軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第759話 ラウルの爆買いツアー in ラグナロッツァ

冒険者ギルド総本部を出たライト達。

再びヨンマルシェ市場に戻り、ラウル主導の買い物ツアーを再開した。

調味料店では一升瓶入りの醤油、味醂、酢など爆買いし、他にも砂糖や味噌なども大量に購入していく。

瓶なら十本、他は十個単位で購入指定しては、ホクホク顔の店主に渡された品をどんどん空間魔法陣に収納していくラウル。その勢いはもはや『爆買い』などという言葉すらも生温く感じる。

ちなみに以前は料理酒も買っていたのだが、オーガの里の秘酒をもらえるようになってからはほとんど買っていないという。

それと同じで、塩は港湾都市エンデアン産がお気に入りで、もうラグナロッツァで塩を買うことはないらしい。

そんな調子で爆買いしていくラウルの後ろで、レオニスが目を大きく見開きながらぼそりと尋ねる。

「なぁ、ラウル……お前、いっつもこんなに大量に調味料買ってんの?」

「ン? 今日はいつもの倍は買ってるかな」

「何だ、今日は俺が財布になるからか?」

「いやいや、何言ってんだ。本当に調味料が底をつきそうから買い足してるんだ。何しろこないだのオーガの里の宴で、ほとんど使い切っちまったからな」

「ぉ、ぉぅ、そうか……そりゃ仕方ねぇな」

ラウルが事も無げにサラッと語った理由を聞いたレオニス、ぐうの音も出ずに納得するしかない。

確かに先日のオーガの宴は、それはもう盛大なものだった。飲めや歌えやの宴会は大盛り上がりで、そこに出た料理は全てラウル監修のもと提供された。

それら大量の料理の食材は、ほぼ全てがラウルの持ち込み。もちろん調味料だってその範疇に含まれる。

ラウルの手持ちの調味料が底をついた、という話は嘘偽りない事実だった。

だがここで、ラウルがニヤリと笑いながら補足する。

「ま、もっとも? ご主人様のその推察は、あながち間違ってもいないがなwww」

「何だとぅ? ……ったく、調子の良いヤツめwww」

「そう言うな。ご主人様達にだって、いつも美味いものをたくさん作ってるんだからよ。なぁ、ライト?」

「うん!ラウルが美味しい料理を作るためには、いろんな調味料が欠かせないもんね!レオ兄ちゃん、ラウルが使う調味料もたくさん買ってあげてね!」

「おう、任せとけ。さっきたんまり金を下ろしたからなwww」

ラウルがレオニスの財布を当てにしていることをシレッと認めたではないか。

屈託のないラウルの笑顔は、図々しさを通り越していっそ清々しい。

ライトも巻き込んで正当性を主張するラウルに、レオニスもくつくつと笑う。

こんな調子で、次々と他の店を梯子していくライト達。

次に立ち寄った牛乳屋では、さらにすごい光景が繰り広げられた。

「よう、爺さん、久しぶり」

「おお、ラウルさんじゃないか。今日も牛乳をたくさん買っていってくれるんかね?」

「もちろんだ。今日はどれくらいの量があるんだ?」

「そうさな、2000リットルってとこかの」

「2000か、なら今日はその八割くらいもらおうか」

「1600リットルな、承知した」

「「せせせ1600リットル……」」

ラウルと牛乳屋店主の桁違いのやり取りに、ライトもレオニスも目が点&まん丸になる。

聞くところによると、店主のお爺さんは何と元魔術師兼冒険者の空間魔法陣持ちで、牛乳の管理を空間魔法陣でしているというではないか。ならば2000リットルの在庫があるというのも頷ける。

