軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第887話 習熟度上げのラストスパート

カタポレンの家の裏手にある解体作業場で、様々な魔物の解体に勤しむライト。

解体作業に使うスキルにもSPを消費するので、常にエネルギードリンクを飲みつつの作業である。

今日解体したのは、最近また天空島で採取した閃光草の他に、氷の洞窟でラウルが狩った氷蟹以外の魔物や、アドナイの小洞窟調査の際に得た魔物等々。何気に解体待ちの素材も多かったので、今回大量に捌くことができたのは幸いだった。

本当はこまめに解体していければいいのだが、ライトが使う解体スキル【解体新書】はBCO由来の能力なので、大っぴらに使うことはできない。

故にこうして人目を憚りつつ、誰もいない隙を見ては一気に整理整頓する他ないのである。

そうして小一時間ほど解体作業に勤しんだ後、ライトは次の予定である転職神殿近くの咆哮樹狩りに出向く。

その前に久しぶりにディーノ村の父母の家にも立ち寄り、家の周囲の草むしりや家の中の空気の入れ替えなどをしていく。

普段住むことのない僻地のボロ屋だが、ここはライトとレオニスにとって大事な思い出の詰まった場所。家として存続する限り、大切にしていきたいと思っている。

父母の家の手入れが済んだ後、ライトは裏山東側を登り咆哮樹の枝を刈りに向かう。

咆哮樹はコズミックエーテルの原材料の一つ。そしてそのコズミックエーテルは、その上位種であるギャラクシーエーテルの材料となっている。

ライトはクエストイベントのエクストラページをクリアするために、これからギャラクシーエーテルを五百個用意しなければならない。

ギャラクシーエーテル作成一個につき、求められるコズミックエーテルは三個。つまりライトは、千五百個ものコズミックエーテルを作らなければならないのだ。

そしてコズミックエーテルエーテル一個につき必要な『咆哮樹の木片』は五個。

最終的に必要な木片量、その数何と七千五百個にも及ぶ計算である。

何とも気の遠くなる話だが、それでもライトに『クエストイベント進行を諦める』という選択肢はない。

今後もコズミックエーテルを大量生産し続けるべく、今日も咆哮樹の柴刈りに勤しむ。

山の麓寄りにいる小型の咆哮樹は、もはやライトが山に足を踏み入れた時点でとっとと逃げ出してしまう。

そもそもこんな山にわざわざ入り込む人間は、ライトくらいしかいない。その足音を聞いただけで、咆哮樹達は『ヤベェ奴ガ来タ!』と敏感に察知して早急かつ全力で逃げるのだ。

なので、最近はライトも小型を狩るのは諦めて、山の中腹以上にいる中型の咆哮樹を相手にすることにしている。

中型ならその枝を一本狩るだけで、小型の数本分以上の成果になる。作業効率的にも手っ取り早く、ライト的には大助かりなのである。

「キエエェェエェエエェッ!!」

「待ってーーー、逃げないでーーー!」

咆哮樹の絶叫と追い縋るようなライトの声が、山中に響き渡る。

かつて小型の咆哮樹と繰り返された逃走劇が、相手が中型になっても繰り返されていた。

だが、ライトを恐れて逃げ出すのは前回柴刈り対象になった咆哮樹だけで、他の咆哮樹はまだライトのことを知らない。

すたこらさっさと逃げる咆哮樹とすれ違いざまに、数本の中型咆哮樹がライトに襲いかかる。

もちろんそれに怯むライトではない。

クワッ!と目を見開きながら、鋭い眼光とともに物理系必中スキル【手裏剣】を全方位に向けて多数繰り出した。

「キエエェェエェエエェッ!?」

脆弱な 人族(えもの) を狩る側だったはずの咆哮樹達。

ライトを蹂躙する気満々だったというのに、逆に自分達が枝葉を落とされてしまっているではないか。

中型咆哮樹達は一瞬怯み、咆哮樹達の木目や 洞(うろ) が、何故か『ウヘァ』という顔になっているような気がするが。多分気のせいだろう。キニシナイ!

しかし、咆哮樹達としてもこんな小さな人族相手に負ける訳にはいかない。

どういう偶然か奇跡かは知らないが、きっとさっきの攻撃はまぐれで当たっただけだ……そうだ、こんなちっこい奴に我等が負けるはずなどあり得ない。コレに屈するなど、あってはならない―――

