軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第974話 族長同士の挨拶

ミサキがライト達のもとに現れてからしばらくして、他の八咫烏一族族長家族達も次々にユグドラシアの根元に集まってきた。

まずは族長ウルスと長女ムニン。二羽ともに鍛錬場で衛兵達と訓練をしていたらしい。

次に駆けつけてきたのは、次女トリスと次男ケリオン。それぞれ持ち場の警備をしていたという。

そして最後に現れたのは、母アラエル。結界の見回り後に砂浴びをしてきたそうだ。

いつも会うライトやレオニス、ラウルより一回りも二回りも大きなラキを見て皆一瞬だけ身構えるも、それがオーガ族族長のラキであることにすぐに思い至り警戒を解いた。

皆ラキの近く、ユグドラシアの根元に留まり羽を休める。

そして一族を代表してウルスがラキに声をかけた。

「オーガ族族長ラキ殿とお見受けするが、相違ないだろうか?」

「如何にも。我は目覚めの湖の近くに住む鬼人族、オーガ族族長のラキと申す者。貴殿がこの八咫烏の里の族長か?」

「然り。私はこの八咫烏の里の族長を務めるウルス。ラキ殿のご来訪を、心より歓迎する」

「族長自ら歓迎していただき、心より感謝する」

まずは族長同士の挨拶ということで、かなり堅苦しい真面目なやり取りがラキとウルスの間で交わされる。

一通りの挨拶を終えたところで、ウルスがラキの顔の横をちろりと見遣る。

その視線の先には、ラキの肩にちょこんとおとなしく留まっているミサキがいた。

「コホン……ところで、ミサキよ。何故にお前はお客人の肩に留まっておるのだ?」

「ンキョ? 私ね、さっきラキちゃんとお友達になったの!だから、ご挨拶の頬ずりをしていたところなの!」

「ほほほ頬ずり……お、お前、我が里をわざわざ訪ねてきてくださったお客人に、いきなり何てことを……」

父親からの問いかけに、ニッコニコの笑顔で答えるミサキ。

末娘のあまりのフリーダムさに、ウルスが目眩を起こしている。

そんなウルスの苦悩ぶりに、ラキが明るく笑いながら話しかける。

「ハッハッハッハ!ウルス殿、お気になされることはない。実に可愛らしいご息女ではないか!」

「ラ、ラキ殿、何ともお恥ずかしい限りで……」

「そんなことを仰られるな。我にも幼い娘や息子がおるが、ミサキちゃんのように誰からも愛される素直な子に育ってほしいものだ」

「ラキ殿に、そう仰っていただけるなら、これ程ありがたいことは、ござらん……」

肩に留まるミサキの頭を撫でながら、豪快に笑うラキ。大きくて温かいラキの手に撫でられているミサキも、嬉しそうに目を細めてニコニコしている。

対してウルスは、恥ずかしさのあまり穴があったら入りたい!というくらいにしどろもどろな話し方になってしまっている。

ラキは子供好きなので、懐いてくるミサキのことも可愛らしい子供として好意的に受け入れているのだが。 実の父親(ウルス) からしたら、娘の言動が恥ずかしいやら申し訳ないやらで複雑な心境になるのは致し方ない。

