軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第787話 木から生まれた妖精の願い

フギンとレイヴンがラグナロッツァの屋敷に来た翌日の朝。

本日の行動予定を決めるべく、皆で朝食をともにしていた。

「さて、今日はどこに出かけよう?」

「フギンさんとレイヴンさんは、年齢はおいくつですか?」

「私は265歳です」

「俺は161歳っす!」

「そしたら、人間に例えたら26歳と16歳くらいになるのかな。それくらいの年齢の男の人がたくさん集まる場所というと……冒険者ギルド?」

まずはフギンとレイヴンの年齢を聞くライト。

フギン達の前に来たムニンとトリスの時も、同様のことを聞いていた。

これは、フギン達に見合う年齢層が多くいそうな場所を決めるための、とても重要な聞き取り調査なのである。

そしてその結果、働き盛りの男性が多くいる場所として、ライト達も最も良く知る冒険者ギルドが真っ先に候補に上がった。

レオニスもその意見に同意しながら、他の候補も上げていく。

「そうだなー。むさ苦しい男が山盛りいる場所ってんなら、やっぱ冒険者ギルドの大広間が一番手っ取り早いだろうなぁ……ああ、あと建設現場なんかもいいかもしれんな」

「建設現場?」

「ああ。ラグナロッツァ孤児院の新しい建物な。今ガーディナー組が、東の塔の近くに建てている最中なんだ」

レオニスの口から凸死飛び出してきた『建設現場』という言葉に、ライトの顔は『???』になっていた。

だが、レオニスのその後の解説を聞いて大いに納得する。

「あー、新しい孤児院ね!そうだねー、建設現場ならきっとたくさんの建設作業員の人達がいるよね!」

「そうそう。フギン達の案内をするついでに、どれくらい建設が進んでいるかも見ておきたいしな」

「じゃあ、冒険者ギルドの他にも新しい孤児院の建設現場も見学先に決定だね!」

冒険者ギルドに加えて、新ラグナロッツァ孤児院の建設現場も行くことが決まった。

するとここで、レオニスがラウルに問うた。

「ラウル、お前は今日はどうする? 何か予定は入っているか?」

「いや、特には予定は入っていない。冒険者ギルドとラグナロッツァ孤児院の建設現場には俺も行きたいから、いっしょについていっていいか?」

「もちろんいいぞ。つか、冒険者ギルドはともかく、お前にもラグナロッツァ孤児院の建設現場に行きたい理由があんのか?」

今日の八咫烏兄弟達への人里見学案内に、ラウルもついてきたいという。

ラウルが冒険者ギルドについてきたい、というのはレオニスにも分かる。先日ムニンとトリスを連れて案内した時にも、ラウルは依頼掲示板を熱心に眺めていた。

それは間違いなく、冒険者としてより一層精進しようというラウルの心意気の表れである。

しかし、新しい孤児院の建設にまでラウルが関わりたがる理由が今一つレオニスには分からない。

確かにラウルもラグナロッツァ孤児院に何度も訪れているし、そこにいる子供達とも仲良しだ。

だが、開発に伴う強制移転のための新しい孤児院建設に子供達は関係ない。

何故にラウルは新孤児院の建設現場に行きたいのだろうか?

「新しい孤児院の建設は、ガーディナー組が請け負っているだろ? 久しぶりにガーディナー組のやつらに会いたいし、四阿組立キットもまた注文したいと思ってたから、差し入れがてら話をしたくてな」

「え、何、ラウル、お前またどっかに四阿を自前でおっ建てんの?」

「ツィちゃんの周辺で出た倒木の丸太、これがかなりの量あるんでな。予め組立キットに加工してもらっておけば、四阿を建てたい時にいつでも建てられるだろ?」

「ぁー……あん時の倒木のやつか……確かにお前、倒れた木を全部丸太化してたもんなぁ」

ラウルが新孤児院の建設現場に行きたい理由。

それは『ガーディナー組の人達に会って、四阿組立キットの再注文を相談したい』であった。

え、何、また四阿作んの? 四阿ってそんな簡単にホイホイと増やすもんじゃねぇでしょ?と一瞬呆気にとられたレオニス。実際問題、四阿なんてものは『建てたい時にいつでも建てられる』ような代物ではない。

