軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第35話

オルフェへの感謝。

スライムの村を出たところで、俺はオルフェを見た。

「ありがとな、オルフェのおかげで向こうも俺たちのワーウルフへの敵意を多少は下げてくれたようだ」

だからこそ、クイーンスライムとの同盟がああいった形で成功したのだろう。

オルフェは苦笑を浮かべていた。

「オレはただ、自分の気持ちを伝えたにすぎない」

「だからこそ、みんなの心に響いたんだ」

俺がそういうと、オルフェは照れ臭そうに頬をかいていた。

村に戻ってくると、リビアが迎えてくれた。

「特に問題はありませんでした」

「……そうか。それは良かった。とりあえず今は、南側でみんな魔物狩りをするんだ。食糧の確保とステータスの強化を行ってくれ」

「はい、今も皆行っています」

……南側であれば、問題はないだろう。

俺も剣を持ち、訓練場へと向かい、ゴブリン、ワーウルフに稽古をつけていった。

夕方になり、夕食の準備が整ったため、稽古は切り上げる。

残っていたゴブリンとワーウルフも皆進化することができた。特に、目新しいスキルは手に入らなかったが、料理術などの生活に役立つスキルを手に入れた魔物たちはいたため、今後のそれぞれの負担も減ることだろう。

夕食の時間はほぼ毎日同じくらいだ。その時間に合わせ、外で狩りをしていたワーウルフが戻ってきて……それから俺のほうにやってきた。

「クレストさん、少しいいですか?」

「どうしたんだ?」

「……その、結構南に行ったところで、人間の姿を発見したのですが」

「人間だと……? 間違いないか?」

「は、はい」

ワーウルフはこくこくと頷いた。

……人間、か。一体誰だろうか?

脳裏をよぎったのは、ハバースト家の誰かだ。

アリブレットは現在行方不明となっている。

その捜索と、俺を探して、という可能性は非常に高いだろう。

「……こちらから何かしかけたのか?」

「い、いえ……クレストさんと同じ人間ですし、クレストさんの判断を仰いでからにしようと思いまして」

「わかった。ありがとう……俺があとで様子を見に行ってみる」

「わかりました」

……それにしても、人間か。

俺が考えていると、リビアが顔を覗きこんできた。

「どうされるのですか、クレスト様」

「そうだなぁ……」

南……ということは恐らく門を通じて下界に降りてきたのだろう。

……下界の管理者だろうか?

あるいは……ハバースト家の人間か。

以前のアリブレットの様子を思い出すに、俺を探しに別の人間を派遣したという可能性はある。

……俺のスキルが使えるとわかった途端に、利用するために血眼になって探しているんだから頭にくるってものだ。

上に戻るつもりはない。別に、上でなければ生活できないわけではない。

大切な人がいるわけでもないのだからな。

だが……それとは別の可能性も考えられる。

転移魔法陣に乗せられた人間だとも考えられる。

「……とりあえずは、探しに行ってみようと思う」

「そうなのですね。お仲間が増えるといいですね」

……それに関していえば、可能性は少ないだろうな。

「……たぶん、仲間にすることはほぼほぼ、ないと思う」

「え? どうしてでしょうか?」

「……まず、この下界におりる人間ってのは大きくわけて三種類なんだ」

「……三種類ですか? 確か、一つは下界と上界を繋ぐ門を守る人、ですよね? 昔母に聞きました。あまり南にいってしまうとその人間たちに狩られてしまう、と」

「ああ、その通りだ。下界の管理者たちの役目は、上界へとつなぐ門を守ることだ。だから、門付近に近づいた魔物を狩っているんだ……。まずそれが一つ、そしてもう一つは転移魔法だ」

「……転移魔法。人間はそのような高度な魔法文化をお持ちなのですね」

驚き、僅かに恐怖した様子のリビアに対して俺は首を振った。

「いや、今の人間たちにその魔法を完全に把握している人はいないよ。上界の何か所かにある転移魔方陣は、はるか昔に造られたものだ。魔力を込めれば使用できるが、それを理解して使っている人間はいない。その主な使用方法は上界から下界に罪人を送るためにあるだけだ」

「……罪人、ですか? ……それでは、クレスト様も何か地上で問題を起こしてしまったのでしょうか?」

「……俺は、違う」

「では、どうしてですか?」

「俺はスキルが弱すぎて……まあ、親を怒らせてな。罪人という扱いで下界に送られたんだ」

「……そ、そうなのですか? あれほど凄いスキルですのに?」

「……当時はスキルの使い方を分かっていなかったんだ。だから、使えないスキルだと思われてな」

俺はなるべく暗くならないように、笑顔とともにいった。

……追放された瞬間は確かに落ち込んでいたが、今はもう気にしていない。

上界にあったものよりも大切なものができたからだ。

「……そうなんですね。クレスト様のスキルは素晴らしいものです。気にしないでくださいね」

「ああ、ありがとう。とにかく、そういうわけで……もしかしたらその人間は地上で問題を起こした罪人である可能性もあるんだ」

「……なるほど。確かに、危険な人かもしれませんね。それでは、三つ目はどのような人なのでしょうか?」

「それは……俺を探しておりてきた上界の人間だ。以前、俺は門から降りてきた家族に会ったんだ」

「……ご家族の方、ですか?」

「ああ。俺のスキルが優秀だということが分かったらしくて、連れ戻そうとしたんだ」

「戻るつもりはないのですか?」

「ああ、まったく。上界にいっても利用されるだけだ。ここでなら、俺の自由に生きられるしな」

俺が肩をすくめながらそういうと、リビアは微笑んだ。

「……それでしたら、ずっと一緒に暮らしていけるのですね」

「……そうだな。まあ、ワーウルフが見た人間が、もしかしたらよい人、という可能性も……多少はあるからな。だから、俺は一応様子を見に行くつもりだ」

「わかりました。それでは、私も同行しましょうか?」

「いや。何かあったときのために村に残ってくれ。護衛はゴブリアとルフナがいれば十分だからな。……もしもの時は、オルフェに指揮をとらせてほしい」

俺は遠くでワーウルフやゴブリンと食事を楽しんでいるオルフェを見る。

……種族の違う両者は、すっかり仲良くなっているな。

「わかりました」

「彼は熱血で、少し周りが見えない部分はあるが人を引きこむような力強さはある。足りない部分はリビアがフォローしてやってくれ」

「はい、私もその方が良いと思います。私は表に立つのはあまり得意ではありませんから」

「そうか」

食事を終えた俺は、立ち上がりゴブリアとルフナに声をかける。

「俺は少し、南で発見されたという人間を探しに行ってくる! もしも、敵襲があったときはオルフェの指示に従え! オルフェ、頼むな」

「ああ、わかった」

「リビアと協力して、村を守ってくれ」

俺がそういうと、オルフェはリビアをちらと見てから強く頷いた。

……さて、一体誰なのだろうか?

南にいる人間を思い浮かべながら、俺はゴブリアたちと村を出た。