軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

222:頼りになる仲間は、いくらいてもいいって話

場の空気を変えるように、国王であるヴァンが額を押さえながら全員を見回す。

「ジャビール、ジタロー、マイナ、ペルシア、エヴァ、カミーユ、マリリンは決定だな。クラフトが行くならメイドも一緒だろうが……さすがに戦力的に少ないな。他に行きたい奴はいるか?」

するとリーファンが小さく手を上げた。

「あの、できれば私も行きたいです」

「ふむ。生産ギルド長か……」

ヴァンはしばらく自分の顎をなでる。

「かまわん。確か貴様の師匠もゴールデンドーンに滞在しているのだろう?」

「はい。金属関係に関しては任せられます」

ヴァンは片眉を上げた。

「金属以外は?」

リーファンがそっと目を逸らす。

「……ギルド総長がなんとかしてくれると思います」

「そうか。まぁ、かまわん。蘇生薬だが、材料さえあればどこでもいつでも作れるものならいいが、場所や時間、設備に条件がある可能性を考えたら、貴様はクラフトとセットにしておいたほうがいいだろう」

俺としては材料を手に入れたら転移門を設置して戻ってくればいいと思っていたが、それが出来ない可能性を考えていなかったからな。

生産ギルドは少し心配だが、金属関係はリーファンの師匠、ドワーフのヴェルンドに任せておけば問題ない。

グリム総長も、あれで優秀だからな。なにより腹心としてシンデリーがついてる。彼がいればなんとかなるだろう。

「俺としても、リーファンがついてきてくれるなら安心できるよ」

「任せて! クラフト君!」

リーファンとがっしり握手する。開拓を最初から一緒に支えてきた彼女がいれば百人力だ。

あ、生産ギルドのこと考えてたら、重要な問題があることに気づいてしまった。

「俺だけじゃなく、ジャビール先生もゴールデンドーンから出たら、錬金術師が足りなくなるんじゃね?」

俺の疑問に答えてくれたのは白髭のご老体。宮廷錬金術師筆頭のバティスタ・フォン・ヘルモンドであった。

「宮廷錬金術師から、エルラ・ルイラを筆頭とした数人を出しましょう。幸い転移門がありますから、緊急時も対応が容易ですじゃ」

エルラ・ルイラ……たしかジャビール先生の元弟子のおばさん……いやお姉さんだったな。大臣と一緒にゴールデンドーンへ視察に来たのを思い出す。

それを聞いてジャビール先生も納得。

「エルラならなんとかするじゃろ。やつの弟子も連れてくるじゃろうしの」

先生が納得するなら、俺は賛同以外の選択肢などない。

俺たちの様子を見ていたヴァンが、もう一度部屋を見渡し呟く。

「こんなもんか?」

そこにミズホ神国のノブナが笑顔で参戦。

「あたしも行くのよ」

言いながら、残りのミズホ神国メンバーに目をやるノブナ。

現人神ムテンは目が見えないのでノブナの挙動に気づかなかったが、将軍シンゲンに、御三家のハンベエ、モトナリ、マサムネが頷く。

ノブナの父ちゃんであるハンベエが口を開いた。

「うむ。カイル様がお目覚めするためのあらゆる努力を惜しまない。ノブナとチヨメよ。励め」

「「はっ!!」」

俺としては、他国の要人を巻き込んで良いものかとも思ったが、レイドックがいない状況で、ノブナほどの剣士が一緒に行ってくれるのは正直ありがたいので、素直に聞いてみた。

