軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第739話 風魔法の練習とオーガの里の宴

ライトとレオニスがシュマルリ山脈南方に出かけた翌日。

この日はオーガの里で宴が開かれる日である。

ラウルは昨日に引き続き、今日も朝早くから畑の野菜の収穫をしてオーガの里での宴の料理の準備をしている。

ラウルがオーガの里に行く前に、ライトもラウルの野菜収穫を手伝ったが、何しろラウルの畑のパワーアップぶりがすごい。

今日も鈴なりに実っているトマトや枝豆などの巨大な野菜達。天高く聳え立つ野菜達を見上げながら、ライトが呟く。

「すごいね、ラウル……これ、昨日植えたばかりなんでしょ?」

「おう、昨日の昼に苗を植えたやつだ」

「半日でここまで育つの!?」

「植物魔法をずっとかけ続ければ、種を蒔いてから一時間くらいで実を収穫することも可能だ」

「………………」

ラウルの話にライトが絶句する。

天空島で念願の『ドライアドの加護』を得て以来、ラウルの植物魔法の腕がメキメキと上がりまくりなのだ。

その威力は凄まじく、種蒔きから収穫まで最短一時間で可能になったというではないか。さながら『ジャックと豆の木』のようである。

「ただ、植物魔法を一時間近くずっとかけ続けるというのも何気にしんどいし、急いで収穫しなきゃならんことも滅多にないから、そう何度も頻繁にやるつもりはないがな。ま、今回はオーガの里の宴で大量の食材が必要だから、実験や検証がてら頑張ってみたが」

「そうだねー。三日に一度収穫するくらいのペースでいいんじゃない?」

「そうそう、畑の土も休ませてやらんとならんしな」

ライトの提案に、ラウルも頷きながら同意する。

いくらカタポレンの森の魔力が無限といえど、働き手のラウルの体力や時間は有限だ。

畑仕事の他にも、ラグナロッツァの屋敷の維持管理や料理の仕込み、冒険者としての仕事等々ラウルも何かと忙しい身。畑仕事だけに従事する訳にはいかないのだ。

「殻肥料や緑肥を鋤き込んで畑を一日休ませて、その後種蒔きから二日後に収穫のサイクル。これが一番効率的にも良さそうなんでな、これからそうしていくつもりだ」

「ラウルも忙しいね……あんまり無理しないでね?」

「おう、気遣ってくれてありがとうな。大丈夫、こう見えて俺もちゃんと休む時は休んでいるから心配すんな」

「そっか、ならいいけど」

あまりにも多忙そうなラウルの身を案じるライトに、ラウルが穏やかに微笑みながらライトの頭をくしゃくしゃと撫でる。

実際ラウルが畑仕事を休もうと思えば、いつでも休むことができる。種を蒔かずに休耕地にすることだってできるのだから。

それに、種蒔きの時に植物魔法を一度かければ、後は水遣りするだけでその二日後に収穫が可能になるという。

朝夕の水遣りはライトの仕事だし、そこまでラウルに多大な負担はかからないのが利点である。

「さて、そしたら俺は今からオーガの里に向かうが。ご主人様達は昼頃にオーガの里に来るんだよな?」

「うん、レオ兄ちゃんともそういう話になってるよー」

「そしたらライト、すまんが収穫後のトウモロコシの茎を引っこ抜いておくから、風魔法で裁断と乾燥をお願いできるか?」

「うん、いいよ!ぼくも風魔法の練習になるから!」

「ありがとう、よろしくな」

ラウルはそう言うと、トウモロコシ畑に行って巨大な茎を三分割に切ってから畑の敷地内に積んでいく。もちろん根っこもちゃんと引っこ抜いて土の上に乗せる。

ちなみに他の作物、トマトや枝豆、ナスなどはこの先まだ三日くらいは続けて収穫できるので、まだ木を切る段階ではない。

全てのトウモロコシの茎や根っこを畑から引っこ抜き、畑の上に平置きにしたラウルが手をパン、パン、と叩き埃を払いながらライトの方に向き直る。

「じゃ、後はよろしくな」

「いってらっしゃい!ぼく達も後からオーガの里に行くからね!」

「おう、向こうで豪華なご馳走を用意しながら待ってるからな」

ラウルはそう言うと、カタポレンの家からオーガの里に向かって飛び出していった。

先に出かけたラウルを見送ったライトは、ラウルから頼まれた緑肥の下地処理を開始する。

大まかに切り倒されたトウモロコシの茎に向かって、ライトは右手を翳して風魔法を発動する。

極太の木の幹のような茎を、風の刃でサクサクと細かく切り刻んでいく。

本物の樹木と違ってトウモロコシの茎なので、そこまで硬くないから弱めの風魔法でも通じる。ライトの風魔法の練習相手にはもってこいである。

ある程度茎が細かくなり、ささがきゴボウくらいになったら今度は極限までスピードを落とした温風の風魔法を送る。あまり強風にすると、細かくなった茎が風で飛ばされてしまうためだ。

