軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第764話 受付嬢クレヒ

支度を整えたライト達は、ラグナロッツァの屋敷を出て冒険者ギルド総本部に向かった。

ムニンとトリスは文鳥サイズになり、今日はライトとラウルの肩に留まっている。

冒険者ギルド総本部に到着し、さっさと奥の事務室に向かう。

その間にもレオニスは、他の冒険者仲間達から「今度盛大な歓迎会を開くんだってな?」「日が決まったら教えてくれよ!」「俺達も行くからよろしくな!」などと声をかけられている。

レオニスもその都度「おう」「はいよー」「お前らもちゃんと会費払えよ?」と返している。

ラウルの歓迎会云々は、昨日この総本部で話が出たばかりだというのに、もうかなり広範囲でその噂が広まっているようだ。

こりゃ早いうちに開かんと、参加人数が雪だるま式に増えてえらいことになりそうだな……とレオニスがブツブツと呟いている。

主従揃って人気者とは、なかなか大変なことである。

事務室のさらに奥にある転移門に移動したライト達。

ホドの街に向かって転移していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

転移門のある事務室から、表側の広間に移動するライト達。

ここは冒険者ギルドのホド支部。広間にはそこそこの冒険者達がいる。

このホドという街は、ライトが思っていたよりかなり賑わっているようだ。

ホドは街の規模としては中堅程度なのだが、看板であるホド遺跡関連の仕事や依頼が絶え間なくある。例えばホド遺跡に行く観光客や学者、研究者達の護衛、遺跡周辺の見回り、時折出てくる魔物の駆除等々。

そのため、よほど素行の悪い者でもない限り冒険者が食いっぱぐれることはないのだ。

故にこのホドを拠点にする者も多い、という訳である。

レオニスは早速ホド支部の受付窓口に向かう。

そこにはお約束のように、頭の天辺から爪先までラベンダー色に染まった、楚々とした美人受付嬢がいた。

「よう、クレヒ。久しぶりだな」

「あらぁー、レオニスさんじゃないですかぁ!ホドの街へようこそ!」

ほんわかとした可愛らしい受付嬢が、レオニスの顔を見て花咲くような笑顔で迎え入れる。

彼女の名はクレヒ。クレア十二姉妹の九番目、九女である。

クレア十二姉妹との新たな出会いに、ライトは内心で感動に打ち震える。

もちろんライトの目には、今目の前にいるクレヒとクレアの区別は全くついていない。クレアもクレヒもクレナもクレエも、全ーーー部同じ顔に見える。

しかし、歳の違う姉妹でこれだけ同じ顔となると、区別の可否云々を通り越してもはや感動レベルである。

「というか、レオニスさんがホドにいらっしゃるのは何年ぶりですかぁ? かなりのご無沙汰ですよねぇ?」

「そうだなぁ、前回ホド遺跡に行ったのが三年くらい前だから……それ以来か?」

「まぁ、そんなにいらしてなかったでしたっけ? レオニスさんてば冷たいですねぇ、もう少しホドの街にお立ち寄りいただいてもいいんですよ?」

「ははは、そう言うな。用事でもない限り足が向かんのは仕方なかろう。……ライト、どうした?」

和やかに雑談していたレオニスとクレヒ。レオニスに『もっとうちの街にも立ち寄れ!』と言い放つあたり、クレヒもまたクレア十二姉妹の一員であることがよく分かる。

すると、レオニスがライトの異変?に気づいて声をかけた。

もちろんライトは具合が悪くなった訳ではない。クレア十二姉妹の一人であるクレヒに会えたことに感動しているだけである。

レオニスに声をかけられたライト、ハッ!と我に返る。

「……あ、ごめんなさい!ここの受付嬢のお姉さんも、クレアさんやクレナさんにすっごくそっくりで、感動しちゃってた」

「そうかそうか、そしたら早速ご挨拶しとかなきゃな」

「うん!初めまして、こんにちは!ぼくはライトといいます、レオ兄ちゃんの家でいっしょに暮らしてます。いつもレオ兄ちゃんがお世話になってます」

レオニスに挨拶を促され、ライトは簡単な自己紹介とともにペコリと頭を下げた。

礼儀正しいライトに、クレヒが感心しながらにこやかに答える。

「まぁまぁ、君がライト君ですか。初めまして、こんにちは。私はホド支部で受付嬢をしております、クレヒと申しますぅ。クレア姉さんの妹で、姉妹の中では九番目なんですよー」