咆哮樹は意を決したように、再び洞を吊り上げて恐ろしげな顔つきでライトに襲いかかった。

それは、傍目から見たら必勝のフォーメーションだった。

地面に屈んで咆哮樹の枝を拾うライトは、隙だらけそのものだ。

お腹側に持ち替えたアイテムリュックに、いそいそと咆哮樹の枝を収納していくライト。そのライトの四方八方から、咆哮樹が飛びかかるようにして襲う。

だがライトには寸分の隙もなかった。

ライトは左手で咆哮樹の枝を拾いながら、右手を翳して【手裏剣】を連打する。

右手を薙ぎ払うようにして動かすライトの手のひらから、乱れ撃ちで放たれた【手裏剣】が容赦なく咆哮樹達に当たりまくる。

それはさながら前世の機関銃乱射シーンのようである。

中には枝葉ではなく、幹のド真ん中に当たった咆哮樹もいた。

しかし、さすがに中型ともなると一撃必殺とまではいかないので、即死には至らなかった。

そして、事ここに至り中型咆哮樹達はようやく悟る。

コレは自分達が手に負える相手ではない―――と。

捕食者だったはずの自分達が、実は捕食される側だった。

このことをやっと理解した咆哮樹達、その背筋は凍りつきただただその場に立ち尽くし震え上がる。

一方のライトは、そんな咆哮樹達の様子の変化など全く気にも留めない。

鼻歌交じりでその場に落ちていた咆哮樹の枝葉を粗方拾い終えると、ゆらりと立ち上がり再び咆哮樹達の方に目を向けた。

口角を上げ、細い三日月のような口でニヤリ……と笑う 捕食者(ライト) 。爛々と輝く眼光と相まって、その顔はもはや地獄からの死者にしか見えない。

もっともライトとしては、『咆哮樹の枝がたくさん採れたー♪』とウッキウキで内心喜んでいた笑顔だっただけなのだが。

だが、当の咆哮樹にしてみればたまったものではない。

これ以上この小さな化物に拘っていたら、いずれは丸刈りータにされてしまう!そう悟った中型咆哮樹達は、一目散に逃げ出した。

咆哮樹達には、強者相手に面子だの面目などといった概念はない。負けそうになったら逃げる。そう、ひたすら『命大事に!』である。

「あッ……また逃げられちゃった……でも、ま、いっか!今当たった分の枝も拾えば、かなりの量になるし!」

全力で逃げ出す咆哮樹に、一瞬手を伸ばして縋りかけるライトだったが、追いかけることはせずに早々に諦める。

今さっき乱れ撃ちした【手裏剣】乱舞により、そこかしこに咆哮樹の枝が落ちていたためだ。

それらを全て拾えばかなりの量の収穫になるので、ライトはまずそちらの収穫を優先させたという訳だ。

中型咆哮樹の枝葉が『咆哮樹の木片』の何個分に相当するか、ちゃんと数えたことはないが、一本につき百個前後は見込めるだろう。

そのためには枝をいちいち切り刻まなければならないが、それも【解体新書】を使えば完全自動で適宜切り分けることができるので問題ない。

ライトの胴体ほどもある太さの咆哮樹の枝を、ルンルン気分でアイテムリュックに仕舞い込んでいくライト。

落穂拾いのような収穫作業を終えたライト、腰に両手の拳をトントン、と軽く叩いて身体を解す。

「咆哮樹君、また来るねぇー!」

すくっ!と立ち上がり、どこかに隠れているであろう咆哮樹達に向かって軽やかな言葉をかけ手を振りながら颯爽と駆け出すライト。

ライトが走り去るその後ろ姿を、咆哮樹がワナワナと小刻みに震えながら見送っていたような気がするが。多分気のせいだろう。キニシナイ!

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

咆哮樹の柴刈りを無事終えたライト。

だが、すぐには転職神殿に向かわずしばしソイルワームやグランドスライムを狩っている。

あと少しで【聖祈祷師】の習熟度がMAXになるためだ。

午前中の解体作業でもかなり習熟度上げはできたのだが、それでも習熟度99%でほんの少しだけ手が届かなかったのだ。

時折エネルギードリンクを飲んでは、SPを回復させながら狩りを続けるライト。その度にマイページを開いては、職業習熟度の進捗状況をチェックしている。

今日転職神殿でヴァレリアに会うためには、何としても僧侶光系四次職【聖祈祷師】をマスターしなければならない。

「……よし、ようやくMAXになったぞ!」

予定外の魔物狩りをこなし、何とか【聖祈祷師】をマスターしたライト。これでようやく転職神殿に向かうことができる。

ここ最近は、ヴァレリアが作ってくれた瞬間移動用の魔法陣で出入りすることが多かったが、今日は久しぶりにに山の中からの到着である。

ライトが山の中から現れたことに、真っ先に気づいたのはミーアだった。

『あら、ライトさん。ようこそいらっしゃいました』

『え!? 主様!? こんにちは!』

『パパ様、こんにちは!』

ミーアの歓迎の声に、魔法陣の近くにいたミーナとルディが慌てて振り返り、急いでライトのもとに駆け寄ってきた。

もしかして、ライトが魔法陣から現れるのをずっと待っていたのだろうか。

「ミーアさん、ミーナ、ルディ、こんにちは!」

『ライトさんのお越しを、心よりお待ちしておりました』

『私もです!』

『僕もずっと待ってました!』

いつものように、心からライトの来訪を歓迎するミーア達。

笑顔で出迎えてくれるミーア達の言葉に、ライトも心がじんわりと温かくなる。

「昨日は来れなくてごめんなさい。先にどうしても出かけなきゃならない用事ができちゃって……」

『気になさらないでください。こうして今日来てくださったんですし』

『そうですよ!こうして主様はちゃんと約束を守ってくださったんですし!』

『ですです!』

昨日の土曜日に来れなかったことを謝るライトに、ミーア達は口を揃えて大丈夫と言う。

確かに先週約束したのは『来週また来る』というものだった。

それはつまり土日のどちらかに再訪するということであり、こうして日曜日のうちに来れたので約束はちゃんと守れていた。

『ところでライトさん、【聖祈祷師】の習熟度上げはどうなりましたか?』

「さっきまでずっと魔物狩りしてて、ようやくMAXになりました!」

『まぁ、ここに来る直前まで頑張ってたのですか?』

「はい!だって、ミーアさんやミーナ、ルディ、そしてヴァレリアさんとも約束しましたから!」

さっきまで魔物狩りしてたというライトの話に、ミーアが驚いた顔をしている。

ミーアとしては、ここに来る直前ギリギリまで頑張らなければならなかったことに驚いているらしい。

だがそれも自分達との約束を守るためだったと知り、嬉しそうな笑顔で微笑む。

『お疲れさまです。では、今から転職の儀式をいたしますか?』

「はい、お願いします!」

ミーアの提案に、ライトは一も二もなく頷く。

二人は神殿内の祭壇前に移動し、転職の儀式を行っていった。