五分ほどざっと乾かしたところで、ライトは風魔法を止める。

今日も空は晴れ渡り、昼間も暑くなるだろう。冬なら念入りに乾燥させるところだが、夏なら自然の天気直射日光に任せておけばいいのである。

「ふぅ……こんなことろでいいかな。後は天日干しにして、ラウルが畑に鋤き込めばいいよね!」

「さ、ぼくもオーガの里に行く準備をしよっと。……あ、ラキさんやルゥちゃん達に持っていく『ぬるぬるの素』も買いに行かなくちゃ!」

ラウルから任せられた任務兼風魔法の練習を終えたライト。

お昼から出かけるオーガの里への手土産を買いに、ラグナロッツァの屋敷に移動していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

正午頃に、ライトはレオニスとともにオーガの里に到着した。

里の中央にある広場には、既にたくさんのオーガ達が集まっている。

その中に、ラキ達の姿もあった。

早速レオニスがラキに向かって声をかける。

「おーい、ラキー。ライトといっしょに来たぞー」

「おお、レオニスにライト!よく来てくれた!」

「ラキさん、こんにちは!今日も宴に招いていただき、ありがとうございます!」

ライト達の姿を見たラキが、破顔しながら歩み寄ってきた。

まずはペコリと頭を下げて挨拶をするライトに、ラキも感心しながら褒める。

「おお、相変わらずライトはいつでもどこでも礼儀正しいな」

「ええ、ライト君は本当に良い子ね。うちの子達もライト君のような良い子に育ってほしいわね!」

「それなら大丈夫です。ルゥちゃんもレン君もロイ君も、皆ぼくに優しくしてくれますし!」

「うふふ、嬉しいことを言ってくれてありがとうね」

夫のラキとともにライトを褒める妻のリーネ。その胸にはまだ赤子の次男ロイが抱かれている。

族長夫婦に揃って褒められたライトは、ニコニコ笑顔で彼らの子供達の優しさを強調する。

我が子を褒められたリーネ、優しい眼差しで嬉しそうに微笑んでいる。

するとそこに、ライト達より先にオーガの里入りしていたラウルが現れた。

「おーい、ラキさん、料理の支度は全部整ったぞー。……って、ご主人様達もちょうど来たところか」

「おお、ラウル先生、準備万端整いましたか」

「よう、ラウルも宴の手伝いご苦労さん」

「ラウル、お疲れさま!」

ラウルが現れた直後、ラニを連れたルゥがパタパタとライト達のもとに走ってくるのが見える。

ルゥの後ろには長男のレンも姉を追って走ってきている。

「レオちゃん、ライト君、こんにちは!ようこそいらっしゃい!」

「ルゥちゃん、こんにちは!」

「よぅ、ルゥ。今日も元気いっぱいだな」

「うん!皆が来るまで、あっちでラニやレンといっしょに追いかけっこしてたところなの!」

「ワォン!」

全力疾走してきただろうに、息一つ切らすことなく元気に答えるルゥ。

さすがオーガ族族長夫婦の長女、無尽蔵の体力は父親譲りと見える。

そしてルゥの横にいた黒妖狼のラニも、嬉しそうにライトに抱きついた。

元気な子供達の姿を見ながら、ラキが誰に言うでもなく周囲に宣言する。

「客人達も到着したことだし、では早速宴を始めるとしよう。ラニ、パパといっしょにおいで」

「ワフン!」

ラキは中央広場のど真ん中に設置された台の上に乗り、集まったオーガの民達に向かって話を始める。

ラキの横には、ラニがおとなしくお座りしている。

「皆の者、よく集まってくれた。今日は我が里に生まれた新たなる仲間、ラニのお披露目会ということで集まってもらった訳だが」

「この子、ラニは黒っぽい狼ということしか分かっておらず、どのような種族かもはっきりと分かってはいない。だが、この子がこの里で生まれて二十日弱、これまでラニは皆に牙を剥いたり襲いかかることは一度もなかった」

「このことから、ラニは我が里の一員として迎え入れるに相応しいと我は判断する。だが、もし万が一異論がある者がいたら、この場で手を上げてほしい。その者の理由もちゃんと聞いて、対処したいと思う」

ラキの呼びかけに、手を上げて異を唱える者は誰一人としていない。

ラニは既にオーガの子供達とも仲良しで、大人達もそれをよく知っていた。

しばしの静寂の後、ラキは足元にいたラニを抱き抱えて再び話し始める。

「……異論はないようだな。では、本日を以ってラニをオーガの里の正式な一員として迎え入れることをここに誓う」

「我が里に舞い降りた新たなる仲間、その誕生とともに我が里の今後ますますの繁栄を願い祝おうぞ!」

「「「「「おおおおおッ!」」」」」

ラニを左腕に抱え、右手を高く掲げるラキ。

宴の開始を合図するその勇姿に、里の者達が一斉に歓声を上げる。まるで怒号のような歓声は、その場の大気や大地をも震わせる程の勢いだ。

ラキに抱っこされたラニも、「アォォォォン!」と嬉しそうに雄叫びを上げている。

大きさで言えば、ラニは既に馬のポニー並みの体格がある。なのに、ラキに抱っこされるとまだまだ小さな子犬のように見えるから不思議だ。

族長の挨拶も無事終わり、オーガの民達が中央広場の外周に並べてある飲み物やご馳走などを手に取り、皆思い思いに乾杯や食事で宴を楽しんでいる。

客人として呼ばれたライト達も、オーガの民達とともに宴に参加していった。