすようにパラディオたちに手招きをする。

「ちゃんとつながったから、行きましょう」

「う、うむ」

まず、護衛の剣士が一度潜り、すぐに戻ってきて、驚愕しながらも、問題なく、向こうの兵士が待機していることをパラディオに報告。

俺が安全を確認して見せたのに……とも思ったが、なるほど。アルファードが言いたいのは、こういう手順を踏めと言うことだったのだろう。

俺が納得していると、パラディオが緊張した面持ちでゆっくりと転移門を潜っていったので、俺たちも続いて移動する。

ゴールデンドーン側では、聖騎士隊の面々がずらりと並んで、略式だが式典の陣形を維持していた。

パラディオを出迎えるのは、先ほどの三人で、中央に顔に傷のあるイケオジ、左右にアルファードとイケメンが並ぶ。

どうやらイケオジが一番偉いらしく、敬礼したあとにパラディオの案内を始めた。

「ようこそいらした、隠者の庭園代表パラディオ・アルバトーレ殿! 私はマウガリア王国聖騎士団団長アーデル・ガリーと申します。足早で申し訳ないが、まずはエリクシル開拓伯領の領都ゴールデンドーンを視察していただき、その後、領城にて国王陛下との謁見を予定しております」

一瞬気圧されたパラディオだったが、ローブの襟を正して返答。

「まだ、交流が決まっていないにも関わらず、これほどの出迎えを心から感謝する。私はパラディオ・アルバトーレ。隠者の庭園の代表として訪問させていただいた。急なことにも関わらず、国王陛下との謁見まで予定いただき、改めて心より感謝する」

ちなみに、視察が先なのはパラディオたちの希望で、当日の謁見を望んだのはほかでもない、国王陛下であられるヴァンその人だ。

俺は話が早くていいと思うんだが、最初はかなり揉めたらしい。特にザイードが威厳がどうのと騒いだらしい。お前はカイルを少しでも早く目覚めさせてやりたいんじゃないのか!

って愚痴を、数日前に仲間にこぼしたら、意外なことにノブナが反応した。

「うーん。ザイード殿の言うことも、理解できるのよ」

「え?」

「カイル様は偉大な領主だと思うけれど、でも、国王陛下の威厳と領主の命を天秤に掛ける状況だとすると、武士なら主の威厳を選ぶのよ」

「マジか」

「自らの仕える主の名誉を守るためなら、腹を切るのがミズホ武士と言うものなのよ」

「と、ときどきおっかないよな。ミズホ神国って」

「おっかないと思わせられたのなら、腹を切った武士の魂は救われるのよ」

「な、なるほど」

俺からすれば、名誉なんかより命の方が大事だと思う。ミズホの話はさすがに行き過ぎだと思うが、国同士のやりとりなら、相手をびびらせることも重要なのかもしれない。

あれ?

そう考えると、ザイードって案外武士みたいに高潔ってことにならね!?

いや、確かに呪いが解けてからのザイードは感心するほど真面目で優秀だけど……、なんかモヤるな!