軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第945話 ラウルのお迎え in オーガの里

レオニスが八咫烏兄弟とともにユグドラツィのもとを訪れた翌日。

ラグーン学園に登校するライトや、早々に仕事に出かけるレオニスやマキシを見送ったラウル。

その後カタポレンの畑に向かい、朝採り野菜の収穫作業をテキパキとこなす。

一通り収穫を終えたラウルは、その後すぐにオーガの郷を訪ねた。

里に入って真っ先に訪ねるのは、族長のラキ宅。レオニスに言われた通り、フギンとレイヴンを迎えに来たのだ。

ラキ宅の玄関前に辿り着いたラウル。

すると、ラキ宅の裏手の方からカーン、カーン、という乾いた音が聞こえてくる。

ラウルは家の中に入らず裏に回ると、そこには薪割りをしているラキの姿があった。

「ラキさん、おはよう。薪割りか、朝から精が出るな」

「おお、ラウル先生、おはようございます。フギン殿達を迎えにいらっしゃったのですかな?」

「ああ。フギン達はまだ寝てるのか?」

「いいえ、先程子供達とともに外に出かけましてな」

「ほう、そうなのか? フギン達も意外と元気なんだな?」

薪割りの手を止め、ラウルを快く出迎えるラキ。

早速八咫烏兄弟の居所を聞くも、今この家にいないという。

長旅でかなり疲れているかと思っていたが、実は案外そうでもなかったのか?とラウルが思案していたところ、そういうことではないらしい。

「いや、それがですな……ルゥが、朝食を食べ終えてもまだ寝ていたフギン殿達を叩き起こしまして。子供達が『フギン君とレイヴン君を、里の皆に紹介してくるね!』と言って連れ出していったので、今頃他の子供達に紹介しがてら皆で遊んでいるかと……」

