軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第743話 ミーナとルディの実力

ルディの背に乗って、転職神殿から飛び立ったライトとミーナ。

晴れ渡る空の下、悠々と飛ぶ空中遊泳の何と楽しきことよ。

ライトはもちろんのこと、ミーナまでがルディの背で『うわぁぁぁぁ♪』と大喜びしている。

しかし、ただ喜んでばかりもいられない。万が一にも人目についてはマズいので、ライトがルディに声をかける。

「ルディ、できればもうちょっと低く飛んでくれる? もし人に見られたら困るからさ」

『分かりましたー』

ライトの指示通り降下して、山の木々より少し上を飛ぶルディ。とても素直で良い子である。

もともとこの神殿神殿があるディーノ村は人口激減に歯止めがかからず、まさに限界集落真っ只中である。

だがそれでも、昔から先祖代々住み続けている家は数軒あるし、冒険者ギルドのディーノ村出張所だってある。

人目につかないよう慎重に行動するのは、決して悪いとこではないしむしろ当然とすら言える。

眼下に広がる山の木々を見ながら、ミーナがライトに問うた。

『主様、この辺りにはどのような魔物がいるのですか?』

「ンーとねぇ、ぼくがいつも狩るのは咆哮樹っていう、木の姿をした魔物なんだけど。他にもイモムシ型のソイルワームや、枯れ葉や枯れ枝を食べるグランドスライムなんかがいるよ」

