軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第4話

「ぽ、ポイズンスネークを倒さないといけないのか?」

「一応、今俺が持っているポーションを飲ませてみないことには分からないが……そんなに強い魔物なのか?」

「あ、ああ」

俺は今作れるポーションからもっとも質の良い物を作り上げてみる。

それをゴブリンクイーンの傍に寄り添っていたゴブリンに渡す。

警戒した様子で俺の隣のゴブリンと俺が手渡したポーションを見比べていたが、俺の隣にいたゴブリンがこくりと頷く。

ゴブリンクイーンの口元に、ポーションが入ったコップを当てる。

こくこく、とゴブリンクイーンの喉が鳴る。

少しだけ、表情が和らいだが……まだ、毒が残っているのか、苦しそうだった。

「……やっぱり、ポーションだけじゃ一時的に治療できる程度みたいだな。試しに、この解毒ポーションを飲ませてみてくれ」

俺が渡したポイズンビーの素材で作った解毒ポーションを渡す。

……こちらはあまり品質が良くない。ポイズンビーの素材では、これ以上の解毒ポーションは作れないのかもしれない。

同じようにゴブリンクイーンに飲ませる。しかし……やはり毒は消えていない様子だった。

たぶん、もっと高品質の解毒ポーションじゃないとダメなんだろう。

この状況を見ていた俺の隣のゴブリンが、ぐっと拳を固める。

「……やはり、ポイズンスネークを倒さないといけない、のか」

「それから、毒消し用の薬草があれば、な。ドクナイ草……だったかな? 見つかれば、それが手っ取り早いんだが。

まあ、そう気負わないでくれ。俺も協力しよう」

「ほ、本当か!?」

そういった途端、ゴブリンが嬉しそうに目を輝かせた。

「ああ。乗りかかった舟だしな」

「……そ、そうかっ! クレストがいてくれるのなら、心強い!」

俺としても、一人で戦うよりは誰かと一緒に戦えたほうがいいからな。

……特に、ゴブリンクイーンの状況を見るに、毒をもらうと俺でも危険な可能性があるからな。

仲間が多いときに、なるべく様々な種類の魔物と戦っておきたかった。

「それなら、早速、協力してくれないだろうか? 一刻も早く、女王様を救いたいんだ!」

「……わかった。それじゃあいこうか」

俺たちはゴブリンクイーンの家を出た。

それからゴブリンは、ゴブリンたちを集めに向かう。

ゴブリンの号令によって集まったのは、俺が初めて出会った時のゴブリン5体だった。

「ここにいるオレたちが、この村の中での精鋭だ」

俺とずっと一緒にいたゴブリンがさっと片手を向ける。

しかし、精鋭と呼ばれた五体は、皆青白い顔をしていた。

「とても、これからポイズンスネークを倒しにいく者たちの顔には見えないが……」

「お、おい! おまえたち! 女王様を助けたいとは思わないのか!」

傷持ちゴブリンが叫ぶ。

……このゴブリンは会った時からそうだが、他よりも女王様への忠義が厚いな。

「い、いや助けたいけどよぉ……」

「け、けど……大丈夫なのか? オレたち、そりゃあ確かに戦えるほうだけど……このまえのポイズンスネークに襲われたときは、手も足も出なかったじゃないか」

そんなに強いのか。

俺がそんなことを考えていると、傷持ちゴブリンがうっと声をあげたあと、俺のほうを見て来た。

「……確かにオレたちは女王様を救いたい。だが、やはり……ポイズンスネークを相手にするのは中々厳しいところがあるんだ。……何か、策はないか?」

「……策、か」

といってもだ。

そんなみんながあっさりとやる気を出すようなものなんてないな。

「ゴブリアと一回デートする、とかどうだ?」

オスのゴブリン二体はそれでやる気を出すかもしれない。

傷持ちゴブリンが声を荒らげた。

「そんな不純な理由でやる気を出すわけないだろ!」