「ぁー、そういうことか……お子守りも大変だな」

ラキの話に、ラウルがくつくつと笑う。

長旅でヘトヘトになった八咫烏兄弟達。いつもなら早寝早起きの規則正しい生活をしているだろうが、今回ばかりは随分と寝坊したようだ。

ラキが大きなため息をつきつつ、その時の様子を語っていった。

…………

………………

……………………

「ねぇねぇ、フギン君達は朝ご飯食べないのー?」

「うむ。余程疲れておるのだろう。聞けばこちらに来るまでに三日間、ずっと飛び続けてきたそうだからな」

「そうね。だからもう少し寝かせておいてあげないとね」

「ぬぅーん……」

朝食の場にフギン達が現れないことに、ルゥが父母に向かって疑問を呈する。

昨日レオニス達と別れた後、フギンとレイヴンはラキ宅にてルゥやレン、ロイと寝る直前までともに遊んでいた。

八咫烏兄弟が朝寝坊して起きてこれないのも、実はルゥ達を相手に遊んだ疲れも若干含まれていた。

それを知っている 父親(ラキ) や 母親(リーネ) に『ゆっくりと休ませてあげなさい』と諭されたルゥ。

朝ご飯を食べ終わるまではおとなしく我慢したが、食べ終えた後も全く起きてこないことに痺れを切らし、レンを引き連れてフギン達が寝ている客間に突入した。

「フーギーン君!あーそーぼッ!」

「レーイヴーン君!起ーきーてッ!」

ふかふかの布団に埋もれて、ぐっすり寝ていたフギンとレイヴン。

布団を引っ剥がされて、寝ぼけ眼のままルゥとレンに抱き抱えられて客間から出てきたという。

玄関近くの廊下ですれ違ったラキが、慌てたようにルゥ達に声をかける。

「お、お前たち、フギン殿達をどこに連れていくんだ?」

「里の皆にフギン君達を紹介するの!」

「するのー!」

「フギン殿達はまだ寝ておられただろうに……」

フギン達と出かける気満々のルゥとレンに、ラキが困り果てながら止めようとする。

だが当のフギン達は、寝ぼけ眼のままラキに話しかけた。

「ラキ殿、おはようございます……」

「おはようございますぅ……」

「お、おはよう。ルゥ達が無理に叩き起こしたようで申し訳ない」

「ぃぇぃぇ……これも次代を担う我等が果たすべき使命にて……どうぞお気になさらず……」

「そうッス……ルゥちゃん達と俺らは、仲良しな友達なんスからねーぃ……いっぱい遊んで、いっぱい交流してくるッスぅー……」

「むしろ、寝坊した我等の落ち度にて……」

「落ち度はこれから挽回するッスーぅ……」

子供達の腕いっぱいに抱き抱えられながら、うつらうつらと船を漕ぐフギンとレイヴン。まだろくに眠気も覚めていないのに、ルゥ達オーガの未来を担う子供達と交流する気満々なのはさすがである。

そんな八咫烏兄弟の言葉に、ルゥとレンも花咲くような笑顔になる。

「フギン君、レイヴン君、皆といっぱい遊ぼうね!じゃ、そゆことで!パパも薪割りのお仕事頑張ってねー!」

「ぉ、ぉぉ……」

「「いってきまーーーす!!」」

元気いっぱいに外に出かけていく子供達を、ラキはただただ見送るしかなかった。

……………………

………………

…………

「そんな訳で……フギン殿達は今頃、ルゥやレンとともに里の子供達と戯れておることでしょう」

「ンー、そしたら広場か鍛錬場にでもいるかな?」

「おそらくは、その二つのうちのどちらかにおるでしょうな」

「分かった、そしたら俺がフギン達を迎えに行ってくるわ」

「そうしていただけると、我も助かります……」

お転婆娘達の話を語り終えたラキ、心なしか気疲れしているように見える。

子供達の底無しのパワフルさに大人が振り回されるのは、古今東西異世界問わず同じようである。

「フギン達も、ここを出る前にラキさんに挨拶をしていきたいだろうから、またここに戻ってくるわ」

「ラウル先生にまでお気遣いいただき、真に申し訳ない……」

「気にすんな。じゃ、ラキさんも薪割り続けててくれ」

「承知した。よろしくお頼み申す」

ラキに見送られつつ、ラウルはルゥ達を探しに出ていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

まずはラキ宅から近い方、里の中央広場に向かうラウル。

ラウルももう何度もオーガの里を訪れているので、どこに何があるかをほぼほぼ知り尽くしている。

そこまで急区必要もないので、ラウルはオーガの里の中をのんびりと歩いていく。

途中他のオーガの民達から「ラウル先生、おはようございます!」「今日も料理教室を開催なさるのですか?」「今度是非とも我が家にもお越しくださいね!」などと気軽に声をかけられている。

ラウルもその都度「おう、おはよう」「いや、今日は別の用事できたから料理教室は無しだ」「お誘いありがとう、近いうちに邪魔させてもらうわ」等々、律儀に返していた。

そうして向かった中央広場だが、ここに子供達の姿は見当たらなかった。

ならば鍛錬場の方だろう、と早々に行き先を切り替えるラウル。

中央広場からしばらく歩いていくと、子供達の歓声が聞こえてくる。

鍛錬場に近づくにつれ、その歓声は大きくなっていく。どうやらそこにフギン達もいそうだ。

鍛錬場に入ると、そこではフギンとレイヴンがそれぞれオーガの子供達と遊んでいた。

フギンはオーガの女の子達に囲まれてもふもふの身体をおとなしく撫でられまくっていて、レイヴンはオーガの男の子達や黒妖狼のラニを相手に仲良く追いかけっこをしていた。

ラウルが来たことにも気づかない程に、子供達は夢中になって八咫烏兄弟と触れ合っている。

フギンはたくさんの女の子に囲まれて、毛繕いや羽繕いをされて気持ち良さそうにおとなしく身を任せているし、レイヴンはレイヴンで懸命に追いかける黒妖狼のラニや男の子達を低空飛行で華麗に躱している。