『ワームやスライムは狩らないのですか?』

「うん、今のところ狩る必要がないからねー。もしこの先、何かを作るための材料として指定されたら、その時は狩るけど」

ライトの説明に、ふむふむと聞き入るミーナとルディ。

ライトがこの近辺で狩るのは咆哮樹だが、それ以外の魔物がいない訳ではない。山の中に普通に棲息している虫型魔物やスライムなどがいる。

だがそれらは、ただ単に生産職スキルで生成できる各種アイテムの材料にはなっていないので狩らないだけである。

もしこれが、咆哮樹のようにコズミックエーテルの原材料に入っていたら、容赦なく狩りまくられるところだ。

ちなみにこの近辺の魔物の一種、グランドスライムは今のところぬるぬるドリンクの原料にはなっていない。

主食が枯れ葉や枯れ枝のせいか、体の色がくすんだ黄土色のスライムであまり美味しそうなドリンクにならないのだ。

しかも普段から咆哮樹の葉っぱや枝を食べているので、ぬるぬる成分に含まれる渋味や苦味が猛烈に強いのだという。

それらを取り除くために労力を割くくらいなら、他のぬるぬるドリンクを作る方が余程楽で利益率も高いらしい。

見た目も味も好まれないために乱獲されないという、ある意味ラッキーな立ち位置のスライムである。

「あ、ルディ、あの山の上の方にいってくれる?」

『はーい!』

転職神殿のある山より東側にある、一際大きな山を指すライト。

その山に咆哮樹がたくさん棲息しているのだ。

山の下の方ほど咆哮樹のサイズが小さく、上にいけばいくほどどんどん大きくなっていく。

ライトは今まで一人で下から山を登り、小さな咆哮樹を相手にしながら中腹辺りまでしか登ったことがない。

だが、今日はミーナとルディという他の戦力がいる。彼女達がどれほど戦えるかは全くの未知数で分からないが、それでも戦力として数えていいだろう。

「ルディ、ここら辺で下りて」

『はい!』

咆哮樹のいる山の中腹より少し上側、富士山風に言えば七合目あたりでルディが着陸した。

その近辺で立ち枯れたような木々に見えるそれは、全て咆哮樹。顔つきや姿形は小型の咆哮樹と全く同じで、大きさだけが異なる。

しかし、その大きさが全く違う。

小型の咆哮樹は2メートルくらいの大きさだが、山の中腹辺りの咆哮樹は5メートル以上になる。その差倍以上である。

しかもこれでも中型止まりで、もっと上にいる大型咆哮樹ともなると10メートル以上の巨木になるという。

最大級になると20メートル近い咆哮樹がいる、というのをライトは【全世界植物大全/最新版】と魔物図鑑を読んで知っていた。

突如上空から現れたライト達に、咆哮樹はびっくりしているのか固まっている。

だがそれもほんの束の間、五本の咆哮樹が一斉にライト達目がけて飛びかかってきた。

「「「キエエェェエェエエェッ!!」」」

ライト達は背中合わせにして三方向を向き、互いの背後を守りつつ戦い始める。

ライトはいつものように、物理必中スキル【手裏剣】を繰り出して咆哮樹の上部の大きな枝を刈り取る。

そして、ミーナとルディはというと―――

『風刃乱舞!』

ミーナは得意の風魔法で、咆哮樹の枝をバンバン切り裂いていた。

敵に向けて手のひらを翳し、無数の鋭い風の刃を繰り出すミーナの何と頼もしきことよ。

左右の枝葉を撓らせながら、まるで鞭を飛ばすかのように襲いかかる咆哮樹の枝葉をスパスパと切り落としていく。

一方、ルディもまたライト達を背に猛威を振るっていた。

『フォトン・レイ』

ルディが短く唱えただけで、空から咆哮樹目がけて無数の光の矢が降り注ぐ。

まるで雨の如く降り注いだ光の矢は、長剣を突き立てたかのようにザクザクと咆哮樹の枝葉を切り落とす。

こちらはもはや、咆哮樹が枝を伸ばし攻撃する隙さえ与えない。枝を伸ばす傍から全て光の矢が当たり、片っ端から落としてしまうからだ。

それを見たライトは、内心でものすごく驚愕していた。

『うッわ……ミーナもルディも強ッ!』

『これだけ強ければ、いつか俺が冒険者になった時にいっしょに旅に出られるな!』

『……あー、でもそうすると、転職神殿のミーアさんが絶対に寂しがるよなー。ミーアさんのことだから、決して口には出さないだろうけど……』

『……よし、そしたら転職神殿にもう二体ほど使い魔ファミリーを増やすか。でもって、旅に出るメンバーも都度入れ替えれば、ミーアさんの寂しさも軽くなるだろうし』

『……って、増やすにしても小型か中型までの使い魔にしよう。大型ばかり増やすと手狭になっちゃうし……』

ライトはそんなことを考えながら、中型咆哮樹の枝葉を【手裏剣】で容赦なく刈り取り続ける。

一方、咆哮樹としては大誤算だ。

如何にも強そうな黄金龍はともかく、女子供のミーナやライトにまで手も足も出ず、傷一つつけられないとは。

しかも傷一つつけられないどころか、自分達の方が一方的にボロボロになっていくばかり。五本ががりでもこの有り様では、いくら命があっても足りない―――知能があまり高くない咆哮樹にも、このことは明らかに理解できた。

これは敵わん!とばかりに、二足歩行ですたこらさっさと逃げ出す咆哮樹達。

ライトは逃げる咆哮樹は追わず、ひとまず地面に落ちた咆哮樹の枝を拾うことにした。

「うわぁー、いつもの枝よりも大振りのものばかりだ!」

『主様、私達も枝を拾うのをお手伝いします!』

『僕は、パパ様とミーナ姉様が枝を拾っている間、他の魔物が来ないか見張ってますね!』

「二人とも、ありがとう!そしたらミーナ、ここにアイテムリュックを開けておくから、リュックの中に枝をどんどん入れていってね!」

『分かりましたー♪』

ライトとミーナは枝拾い、ルディは少し上空に浮いて周辺の警戒と二手に分かれて作業するライト達。

早速枝を拾い始めたライト、中型咆哮樹が落としていった大きめの枝を拾い上げては喜んでいる。

普段柴刈り対象としている小型の咆哮樹のものに比べ、ずっしりとした重さがあって、太さや長さも倍以上ある立派なものが多い。

これならいつもの倍どころか五倍、十倍くらいは稼げているかもしれない。

ホクホク顔で咆哮樹の枝を拾うライトに、ミーナも嬉しそうな顔で枝拾いを手伝っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ふぅ……これでほぼ全部拾えた、かな?」

