軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

238:なにを考えているかわからないと、イラつくよなって話

寝ようとしたら、すでにベッドで半裸の女の子が寝てた件。

「は!? え!? なにこれ!?」

俺は潜り込もうとしていたベッドから、跳ね起きる。そのとき掛け布団が吹っ飛び、女の子の姿が明確になった。

黒に近い紺色のボサボサの髪で、んごごごごごと寝息を立てている。パンツ一丁で。

いや違った、めくれてるけど、タンクトップも着てた。

前髪が重くて顔の大半が隠れている。

そして、超寝相が悪い。

幸いと言うか、めくれ気味のタンクトップと手の位置のおかげで、大事な部分は見えてない。見えてないんだからね! 大事なことなので二度言ったからな!

かなり痩せ型で、年齢がわかりづらい。ガリガリと言ってもいい。

年齢は俺と同じくらいだろうか? それとももう少し年下か。

もしかしたら孤児かなんかが迷い込んだのか?

俺は途方に暮れて、立ち尽くすのであった。

エヴァ・キャスパーは深いため息を吐いていた。

「はぁ。私はいったいなにをしてるんでしょうね」

グラついている自分の気持ちを確認したかったはずだが、里の屋台を巡り歩いただけで終わった。

割り当てられた個室に、ノックもなしに誰かが入ってくる。

誰かもなにもない、平気でそんなことをするのは姉妹のカミーユだ。彼女のうしろにマリリンもいる。

「ノックくらいしなさい、カミーユ」

「それより、進展あった?」

「進展って……」

どうやらカミーユにはバレバレだったらしい。

「そんなんじゃないですよ」

「でも、気になってる」

誰をとは言わなかった。さすが姉妹と言うべきか。なら、私が揺れていることもわかっているでしょうに。

「みんなで楽しく買い食いして歩いただけですよ」

「楽しかった?」

「それは、まあ」

別にあの朴念仁と一緒にいたからというわけではなく、友達と一緒に祭りを楽しんだと言う意味合いではあるけれど。

「お姉。気づいてない」

「なにがです?」

「そもそも、男が一緒にいて、楽しかったこと」

「あ」

そもそも男が近くにいるだけで不快だったというのに。指摘されて気がついた。

「べ、別にレイドック様が一緒でも同じように楽しめましたよ」

「つまり、クラフトも同じくらいになってる」

「う……」

痛いところを突かれる。私は降伏して、もう一度深いため息を吐いた。

「はぁー。なんで私がこんな苦しまなきゃいけないんですか」

「はっきりさせないお姉が悪い」

「う……」

「クラフトは優良物件」

「それは、まあ、その通りだと思いますよ」

「そもそも、お姉は理想が高すぎ」

「え?」

レイドック様はその通りだと思うけれど、あの朴念仁は違うでしょ?

「若手最強の錬金術師で、あのジャビールの愛弟子。巨大湿地確保の立役者。帝国防衛戦で影の主役。もっと言う?」

「改めて並べられると凄い功績ですね。でもあれは女性の気持ちがわからない、ただのヘタレな朴念仁で、慎重さもたりない未熟な錬金術師です」

カミーユは少し顔を傾けた。

「それ、クラフトを等身大で見てるってこと。今までそんな人いた? お姉はもう少し自分の気持ちに素直になるべき」

「……」

私は二の句が継げなかった。でも……。

「もう少し時間をください。私自身もよくわからない感情なんです」

「それは構わない。でも、ライバル多過ぎ問題」

「それは……」

「まあ、朴念仁だから大丈夫かもしれない」

思わず無言になってしまう。本当にあの朴念仁は、人をデートに誘っておいてそれっきりとか、なにを考えているのかさっぱりです。

私のことが好きなら、猛アピールでもしてくれば、私だって少しは!

ああもう! なんで私がこんなイライラしなきゃいけないんですか!

悩みが怒りに変換され始めたころ、それまでニコニコと黙って聞いていたマリリンが一言。

「ジタローさんは眼中にないんですねぇ~」

そ、そういうものです。

気が削がれたタイミングで、部屋にノック。扉の向こうからリュウコさんの声が届いた。

「お休みのところ失礼します。少々よろしいでしょうか?」

「あ、どうぞ」

メイド姿のリュウコさんが、ピシリとした姿勢で入ってくる。

「なにかありましたか?」

「念のため、ジャビール様の様子を見に行ったのですが、結界のサイズが一部屋分しかありませんでした」

「え?」

「バンガロー二つを覆うものだと思い込んでおりました。痛恨のミスです。私はこれからマスターのバンガローに移動しようと思います。念のためお知らせしておこうと思いまして」

「ジャビールさんの結界だから感知できないと思い込んでいました」

「私もです。もっとも私は魔力感知がほとんどできませんが」

なんだろう、凄く嫌な予感がする。魔術師の虫の知らせってやつかもしれない。

「私も一緒に様子を見に行きます」

「わかりました」

マリリンが軽く手を振る。同時に胸が揺れたことに嫉妬。

「私たちはぁ~。留守番してますぅ~」

「ん」

二人は残るようだ。

私とリュウコさんが廊下を進むと、洗面台で歯を磨いていたマイナ様に見つかってしまった。すぐ横には護衛のペルシアさんもいる。

「どこ行くの?」

「マスターの部屋です」

「っ! 私も行く!」

「え? 様子を見に行くだけですけれど……」

「行く!」

押し留めても、無理矢理ついてきそうだ。それなら一緒にいって、リュウコさんだけ残し、一緒に戻ってくる方がいいだろう。

「わかりました。でもすぐ戻りますよ?」

「……ん」

良かった。同意してくれた。

私たちの騒ぎに気づいて、ノブナさんとチヨメさん、それにリーファンさんも廊下に出てくる。

ノブナさんが首を傾げた。

「どうしたの?」

「男子用のバンガローが、結界の範囲外だったので、リュウコさんがそっちに移動するついでに、念のため様子を確認しておこうかと」

「ふーん? あたしたちは残るから、なにかあったら知らせるのよ」

「はい」

「うーん。なんか嫌な予感がするなぁ。私も行くよ!」

リーファンさんも一緒に来るらしい。

どうやら彼女も、クラフトがなにかをやらかしているんじゃないかと思ったようだ。お互い、女の勘というやつだろうか?

変な胸騒ぎがするのよね。

こうして、私、リュウコさん、マイナ様、ペルシアさん、リーファンさんでぞろぞろと男子用バンガローに移動したのです。

リュウコさんが迷いなく、一番手前の寝室に移動。そうか、彼女はクラフトの使い魔でもあるから相手の位置とかわかるんだ。

彼女が慌てていなかったのは、主人であるクラフトに命の危険がないとわかっていたからかも知れない。

リュウコさんが扉をノックする。

「マスター。少しお話したいことがあります。入室してもよろしいですか?」

それに対して返って来たセリフは。

「ほぎゃ!?」

であった。

私たちは無言で顔を見合わせる。

リュウコさんを押しのけ、部屋に飛び込むと、下着姿のクラフトと、あられもない格好でベッドに寝る女性の姿が目に飛び込んできた。

魔術師の虫の知らせが正しかったことが証明されたようだ。

……こんな形じゃなくてもいいんじゃないかな?