軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第958話 目覚めの湖への移動と晩餐

ドラリシオ・ブルーム達の意思が確認できたところで、レオニスが改めて皆と相談を始めた。

「そしたら、アクアに目覚めの湖に移動してもらった後のことについて、ここで今のうちに考えておかなきゃならん」

「そうだな。本当なら、さっきのワカチコナから一気に巌流滝に飛んでもらえば、そのままドラリシオの群生地にも行けるんだが……もうすっかり夜だし、ドラリシオ達を群生地に送り届けるのは明朝にした方がいいだろうな」

「だよねー」

ラウルの意見にライトも賛成し、レオニスも無言で頷く。

人間でも夜分遅くに他所様の家を突然訪ねるのは、非常識極まりない行為である。

「そしたら朝が来るまでの間、どこで過ごす? ドラリシオさん達がゆっくり眠れるような、安心して過ごせる場所がいいよね」

「安全さで言えば、カタポレンの家の敷地内が一番間違いないが」

「……あ、そしたらさ、目覚めの湖の小島で皆でキャンプ?はどうかな? どの道朝になったら、またアクアかウィカに巌流滝に送り届けてもらわなきゃいけないんだし」

「それもそうだな」

ライトの妙案『目覚めの湖の小島で皆でキャンプ!』に、レオニスもラウルも賛同する。

レオニスが一度言いかけたように、カタポレンの家に移動するのもアリだ。

だが、夜が明けたらまた目覚めの湖に行かなければならない。それなら都度いちいち行き来するよりも、そのまま目覚めの湖で一晩過ごした方が何かと楽だろう。

今夜寝泊まりする場所が決まったので、早速行動に移すライト達。

まずは傷だらけのドラリシオ・ブルーム達を何とかしなければならない。

「よし、そしたらドラリシオ達をアクアの背に乗せるぞ」

「了解」

レオニスの掛け声に、真っ先にラウルが反応してドラリシオ・ブルーム達のもとに向かう。

それまで涙に暮れていたドラリシオ・ブルーム達。その傍にはマキシ達三兄弟が付き添い、その背をそっと撫でたりして慰めていた。

そしてライト達の話し合いが一通り済んだ頃には、ドラリシオ・ブルーム達の気持ちもだいぶ落ち着きを取り戻していた。

「ドラリシオ達、自分の足……というか、根で立てるか?」

「……うン……」

「よし、そしたらあっちにいるアクアの背中に乗っててくれ」

「……オ姉チャンハ、どうするノ?」

「姉ちゃんは俺が抱っこして連れてってやるから心配すんな。マキシ、ドラリシオ達といっしょにアクアのところに移動しててくれ」

「分かった!」

ラウルの指示通り、マキシ達八咫烏三兄弟はそれぞれドラリシオ・ブルームに付き添いつつ、アクアのもとにゆっくりと歩いていく。

その中の一体が、ラウルのバスケット―――仲間達の遺骸が入った篭を大事そうに腕の中に抱えている。

そしてラウルは、横たわるドラリシオ・ブルームの横に立った。

四体の中で一番上の姉らしきドラリシオ・ブルーム。スゥ……スゥ……という小さな寝息が聞こえる。

全身傷だらけで疲弊しきってはいるものの、未だ寝ているその表情からは安堵している様子も窺える。

ラウルは寝ている姉の横でしゃがみ込み、そっとその額を撫でる。

「……よく頑張ったな。これでようやく、お前達の故郷のカタポレンの森に帰れるぞ」

ラウルが額に触れても、ドラリシオ・ブルームが起きてくる気配はない。

このまま抱っこしても大丈夫そうだ、と確信したラウル。姉の背中に手を潜り込ませてそっと抱き上げた。

ラウルの腕の中で、お姫様抱っこで抱えられたドラリシオ・ブルーム。この姉は四体の中で最も体格が大きいが、ラウルは難なく持ち上げている。

腕の中で眠るドラリシオ・ブルームが起きないよう、ラウルはゆっくりとアクアのもとに歩いていく。

アクアの背には、既に三体のドラリシオ・ブルーム達がレオニスの手によって乗せられていた。

もちろんライトやウィカも、ドラリシオ・ブルーム達の後ろにちょこん、と乗っかっている。

全員が揃ったことを確認したレオニスが、アクアに向かって声をかける。

「よし、これで全員揃ったな。そしたらアクア、すまんが俺達を全員目覚めの湖の小島に連れていってくれるか?」

『はーい。そしたら皆、どこでもいいから僕の身体に触っていてねー』

アクアの指示に従い、レオニスはアクアの右側、ラウルは左側にそれぞれ立ちながらアクアの首筋に触れている。

姉のドラリシオ・ブルームをお姫様抱っこしているラウルは、両手が塞がっているのでアクアの首に寄り掛かった状態で立っている。

二人して『忘れ物はないよな?』とばかりに周囲をキョロキョロと見回している。

『皆、準備はいいー?』

「はーい!」

「「おう」」

『じゃ、行くよー』

アクアが出発宣言をした次の瞬間。

ライトやドラリシオ・ブルーム達を乗せたアクアは、フッ……と消えてノーヴェ砂漠から目覚めの湖に移動していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ノーヴェ砂漠から目覚めの湖に瞬時に移動したライト達。

