軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第87話 お出かけの約束

午後の授業も無事終えたライト。

早速帰り支度をしていると、また数人の同級生に囲まれた。

まだまだ謎の存在である転入生、ライトへの興味は尽きないようだ。

「ねぇ、ライト君てラグナロッツァに最近来たばかりなんでしょ?」

「うん、そうだよ」

「そしたらさ、今度の休みの日に僕達が市場とか案内してあげるけど、どう?」

「え、本当?いいの?」

「もちろん!私達のオススメのお店や公園もあるのよ!」

ライトがラグナロッツァに来るようになったのは本当に最近のことなので、現地人である同級生に市場やお店を案内してもらえるのはライトとしても心強く嬉しいことだ。

ただし、今度の休みの日には復元した本の内容確認やら解読する予定だったのだが……ここは一日でも早く同級生との親睦を深めるために、解読作業は延期させてもらおう。

「そしたら、お言葉に甘えて案内をお願いしちゃおうかな」

「了解!楽しみにしてるね!」

そう約束を交わすと、同級生達は満足気にピューッと教室を飛び出て帰っていった。

その行動速度の何たる早さよ。あれはとっとと帰宅してすぐに外に遊びに飛び出す、いわゆる陽キャ集団だな。

ライトも、今日もまたラウルのおやつをおねだりしたことを思い出し、足早にラグナロッツァの屋敷に帰宅した。

時間にして午後の2時半くらいか、制服を着替えて身支度を整える頃にはおやつの準備も完了している頃合いだろう。

そんなことを考えながら二階の元宝物庫に向かい、鞄を置き制服を脱いで普段着にちゃちゃっと着替えを済ませるライト。

下の食堂に行くと、そこにはもうレオニスがラウルとともにライトの帰宅を待っていた。

「お、ライト、おかえりー」

「レオ兄ちゃん、ただいまー。もうこっち来てたんだね」

「このご主人様、おやつどころか今日は昼飯もこっちに食いに来てたぜ?食い終わったらまた向こう戻ったけどよ」

「えっ、そなの?」

「今日は完全休業日だからな!……つーか、昨日の疲れがまだ完全には抜けきらんし、気分転換も兼ねて美味いもん食いたかったんだ……」

レオニスにそう言われれば、ライトには反論する術などない。

確かに昨日のあれ、復元魔法の実行は壮絶だったのだから。

ここはラウル特製の甘くて美味しいおやつを食べて、更なる英気を養ってもらわねば!

「さ、ライトも帰ってきたことだし、おやつにするか」

「わーい!ラウル、今日のおやつは何?」

「今日はスイートポテト作ったぞー」

「「……スウィート、ポトゥェィトゥ……」」

昨日の復元魔法の前例が長らく焼き芋だったため、ライトとレオニスは二人してスイートポテトに復元魔法をかける想像をしてしまったようだ。

ただ単に焼いただけの焼き芋ならともかく、さらにその先で調理加工されスイーツとして進化を遂げたスイートポテトを、生のさつまいもに復元するとしたら―――どれほどの魔力が要るのだろう?

というか、さつまいも以外にもバターや牛乳、生クリーム、砂糖あたりが必要なはず。もし復元魔法をかけたら、そこら辺の他の材料も全部分離するのだろうか?

そんな詮無きことを考えても、無駄以外の何物でもないのだが。おやつにスイートポテトという、微妙に昨日の復元魔法との関連を想像させるものが出てきたことで、咄嗟に連想してしまった。

ラウルのチョイスにそんな意図など全くないが、タイミングがアレだったという他ない。

ライトとレオニス、二人して頭をブンブンと横に振り雑念を振り払う。ラウルには何のことか分からないので、不思議そうに二人の仕草を見ていた。

「「「いっただっきまーす」」」

気を取り直して、食事の挨拶後早速おやつにパクつく。

しっとり濃厚なめらか、三拍子揃った絶品スイートポテトに舌鼓を打つライトとレオニス。

もちろんその横にいるラウルも、しっかりちゃっかりいっしょに同じものを食べている。

ライトはおやつを食べながら、レオニスやラウルと会話を楽しむ。

「レオ兄ちゃん、カタポレンのおうちのお片付けはどう?」

「あー、ぼちぼちやってるが、吹っ飛んだ椅子とか据え付けの棚の一部が結構傷んでてな……そっちの修復はちぃと時間かかりそうだ」

「そうなんだー……ま、昨日のあれは結構というかかなりすごかったもんねぇ……」

「まぁな、窓ガラスが割れてないだけマシと思うことにした」

「そうだねー、でもよく窓ガラス割れてなかったね?」

「あの家作る時、一応窓ガラスにも全部防御魔法かけといたからな。まさかそれが今になって、こんな形で役に立つとは思ってもいなんだが」

「お前ら、向こうで一体何してんのよ……?」

未だ事情を飲み込めていないラウルが、不思議そうな顔で二人を見る。対してライトとレオニスの二人は、愛想笑いで適当に誤魔化し続ける。

ラウルにも事情を話してやりたいのはやまやまだが、そうすると復元魔法のことも話さなければならなくなる。

復元魔法の危険性はもう二人とも十二分に承知しているので、たとえ身近な存在であるラウルといえど軽々と話せることではなかった。

それにしても、窓ガラスにも防御魔法かけてあるんか、それは初耳だ。

でもまぁそうだよな、できるもんならそうしといた方がいいよね。

つーか、レオ兄がかけた防御魔法なら、防弾ガラスどころか厚さ100メートルの鋼鉄板以上の頑丈さがありそうだ。

ライトはそんなことを考えながら、ラウル特製スウィートポテトをもっしゃもっしゃと頬張りつつ味わう。

「あっ、そういやレオ兄ちゃん、今度の休日なんだけど」

「ん、どうした?」

「同級生の子達が、ラグナロッツァの市場やお店を案内してくれるって言ってくれたんだけど。行ってもいい?」

「おっ、もう学園で友達ができたのか。さすがは小さなご主人様だ!」

ラウルが手放しでライトを褒める。

着実に第二のレオニスへの道を歩んでいるようで、何とも微笑ましい限りだ。

「もちろんいいぞ。ただ、子供達だけで出かけるとなると護衛とか防犯をどうしたもんか」

「えっ、そんなもん要るの?」

「当ッたり前だろう!ラグナロッツァにだって治安の悪い場所はあるし、まさか俺がいちいち出張っていっしょについていく訳にもいかんだろう?」

「あー、それはね、うん、困る、かなー」

ライトのお出かけに、いちいち護衛代わりにレオニスを連れ歩く訳にはいかない。

そんなことをしていたら、そのうち絶対に誰もライトを遊びに誘ってくれなくなることも目に見える。

「そうだなー、そしたら次の休みまでにライトのお出かけ用防犯アイテムを作っておくわ」

「それなら大丈夫かな。レオ兄ちゃん、手間かけさせるけどよろしくね」

「おう、任せとけ」

過保護は過保護なりに、ライトの立場を考え自主性を尊重してくれるレオニスの姿勢がライトには有り難かった。