軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第875話 天使達が住まう島

神殿内でできる話し合いを一通り終えたレオニス。

先に神殿を出た雷の女王の後を追うように、光の女王とともに神殿の外に出た。

するとそこには、また一回り大きくなったヴィゾーヴニルとグリンカムビがいた。

「おおお……ヴィーちゃんもグリンちゃんも、さっきより大きくなったか?」

『そのようですね……ちょっと見ない間に、またツヤッツヤになって……』

驚きながら神鶏達に近づいていくレオニスと光の女王。

雷の女王は『ヴィーちゃん、素敵!またもふもふ度に磨きがかかったわね!』と、それは嬉しそうにヴィゾーヴニルに抱きついている。

「あ、レオ兄ちゃん、おかえりー」

「おう、ライトも閃光草の草むしりは終わったんか?」

「うん、見ての通りだよー」

「おー、確かに綺麗さっぱりとしてるなー」

神鶏達の成長に目を奪われていたレオニスだったが、確かに周辺を見回すと生い茂っていた閃光草が残らず刈り取られている。

広々とした庭がこざっぱりしたことに、光の女王がライトに礼を言う。

『ライト、いつも草むしりしてくれてありがとう。本当に助かるわ』

「いいえ、そんな!こちらこそ貴重な素材をいただけてありがたいです!」

『閃光草はまたすぐに生えてくるし、欲しい時にはいつでも取りに来てね』

「はい!」

光の女王からの礼に、ライトは思わず両手を横に振りながら自身も礼を言う。

実際光の女王にしてみれば、閃光草は取るに足らない雑草に等しい。

だがライトにとっては、地上では得られない貴重な素材。これをいつでも取りに来れるというのは、本当に嬉しいことだった。

するとそこに、ラウルとマキシが寄ってきてレオニスに声をかけた。

「よう、ご主人様。女王達との話し合いはもう終わったのか?」

「ああ。話は一通り終わったが、これから他の島を見に行くんだ」

「他の島? こことエルちゃんのいる島以外に、何か見る島があんのか?」

「ああ。これはラウル、お前にも関係する話なんだが―――」

レオニスの話を聞いたラウルが、不思議そうな顔をしながら問い返す。

そんなラウルに、レオニスが神殿内で話したことをラウルに語って聞かせていった。

「ほう、天空島での野菜栽培計画を本格的に始動するのか。それは是非とも俺も見ていきたいところだな」

「だろ? できれば野菜作りをラウルに指導してもらいたい、ということで、地上との往復をどうするかも話し合ってな。女王達が天空島の何箇所かに転移門を設置してくれるそうだ」

「そりゃますますありがたい。毎回毎度ウィカを扱き使うのは申し訳ないしな」

レオニスの話を興味深そうに聞き入るラウル。

ラウルもまだ野菜作りを始めて数ヶ月程度だが、天空島で指南できる程度には栽培と収穫を繰り返し積み重ねてきた。

これまでの経験を活かせるとあって、ラウルもかなり乗り気である。

「そんな訳で、今から女王達が挙げている畑の候補地の島を見に行くんだ」

「了解。案内は女王達がしてくれるのか?」

「その予定だが」

レオニスとラウルがそんな会話をしていると、少し離れたところで光の女王が空に向かって話しかけた。

『パラス、ちょっと来てくれるかしら?』

光の女王が呼びかけると、間を置かずにパラスが現れた。

空から舞い降りたパラスが、光の女王の前で跪きながら恭しく頭を下げる。

「光の女王様、お呼びでしょうか?」

『今から私達、鍛錬場に向かうのだけど。貴女も案内役の一人としてついてきてくれる?』

「もちろんです」

パラスの了承を得た光の女王。

次はライトやレオニスに向かって声をかけた。

『さあ、行きましょう。レオニス、貴方達はグリンちゃんとヴィーちゃんの背中に乗せてもらってついてきてね』

「はい!」

光の女王の指示に従い、神鶏達の背中に乗り込むライト達。

ライトとレオニスがグリンカムビに乗り、ラウルとマキシはヴィゾーヴニルに乗り込む。先程来た時とは入れ替わりだ。

どちらもふわふわの羽毛で、とても乗り心地が良い。

四人の客人が神鶏達の背に乗ったことを確認すると、パラスと二人の女王もふわりと宙に浮いた。

「では参りましょう」

パラスが掛け声をかけた後、ゆっくりととある方向に向かって飛んでいく。

二人の女王と神鶏達も、パラスの後をついて飛んでいった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうして皆で移動を始めてからほんの数秒後。

