軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第12話

ヴァンニャはあちこち転々として過ごしていたらしい。

特に明確な拠点はなかったため、そのままこの村に住んでもらうことになった。

次の日。

「……うぅ……忌々しい太陽じゃな」

ヴァンニャの家へと迎えに行くと、彼女はとても顔色が悪かった。

「やっぱり、太陽は苦手なのか?」

「そうじゃな……」

ヴァンニャはとても元気がなかった。

ステータスを見ても変化はないが、今仮にヴァンニャと戦えば、恐らく戦闘能力はステータスの半分かそれ以下程度の能力しか発揮できない可能性も高いだろう。

「ひとまず、俺の家に来てくれ。これからのことについて話し合いたい」

「分かったんじゃ」

ヴァンニャはふらふらとした足取りで歩いていく。あまりにも不安にさせる背中だったので、俺は彼女の手を握る。

「家まで案内するから、しっかりしてくれ」

「ふぅ……分かったんじゃよ」

ヴァンニャはそれこそ俺の腕に抱きつくような勢いで体重をかけてきた。

といっても、彼女は軽いので大きな問題はなかった。

村内を歩いていると、畑などを作っている皆の姿を見ることが出来た。

それに気づいたヴァンニャは驚いた様子だ。

「ここまでしっかりと村を作れるなんて、皆おぬしが魔名を与えた影響なのかえ?」

「ああ、そうだな。皆スキルを持っているから何かしらの役目を担ってくれているよ」

「なるほど……」

こくこくと納得した様子で頷くヴァンニャに、亜人たちも気づいた。

ヴァンニャを見ながら、彼らはどこか悲し気な表情になった。

「……あんな小さいのに頑張っているんだな」

ヴァンパイアたちの事情を聞いた村の人たちは、皆ヴァンニャに対してそんな同情的な視線を向けている。

「それにしても、ヴァンパイア種はともかく、まさかオーガ種までこんなところにいるなんてな」

「オーガって言ったら、やばいよな? あいつら相手に……勝てるのか?」

オーガ種というのはどのくらい強いんだろうな。

俺も直接戦ったことはないため、その力は分かっていなかった。

家につくと、すでにリビア、オルフェ、スフィーの三人はいた。こちらに気づいたスフィーがにこりと微笑む。

「飲み物を用意するわね」

「……いや、スフィーの出し方は汚いからやめてくれ」

俺がやんわりと否定すると、スフィーは笑顔で木のコップを手に取った。

「味は変わらないわ」

ふっと微笑みスフィーが口から液体を出した。

「どうぞ」

「……な、なにをのませるつもりじゃ!」

そりゃあ当然の反応だ。ヴァンニャがスフィーを睨みつけると、スフィーがにこりと笑った。

「ただのお茶よ。私、体内で作れるのよ? スライムの個体によっては、ポーションとかだって作れるんだから」

「……だ、大丈夫なんじゃな?」

俺が黙っていると、スフィーがすっとコップを俺のほうに移動させた。

「まず安心させるにはクレストから飲まないと。私の体液、味わってね」

「……言い方ってものがあるだろ」

俺は差し出された暖かそうなお茶が入ったコップを口に運ぶ。

悔しいが、うまいのだ。

スフィーは特にスキルなどは持っていないが、恐らく俺が本気でお茶を作って、用意するよりも美味しく作れると思う。

「私の体液が、クレストの体に入っていくわね」

「……スフィーさん、あまりふざけたことを言わないでくださいね」

リビアが苛立った様子で声をあげる。スフィーはしかし、そんなこと気にもせず、全員分のお茶を用意した。

ヴァンニャは恐る恐るといった様子で口をつけ、目を輝かせた。

「お、おいしー!」

「……それはよかった」

味はいいからな、味は。

出し方が汚いだけで。

全員で席についたはいいが、さすがに五人で集まると部屋が少し狭く感じる。

