軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第32話

「マールナス。確認したいんだが、あのときリオンに持たせた強化魔石があるだろう?」

「ええ、ありますね」

「あれのデメリットがない奴は造れるか? 死ぬような強化じゃないが、ぎりぎりまで強化するようなものだ」

手っ取り早く強くなるには、それが必要だろう。

マールナスが作っていた強化魔石は、ヴァンニャもやばいものだと言っていたし、ヴァンニャにお願いするよりも強力なものは造れるだろう。

「ええ、作れます。クレスト様に最適化した強化魔石を用意しましょう。私、強化魔石の製作が得意ですから」

にこりと微笑んだマールナスに、エリスがジト目を向ける。

「あなたの強化魔石なんて使えますの? クレストも、手にかけようとしているのではありませんこと?」

エリスがそういうのも無理はないだろう。

マールナスが、俺を騙そうとしている可能性だってあるんだからな。

エリスの指摘に対して、マールナスは目つき鋭く睨み返す。

「そんなこと絶対にするわけがないだろう? 頭にウジでも沸いているの?」

マールナスの喧嘩腰の言葉に、エリスも睨みを強める。

エリスの心配する声も分かるが、最悪ヴァンニャに検査してもらえばいいだろうとも思っている。

「クレスト様。もしも心配であれば、私に奴隷の首輪をつけてもらってもいいですよ?」

マールナスの視線がこちらに向き、にこりと微笑んだ。

奴隷の首輪、か。

リオンの例があるため、確実に安全だとは言い切れないが、それでも何もしないままに作らせるよりは安全だろう。

しかし、だ。

奴隷の首輪をつけ、絶対的な立場で命じるというのは、あまり好きではなかった。

独裁者にでもなってしまったかのような気分になるからかもしれない。

「……それは、さすがにしたくはないな」

俺がぽつりと素直な気持ちを漏らすように口にすると、マールナスは感動したような表情になる。

「お優しいですね、クレスト様。ですが、本当に気にしないでください。つけてくださって大丈夫ですよ?」

「いや、だから大丈夫だって。そこまではしない。マールナスを信じるぞ」

「それはありがたいお言葉ですが、そんな遠慮せずに! むしろ、つけてください!」

「どうしてだよ」

「興奮しますから」

余計につけたくなくなったよ。

マールナスが嬉しそうに尻尾を左右に振っている姿に頭を抱えてしまう。

「奴隷の首輪をわざわざつけなくても、マールナスが俺を慕ってくれていることは分かったから。これから、よろしくなマールナス」

「クレスト様……! あなたが死ぬまで私は共に歩み続けます!」

警戒していた妖狐の問題はひとまず、片付いた。

それに、彼女の話が本当ならば、レイブハルトとの力の差を埋める手段にもなりうるだろう。

状況が多少は好転していることに、俺は満足していた。

ただ、同時に少し思うところはある。

……ミヌ。

大丈夫だろうか?

万が一、レイブハルトが上界を攻めた場合、ミヌも危険に晒されるだろう。

上界で唯一といってもいい大切な友人だ。

彼女だけでも、どうにか助けたいという気持ちがあるのは確かだった。

次の日。

俺が北の情報を集める準備をしていると、部屋の扉がノックされた。

リビアとともに玄関へと向かうと、そこにはマールナスがいた。

「クレスト様。朝早くから申し訳ございません」

「いや、別に大丈夫だけど何かあったのか?」

朝からどうしたのだろうか、と思っているとマールナスは軽く一礼をした。

「強化魔石についてのご相談がありまして」

「……どうしたんだ?」

少し警戒してしまう。

マールナスの強化魔石の性能を知っていたからだ。

それから、マールナスは人差し指と中指を立てた。

「あの強化魔石は二種類ございまして、まず一つ目は汎用的な強化魔石ですね」

「汎用的な?」

「はい。誰が使ってもそこそこの性能になるというものです。基本はこちらを皆に持たせるのが良いかと思います」

「……なるほどな」

これまで何度も見てきた魔石が、それに該当するものだろう。

そんなことを考えていると、マールナスが言葉を続けた。

「もう一つは限定的な強化魔石ですね」

「そっちはどういう効果なんだ?」

「その人に合わせた強化魔石ですので、それはもう汎用的なものとは比較にならないくらいの性能なんです。ですから、私はクレスト様にその強化魔石を作ろうと思っているのですが……それには条件がありまして」

マールナスは嬉しそうな口調でそう言っていた。

一体何を要求されるのだろうか。

彼女の今までの言動から不安が多い。

「なんだ?」

「相手の魔力の波長やその他いろいろと調べる必要がありまして……私、クレスト様との身体的接触が必要なんですっ! きゃー!」

何か一人で盛り上がっているマールナス。

彼女のテンションに気おされてしまう。

……なんでこの子はこんなにテンションが高いのだろうか。

そんなことを考えながら、問いかける。

「身体的接触? どういうことだ?」

「簡単に言えばですね。私がクレスト様に抱きつく必要があるんです!」

「……本当ですか、それは?」

声は俺ではなく、リビアからだ。

じろっとした視線を、リビアはマールナスへと向けている。

その声は少し鋭い。

しかし、マールナスは一切怯んだ様子はなく、こくこくと頷く。

「もちろんですっ。何もやましい気持ちなんてございませんとも! ただ、純粋にクレスト様にくっつく必要があるだけです!」

マールナスはそれはもう嬉しそうに尻尾を振っている。

本当に必要なのかは分からないが、必要だと言われれば仕方ない。

「……まあ、必要なら分かったよ」

「それでは! 失礼いたします!」

俺が返事をしてすぐ、マールナスが抱きついてきた。

ぎゅっと柔らかな感触が俺の胸元に伝わる。

リビアのじろっとした視線もあるため、あまり意識しないようしばらく時間を待つ。

「まだか?」

「ええ、まだですっ。うーん、まだまだ検査しないといけませんね……っ。ぐふふふ」

なんだか怪しい笑みを浮かべるマールナス。