目的地である一つの島が見えてきた。

それは神殿のある島とユグドラエルの島の間かつ後方に位置しており、高度は二つの島より少し下にある。

上から見た形は、ラグビーボールが少し歪になったような楕円形に近い。

そして、他の島と違い木々がかなり少ないのが特徴的だ。

あっても島の外周をぐるりと一重に囲むだけの木しかなく、中央から外周までほとんど平地状態である。

何も知らないライト達に向けて、パラスがその島の解説を始めた。

「あれが、我等天空島警備隊が住まう島だ」

「確かに宿舎みたいなもんがあるな……」

詳しく話す間もなく、パラスと二人の女王が島の中央に降り立った。

神鶏達もそれに続き、島の中央に着陸する。

早速ライト達も地面に降り立ち、ぐるりと周囲を見回した。

その島はとても広々としていて、現代日本で言うところの東京ドームくらいは優にありそうだ。

そして島の端の方に、宿舎のような建物があった。

五階建ての宿舎が四棟あり、そこには天空島の警備を担う天使達が住んでいるらしい。

周囲を一通り見終えたレオニスが、二人の女王達に向けて質問した。

「この島を畑にするのか?」

『ええ。ここなら新しい土地を得るために木を切り倒す必要もないし、天使という働き手もたくさんいるわ』

「しかし、ここはもともと鍛錬場なんだろ? 天使達の鍛錬する場がなくなったら、日々の訓練に支障が出るんじゃないか?」

「ああ、それは私から説明しよう」

レオニスの矢継ぎ早な質問に、今度はパラスが答える役を買って出た。

「そもそも我等は天使。戦闘においては、魔法を用いた空中戦を得意とする種族でな」

「まあ、そりゃそうだよな」

「故に、地上戦を想定とした訓練などほとんどしないのだ」

「あー……そういうことね」

パラスの話に、レオニスだけでなく後ろにいたライトやラウル、マキシまでもがうんうん、と深く頷いている。

翼や羽を持ち、空中で戦える飛行種族はわざわざ地面に下りて戦ったりなどしない。

飛行種族同士なら普通に空中戦になるし、空を飛べない種族相手なら尚の事空中から攻撃を仕掛ける方が圧倒的に有利だからだ。

しかし、そうなると一つ大きな疑問が浮かんでくる。

「なら、何でこんな立派な鍛錬場があるんだ?」

「さぁな、そこまでは分からん。この島は、私が生まれる前からあったからな!」

「さいですか……」

レオニスの素朴かつ尤もな疑問に、パラスは高笑いしながら『知らん!』と答える。

肩透かしを食らった格好のレオニス。思わず二人の女王達の方を見遣ると、女王達もにこやかな笑顔で 頭(かぶり) を振る。

どうやら二人の女王達も、何故天空島の中に鍛錬場があるかは分からないようだ。

「ま、いっか……で? この鍛錬場を潰して畑にしちまってもいいのか?」

「構わん。それが女王様方の御意志とあらば、我等はそれに従うのみ」

「そうか。ラウルはどう思う?」

「そうだな……」

気を取り直したレオニスがパラスに改めてその意志を問うも、パラスは即時肯定する。

となると、次はラウルだ。野菜作りの指導役となるラウルの意見も、ちゃんと先に聞いておかねばならない。

レオニスに話を振られたラウルは、しばし考え込んだ。

「さすがに全部潰すってものどうかと思うから、まずは平地の半分くらいを畑として開墾すべきだろうな」

「そうした方が良い理由はあるか?」

「まず、収穫した野菜を処理する場所は確保しとかなきゃならんだろう。トウモロコシなら皮を剥いたり、ニンジンや大根などの根菜は収穫した後水洗いして泥を落とす必要がある。実った後の茎や根を緑肥にするにしても、土に鋤き込む前に細かく刻んでおかなきゃならん。それらを処理するには、それなりに広い平地がなければ作業が困難になる」

「それもそうだな」

ラウルの尤もかつ的確な意見に、レオニスだけでなく二人の女王やパラスも深く頷いている。

女王達はとにかく野菜を作りたい!という思いが先走りしがちだが、実際には畑で野菜を作るだけが農業ではない。

ラウルのように、全体的かつ長期的な視野を以て考えながらやっていかねばならないのだ。

「あと、いくらパラス達が地上戦はほとんどしないからといって、この先も絶対に対地上戦の訓練をしないでいられる保証はない。もし鍛錬場としての役割が再び必要になった時に、全部畑にしてしまって使えませんでした!じゃ話にならん。ここの平地の半分もあれば、鍛錬場としての機能も残しておけるし、万が一の場合にもその役割を果たせるだろう」