そんなウルスをサポートするかのように、アラエルがウルスに向かってそっと声をかける。

「あなた、せっかくですからここでシア様とともにラキさんとお話しては如何かしら?」

「お、おお、そうだな。……ラキ殿、我が里には他種族をもてなすような道具も食べ物もないが……それでも構わなければ、是非ともここでごゆるりと過ごしていただきたい」

「それは願ってもないこと。我もシアちゃんやウルス殿とたくさん話をしたい」

「……シアちゃん……」

ウルスからの提案に、ラキも嬉しそうに快諾する。

ウルスはウルスで、ラキがユグドラシアのことを『シアちゃん』と呼んでいることに一瞬だけ驚いていた。

だがそれも、きっとユグドラシアの方から願い出たことで―――ラキはそれを断りきれずに受け入れたのであろうな……とウルスも早々に察した。

「ラキ殿、もう早速シア様の洗礼をお受けになられたか」

「ああ。貴殿達八咫烏一族が敬愛して止まないであろう大神樹に対し、甚だ不敬で申し訳ないとは思うのだがな」

「そんなことはない。シア様がお望みとあらば、我らがそれに対して否やを唱えることなど絶対にない」

「そうなのだ。我もシアちゃんたっての願いとあらば、叶えて差し上げない訳にはいくまい、と思ってな」

くつくつと笑うウルスの脳裏に、ラキが受けたであろう洗礼の場面がありありと浮かぶ。

一方のラキは少しだけ申し訳なさそうにするも、ウルスと同じく先程の洗礼でのユグドラシアの愛らしさを思い出し、苦笑いで誤魔化す。

そんなラキ達の頭上では、ユグドラシアもまたクスクスと笑うように枝葉がサワサワと揺れ動いていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

皆で仲良く会談するべく、ライト達がいそいそとお茶会の準備に勤しんでいる。

美味しいおやつがあれば、会話もより楽しく弾むよね!交流を深めるには、お茶会が一番!というライトの理念は、ここ八咫烏の里でもすっかり馴染みつつある。

とはいえ、八咫烏側にしてみれば、いつもライト達の手を煩わせてばかりで申し訳ないとも思うようだ。

「ライト殿、レオニス殿、ラウル殿。このようにいつもお心遣いいただき、誠にかたじけない……我らも一日も早く人化の術を会得して、このような茶会を開けるようになりたいものだ」

「それはこれからも頑張ればいいことですよ!ぼく達も、ウルスさん達が人化できる日を楽しみにしてます!」

「だな。その日が来るまでは、俺達がお茶会担当だ」

「そのうち俺がミサキちゃんに、直々に料理を教えてやろう。そうすれば、この八咫烏の里でも宴を開けるようになるさ」

「うん!ワタシ、いつかラウルちゃんにお料理を習いに行くんだー♪」

申し訳なさそうなウルスの言葉に、ライト達はそれぞれに励ましの言葉を返す。

特にラウルの励ましは、ミサキにも大いに効いたようだ。

ミサキの夢は、最初から『ラウルのように、美味しいものを作れるようになりたい!』であった。その願いを叶えるために、ミサキは日々人化の術の訓練に励んでいるのだから。

ミサキと新たに友達になったラキも、ミサキの言葉を聞いてうんうん、と頷いている。

「我がオーガの里も、ラウル先生のご指導により食生活が非常に豊かになった。食生活が満たされるのは、とても良いことだ」

「そうなの? ラキちゃんも、ラウルちゃんのご馳走が大好きなのね!」

「もちろんだ。我もこれまで料理などしてきたことはなかったが、ラウル先生に教えてもらって少しばかり作れるようになってきてな。妻や子供達にもとても好評なのだ」

「うわぁー、ラキちゃんすごいなぁ。美味しいものを作れるお父さんって、とてもステキね!」

ラキとミサキのほのぼの会話に、何故かウルスが数多の雷を浴びている。

その衝撃は凄まじく、ドンガラガッシャーーーン!というけたたましい音が聞こえてきた、気がする。

他所の父親を娘が褒め称えていたら、確かに父親としては気が気でないかもれない。

ふるふると小さく震えていたウルス。次の瞬間、レオニスのところに飛び立ち縋りつくように懇願した。

「レオニス殿!近いうちに私とケリオンも人里見学に向かいますぞ!」

「お、おう……いつでも来てくれ」

「よろしく頼みましたぞ!!」

必死の形相のウルスに、レオニスもタジタジになりながら答える。

実際のところ、八咫烏族長一族の中で、ウルスと次男ケリオンだけが未だに一度も人里見学をしていない。人化の術で一番遅れを取っていると言っても過言ではない状況に、ウルスが焦るのも無理はなかった。

そんなことをしているうちに、ライトが他の面々に大きな声で呼びかけた。

「皆ー、お茶会の準備ができましたよー!レオ兄ちゃーん、ラウルといっしょにシアちゃんへの美味しいブレンド水をあげてー!」

「おう、今すぐ行くぞー!……さ、ウルス達も行こうぜ」

「承知した」

ライトの呼びかけに、レオニスはウルスとともにライトがセッティングしたお茶会の場に移動していった。