軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ロイス司教との面会

ロイス司教はエーリク様を待たせたことに対する謝罪もなく、挨拶もそこそこにどっかり腰かける。

そしてロイス司教がやってきてから、お茶が運ばれてきた。

普通、来客に出すのが先だろう、と思ったものの、歓迎していないと暗に訴えていたのかもしれない。

ミサの始まりを知らせる礼拝堂の鐘が鳴り響く。

体にズーンと響くような音は、いまだに慣れないでいた。

鐘が鳴り終えたあと、ロイス司教が言葉を投げかける。

「して、オルデンブルク大公、何の用事でいらしたのです?」

ロイス司教の言葉遣いこそ丁寧に聞こえるが、面倒だと言わんばかりの目で見てくる。

「問題を起こしたのはそちら側だろう。報告書の文字は読めなかったか?」

不遜には不遜で返す、そんな態度をエーリク様は示した。

「魔導噴水の破損は耳にしていましたが」

「破損ではない、破壊だ」

エーリク様が直接対応していなければ、修繕に五日ほどかかったという。

「そちら側の主張では、聖教会の神を信仰する者達の暴走、とのことでしたが、証拠はどこにあるのですか?」

どうやらしらばっくれるようである。エーリク様は返す言葉が見つからなかったからか、「はーーーー」と深く長いため息を吐いていた。

「ロイス司教、メクレンブルク大公を呼んできれくれ」

「なっ――! この件は私が任されたもので、その要求は受け付けられません!」

「しかし、まともに話し合うつもりなどないではないか」

「それはオルデンブルク大公の捉え方が悪いからでしょう!」

話は平行線で、進む気配がない。

エーリク様は時間の無駄だと思ったのだろう。無言で立ち上がる。

「オルデンブルク大公、どこに行かれるのですか?」

「貴殿では話にならない、後日、メクレンブルク大公と話し合いの座を設けさせていただく」

「それはできません!」

エーリク様は帰ろうとしていたのだが、時間を見て気付く。

慌てて制止した。

「エーリク様、しばしお待ちください」

なぜ? という目で見てくる。その理由を耳打ちした。

「あと少しで、ここの前を、メクレンブルク大公が通るはずですので」

もしかしたら話を聞いてもらえるかもしれない。

しばらく粘ったあと、今だと合図を出す。

「帰らせていただこう」

廊下に出ると、こちらへ歩いてやってくる一団を発見した。やはり時間通りだったか、と安堵する。

やってきたのは六十代くらいの、深紅の聖衣に身を包んだ威厳たっぷりの人物――メクレンブルク大公だった。

「あっ!」

ロイス司教はメクレンブルク大公がやってきていることに気付いたようで、慌てた様子で廊下に躍り出る。

さらに彼はエーリク様を隠すように前に立つと、やってきたメクレンブルク大公に話しかけた。

「メクレンブルク大公閣下、本日はお日柄もよく!」

「ロイス司教、そこで何をしている?」

「客人を、迎えておりまして」

「こんな時間帯に客人だと?」

メクレンブルク大公は眉間に皺を深く刻みつつ、探るような眼差しを向けていた。

この好機をエーリク様が逃がすはずもなかった。

「メクレンブルク大公、ちょうどよかった」

エーリク様を見たメクレンブルク大公は目を見張る。

この反応から推測するに、エーリク様の訪問について聞いていなかったのだろう。

「貴殿はなぜここに?」

「昨日の騒動についてメクレンブルク大公と話をしたかったのだが、忙しいと聞いて」

「昨日の騒動だと?」

報告が耳に届いていなかったのか。メクレンブルク大公はジロリとロイス司教を睨むように見る。

「あの、その、少々、お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」

メクレンブルク大公は無言で背後に従えていた人々を振り返り、解散を言い渡していた。

スケジュールの変更をしたようで、面会に応じてくれるという。

ロイス司教はこんなつもりなどなかったのだろう。額にびっしりと冷や汗を掻いていた。

さすがに元義父であるメクレンブルク大公を前に同席することはできず、エーリク様の背後に控えておいた。

「して、何があった?」

「そ、それが~~」

「ロイス司教、お前には聞いていない」

「は、はい、申し訳ありません」

メクレンブルク大公はエーリク様に説明を求めた。

「――というわけで、聖教会の信者の暴走で、魔導噴水が壊れてしまい、中央街の者達の生活に支障をきたしてしまった」

「そのようなことがあったとは」

メクレンブルク大公は冷静に言葉を返しているようだったが、額には青筋が浮かんでいた。

それを目の当たりにしたロイス司教の顔色が青白く染まっていく。唇はすでに紫色だった。

「すぐにでも修繕にかかった費用と人件費、それから慰謝料を払おう」

「そうしてもらえると、こちら側も助かる」

メクレンブルク大公は相変わらず公平無私なお方で、変わりないようだった。

シモンとの再婚もそんなメクレンブルク大公からの打診だったので、私は受け入れたのだ。

これで終わりかと思いきや、メクレンブルク大公はロイス司教に止めを刺すような言葉を投げかける。

「ロイス司教、貴殿はなぜ、すぐに報告しなかった。その上、自分だけで解決しようとしていた?」

「そ、それは」

「もしや、この件をもみ消すつもりだったのか?」

「い、いえいえ、そんなつもりはまったくなく……」

すかさず、エーリク様が抗議の声をあげた。

「ロイス司教は騒動について証拠がないと取り合わなかったのだが」

「なんだと!?」

メクレンブルク大公は悪魔のような形相でロイス司教を睨んでいた。

「も、申し訳ありません!」

「謝って済む問題ではない!」

「ひいいいい」

その後、ロイス司教は聖騎士に囚われ、連行されるように退室していった。

「どうやら盛大な失礼を働いたようだな」

まったくだ、とばかりにエーリク様は頷く。

「今後のやりとりは、うちの嫁を派遣しよう」

「嫁、とは?」

「なんだ、貴殿はメクレンブルク大公家の聖嫁を知らないのか?」

エーリク様はいったい何を言っているのか、とばかりの反応を示す。

「我がメクレンブルク大公家の自慢の嫁、ギーゼラを知らぬとは」

「いや、彼女は夫であるシモン・フォン・メクレンブルクと離縁したと聞いていたが」

「は!?」

メクレンブルク大公は私とシモンの離縁を把握していなかったようだ。