どちらもオーガの子供達にモテモテで、キャッキャウフフ☆と戯れる姿は実に楽しそうだ。

そんな子供達と八咫烏兄弟に向けて、ラウルは大きな声で話しかけた。

「おーい、フギン、レイヴン、迎えに来たぞー」

「……あっ!ラウル殿!」

「ラウル殿、おはようございます!」

「あッ、ラウル先生だ!」

「ラウル先生、おはよーーー!」

鍛錬場に登場した新たなゲストに、八咫烏兄弟と子供達の視線が一気に集中する。

そしてあっという間にラウルの周りに子供達が集まった。

「ラウル先生、どうしたのー?」

「フギンとレイヴンを迎えに来たんだ」

「えー、カラスさん達、もう帰っちゃうのー?」

「もっといっしょに遊びたいのにー!」

「すまんな、フギン達にもしなきゃいけない仕事があるんだ」

「仕事があるのかー、ならしょうがないなー」

ラウルがフギン達を迎えに来たことを知り、彼らとの別れを悟った子供達が口々に残念がる。

しかし、彼らには彼らの仕事があると聞けば子供達も納得し引き下がる。

聞き分けの良い子供達に、フギン達から声をかける。

「我らもまた必ずこの里を訪れるので!その時にまたお会いしましょうぞ!」

「そうですよ!俺ら以外にも兄様姉様、弟に妹もいますので!また皆で遊びましょう!」

「ホント!? 約束ね!」

「絶対また皆で遊ぼうぜ!」

オーガの子供達との再会を固く誓うフギンとレイヴン。

二羽はラウルとともに再びラキ宅に向かいつつ、何度も鍛錬場を振り返っては子供達に翼を振って別れを惜しむ。

オーガの子供達も、新たにできた黒翼の友二羽に向かってずっと手を振りながら見送っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

フギンとレイヴンを連れて、再びラキ宅に戻ったラウル。

そこではまだ薪割りの乾いた音が響いている。

三者は家の裏手に回り込み、薪割りの最中であるラキに声をかけた。

「ラキ殿、ただいま戻りました」

「……おお、フギン殿にレイヴン殿!子供達の相手をしてもらってすまなかった」

「いいえ!俺らもオーガの子達とたくさん触れ合えて、すっげー楽しかったッス!」

「そう言っていただけると、我としてもありがたい」

ラキは薪を割る斧を一旦下ろし、首にかけた手拭いで額や顔の汗を拭いつつラウル達のもとに歩み寄る。

「では、今からラウル先生とともに人里に向かうのかな?」

「はい、人里見学も此度の我らの使命にて」

「そうか、くれぐれもお気をつけてな」

「ありがとうございます!ラキ殿にも大変お世話になりました!」

「何の何の。大したもてなしもできず申し訳ない」

旅立つ八咫烏兄弟が、ラキに向けて深々と頭を下げる。

終始礼儀正しく律儀な八咫烏兄弟に、ラキも静かに微笑みながら声をかける。

「よろしければ、次は族長一家全員で来てくだされ。族長が長く里を離れるのは、なかなかに難しいこととは思うが……是非とも近いうちに、オーガ一族と八咫烏一族の友誼を祝う盛大な宴を催したい」

「!!……ありがとうございます!」

「父様にもそのようにお伝えしておきます!」

ラキの提案に、フギンとレイヴンは顔を輝かせる。

思えば八咫烏の里とオーガの里との正式な友好条約は、未だ結ばれていない。

それを明確に示すために盛大な宴を催したい、というラキの申し出はフギン達にとってもありがたいものだった。

双方ともに伝えたいことを一通り伝え終えたところで、ラウルが八咫烏兄弟に声をかける。

「さ、じゃあそろそろラグナロッツァに行くか」

「はい!ラキ殿も、どうぞお元気で!」

「ああ、フギン殿達も人里見学で精進なされよ」

「ルゥちゃんやレン君にロイ君、そして奥方様にもよろしくお伝えください!」

「承知した。レイヴン殿達の再来を、心より楽しみにしている」

別れの挨拶を交わし、ラキ宅を離れていくフギンとレイヴン。

ラキにその背を見送られながら、八咫烏兄弟はラウルとともにカタポレンの家に向かっていった。