今後も会議などで使うのならば、もう少し大き目の家を作りたいものだ。

「ヴァンニャ、オーガ種たちがいる村とかは分かるのか?」

「分かっておるんじゃよ。奴らは村を二つ持っているんじゃ」

「村を二つ、か」

「そうじゃ。それにそれなりにしっかりとした造りをしていたんじゃよ。ここと同じくらいじゃと思うな」

なるほど。

「オーガ種というのは、そんなに建築技術があるのか?」

「……うーむ、建築ができる個体がいる、というところじゃろうな」

「なるほどな」

俺たちと同じような状況か。

そうなると、もしかしたら魔名を与えられる奴もいるのかもしれない。

「オーガ種の力がどのくらいなのか分からないが……どのくらい強いんだ?」

「……かなり、じゃ。少なくとも、わしらは一度正面からやりあったのじゃが……勝てなかった。一方的になすすべなく、敵の首領のもとまでたどり着くこともできず、そこらの雑魚にやられてしまったんじゃ」

ヴァンニャのステータスで、歯が立たないのか?

「……クレスト。確認したい。ヴァンニャのステータスはどのくらいだ?」

オルフェが、恐る恐ると言った様子で聞いてきた。

俺は小さくため息を吐いてから、ステータスを彼らに見えるようにした。

そしてそれを見て、オルフェたちは顔を顰めた。

「このステータスで、手も足も出なかったのか?」

「……多少、魔名をつけたことでステータスは上がっていると思うが、それでもな」

オルフェが腕を組み、頬を引きつらせていた。

同じ心境だな。

ステータスでいえば450程度はあるようなのがうじゃうじゃいるんだからな。

こちらの戦力から考えてみても、正直正面から戦いたい相手ではない。

「……恐ろしい相手、ですね。これまでとは違いますね」

リビアがそういったとき、スフィーがリビアを睨んだ。

「ちょっと待ってくれるかしら。それって、私が弱いということかしら? スライム種舐めてるの? 馬鹿にしているの?」

なんでそこで喧嘩腰になるんだスフィーは。

「そうは言っていませんよ。まあ、ステータス的に倍近く違うのは事実ですけど」

「あ? なに? 私とやるっての?」

スフィーがじっとリビアを睨む。

俺がため息をついてから、そちらに伝える。

「喧嘩しないでくれ」

「はい、クレスト。分かったわ」

スフィーは頬を染めながら、嬉しそうに微笑んだ。

スフィーは名前をつけてから態度が激変した。正確に言うなら、ヴェールド戦の後からだな。

じろーっとリビアが俺とスフィーを見てくる。

それを今は気にしないでおいた。

「ヴァンニャ、悪いが今の俺たちじゃオーガ種には勝てない。数日は、ここで力をつけ、全魔物のステータスが500近くまであがるまで鍛えるつもりだ」

今のまま挑むのは無謀だ。それをヴァンニャも理解しているようで、こくりと頷いた。

「分かったんじゃ。じゃが、そんな短期間で強くなることが可能なのか?」

「ああ」

俺の魔物使役、魔物指南があれば、きっちり鍛えればステータスを大幅にあげることは可能だ。

特にリビア、オルフェ、スフィーは前回の戦いでかなりステータスが伸びているからな。

他の魔物たちだって、平均でいえば300近くまではあがっている。

あとは、さらに鍛えてその平均値をあげていくだけだ。

「だから、ヴァンパイア種を救うのはもう少し後になる。悪いな」

「いや……仕方ないんじゃ。確実に救えるようになるまで、無茶をしてはいけないんじゃ。……せっかく、助けられるチャンスでもあるんじゃしな!」

寂しそうに、しかし懸命な様子でヴァンニャが笑う。

「……ああ、必ず助けよう」

「ふふ、ありがとうなんじゃ! わしも出来る限りの協力はするからの!」

ヴァンニャは嬉しそうに微笑み、翼をパタパタと動かした。

それを見て、リビアたちもまた、改めて気合を入れなおしたようだ。