『主様、お疲れさまでした!』

『パパ様、お仕事お疲れさまです!』

「皆ありがとう!休憩がてら、甘いものでも食べようか」

『『やったぁー♪』』

咆哮樹の柴刈りを無事終えたライト達。

咆哮樹との戦いの労いと休憩も兼ねて、この場で甘いものを食べることにした。

敷物は敷かず、小さな岩の上に腰掛けて座るライトとミーナ。ルディはライト達の前の地面にとぐろを巻くように座る。

ライトはアイテムリュックからおしぼりを取り出し、よく手を拭いてからシュークリームを取り出す。

ミーナとルディにもおしぼりをそれぞれに渡し、手を拭いた後にシュークリームを一つづつ渡して最後に自分の分も取り出した。

「じゃ、食べよっか。いッただッきまーーーす♪」

『『いッただッきまーーーす!』』

食事の挨拶の後、三人一斉にシュークリームを頬張る。

働いた後のシュークリームは、いつも以上に美味しい気がする。

ライトは二個、ミーナは四個、ルディは七個食べて満足した。

「はー、美味しかったー♪」

『動き回った後の甘いものって、格別ですねぇ♪』

『パパ様、疲れてませんか? どこも怪我してませんか?』

「うん、大丈夫だよ!ミーナやルディが背中を守ってくれたからね!」

『それは良かったです!』

満足げなミーナに、ライトの体調を気遣うルディ。

ルディの気遣いを受けて、ライトもまたミーナ達の体調の心配をする。

「それよりも、ミーナやルディこそ疲れてない? すっごい魔法使ってたし、MPかなり減ってるんじゃないの?」

『私は全然平気です!あんなの初歩中の初歩で、百回唱えたところでへっちゃらです!』

「え? そ、そなの?」

『パパ様、僕も全然疲れてないですよ? ミーナ姉様と同じく、フォトン・レイなんて百連打したってどうってことないですし』

「そ、そうなんだ……ミーナもルディも、すっごく強いんだね……アハハハ……」

ライトの目には、ミーナの『風刃乱舞』もルディの『フォトン・レイ』もものすごく強力な攻撃魔法に見えたのだが。本人達にとっては大したことではないらしい。

使い魔達の戦闘能力の高さに、ライトは唖然とするばかりだ。

『主様、これからどうしますか? 山のもっと上の方にも行きますか?』

「うーん、どうしよう…………とりあえず今日はもう採取はいいかな、目当ての咆哮樹の枝はたくさん採れたし」

『そしたら、もう神殿に戻りますか?』

「そうだね、あまり欲ばって一度にたくさん採る必要もないしね!それよりも、ミーナとルディといっしょにまた空を飛びたいな!」

今後の行動をどうするか、ミーナに問われたライトは一旦帰ることにした。

いつもの量の五倍以上は採取できたのだ、これ以上欲ばって採り続けることもあるまい。それよりは、ミーナやルディと空の旅を満喫したい!と判断したのだ。

ライトの判断に、ルディが嬉しそうに身体を起こす。

『じゃあ、また僕の背中に乗ってください!』

「ありがとう、ルディ。帰りもよろしくね!」

『ねぇねぇルディ、お姉ちゃんもまたルディの背中に乗っていい?』

『もちろんです!』

『ありがとう、ルディ!大好き!』

帰りもルディの背に乗ることを快諾されたミーナが、ルディの長い首っ玉に抱きついて喜ぶ。

ライトもルディの背中によじ登り、ライトの後ろにミーナが座る。

「じゃ、皆で神殿に帰ろう!」

『出発、進行ーーー!』

ライトとミーナを乗せたルディ号、ふわりと宙に浮く。

行きと同じくあまり高度を高くせず、低空飛行で転職神殿に戻っていった。