軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第7話

ゴブリンクイーンにこれまでの状況を伝えていく。

それらを聞き終えたところで、ゴブリンクイーンは立ち上がり、改めて俺の前で膝をついた。

「……ありがとうございました。あなたがいなければ、私たちゴブリン族は今頃全滅していたかもしれません」

「別に、そんなだいそれたことはしてないって。……俺もここでしばらく過ごさせてもらうっていう約束だったからな。……それより、もう体の調子は大丈夫なのか?」

「はい。クレスト様のおかげで、今はもう問題ありません」

にこりと微笑んだゴブリンクイーン。本当に人とそう変わらない見た目、笑顔にちょっと照れ臭かった。

「それで……クレスト様。少しお聞きしたいのですが……人間のあなたがどうして下界にいるのでしょうか? 確か、人間たちは上界で暮らしているはずですが……」

「あー……その。俺スキルが使えないって理由で下界におとされちゃったんだよ」

俺の言葉に、ゴブリンクイーンだけではなく、ダクルトたちも目を見開いた。

……それもそうか。

俺とこうして接している彼らはまさか俺のスキルが弱いとは思ってもいないだろう。

ゴブリンクイーンもきょとんとしたように目をしばたかせている。

可愛いなぁ……と思う。

「そ、それは……どうしてでしょうか? 先ほどの話では、とても優秀なスキルだと思われたのですが……」

「確かに優秀なんだけど……その優秀なスキルを獲得するために、俺はポイントを使うんだ。それで、ポイントを獲得するには魔物を倒す必要があって……上界にいたときはその入手方法が分からなくてな」

「……なるほど。確か上界は魔物があまりいないと聞いたことがあります。それで、使えないとして……下界に落とされてしまった、と」

「……そういうことになるな」

話していて悲しくなってきたな。

まあ、上界に戻りたいという気持ちは今はまったくといっていいほどなかった。

親しい人というのもほとんどいないしな。

騎士学校に通っていたときに、多少関わりがあった人はいるけど、それくらいだしなぁ。

「それでは、現在のクレスト様の目標は……上界に戻ることでしょうか?」

「……いや、今はここで自由に生活できれば良いかな、と思っているんだ」

「ここで、自由に生活……ですか」

「ああ。仮に、俺のスキルが優秀だったって証明されたとしても、また面倒な貴族の生活とかあるしな……」

貴族は面倒だし、婚約者の関係だってどうなるか分からない。

すでに婚約関係は解消されたと思っているが……どうなっているのかは完全には不明だしな。

「だから、こちらにやってきたのですね?」

「……こちら? どういうことだ?」

「えーと、ご存じではありませんでしたか?」

「いや、何のことだ?」

「ここから、南に下りますと……上界と下界を繋ぐゲートにたどり着くことができるのです。だから、てっきり……上界に戻りたくないから逆を目指しているのだと思っていましたが……」

「そ、そうだったんだな」

知らなかったな。

南のほうはあまり何もなかったので探索してこなかった。

……いや、何もなかったのは、ゲートが近いからかもしれない。

ゲートには、常に下界の 監視者(ゲートキーパー) と呼ばれる人々がいる。

彼らは時折ゲートから下界におり、魔物を狩って上界に流すという仕事をしている。

あとは、魔物の侵攻を食い止めるという役目だな。

……彼らが近場の魔物を狩っているから、南のほうは魔物が少なかったのだろう。

だがこれで、どうしてアリブレットがすぐに俺を見つけられたのかも納得できた。

……今後もハバースト家がやってこないとも限らない。このままさらに北へと進んだほうがいいだろう。

「……クレスト様。折り入って頼みがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「……なんだ?」

改まった様子の彼女に、俺は少し緊張する。

ゴブリンクイーンはきゅっと片手を胸元にやり、それからこちらを見てきた。

「わたくしと……こ、婚約していただけませんでしょうか?」

可愛らしい頬を朱色に染め、視線を僅かに外に向けた。

……一瞬理解できず、俺は固まる。

それから、目を見開いた。

「そ、それってどういう意味だ!?」

「そ、そのままの意味です……。詳しい事情を話しますと、色々とあるのですが……」

「き、聞かせてもらってもいいですか?」

俺が言うと、ゴブリンクイーンはこくりと頷いた。

「……私たちゴブリン族のもとに同盟の話が来ています。……というのも、ゴブリン族はあまり魔物たちの中では強くありません。ここにいるゴブリンたちは、野生のゴブリンと比べてみな力はありますが……それでも、他種族には劣ってしまいます」

「同盟、ですか……」

「はい。それで、ですね……同盟の条件として……私が要求されているんです」

ゴブリンクイーンの言葉に俺は少し貴族の時代を思い出した。

家同士を仲良くするため、その子息、子女同士で結婚させるというのはよくあることだ。

俺とエリスも似たような関係だ。……まあ、うちの場合は公爵家の中で立場が弱いため、その立場向上の意味合いのほうが強いのだが。

「魔物でも似たようなことがあるんだな……」

「人間でもそうなのですか?」

「まあな。……けど、どうして俺と婚約なんだ……?」

「あなたに、ゴブリンたちの王になってほしいのです……そして、ワーウルフ族に対して力を証明してほしいのです」

……ゴブリンクイーンはまっすぐな目とともに、俺を見てきた。

ゴブリンクイーンは一族を助けるために、俺に自らを差し出そうとしているというわけか。

「同盟を持ち掛けてきているのはワーウルフ族、なんだな?」

「……はい」

「数はどのくらいになるんだ?」

「……三十ほどでしょうか。決して多くはありませんが、力があります。うちのゴブリンで対抗できるのは私とダクルトくらいなものでしょう」

……つまり、名前を与えた今。

ダクルトならばもしかしたらワーウルフに勝てるだけの力を手に入れているかもしれないな。

俺は小さく息を吐いてから、ゴブリンクイーンに声をかける。

「……悪いな。俺は政略結婚とかそういうのが一番嫌いなんだ。だから、この提案は断る」

「……そ、それでしたら、今回だけでも手を貸してはいただけませんでしょうか!? お願いします、私にできることならばなんでもしますから……」

「……いや、そこまでしなくても、乗りかかった船だ。協力はするよ」

「え!?」

俺の返答にゴブリンクイーンは驚いたようにこちらを見てきた。