「く、クレスト! それは本気か!」

「馬鹿! 恥ずかしいからやめろ!」

傷持ちゴブリンが目を輝かせた二体のゴブリンの頭を叩く。

……ほら、ちょっとやるき出したじゃないか。

傷持ちゴブリンはこほん、と一つ咳ばらいをした。

苦笑していた俺は、もう一つの提案をすることにした。

「てっとり早く強くなりたいのなら、俺が名前を与えようか?」

「え?」

驚いたように、ゴブリンたちがこちらを見てきた。

「だって、そのほうが早いだろう?」

「だ、だが……名前を与えられる数には制限があるはずだ」

「いや、俺は特にそんなことはなさそうだ。……それに、名前をつけたあと、なくすこともできるようだからな。万が一、制限が出てきたら解除させてもらうかもしれないが」

ゴブリアとルフナを見てみても、それは可能なようだった。

俺の言葉に、ゴブリン六体が目を輝かせた。

傷持ちゴブリンが、ちらと彼らを見てから、頷いてきた。

「わ、分かった……契約をお願いできないか?」

「……ああ。といっても、名前を六体分も決めるのは大変だからな――みんな名乗りたい名前とかないか?」

……それで良いのなら、そっちのほうが手っ取り早い。

ゴブリンたちは目を輝かせ、それからそれぞれ考え始めた。

真っ先に手を挙げたのは、先ほどゴブリアデートに魅力を感じた二体だった。

「く、クレスト! オレはゴブリールがいい!」

「……わかった。ゴブリールな」

「お、オレはゴブドンだ!」

「……了解だ。みんな、ゴブをつけるのに拘りでもあるのか?」

「当たり前だ! オレたちはゴブリンだからな!」

にかっとゴブリールとゴブドンが笑った。

彼らのステータスが表示された。……なるほど、俺が命名したからなんだろうな。

ゴブリールとゴブドンはオール110程度のステータスだ。

結構高いが、たぶん俺の命名によって強化された部分もあるだろう。

元々は100あるかないか程度だったんじゃないだろうか?

「か、体が軽い! 今のオレたちなら、何にだって勝てるかもしれないぞ!」

「こ、これが名前か! ありがとうクレスト!」

「ああ、次に行こう」

ちらと見ると傷持ちゴブリンが控えめに手をあげる。

「決まったのか?」

「あ、ああ……ぶ、ダークボルト……というのはどうだ?」

「……」

……えぇ。まったくゴブリンと関係ない名前じゃないか。

ゴブリールとゴブドンがひそひそと話しだす。

「あいつ、前に魔導書を読んでいたことあったよな?」

「そうそう。なんか意味深な言葉をぶつぶつ呟いていることあったよな。……たまに、あの病気発症するんだよな」

-

上界ではそれを中二病と呼ぶのだ。

中等教育を受けている生徒が、稀にあのような状態に陥るため、そこから名前をとったらしい。

「う、うるさい! 黙れ! おまえたち、首を刎ねるぞ!」

顔を真っ赤にゴブリンが叫ぶ。

……とはいえ、名前長いしな。

「ダークボルトでも良いが、呼ぶときは略しても良いか?」

「そ、そうだな……えーと、略すのなら――そう、漆黒とかはどうだ?」

……どこか恥ずかしそうにそういったゴブリンに、ゴブリールがあっけらかんといった。

「いや、ダクルトでいいだろ」

「そ、それはださくないか!」

「いや、呼びやすくない? ダクルトでいいじゃん。な?」

「……む、むぅ」

……まあ、ダクルトのほうがまだわかりやすいか。

なんだか、コボルトという魔物がつけそうな名前になってしまったような気もしたが。

「それじゃあダクルトでいいか?」

「あ、ああそうだな……」

……ダークボルト、改めダクルトと命名した瞬間だった。

ダクルトは、自らの両手に視線をやる。

「ち、力が……湧き上がる……っ!」

……また中二病を発症させたのかと思ったが、そうとも限らないようだった。

俺はダクルトに魔物進化術が反応していることに気付いた。