だが、四阿組立キットを再注文したい理由が『神樹襲撃事件の時に入手した丸太が大量にあるから』と聞き、得心している。

あの襲撃事件時に倒れた木々は、十本や二十本などという少ない量ではない。優に百本以上の木々が無惨にも倒された。

あまりにも強い爆風に耐えきれず、中には丸太にすらできずボロボロに砕けた木もあった。

だが、ラウルはそうした木々でもなるべく何かに再利用したい、と考えていた。

それは、単なるもったいない精神から来ているのではない。

そこにはラウルの『ユグドラツィを救うために犠牲になった木々、それらを何かに再利用して生まれ変わらせることで、木々への供養にしたい』という願いがあった。

これは、ラウルが木から生まれた妖精であることも少なからず影響している。

フォレットという木から生まれたラウルは、フォレットだけでなく全ての木々に対して深い愛情を持っているのだ。

ラウルなりのそうした諸々の思いを理解したレオニス。

フッ……と軽く笑いながら承諾する。

「分かった。そしたら建設現場の様子見のついでに、職人達に差し入れしてやってくれ。お前の美味い菓子を食えば、職人達も喜んで働いてくれるだろうさ」

「おう、任せとけ」

今日の人里見学ツアーにラウルもついてくることが決まった。

回る順番は、レオニス邸との距離を鑑みて『冒険者ギルド総本部 → ヨンマルシェ市場を通過 → 新ラグナロッツァ孤児院建設現場』となる。

だいたいのコースが決まったところで、ライトが明るい声で皆に声をかける。

「じゃあ、お出かけの支度をしようか!」

「あ、僕ももう出勤しますが、明日はアイギスがお休みなので兄様方の人里案内に僕も行けます!」

「そうなんだ、じゃあ明日はマキシ君もいっしょに皆でお出かけできるんだね!」

「はい!よろしくお願いします!」

出かける準備を促すライトに、マキシが明日休みだということを伝える。

アイギスの休日は基本的に不定休日で、その時々の受注状況や三姉妹の事情によって変動する。

故にいつ休みであるとは断言できないのだが、今回は明日が休みと決まっているので、兄達の人里見学にマキシも参加できるようだ。

「じゃ、いってきます!フギン兄様もレイヴン兄様も、人里見学を楽しんできてくださいね!」

「ああ、マキシもお勤め頑張れよ」

「明日は兄ちゃん達といっしょに人里見学しような!」

「……はい!」

出掛けに兄達にエールを送ったつもりのマキシだったが、それ以上に温かい励ましを兄達からかけてもらい、とても嬉しそうな笑顔になっている。

花咲くような笑顔で元気に返事をしたマキシは、笑顔のまま食堂から出ていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

マキシの出勤を見送った後は、ライト達もそれぞれに出かける支度をする。

レオニスは深紅のジャケット他フル装備、ライトもアイギス特製マントとアイテムリュック、そしてラウルも黒の天空竜革装備一式を身にまとっている。

たかが首都観光と侮ること 勿(なか) れ。今回も、フギンとレイヴンという大事な客人ならぬ客鳥を迎えているのだ。

そのもてなしはもちろんのこと、いつ何時でも不測の事態に備えておくのが冒険者たる者の心得である。

フギンとレイヴンには、ムニンとトリスと同じく小鳥サイズに変身してもらう。

ライトの『普通のカラスサイズでもかなり目立つから、あまり目立たないようにするには文鳥サイズが良い』という説明を受けて、素直に承諾し文鳥サイズに変身する八咫烏兄弟。

最初に出会った頃のフギンの、高圧的だった姿はどこへやら。しかし、威圧が強くて近寄りがたいよりも、今の方が余程親しみを持てるというものだ。

皆それぞれに身支度を終えて、玄関ホールに集合したライト達。

三人の誰に留まってもいい、というレオニスの言葉に、フギンはラウルの右肩に、レイヴンはライトの左肩に留まる。

「さ、じゃあ冒険者ギルド総本部から行くぞー」

「はーい!」

「了解ー」

「「はいッ!」」

レオニスの掛け声とともに、ライト達は冒険者ギルド総本部に向けて出立した。