「そうなんですね!ディーノ村のクレアさんやラグナロッツァのクレナさんには、レオ兄ちゃんだけでなくぼくもいつもお世話になってます!」

「ライト君のお話は、姉さん達からいつも聞いてますよ。本当にお利口さんなんですねぇ♪…………って、今日はまたとても可愛らしい文鳥さんをお連れですねぇ」

挨拶や自己紹介の後に、クレヒがライトの肩にいた黒い文鳥ムニンに目を留めた。

やはり動物を連れているのが珍しいのか、どうしても行く先行く先で尋ねられる。

「その子はレオニスさんの従魔ですか? それとも普通の文鳥さんで、ライト君やレオニスさんの新しいご家族ですか?」

「あ、この子はレオ兄ちゃんの知り合いから数日預かってくれと頼まれた子達なんです」

「まぁ、そうなんですかぁー。籠に入れなくても逃げないなんて、とても賢い文鳥さんなんですねぇ」

「はい!この子はムニンちゃんで、もう一羽の子は……って、あれ? ラウルはどこ?」

ムニンを紹介したついでにトリスも紹介しようと思ったのに、ライトが振り返るとラウルがいないではないか。

これではラウルの肩に留まっていたトリスを紹介できないではないか。

行方不明の執事の姿を探して、キョロキョロと辺りを見回すライト。すると、少し離れたところにある壁に向かっているラウルが見えた。

「あー……あそこにいる黒いのが、レオ兄ちゃんとこのお屋敷で執事として働いている、ラウルっていいます。今日は皆でいっしょに来たのに、ラウルってばクレヒさんに挨拶もしないで全くもーぅ……」

「いえいえ、いいんですよ。あの壁にあるのは依頼掲示板なので、このホドにはどんな依頼があるのかを勉強してらっしゃるんでしょう」

「クレヒさんに気を遣わせちゃって、すみません……」

フラフラとしているラウルについてライトが謝ると、クレヒは全くキニシナイ!といった様子でフォローしてくれている。

実際クレヒの推察は当たっていて、ラウルはホドの街にはどんな依頼があるか、掲示板チェックしていたのだ。

この妖精、何気に勤勉である。

「ところで、レオニスさん達は今日はどこにお出かけなさるんですか? やはりホド遺跡を散策なさるので?」

「いや、いても昼までしかいられないから、今日のところはホドの街だけ見て回るつもりでな。ホド遺跡の散策も、近いうちにライトを連れてするつもりではいるが。ま、その下見ってとこだ」

「そうなんですかぁー。まぁ確かにホド遺跡に行くとしたら、半日では足りないですもんねぇ」

「そゆこと」

クレヒに本日のホド訪問の理由を尋ねられたレオニスが、正直なところを述べる。

ホド遺跡というのは、このホドの街からかなり離れたところにある。通常の馬車での行き来なら、片道二時間程度かかるくらいには距離がある。

もっともライト達ならば、走って一時間もしないうちにホド遺跡に到着するだろうが。

しかし、今日は午後からアイギス訪問という重大な任務が控えている。

ここでホド遺跡に行ったりして余計な体力消耗はしたくないし、思わぬアクシデントが発生したらなおのこと困る。

なので今日はホドの街の中を中心に散策だけする予定である。

「そしたら、ホド遺跡博物館を見に行くのはどうですか? ここからそう遠くないですし、ホド遺跡の概要を事前に学べますよー」

「そうだな、それがいいな。ライトやラウルの勉強にもなるしな」

「よろしければ、こちらの観光マップをお持ちください。オススメのお食事店情報なんかも載ってますのでー」

「おお、そりゃありがたい。一枚いただくか」

話を聞いたクレヒが、机の引き出しから一枚のマップを取り出した。

それはホドの街の見どころをまとめた、いわゆる『観光マップ』というやつである。

そこにはホドの街からホド遺跡までの距離や街の歴史、そしてホド遺跡博物館の場所やオススメの飲食店なども記載されている。

ホドの街を何度か訪ねたことのあるレオニスはともかく、初めて訪れたライトやラウルにとっては実にありがたいマップだ。

「じゃ、とりあえずホド遺跡博物館に行くか」

「クレヒさん、また後ほど!ラウルー、行くよー!」

「おーぅ」

まだ依頼掲示板を眺めていたラウルを呼び寄せるライト。

三人は冒険者ギルドホド支部を出て、ホド遺跡博物館に向かっていった。