「だな……この世に絶対なんてことは何一つないしな」

意見を求められたラウルが、島の半分を畑にすべきという案を出してざっと挙げた理由。

そのどれもがここにいる全員を納得させるだけの説得力があった。

「じゃ、天使達の宿舎側半分をそのまま残して、反対側を開墾することにしよう」

『そうね、それがいいわね!』

『やっぱり貴方達に相談して良かったわ』

「ラウル、我等に出来ることがあれば何でも言ってくれ!」

天使達の住居兼鍛錬場。その半分を畑に変えるということになった。

二人の女王やパラスに讃えられるレオニスとラウル。

積極的に手伝いを申し出たパラスに、ラウルが早速何かを思いついたらしい。

ピコーン☆とした顔をしたと思ったら、空間魔法陣を開くラウル。

一体何を出してくるのだろう。

「お、そしたらお言葉に甘えようか。早速手伝ってもらいたいことがあるんだが」

「おお、早速仕事をくれるのか!」

「おう、これの組立てを手伝ってくれ」

パラスと会話しながら、ラウルが空間魔法陣から取り出したそれは『ログハウスキット』である。

カタポレンの畑の開墾や、神樹襲撃事件の際に大量に出た倒木をガーディナー組に持ち込み、ログハウスキットに加工してもらったものだ。

突如現れた巨大な木材の山に、二人の女王やパラスが呆然とした顔で見上げている。

「ラウル……これは何ぞ?」

「これはな、『ログハウスキット』という品でな。木製の家をちゃちゃっと作れるスグレモノだ」

「ログハウス、キット……?」

「そう、今からログハウスという家を作る。これからこの島を畑にして野菜作りの指導を行うからには、俺達が休憩できる場所も必要になってくるからな」

「……そうだな。お前達専用の休憩所も、これからは必須だな」

「だろ?」

突如出現した木材の山に驚いていたパラスだが、ラウルの言い分を聞いて得心している。

この島の管理は、天空島警備隊隊長であるパラスに一任されている。

そのパラスがOKを出したのだから、建築許可は下りたも同然である。

するとここで、ラウルがレオニスの方に向き直り声をかけた。

「そんな訳で。俺達は今からここにログハウスを一棟建てるが。その間にご主人様達は、転移門の設置を進めといてくれ」

「お、おう……ログハウスを建てるのに、時間はどれくらいかかる?」

「そうだな……パラスや天使達の協力があれば、小一時間もあれば終わるだろ」

「分かった。そしたら俺は女王達に、転移門の設置方法を教えてるわ」

「よろしくな」

レオニスの答えを聞いたラウルは、さっさとログハウス作りに取り掛かる。

その横でパラスが空に向かって「緊急集合ーーー!」と叫んでいる。

ラウルのログハウス作りを手伝うべく、警備隊隊員全員に招集をかけたようだ。

パラスの招集により、空の四方八方からわらわらと集まってくる天使達。中には宿舎で休んでいたであろう者達まですっ飛んできた。

警備隊が大集合する図を尻目に、レオニスはライトとマキシに声をかける。

「ライト、マキシ、お前達はどうする? ラウルといっしょにいてもいいし、俺についてきてもいいし、エルちゃんやドライアド達のところで遊んで待っててもいいが」

「ンーーー……ぼくはレオ兄ちゃんや女王様達といっしょに、転移門作りを見たいな!」

「僕も転移門作りを見学したいです!」

これからの小一時間の過ごし方を、レオニスから尋ねられたライトとマキシ。

二人ともレオニスがこれから女王達に伝授する転移門設置のレクチャーを見学したいらしい。

ラウルのログハウス作りはラウルとパラス達天使に任せておけば問題なさそうだし、何より転移門を設置する場面などそうそうお目にかかれないからだ。

ライトとマキシの答えを聞いたレオニス、今度は二人の女王達に向かって話しかける。

「光の女王、雷の女王。今から天空島に設置する転移門の準備を行う。まずは通過条件の変更を加えた構文を魔法陣に書き込むために、一度天空神殿に戻りたいんだが。いいか?」

『もちろんよ!』

『じゃあ、皆またグリンちゃんとヴィーちゃんに乗って神殿の島に戻りましょう』

「「はい!」」

レオニスの申し出を快諾する女王達。

ライト達三人も早速神鶏達の背に乗り、ふわりと空に浮き上がる。

「ラウルー、ログハウス作り頑張ってねー!」

「パラスさーん、ラウルのことよろしくお願いしますねー!」

神鶏達の背から、ラウルとパラスに向けて声援を送るライトとマキシ。

二人からの声援に、ラウルはライト達を見上げながら右手を振って笑顔で応え、パラスは「おー!任せておけー!」という力強い言葉とともに右の拳を高く掲げて応える。

こうしてライト達は、再び二手に分かれて行動していった。