小島のすぐ傍の湖面からアクアがふわりと浮いて、小島の真ん中まで飛んでそっと着地する。

小島に着地したアクア、ライトはその背中からスタッ、と地面に下りた。

夜の暗闇に包まれているのは同じだが、肌を包む気温が全く違う。

肌を刺すような寒さが消えて、ほんのり冷たく感じる程度の空気に変わったことがすぐに分かる。

一方で、アクアの背に乗ったドラリシオ・ブルーム達は固まったまま動かない。

ライト達にとっては、アクアやウィカの水中移動は日常茶飯事だが、ドラリシオ・ブルーム達には一体何が起きたのかさっぱり分からない。

ただただ戸惑うばかりの三体に、レオニスがその手を差し伸べる。

「さ、下りるぞ」

ドラリシオ・ブルーム達は、思わず自分達の傍についていてくれたマキシ達八咫烏三兄弟の顔を見る。

もちろんマキシ達はレオニスに全幅の信頼を寄せているので、不安そうな顔のドラリシオ・ブルーム達にもそれを伝えるべく、小さく頷きながら黒い翼をそっと背に当てる。

マキシ達の後押しに、それを信頼したドラリシオ・ブルーム達がレオニスの手を取る。

レオニスの首っ玉にしがみつきながら、順番に小島に下ろされていくドラリシオ・ブルーム達。

ラウルやマキシだけでなく、後から合流したレオニスもまた順調にドラリシオ・ブルーム達の信頼を得ていく。

そしてラウルの方はというと、アクアのいる場所から少し離れた場所にいた。

そこは小島のド真ん中付近で、島の中でも平らな部分だ。

その平らな地面に、お姫様抱っこしていた姉のドラリシオ・ブルームをそっと寝かせる。

そんなラウルのもとに、レオニスに下ろしてもらったドラリシオ・ブルーム達が駆け寄ってきた。

一目散に姉のもとに駆け寄るドラリシオ・ブルーム達。両者は移動の間離れていたので、かなり心配しているようだ。

だが、すやすやと寝ている姉を見た妹達の顔にも安堵が広がる。

そしてライトはライトで、ラウル達のすぐ横、小島の中央で何やらゴソゴソと動いている。アイテムリュックからいろんなアイテムを出して、キャンプの準備をしているようだ。

まずは火を使わずに魔石で動力を得るランタンをいくつか取り出して、弱い明かりを灯して周囲を照らす。ここは目覚めの湖の中に浮かぶ小島、ノーヴェ砂漠のように明かりを灯すだけで魔物が襲ってくる心配はない。

それからテントやら寝袋などを出して泊まり込みの準備をする傍ら、敷物を敷いて食事の用意をしたりブレンド水などをいそいそと作るライト。

途中ドラリシオ・ブルーム達を下ろし終えたレオニスが合流し、テントの設営を担っている。

ほぼ準備が整ったところで、ライトの代わりにウィカがラウルやドラリシオ・ブルーム達のもとに来て声をかけた。

『皆、ライト君がご飯の準備をしてくれたよー』

「……おお、そうだな。そういや今日はまだ晩飯も食ってないか」

『そこのお花の子達にも、ライト君が美味しいお水を用意してくれてるから、皆でおいでよ☆』

「美味しイ、お水……?」

糸目笑顔でドラリシオ・ブルーム達にも声をかけるウィカ。

ウィカが言う『美味しいお水』が何なのか分からない三体が、不思議そうな顔をしている。

そんな彼女達に、ラウルが穏やかな声で話しかける。

「うちの小さなご主人様はな、美味しい水を作り出す名人なんだ。どの水も美味しいって、神樹達にもすごく評判良いんだぞ」

「そんなニ、美味しイ、お水なノ?」

「ああ。実際に飲んでみれば分かるさ。さあ、行こう」

姉達の横にぴったりとくっついていた三体の妹達に、ラウルが右手を差し伸べる。

ライトやウィカの言うことは半信半疑に感じても、命の恩人であるラウルが言うことならドラリシオ・ブルーム達にも信じることができた。

三体のドラリシオ・ブルーム達はラウルの右手を取り、ライト達のいる場所に歩いていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ラウルに連れられて、ドラリシオ・ブルーム三体がライト達のキャンプ地?に合流した。

自分達の食事よりも、まずはドラリシオ・ブルーム達に振る舞うブレンド水を披露するライト。

三個の木製バケツを前に、それぞれの水の詳細を語っていく。

「本日のブレンド水は、三種類です!ベースの水は全部巌流滝の水で、右側はハイポーション三本、左側はハイエーテル三本、真ん中はハイポーションとハイエーテル二本づつを混ぜてあります!」