「二人が来てくれたら心強いが、ミズホ神国的にいいんです?」

俺の質問に、ハンベエではなく将軍のシンゲンが答えてくれる。

「かまわん。マウガリア王国には返しきれぬ恩がある。本当はワシが行きたいところだが……」

ハンベエがにっこりと睨む。目が一切笑ってない。

「まさかと思いますが、将軍が責任を放棄して探索に出るなどとは申せませぬよな?」

「う……言っておらぬだろう」

「ならばよろしい」

ハンベエが襟を正す。

「此度の探索にミズホ側からは、御三家筆頭である我がヴィルヘルム家より長女ノブナ・ヴィルヘルムと、その家臣チヨメ・クレマンを役立てていただけたら、嬉しく存ずる」

ミズホ神国側に問題がないなら大歓迎である。

俺とヴァンが許可を出すと、将軍シンゲンがムテンに対して恭しく頭を下げる。

「ムテン様、ご裁可を」

「許可いたします」

「はは! ありがたき幸せ! ノブナ! チヨメ! とく励め!」

「「ははっ!!」」

レイドックも小声で「ノブナたちなら安心だぜ」と呟いている。

前衛が足りないと思っていたので、剣もオンミョウ術も使えるノブナの参戦はありがたい。

それまでずっと黙っていたリザードマンが我慢できないとばかりに立ち上がった。リザードマンとは言っても、その人物はぱっと見には人と変わらない。尻尾がなければ人の女性としか思えないだろう。

名をシュルルと言う。

「クラフト様ぁ! 私も! 私もついて行きますからぁ!」

シュルルが豊満な胸を押しつけ、俺に半ば抱きついて来たが、即座に立派な体躯の男性リザードマン、ジュララがシュルルを押さえつけた。

「シュルル! 私たちの身分は最下層であることを自覚しろ! それと言葉遣い!」

「ジュララ兄さん! このまま黙ってたら連れて行ってもらえない!」

「もともとお前を出すつもりはない! それと言葉遣い!」

ジュララの言葉に動きを一瞬止めるシュルル。

「なんで!? 今こそご恩を返すチャンスじゃないですか!」

「人間の領域を回るんだぞ! ここゴールデンドーン以外では我らリザードマンはいるだけで迷惑になる!」

あー。なるほど。

俺たちは気にしないが、ゴールデンドーン以外だと、差別を初めとしたトラブルしか思いつかない。

「わ! 私は人間に近いから……!」

「尻尾を切り落としてついていくのか?」

「酷い! リザードマンの誇りを捨てろって言うの!?」

「その誇りが厄介だと言っているのだ! 同行は絶対に認めない! なにより遅れている湿地帯の開拓を進めねば、カイル様がお目覚めになったときに悲しまれるだろう!」

「うっ! そ、それは……」

これは勝負あったな。

カイルはそんなこと気にしないだろうが、リザードマン側からしたら、カイルに直接頼まれた仕事を優先させなければならないだろう。

膝から崩れ落ち、泣きそうなシュルルを横目に、ヴァンが最終決定を告げる。

「よし。探索組……冒険メンバーはクラフトを筆頭にマイナ、ペルシア、リーファン、ジタロー、ジャビール、リュウコ、エヴァ、カミーユ、マリリン、ノブナ、チヨメの十二名とする! 必ずユグドラシル=ソーマを手に入れてくるのだ!」

呼ばれた全員がばらばらに「おう!」とか「承知致しました」とか「了解」とか「はっ!」とか返事をしたことで、ヴァンが不機嫌になる。

「阿呆。貴様らがするべき返事は決まっているだろう?」

俺がなんのことかと首を傾げると、ヴァンが呆れたように手を振る。

「お前たちの決め台詞があるだろうが! ここは合わせろ!」

決め台詞!?

そんなのあったっけと頭をひねると、一つ思いつく。たぶんあれだ。

俺はとびっきりの笑みを浮かべ、親指を立てると、みんなも気づいたようだ。

そして国王の要請に対して答えてやる。

「「「よしっ! 俺たちに任せとけ!!!」」」

全員で思いっきり格好つけたつもりだったが、一部「私たち」だったり「任せてください」とかで、揃い切らなかった。

ぬあー!

ヴァンの野郎が盛大に笑いやがったので、いずれこっそり泣かすと誓ったのである。