軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第685話 念願の対面

炎の洞窟に入ったライト達。

レオニスが先頭に立ち、その後ろにライトがつき、後方をピースが守る。

炎の洞窟には、マンティコア以外にもクイーンホーネット、極炎茸、レッドスライムなどの魔物がいる。

これらも漏れなくライト達目がけて襲いかかってくるので、レオニスとピースが倒していく。

襲いかかってくる魔物の七割くらいをレオニスが倒し、先に進むにつれ後ろからも時折襲ってくる魔物はピースが仕留める。

倒した魔物のうち、マンティコアはピースが空間魔法陣に収納し、他の魔物はライトがアイテムリュックに収納していく。洞窟に入る前に、マンティコア以外の魔物はライト達が拾っていいという話がついているためだ。

レッドスライムだけは、本当は生け捕りにできると一番良い。冒険者ギルド経由で、スライム飼育場が高値で買い取ってくれるためだ。

だが、今日は生け捕りにして連れ帰る暇も余裕もないので、サクッと仕留めてしまう。

ちなみに炎の精霊も、他の魔物に紛れて時折ライト達に向けて火魔法を投げてきたりなど、要らぬちょっかいを出してくる。いたずら好きの精霊ならではのちょっかいだ。

だが、精霊だけは見た目や性質的に炎の女王に近いので、倒さずにデコピンで追い払うに留めている。

さすがに禍精霊【炎】だったら、問答無用で急襲してくるのでこうはいかないが、ただの炎の精霊ならばデコピンで十分である。

そうして洞窟内を進むこと小一時間。

三人は広めの通路で、魔力補給も兼ねた休憩を一旦取ることにした。

休憩時間くらいは魔物に邪魔されずにゆっくり過ごしたいので、ここでは魔物除けの呪符を使うことにする。呪符の効力は三十分間、休憩時間にもってこいである。

ここでもこまめに敷物を敷くライト。

パパッと敷いてササッと上がり、ちゃちゃっとお菓子や飲み物をアイテムリュックから出す。ライトはあちこちでよくお茶会を開くせいか、そのお茶会休憩準備スキル?はもはや達人級である。

「あと三十分も進めば、一番奥の炎の女王様のところに着くかな?」

「そうだな、それくらいで行けるだろ」

「にしてもレオちん、洞窟の中を迷わずスイスイ進むねぇ。炎の洞窟の地図でもあんの?」

「いや、地図は前回の調査の時にアレクシス家から借り受けただけだ。でもその時に三回も潜ったし、分かれ道でどっちに進めばいいかを覚えといただけだ」

「そなんだー。前回の洞窟調査、結構大変だったんだねぇ」

ライトが出した休憩用のおやつ、カスタードクリームパイをむしゃりながらのんびりと会話するライト達。

炎の洞窟の内部地図は一般に出回っていないが、レオニスは春に洞窟調査をした際に最奥までの道順を覚えていた。覚えたといっても、単純に分岐点が出てきた順で『右、左、真ん中、右、(以下略』とだけ記憶しただけなのだが。

「でも、炎の洞窟の魔物の強さも通常に戻ったようだし、あれから異常は起きてなさそうで良かったねー」

「そうだな。こないだ炎の女王に会った時にも周囲に異変はなかったからな」

「……ねぇ、レオちん。炎の女王様、小生のことたくさん褒めてくれるかなぁ?」

カスタードクリームパイを頬張りながら、ピースがぽつりと呟くようにレオニスに尋ねる。

今回この炎の洞窟を訪ねたのは、浄化魔法の呪符の作成者であるピースが炎の女王から褒めてもらいたさに来た。だが、いざ炎の女王に会う直前になったら、少しだけ不安になってきたらしい。

