軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

書籍2巻 発売記念SS『リーンハルトのピアス』

ステラとリーンハルトは彼のピアスに相応しい宝石を見つけるため、リンデール王国のある大陸を出て海を渡った。

鉱山が多く存在する大陸で、そこから採掘された宝石は海に面するカリアという街に集められる。リンデール王国も貿易を通じて宝石を輸入していた。

宝石の街カリアの半分は宝石関連の店で成り立っており、国家予算並みの宝石を扱う高級店から、庶民向けのクズ石を扱う店まで幅が広い。

「どんな宝石が良いか、ハルは希望ある?」

ステラは貴族向けクラスの宝石店に入り、様々な種類の宝石を眺めてリーンハルトに聞いた。

「ステラは、どんなのが俺に似合うと思う?」

「ハルに似合う……何色だろ」

リーンハルトは青い髪に金色の瞳と、人にはない珍しい綺麗な色を持っている。赤やオレンジといった主張の強い色は、彼の色を邪魔しそうだ。ルビーなどの赤系の宝石を除外して、寒色系の宝石を眺める。

それでも種類はとても多く、なかなか絞り切れない。

義両親は宝石収集が好きで、彼らが様々な宝石を身に着けているところは見てきたが、何が何の宝石かはステラは教えてもらわなかった。宝石の名前、価格、石言葉のどれも知識に乏しい。

幸いにも資金は慰謝料をたっぷり貰ったお陰で潤沢だ。予算には余裕があるので値段は気にしなくても良いのだが、選択肢が広いというのも問題だ。

「むうっ」と唸りながら宝石を睨みつけていると、リーンハルトがクスリと笑いを溢した。

「こっちは真剣なんだよ?」

「ごめん。でも自分のために選んでくれている姿が、その……愛おしくて」

「ハ、ハルッ」

ステラは責めるように声をあげるが、赤くなった顔のせいで意味をなしていない。

「そんなに怒らないでくれ。そうだな、一般的な話になるが恋人同士になると、相手の瞳の色と似た色の宝石を身に着けるみたいだぞ? ステラの瞳の色に似た色の宝石はどうかな?」

「緑系……」

ステラの意識は再び宝石に集中する。

エメラルド、翡翠、アレキサンドライト、グリーンガーネットと続き、ひとつの宝石の前で視線を止めた。

緑に黄色を溶かし込んだような優しい色に反して、光を強く反射する輝かしい石だ。札には「ペリドット」と書かれていた。緑はステラの瞳の色であり、強い光を持つ黄色――金色はリーンハルトの瞳の色だ。ふたりで、ひとつになったような宝石。

「とても綺麗」

手袋をつけた手で拾い上げペリドットを光に透かせば、小さな太陽のように更に輝きが強まった。けれども派手さはなく、温かみのある輝きだ。

「お客様はそちらを気に入られましたか。ペリドットの石言葉は夫婦の愛、幸福、希望です。大切な人に贈るにはピッタリの宝石でございます」

店主は他にもペリドットの知識を与えてくれた。太陽のようだと表現される宝石で、夜でも輝きを失わないことから闇を払うとも言われ、『災いから守る』という意味もあるらしい。お守り代わりに夫婦で贈り合う人も多いのだとか。

ペリドットは色も、石言葉も、まさにステラが求めていた宝石だった。あとは贈る相手の好み次第。

「私、これをハルに贈りたいんだけど、どうかな?」

長身のリーンハルトを見上げ、顔色を窺う。けれども心配など無用で、彼の表情はとても嬉しそうに緩んでいた。

「俺も素敵な石だと思う」

「良かった。店主さん、これをピアスに加工して欲しいんですが――」

「ではこちらに。土台となる素材とデザインを選んでください」

こうしてペリドットのカットの大きさや形、土台のデザインを選んで一週間、オーダーしたピアスは無事に完成した。

化粧箱に入れてもらったそれをステラは大切に手に持ち、リーンハルトを夕方の海辺に誘い出した。

「いつになったら付けさせてくれるんだ?」

「もう少し待って」

彼は本当に楽しみにしていたようで、すぐにでも身につけたくて仕方ないようだ。既に耳には穴をあけて、いつでもつけられるように準備は済んでいる。

ステラも早く渡したいが、ひとつやりたいことがあったため笑顔ではぐらかした。

人の少ない浜辺の端に着くと、ステラはリーンハルトに向き直った。少し照れたようにはにかみ、ステラは彼の耳にピアスを付けた。

「リーンハルト様、楽しいときも、悲しいときも支えます。困難があっても一緒に戦います。どんな時も、ピアスと共に私をそばにおいてください。あ、愛してます」

逆さ鱗とプロポーズの言葉をもらったとき、ステラはとても嬉しかった。胸の奥から溢れ出す幸福と、膨らんでいく未来への期待感は今も続いている。

だから彼にもその気持ちを分けてあげたかった。ロマンチックな場所で、素敵な言葉を――これは彼女なりのプロポーズのお返しだった。

リーンハルトもステラの気持ちを察したのか、わずかに瞠目したあと破顔した。

「もちろん、どんなことがあっても俺と一緒にいてくれ。ピアスも君も大切にする。愛している、ステラ――」

彼は彼女を引き寄せた。

夕陽が照らす浜辺では、ふたつの影がそっと重なった。