軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第854話 久しぶりの転職神殿

皆でエンデアンに出かけた翌日の日曜日。

ライトは朝からとある場所に出かけていた。

そのとある場所とは、ディーノ村の山奥にある転職神殿。約一ヶ月ぶりの訪問である。

「ミーアさん、ミーナ、ルディ、こんにちは!」

『ライトさん、ようこそ』

『主様、お久しぶりですー!』

『パパ様、こんにちは!』

転移用魔法陣から現れたライトを見た三人が、皆嬉しそうにライトのもとに駆け寄ってくる。

「皆元気にしてましたか?」

『ええ、おかげ様で皆息災に過ごしております』

『ミーアお姉様も私も、もちろんルディだってこの通り元気です!』

『僕なんて、姉様二人から毎日『大きくなったね!』って言われるんですよー!』

穏やかなミーアに、元気溌剌なミーナとルディ。

確かにライトの目にも、ルディがまた一回り以上大きくなったのが見て取れる。

何とも賑やかで楽しげな三人に、ライトもほっこりとする。

そしてミーアが早速とばかりにライトに尋ねる。

『ライトさん、本日もレベルリセットにお越しですか?』

「もちろんそれもしていきたいんですけど、今日は別の用件もありまして」

『別の用件……ですか?』

ミーアの問いかけに、ライトはマイページを開いてアイテムを取り出した。

突如ライトの足元に出現した謎のアイテムを、ミーアとミーナとルディが揃って覗き込む。

『これは……?』

『主様、この長い鉄棒のようなものは、一体何ですか?』

「これはですねぇ……何と!BCO由来の特殊アイテム、その名も『幻のツルハシ・ニュースペシャルバージョン』でーす!」

『幻のツルハシ……何かすごそう……』

何のアイテムかを問う三人に、ライトはジャジャーン!とばかりに声も高らかに答えた。

その如何にもスペシャルな響き漂う大層なアイテム名に、三人ともますます息を呑みつつツルハシを見つめている。

『ツルハシということは、何かを掘るための道具なのですか?』

「さすがミーアさん、鋭いですねぇ!これは『幻の鉱山』という特殊な場所に行くためのアイテムなんです」

『幻の鉱山……何かさらにすごそう……』

「ルディも分かるー!? これね、ホントにすごいアイテムなんだよー!」

いつになく興奮気味に語るライト。その後もツルハシがどういうアイテムなのかを詳細に説明していく。

そのアイテムを入手できたのが余程嬉しいのだろうな、ということが手に取るように分かる。

『ありとあらゆる鉱物が採取できる場所、ですかぁ……それは本当にすごいですねぇ』

『僕やミーナ姉様も、時々綺麗な石を拾ってきたりしますけど……そういうのをたくさん拾えるってことですよね?』

『そうよー。私達がよく拾う綺麗な石は『宝石』といって、とても貴重なものとされているの。赤い石はルビーで、青い石はサファイアで、緑の石はエメラルドっていうのよ!』

ミーナがルディに、宝石とは何かをレクチャーしている。

とはいえその知識は、かつてライトがミーナに語ったものそのまんまなのだが。

ミーナも弟に対してお姉さんぶりたいお年頃なのだろう。

二人の弟妹の微笑ましいやり取りを、ミーアもニコニコしながら見守っていた。

すると、ミーナがライトの方に向き直り質問してきた。

『主様、これをどのようにして使えば、幻の鉱山に行けるのですか?』

「えーとね、これを剣のように使って何もない空中を切り裂くことで、幻の鉱山に繋がる道が開くんだ」

『何もない空中を切り裂く……それは、幻の鉱山とはこの世界とは違う場所にある、ということですか?』

「そうだね、ぼくも『幻の鉱山』についてはあまりよく分かってないんだけど……レオ兄ちゃんが言うには、おそらく異空間だろうって」

『異空間……とんでもすごそう……』

ミーナの質問に、ライトもあまりよく分からないながらも答えていく。

ライトの答えたそれは、レオニスがツルハシを使って幻の鉱山に行く時のやり方をそのまま表したものだ。

