軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それから

事件から半月後に、メクレンブルク大公は目覚めた。

聖人インゴルフから襲撃を受けたことに関してしっかり記憶しており、何もかも終わったと告げると安堵していた。

メクレンブルク大公は長年子どもに恵まれず、心が弱っていた部分があったことを認めた。

その期間中に王妃との間に子どもができてしまい、引き取って育てることとなる。

何もかも間違いだったのかもしれない、と言うので、認めてしまったらルーベン様を否定することになると言ってしまった。

ただルーベン様の存在がメクレンブルク大公夫人を追い詰めてしまったようで……。

その後、奇跡が起こってシモンが生まれたものの、夫婦仲は破綻していたという。

「私が家庭を顧みなかったせいで、このような事態を巻き起こしてしまったのだ」

これからはメクレンブルク大公夫人やシモンと向き合うという。

「あの馬鹿息子も、教育し直すとしよう」

そんなわけで、メクレンブルク大公は事件をきっかけに、人生を見直すこととなったようだ。

それからというもの、メクレンブルク大公はどこに行くにしてもシモンを連れ、厳しく接しているという。

シモンは涙目になって、父親のあとをついて回っているようだ。

そんなシモンはイゾルテと結婚したという。

メクレンブルク大公は二人の結婚を認めたようだ。

秋には元気な子どもが生まれるという。

お幸せに、と初めて思えるようになったのだった。

◇◇◇

残っていた謎について、ある日突然解明された。

それは私が転移移動ばかりしていては体が鈍るから、と廊下を歩いていた日の話である。

前方から白猫さんがやってきて、久しぶりの再会に嬉しくなった。

これまで一度も触らせてくれなかったので、嫌われているのはわかっていたが、思わず駆け寄ってしまったのである。

「白猫さん! お会いしたかったです!」

私がやってきたので、白猫さんがギョッとし、後退していく。

「ごめんなさい、嬉しくってつい……。これからは、近づきませんので」

猫には好かれない体質なのだろう。そう思っておく。

「大聖堂で助けてくださったお礼だけでも、お伝えしたいと思っておりまして。本当にありがとうございました。白猫さんが助けてくださったメクレンブルク大公も、今は元気になっておりまして、その、心から感謝しております」

白猫さんはまんまるな瞳を、まっすぐ私に向けていた。

「それでは、その……」

踵を返し去ろうとした瞬間、白猫さんがすり寄ってきた。

「なっ――!?」

これは、触ってもいいよという合図なのではないか。

逃げる様子もない。

嬉しくって、しゃがみ込んで白猫さんを思う存分触った。

毛並みが美しくて、大人しくて、とてもいい子だ。

「白猫さん、誰とも契約していなければ、わたくしと――」

『待て、ゼラ、この猫は僕だ』

「ぼく……ですか?」

「そうだ」

見覚えのある瞳……毛並み……声……。

「も、もしかして、エーリク様ですの?」

『そうだ。しかもこれは変化の術ではなく幻術で姿をまやかしているだけで――』

「~~~~~!!」

白猫さんの正体に仰天する。

まさかエーリク様だったなんて。知らずによしよししてしまった。

エーリク様が幻術を解く。

私が触ったからか、髪はボサボサだった。

「黙っていてすまなかった。ゼラが思っていた以上に食いついてきたから、言い出せなくって」

「い、いえ!!」

なんでも白猫の姿は隠密時に使っていたものだったらしい。

そうとは知らずに、愛でまくっていたわけである。

「その、とってもかわいい猫さんでしたので、えー、たまには見せてくださいね」

「どうしてそうなる!」

愛猫家への道は遠いようだ。

◇◇◇

私はエーリク様の正式な婚約者となり、結婚は一年後と決まった。

エーリク様はすぐにでもしたい気持ちがあったようだが、じっくり結婚準備をしたいのと、私との婚約期間を楽しみたいと話していた。

婚礼衣装もいちから作るようで、生地や糸を決め、デザインを考え、ふわりんに縫製をお願いする。

他にも、披露宴について計画したり、招待客リストを話し合ったり、新婚旅行はどこに行こうかと考えたり、やることは山のようにある。

それは一度目や二度目の結婚ではできなかった。

聖教会に属する者は、節制を第一とし、清貧であることを美徳とするから。

華やかな披露宴なんてやらないし、婚礼衣装なんて贅沢の極まり、新婚旅行なんて浮かれた行事なんてもってのほか!! だったのである。

そのため結婚の準備というもののすべてが新鮮だった。

あっという間に楽しい婚約期間は過ぎ去り、結婚式の当日を迎えた。

ふわりんが仕立ててくれた婚礼衣装はとても素敵で、私に似合っているように思えた。

エーリク様からも、美しいと言ってもらえた。

そんなエーリク様は婚礼衣装を着た私を大衆に晒したくない、と主張し、結婚式には私達の結婚を祝ってくれた人達のみ招待することとなった。

その結果、参列したのはメルヴ・ウィザードにふわりん、国王夫妻と王太子殿下、マルベリーさんにジール先生、下町のシスター、それからメクレンブルク大公という、ごくごく限られた少人数になってしまった。

私の父親は三回目の結婚に、「もう持参品は用意できんぞ」なとど言っていい顔をしなかったのである。母は母で、結婚せずに生涯神にお仕えすればいいのでは、などど助言してきたのだ。

ちなみにシモンに奪われた持参品は、メクレンブルク大公の命令で返してもらった。

それをそのまま渡せばいいのでは、と思ったものの、父はそれをしなかったのだ。

最終的にエーリク様の説得で結婚を許してくれたものの、本当にしぶしぶといった感じだったのである。

バージンロードはメクレンブルク大公と歩いた。

メクレンブルク大公は私達の結婚を喜び、持参品を用意しようか、とまで言ってくれたのだ。

メクレンブルク大公家は実の父よりも、父親らしいことをしてくれた。

感謝したのは言うまでもない。

こうして私達は神の前で夫婦となる。

口づけを交わし、この契約が永遠になることを誓ったのだった。