軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第73話 職員室での待機

理事長室を退室したライトは、中等部生徒会会長というジョルジュとともに職員室に向かう。

ジョルジュにはミラネージという姓があるので、間違いなく貴族の子息なのだろう。

少し癖のあるふわっとしたショートの鮮やかな蒲公英色の髪に、柔らかな若葉色の瞳。ピンと伸ばした背筋で歩く後ろ姿は凛としていて、育ちの良さが一目で分かる。

「ライト君、といったね。まずはこのラグーン学園初等部の入学、おめでとう」

二人並んで歩きながら、ジョルジュの方からライトに話しかけてきた。

「あ、はい、ありがとうございます」

「ここは貴族も平民も、等しく学びより良い国作りや将来のために集う学園だ。君も頑張って勉強してね」

「はい!頑張ります!」

「ただ、君の場合は保護者の方がかなり特殊な御仁だからね。何かと注目されやすいとは思うけど」

「特殊……ハハ、ソウデスネ……」

レオ兄、冒険者ギルド以外でも特殊扱いされちゃってるよ。

まぁね、レオ兄ってああ見えて実は世界最強と名高い金剛級冒険者だからね、どうしても目立ってしまうのは仕方ないことだとは思うけど。

(注・レオニスのことを『ああ見えて実は』などと評するのは、ライトだけである。実際はものすごい人なのだ。多分。)

「もし何かあったら、まずは担任の先生に相談するといいよ。君の担任になる初等部1年A組のフレデリク先生は、児童や生徒のことを親身に考えてくれる、若くて頼もしい、とても良い先生だから」

「分かりました、ありがとうございます」

穏やかな口調で、ライトにアドバイスをするジョルジュ。

担任の先生も何やら評判の良い先生のようで、ライトはフレデリクという先生に会うのが少し楽しみになった。

そんな会話をしながらしばらく歩いていくと、職員室に到着したようだ。

ジョルジュがとある部屋の重厚な扉の前に立ち、ノックしてから扉を開いて中に入った。

ライトもそれに続き、職員室に入る。

職員室の中を見渡すと、どの先生も既に始業式のために移動したのか、先生が一人もいなかった。

「ここは、幼等部と初等部の先生方のいる職員室だよ」

「……って、フレデリク先生どころか先生方一人もいないや」

「理事長先生からの言伝をメモに書くから、フレデリク先生が来たら渡してね」

ジョルジュは胸元のポケットからメモ帳とペンを取り出し、サラサラと何かを書いて紙を切り取り、ライトに渡した。

ライトは手渡されたメモを受け取り、さっと目を通す。そのメモには

『帰りの会が終了したら、ライト君を理事長室に連れていくように、と理事長先生から言伝を預かりました。よろしくお願いします』

と書かれてあった。ライトは渡し忘れないように、ポケット類には入れずそのまま手に持つ。

「僕も中等部の始業式に出なきゃいけないから、もう行くけど」

「先程理事長先生が仰ってた通り、ここで先生方が来るまで待っててね」

「いっしょに待ってあげられなくてごめんね」

ジョルジュが申し訳なさそうに、ライトに言う。

律儀で優しい人だなぁ、とライトは内心嬉しく思った。

さすが中等部の生徒会会長を務めるだけのことはある。きっと彼を慕う同級生や下級生も、さぞ多いことだろう。

「いいえ、大丈夫です。ここまで案内してくれて、ありがとうございました」

ライトは頭をペコリと下げて、礼をした。

ジョルジュはにこりと笑いながら、職員室を退室していった。

その背中を見送ってから、ライトは職員室の入口近くに置かれている椅子にちょこんと座る。

30分とか1時間くらい待つのかなぁ、始業式かー前世では校長先生の演説が長くて苦痛だったよなー、とか思いながら、見知らぬ初めての場所であちこち彷徨き回る訳にもいかないので、例の如く脳内考察タイムに入る。

『保護者がかなり特殊な人、かぁ。やっぱレオ兄って超有名人なんだなぁ』

『前世でも、有名人や芸能人の子供や兄弟姉妹が妬まれて、周りから壮絶な虐めに遭ってましたーなんて話がよくあったけど……』

『俺もそんな風に、虐められたりするんかな……』

『出る杭は打たれる』という諺じゃないが、生まれや姿形が人と違ったり目立つようなものだったりすると、それだけで周囲から妬まれたり突っかかってくる輩が出てくるものだ。

特にライトの場合、それまでずっとカタポレンの森で引きこもり状態だったため、この世界の世俗や常識、傾向などがいまいちどころか全然分かっていない。

だが、ライトはそんじょそこらの普通の子供ではない。

前世の記憶がガッツリある、中身アラサーどころかもうすぐアラフォーの入口が見えてくるお年頃なのだ。

人間歳を食うほどに、いろんな知恵がついて老獪かつ小賢しくなっていく。

そう、ライトは『見た目は子供、中身は大人!』どころか、アラフォー寸前おじさんなのである。

『……ま、虐められたら虐められたで、何とかなるっしょ』

『最悪、レオ兄の権力に頼ってもいい訳だし』

『だけど、できればそれは最終手段にしたいな。ちゃんとコミュニケーション取って、仲の良い友達できるように頑張ろう』

そんなことを考えながら、先生方が戻ってくるのをおとなしく待つライトだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ライトが職員室に入ってから40分くらい経過した頃、職員室の外が少し騒がしくなってきた。

どうやら講堂で行われていた始業式が終わったようだ。

先生と思しき大人達が、続々と職員室に入ってくる。

その中の一人、若い男性がライトに気がつき声をかけてきた。

深緑色の短めの髪に上品な色合いの紺青の瞳が、何とも爽やかな印象を受ける。年の頃は二十代半ばか後半あたりか。

「君、今日初等部に入学するライト君?」

「はい、そうです」

「ああ、人違いじゃなくて良かったぁ。僕は君がこれから入る初等部1年A組の担任、フレデリクだ。よろしくね」

「はい、よろしくお願いします!」

ライトはペコリと頭を下げる。

「結構な時間待ったでしょ?一人で待たせてごめんね」

「いいえ、それは仕方ないことですから気にしないでください」

「そう言ってもらえるとありがたいよ。今から1年A組の教室に行くけど、持っていく物とか支度しなきゃならないから、もうちょっとだけ待っててね」

「はい、分かりました」

フレデリクは自分の机に行き、プリント類やら何やらを大きめの手提げ袋に手際良く入れていく。

さほど待つこともなく、教室に行く準備を整えたようだ。

「ライト君、お待たせ。じゃ、行こうか」

「はい!……あ、先生。その前に、これ預かってます」

ライトは先程ジョルジュに渡されたメモを、フレデリクに渡した。

フレデリクはそのメモを受け取り、さっと目を通す。

「ふむ……はい、分かりました。では行こうか」

そう答えて、メモをポケットに仕舞った。

二人は職員室から出て、1年A組の教室に向かった。