作品タイトル不明
第13話
海の中から現れた彼らは、浜辺を北側に向けて歩いていく。
何か、目的があるかのようで、彼らの足取りはしっかりしている。
彼らが、北の地を支配する亜人だろうか?
気になった俺は、一定の距離を保ちながら、彼らの後を追いかけていく。
アサシン、忍び足術の効果もあり、リザードマンたちを追っていても気づかれている様子はない。
彼らの能力がそこまで高くないからか?
あるいは俺が細心の注意を払い、感知術の反応範囲ギリギリで後を追っているおかげであるかもしれない。
力のある亜人は、普通に忍び足術なども見抜いてくるのでこれ以上は近づけないよな。
前回のルガーとの戦いを思い出しながら、リザードマンを追っていくと彼らは森の前で足を止めた。
「開け、透明の門よ」
リザードマンが何かを口にすると、その森が揺らめいた。
「……!」
思わず声を飲んでしまう。
視線を向けた先には、街のようなものがあった。
その中へとリザードマンたちが進んでいくと、再びそこは森になった。
「……幻覚系の魔法、ってことか?」
それで、見た目を誤魔化しているのかもしれない。
確かに、これではどれだけ探しまわっても亜人たちの拠点を見つけることはできないだろう。
これを、リザードマンたちが造ったのだろうか?
それとも、他に仲間がいて、そいつらが造ったのか?
どちらにせよ、先ほど見えた街は……俺たちの村よりも立派な造りをしていた。
彼らの技術力は、俺たちを上回っている可能性は高い。
もしも、戦うことになれば……こちらも大きな被害を受けるかもしれない。
なんにせよ、ひとまずはこの情報を持ち帰り、皆に相談してみるしかない。
そう思い、振り返った俺は――
「何者だ」
黒いローブをまとった男に睨まれていた。
青い瞳がこちらを見据えている。
アサシン状態であるのに、この男は俺をはっきりと認識しているように見えた。
驚きの声をあげなかった自分を褒めたい。
……感知術を確認するが、彼には反応していないようだ。
ローブの男も何かスキルを持っていて、それによって感知術から逃れているのかもしれない。
どうする……?
向かいあった男は、かなりの強者のように感じた。
微塵の隙もなく、対面した迫力は……これまでの誰よりも強い。
ただ、完全に俺を捉えているわけではなく、俺を中心に周囲全体を威圧するように殺気を放っているようにも見える。
……視認されている、わけではないようだ。
俺にはっきりと力を向けられているわけではないのに、体が震える。
乱れそうな呼吸を押さえるように、俺は唇を噛んだ。
はっきりと、今の俺では勝てないと思えた。
少なくとも、攻撃を仕掛ける場面ではない。
逃げたほうがいいだろう。
ローブの男に返事はせず、そのまま背中を向ける。
アサシンと忍び足術も駆使すれば、逃げるのに苦労はしないだろう。
「返答は、ないようだな」
そういった瞬間、ローブの男は腰を落とした。その腰に見えた刀の刃が見えた瞬間、俺は反射的に横に跳んだ。
次の瞬間、周囲の木々が吹き飛んだ。
彼の一閃によって、周囲すべてが薙ぎ払われたのだ。
回避が遅れていれば、俺の上半身と下半身は、周囲の木々と同じようになっていただろう。
「今のをかわしたか」
呟くような声とともに、再びローブの男は腰を落とす。
俺は両足に全力の力を籠め、とにかく遠くへと跳んだ。
一瞬遅れて先ほど俺がいた周辺を刀が薙ぎ払った。
めくれあがった地面を見ながら、俺は唇をぎゅっと噛んだ。
……なんという威力なんだ。
俺はそれを遠くから眺め、背中を向けて走り出す。
ローブの男は、しばらく周囲を観察するようにしていたが、刀を鞘へとしまった。
追っては来ないようだ。
しばらく、感知術と目視によって男が追ってきていないかを確認したが、特に追われている様子はない。
とりあえず、一息つけた。
それにしても、あの男は……一体何者だ?
対面しただけで、圧倒的な力を感じ取ることができた。
果たして、今の俺が全スキルを持って挑んだとして、勝てるのだろうか?
脳裏にローブの男との戦闘の光景が浮かんだのだが、そのどれもがローブの男に敗北している自分だった。
よほどの運がなければ、今のままでは勝てないだろう。
ごくりと、唾を飲み込む。
アサシンと忍び足術がなければ、俺は逃げることもできなかったはずだ。
小さくため息を吐いてから、周囲を見る。
あの隠れた街は、俺たちがいる村からかなりの距離がある。
だから、すぐに見つかることはないだろう。
しかし、時間の問題だ。
ローブの男たちの目的が何かは分からないが、いずれは南へと下ってくるはずだ。
そのとき、あの拠点が見つからないはずがない。
それこそ、男たちのように魔法か何かで街全体を覆い隠すようなことができればいいんだが。
俺はもう一度周囲を観察し、つけられていないのを確認する。
それでも、万が一もある。
あの男が俺と似たようなスキルを持っていないとも限らない。
俺は念のために、来たときの道は使わず、ぐるりと大回りをするようにして村を目指して歩いていった。
周囲を見回してみたが……どうやらフードの男はいない。
良かった、つけられてはいないようだ。
ほっと胸をなでおろしながら、俺は村へと入る。
門をくぐり、村の中を歩いていると、作業をしていたゴルガがこちらに気づき、手を止めた。