もちろんその鮮度が抜群なのは言うまでもない。

上下水平に二枚の空間魔法陣が展開され、上から下に向けて大量の牛乳がダバダバダー……と流し込まれていく。それはまるで真っ白な滝のようだ。

1600リットルもの受け渡しとなるとそれなりに時間がかかるので、その間にライトが店主のお爺さんにいろんな話を聞いている。

「お爺さん、空間魔法陣を持っているなんてすごいですね!」

「ほっほっほ。若い頃は散々これを使って、冒険者達とよく出かけたもんじゃ」

「どんなところに出かけたんですか?」

「世界中の遺跡を巡ったり、様々な素材集めをしたのぅ」

「いいなー。ぼくも将来お爺さんやレオ兄ちゃんみたいな、立派な冒険者になるのが夢なんです!」

明るい笑顔で将来の夢を語るライトに、聞き手のお爺さんも思わず満面の笑みを浮かべる。

「ほほう、それは素晴らしい夢じゃのぅ。後ろの紅い兄さんも冒険者なんじゃろ?」

「ああ、俺はレオニスってんだ。こんなところで大先輩にお会いできるとは、光栄の極みだ」

「わしが冒険者をしていたのは、それこそ大昔の話じゃよ」

レオニスに大先輩と呼ばれた老店主、まんざらでもないようで相好を崩しながら楽しげに笑う。

「いやいや、大昔だろうが何だろうが大先輩に変わりはないさ。しかも元魔術師ってんなら、魔術師ギルドにも所属していたんだろう?」

「ああ、わしの場合本業は魔術師じゃったからの」

「ならば、ピースの大先輩でもある」

「ピース……お前さん、ネザン家の坊やとも知り合いなのか。そりゃさぞ高位の冒険者なんじゃろうなぁ」

「ま、ぼちぼちな」

この老店主、元魔術師というだけあってピースのことも知っているようだ。

そんな世間話をしているうちに、空間魔法陣から流れ出ていた牛乳の滝が途絶えた。どうやらラウルが求めた量、1600リットルに達したようだ。

「お、牛乳が全部ラウルの空間魔法陣に入ったようだな」

「おう、お待たせ。ご主人様、代金の支払いよろしくな」

「了解。大先輩、いくらだ?」

「端数を少々まけて、金貨一枚に大銀貨九枚じゃ」

「なら俺もオマケして、金貨二枚にしとこう。釣りは要らん、また次回ラウルが買い物に来た時にでも何かオマケしてやってくれ」

「おお、ラウルさんのお連れさんは何とも太っ腹じゃのう!」

レオニスのチップ代わりの釣り不要宣言に、老店主が目を見開きながら驚いている。

金貨二枚を受け取った老店主に、レオニスが改めて問うた。

「大先輩、名前を聞いてもよろしいか?」

「わしの名はバルド、姓はない」

「そうか、バルド先輩か、教えてくれてありがとう。またいつかラウルとともに来る」

「おお、いつでも歓迎するぞぃ。……ああ、この店は火木土の週三日の営業だから、来るならその曜日に来てくれ」

牛乳1600リットル分を購入し終えたライト達は、老店主に手を振りつつ牛乳屋を後にした。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

その後ライト達は、乳製品を扱う店で大量のチーズ、バターなどを爆買いし、肉屋で少々買い物をしてから公園に向かった。

太陽が真上に上り、お昼ご飯の時間になってきたからである。

公園には親子連れや集団で遊ぶ子供達で賑わっている。

ここにいる子供達も、ライトと同じくラグーン学園の夏休みがもうすぐ終わる。きっと夏休みの最後を惜しみつつ、昼間に遊べる時間を存分に楽しんでいるのだろう。

もっとも、彼ら彼女らの夏休みの宿題がきちんと終わっているかどうかは定かではないが。

木陰には、多くの人達が日陰を求めて地べたに座っている。

ライト達も公園の端の木のもとに行き、昼食の準備を始める。

敷物に食べ物飲み物、おしぼり等々全ての準備を整えて皆で食べ始めた。

皆でサンドイッチなどを食べながら、レオニスがムニン達に話しかける。

「ムニン、トリス、ここまで人里を見てきてどうだ?」

「全てがとても興味深いです!」

「人里には、本当にたくさんの物が溢れているんですね!」

文鳥サイズから普通のカラスのサイズに大きくなったムニンとトリス。ラウルが今朝作っていたタコ焼きを美味しそうに食べている。

もちろん熱々のタコ焼きではない、ほんのり温かい程度の温いタコ焼きである。これは今日のムニン達の昼食用として、今朝焼いたタコ焼きの第一陣目を空間魔法陣に仕舞わずに、そのまま冷ましておいたものだ。

嘴で器用にヒョイ、パクッ、とタコ焼きを食べるムニンとトリス。

傍から見てるととても愛らしくて微笑ましい。

ライト達も温かいタコ焼きを食べながら、午後の予定を話し合う。

「ねぇ、これからどこに行く? ラウルはまだ買いたい物あるの?」

「ンー、とりあえず今すぐに欲しいものは一通り買えたし、今日はもういいかな」

「そしたら、レオ兄ちゃんはどこか行きたいところはある?」

「そうだな…………まずは孤児院に餅を届けに行くかな。ほら、ここ最近いろんなことがあって、ずっとバタバタしてただろ? だからまだ今月の分の餅を届けていないんだ」

「そっか、それは早くに行かないとね!」

ラウルはもう買い物に満足したようで、レオニスはラグナロッツァ孤児院に行きたいという。

言われてみれば確かにそうで、特に八月に入ってから猛烈に多忙だった。

エンデアンにプロステス、神樹襲撃事件にファング、氷の洞窟にオーガの里の宴等々その他諸々。思い起こせばこれら全部、ライト達が八月に出かけた場所だ。

改めて考えると、過密スケジュールどころの話じゃないよなー……とライトも内心思う。

「じゃあ、皆でラグナロッツァ孤児院に行こう!」

午後の行き先も無事決まったところで、今しばらくのんびりと公園での昼食を楽しむライト達だった。