そんなピースに、レオニスもライトも笑顔で太鼓判を押す。

「そりゃもちろん。炎の女王も、呪符の作成者に直接礼を言いたいと言ってたぞ?」

「そうだよ!しかもエリトナ山に住む火の女王様も、ピィちゃんにお礼を言いたいって言ってたよ!」

「炎の女王だけでなく、火の女王も?……あ、死霊兵団の残骸を片付けるのに小生の呪符を使ったってヤツ?」

「そうそう、それそれ!でもって、それだけじゃなくて、炎の女王様を救ってくれたことのお礼も言いたいんだってさ!」

「そ、そうなんだ……」

ライトとレオニス、信頼できる二人からの太鼓判に、不安げだったピースの顔も少し和らいで綻ぶ。

「さ、そろそろ三十分経つから休憩終了して出発するぞー」

「うん!小生、早く炎の女王と火の女王に会いたーい!」

「ピィちゃんの筆のためのマンティコア狩りも頑張ろうね!」

「うん!!」

元気を取り戻したピースを見て、内心で安堵するライトとレオニス。

休憩を終えて再び洞窟の最奥へと向かっていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

再出発からおよそ三十分経過した頃。

炎の洞窟の最奥部手前に辿り着いたライト達。

入口手前で一旦立ち止まり、手櫛で髪を整えたりローブと襟を直したりして身だしなみを整えるピース。

「この奥に、炎の女王がいる。ピース、準備はいいか?」

「……うん」

レオニスがピースに確認をし、ピースもまた頷きながらレオニスの問いかけに応える。

そうしてレオニスが先頭を歩き、ピースはその後ろでライトとともに横並びでついていく。

普段は緊張など全くしないピースだが、炎の女王に会うのは初めてとあってさすがに少し緊張しているようだ。

そんなピースの手を、ライトの小さな手がそっと包んで握る。

ライトなりの励ましの手繋ぎに、ピースは一瞬だけハッ!となり、そしてすぐに笑顔になる。

ライトに勇気を分けてもらったピースは、前を向いてしゃんとした姿勢で歩いていく。

最奥の広間には、炎の褥に寝そべる炎の女王がいた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「よう、炎の女王。こないだぶり」

「炎の女王様、こんにちは!」

『おお、レオニスにライトではないか。よく来たの』

「前からの約束通り、今日は俺達が使う浄化魔法の呪符の作成者を連れてきたぞ」

『汝の後ろにいる、その者か?』

「ああ。さぁ、ピース、炎の女王に挨拶しな」

最奥の広間に入り、炎の女王と軽く挨拶を交わしたレオニス。ピースにも挨拶をするよう、優しい声で促す。

レオニスにお膳立てをしてもらったピースは、意気揚々と自己紹介を始めた。

「小生は、魔術師ギルドにてマスターを務めるピース・ネザンと申す者!此度は炎の女王にたくさん褒めてもらいたく、レオちんとライっちとともに罷り越しますた!」

「「…………」」

ピースの何とも妙ちきりんな口上に、ライトはしばし固まる。

だが、レオニスは動じることなく至って普通の面持ちのまま、眼前に広がるやり取りを眺めている。

しかも、満面の笑みでやりきった感満載のピースの顔を見るに、緊張から崩壊してこうなっている訳ではないらしい。

これは思うに、ピースは他者に対して敬語を使う機会が少ないせいだと思われる。

普段からタメ口もしくは超フランクな口調のピース。

魔術師ギルドのマスターともなれば、敬語を使わなければならない相手というのはかなり少ない。

ちなみにこの国一番のお偉いさん、ラグナ大公に対してもこんな調子らしい、とライトが知ったのは洞窟の外に出てからのことである。

そして炎の女王の方も、ピースの口調に何ら違和感やら不快感はないらしい。

嫋(たお) やかな笑みを浮かべつつ、ピースに向かって声をかける。

『おお、汝が妾を助けてくれた命の恩人の一人か。もっと近う寄っておくれ』

「はーい!」

炎の女王は寝そべっていた褥から起き上がり、ライト達のいる方に歩み寄ってくる。

ピースはピースで炎の女王の要望通り、彼女のもとにトテトテと歩いて近づいていく。

そして至近距離で初めて体面する、ピースと炎の女王。

まず炎の女王が細くしなやかな人差し指を、ピースの額に軽く当てる。

『まず汝に、妾からの祝福と加護を与えよう。それがあれば、今後如何なる劫火も汝の身に傷一つつけること能わぬ』

「えッ、そんな良いものもらっちゃっていいのん?」

『もちろん。汝は妾の命を救いし者。これくらいのお返しくらいして当然ぞ』

「ありがとーぅ!」

早速炎の女王からのご褒美に、花咲くような笑顔で喜ぶピース。

炎の女王の指先から、ピースの身体に祝福と加護の力が行き渡る。

ピースの全身が淡い橙色―――柔らかい炎色に包まれ、スーッ……と染み込むように炎色が薄れていく。

その炎色が完全に消えた頃、炎の女王がピースの身体を再び包み込むように抱きしめる。

『今妾がこうしてここにいられるのも、全ては汝達のおかげ……勇敢なる人の子達よ、本当にありがとう』

「……どういたしまして!小生の描いた呪符が皆の役に立てて、小生本当に嬉しい!」

礼の言葉とともに、美しい炎の女王に優しく抱きしめられるピース。

ピースは普段デスクワークが多いので、彼が作った呪符や魔導具を使った者達の生の声を聞くことは滅多にない。

故に、こうして直接礼を言われることもほとんどなかった。

ピースもまた炎の女王の身体を抱きしめて、己が救った命の温かみを全身で感じ取る。

二人は互いに抱擁し合い、生きて会えた喜びを噛みしめていた。