「今回は巌流滝の水か。回復剤も安価なのが多いな?」

「うん。ドラリシオさん達は何日も砂漠を彷徨っていたって話だから、お腹に優しい方がいいかと思ってさ」

「あー、そりゃそうか。弱った身体にいきなりたくさんのご馳走を飲み食いさせても、それはそれで負担が大きそうだもんな」

「そゆことー」

いつものライトなら、グランドポーションやコズミックエーテルなどを使ってゴージャス&デリシャス?なブレンド水を作り振る舞うところなのだが、今回の相手はいつもとは事情が違う。

灼熱のノーヴェ砂漠で何日も遭難していたドラリシオ・ブルームには、胃腸に優しい緩やかなブレンド水にしよう!とライトは思ったのだ。

言ってみれば、風邪をひいている最中の病人や病み上がりの人に重湯やお粥を与えるようなものである。

もっとも、植物系魔物であるドラリシオ・ブルームに、ライトが思うような胃腸があるのかどうかは定かではないが。

ライトのメニュー解説を聞き終えたところで、ラウルがドラリシオ・ブルーム達に声をかける。

「さ、飲んでみな。皆ノーヴェ砂漠じゃろくに水も飲めなかっただろ」

「「「………………」」」

ラウルの勧めに従い、三つの木製バケツの前に進み出るドラリシオ・ブルーム達。

蔓の腕の先端にある、ウツボカズラの花の手に水を汲んで球根部の口に運んだ。

花の手から汲み上げた水をお腹の口に含み、コクリ……と飲んだドラリシオ・ブルーム達。その目が大きく見開かれていく。

パァッ!と明るい顔になったかと思うと、次々と両腕を伸ばしてライト特製ブレンド水をゴクゴクと飲んでいく。

「……すっごク、美味しイ!」

「どのお水モ、味が違ウ!」

「でモ、どれも全部、美味しイ!」

三種類のブレンド水を飲み比べながら、どれも美味しい美味しいと言って夢中になって水を飲み続けるドラリシオ・ブルーム達。

彼女達がノーヴェ砂漠で萌芽して以来、まともな水分が取れたのは荷馬車の中にあった樽入りの水くらいだろう。

それ以降、ずっと敵魔物の死骸に含まれる水分のみで生き延びてきた彼女達にとって、ライトのブレンド水は甘露にも等しい極上の味だった。

ライトが用意した三つのブレンド水は、三体のドラリシオ・ブルーム達によってあっという間に飲み干された。

一体につきバケツ一杯の水は、彼女達のお腹を満たすに足る量だったようだ。

美味しいブレンド水をお腹いっぱいに飲んだドラリシオ・ブルーム達は、満足そうな顔で球根の下部を花の手で擦っている。

「もウ、お腹いっぱイ……」

「こんなニ、たくさんノ、お水ヲ、飲んだのなんテ、生まれテ、初めテ……」

「すっごク、美味しかっタァ……」

満足そうに呟いた後、三体ともその場でコテン……と寝転んでしまった。

そして眠たそうな顔で、うつらうつらとしながら礼を言う。

「お水、ありがとウ……」

「オ姉チャンにモ、飲ませテ、あげたいナ……」

「朝ニ、なったラ……オ姉チャンにモ、飲んでもらおう……ネ……」

姉にも美味しい水を飲ませてやりたい、と言いつつ、そのまま三体とも寝てしまった。

ここにはノーヴェ砂漠のように襲ってくる魔物もいないし、何よりラウルやマキシ達が傍にいて守ってくれる。

その安堵感により、ドラリシオ・ブルーム達は再び張り詰めていた緊張が解けて、完全に眠りに落ちてしまっていた。

スヤァ……と眠るドラリシオ・ブルーム達。

ノーヴェ砂漠という地獄から解放された喜びからか、その眦から一粒の雫が零れ落ちる。

涙を零しつつも、彼女達の寝顔は皆安らかさに満ちている。そんなドラリシオ・ブルーム達の寝顔を、ライト達は微笑みながら見ていた。

「……さ、そしたら俺達も遅めの晩飯にするか」

「だな。そしたらアクアとウィカにもお礼のご馳走を出さなきゃな」

『ヤッター☆』

『ラウル君がご馳走してくれるの? ありがたくいただくね!』

ラウルがすぐに空間魔法陣を開き、ウィカ用の魚介類の刺身が盛りつけられた皿や、アクア用のスペシャルミートボールくんのピラミッドタワーを出して彼らの前に置く。

ドドン!と置かれたご馳走に、ウィカもアクアもご機嫌だ。

「じゃ、皆で遅い晩飯を食うとしよう。いッただッきまーーーす!」

「「『『いッただッきまーーーす!』』」」

レオニスの晩ご飯の挨拶に、ライトやラウル、八咫烏三兄弟、水の精霊に水神までもが続いて唱和する。

横で寝ているドラリシオ・ブルーム達を起こさぬよう、その声はとても小さめだったが、その後は多種族が入り交じるとても賑やかな食事となっていった。