剣豪の如き荘厳な構えから、ツルハシを斜め袈裟懸けにして切り裂く。そして切り裂いた瞬間から、周囲は全く異なる景色に変化する。

どういう理屈や原理でそうなるのかは分からないが、少なくとも切り裂いて行き着く先が別の異空間であることは間違いない。

『異空間』という魅惑のパワーワードに、ミーナの目の輝きがますます強くなっていく。

『主様、私でもそのツルハシを使うことはできますか!? 幻の鉱山に行ってみたいです!』

「ンー、ミーナが使えるかどうかは分かんないけど、ミーナをいっしょに連れていってあげることはできると思うよ」

『ホントですか!?』

「でも、このツルハシを使うには一つ大きな問題があるんだよね……」

ライトの経験上、幻のツルハシを使って他者を伴いながら幻の鉱山に行くことは可能だ。実際ライト自身も、いつもレオニスにくっついて幻の鉱山に行っているのだから。

ライトの答えに、ミーナが興奮気味に喜ぶ。

だがしかし、この『幻のツルハシ・ニュースペシャルバージョン』を使用するにあたり、一つ大きな問題があった。

それを聞いたミーナ、喜色満面だった顔が一瞬にして曇る。

そしておずおずと不安そうにライトに問うた。

『大きな問題とは、一体何なのですか……?』

「幻の鉱山に行くには、まずこのツルハシにMPを十万貯め込まないと効果を発動しないらしいんだよね」

『『『え、えむぴぃ、じゅうまん…………』』』

ライトの答えに、ミーア達が三人揃って絶句する。

三人ともBCO由来のキャラクターなので、MPやHPが何たるかを本能レベルで知っている。

BCOでは、HPなら五桁、MPは四桁後半もあれば十分に強者とされる。それはモンスターでもプレイヤーでも、どちらにも言えることだ。

MP四桁後半ですら賞賛されるに値するこの世界において、アイテムを駆使するためのMPを十万も要求される―――これが如何に異様なことであるか、そしてこの問題の難易度が高いかを三人とも瞬時に理解していた。

『ミ、ミーアお姉様……アイテムにMPを十万貯め込むって、一体どうすればいいんですか……?』

『そ、それは……さすがに私にも分かりません……』

「実はぼくも、今日はそれを皆に相談したくてここに来たんですよねぇ……さすがにBCOのことを知らないレオ兄ちゃんや、他の人に相談はできないんで……」

『た、確かに……』

オロオロとしたミーナがミーアに助けを求めるも、ミーアにも全く分からずオロオロとするばかり。

如何にミーアが皆の頼れるお姉さんキャラであっても、さすがにBCO由来のアイテムのことまで知っているはずがない。

しかし、ミーアは根が真面目なので、分からないながらも何とか問題解決の糸口を見つけようと懸命に考える。

『ラ、ライトさんは、このツルハシをどこで入手なさったのですか?』

「えーとですね……前にも話したBCOの課金通貨、CPを使えるお店がありまして。そこで100CPで購入した、福袋のようなアイテムの中にこれが入っていたんです」

『ならばそのお店の店主さんに、ツルハシの使い方やMPの貯め方を尋ねてみられてはいかがですか?』

「そうですね……そうしてみてもいいかも」

ミーアが苦し紛れに出してきた質問に、ライトも答えながら頷く。

確かに購入したアイテムのことを購入店に聞くのは理に適っている。

ただし、その購入店であるルティエンス商会の店主ロレンツォが、福袋アイテムから出てきた品物のことまで全部把握して理解しているかどうかは分からない。

とはいえ、現状ではそれ以外に取れる方法はなさそうだ。

また近いうちにツェリザークに行って、ロレンツォさんに聞いてみるか……ライトがそう考えていた、その時。

ライトの背後から、突如声をかけられた。

『幻のツルハシかぁ。また珍しい品を持ってるねぇ?』

思いがけない声に、ライトがびっくりしてビクンッ!と飛び上がる。

そしてすぐさまガバッ!と後ろを振り返る。

するとそこには、右手をひらひらと振るヴァレリアが立っていた。