軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第683話 ピースとの待ち合わせ

各々が丸一日の休暇を過ごした翌日。

今日からライトとレオニスは、ピースとともに商業都市プロステスに出かける。しかもピースの要望で、一泊二日のお泊まりの旅だ。

ライトも今までレオニスに様々なところに連れていってもらっているが、大抵は日帰りでお泊まりまですることはほとんどない。その大きな理由としては、転移門で瞬時にラグナロッツァに帰れるから、というのがある。

故にライトとしては、今回のお泊まりの旅はかなり楽しみだった。

カタポレンの家で朝食を済ませ、支度を整えてラグナロッツァの屋敷に移動するライトとレオニス。

二階から一階に降りると、玄関近くの階段下でラウルが待ち構えていた。

「おはよう、ご主人様達」

「あッ、ラウル、おはよー!」

「おはよう。今日はライトと二人でプロステスに泊まりになるから、ラウルも屋敷のことよろしくな」

「おう、任せとけ」

階段下から玄関、そして外の門扉までお見送りがてら、のんびりと朝の挨拶を交わし会話する三人。

「あ、ご主人様よ、プロステス土産はパイア肉の塊100kgでよろしくな」

「肉100kg、だとぅ? それ、もうほとんど卸問屋行かなきゃならんヤツじゃねぇか……」

ラウルからプロステス土産として、パイア肉を指定されるレオニス。

肉の塊100kgを所望するとは尋常ではないが、実際のところラウルは先日のオーガの里にて黒妖狼を孵化させるために、パイア肉50kgを消耗してしまっていた。

そのことを瞬時に思い出したライトは、ラウルに向かって謝る。

「ああ、そういえばこないだオーガの里で、パイア肉たくさんもらっちゃったもんね。……ごめんね、ラウル」

「ライトが謝ることはない。ただ、近いうちにオーガの里で祝いの宴が催される予定もあるし、その時にパイア肉を使いたいってだけのことだから気にすんな」

「……うん!レオ兄ちゃん、ラウルのお土産リクエスト、聞いてあげてね」

「了解」

「オーガの宴で出すやつだから、なるべく大きな塊でよろしくな」

「はいよー」

頭を下げて謝るライトに、ラウルは小さく笑いながらその頭をくしゃくしゃと撫でる。

謎の卵から生まれた黒妖狼。その黒妖狼がオーガの里の一員となったことを祝し、近々その宴が開かれる予定だ。

ラウルとしては、その時にパイア肉を使った料理を提供したい、ということらしい。

レオニスもその時の話はライトから聞いていたので、今回のラウルの要望もちゃんと受け入れるつもりのようだ。

ちなみにオーガの里で消費したのは50kgで、ラウルがお土産におねだりしたのはその倍の量。

非常にちゃっかりとしているように思えるが、その100kgの肉がラウルの手元に残ることはきっとない。オーガの宴のための料理に全部使い果たして、跡形もなく消えることだろう。

自分へのお土産と言いつつ、その実はオーガの宴のためのものなのだ。

「ご主人様達も気をつけていってこいよ」

「うん!ラウルもぼく達がお出かけの間、貝殻焼いたりエンデアンの食材研究したりするんでしょ? 忙しそうだけど、頑張ってね!」

「おう、ありがとよ」

「じゃ、行ってくる。俺達が留守の間、よろしく頼むぞ」

「了解。いってらー」

「いってきまーす!」

ラウルのそれは、とても雇用主に対するものとは思えないざっくばらん過ぎる態度だが、それももはや今更である。

門扉の手前で、二人に向けて軽く手を振るラウル。超フレンドリーな万能執事の妖精に見送られながら、ライトとレオニスは出かけていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ラグナロッツァの屋敷を出てから、冒険者ギルドのある方向とは少々違う道を歩く二人。

何やら二人の行き先は、いつもの冒険者ギルドではないようだ。

「ピィちゃんとは、魔術師ギルドで待ち合わせしてるんだよね?」

「ああ、魔術師ギルドにも転移門があるからな。今回のプロステス行きでは魔術師ギルドの転移門を使おう、という話になってる」

「魔術師ギルドにも転移門があるんだね。ぼく、家にあるのと冒険者ギルドのしか使ったことないから、すっごく楽しみ!」

「まぁ、魔術師ギルドにある転移門も他のと同じだがな」

ピースとの待ち合わせ場所である魔術師ギルド総本部に向かいながら、ライトは期待に満ちたワクテカ顔で嬉しそうに話す。

普段ライト達が使っている転移門とは、何も冒険者ギルドだけが使うものではない。

全国規模で転移門ネットワークが構築されているのは、冒険者ギルドと魔術師ギルドの二組織のみ。それ以外だと、医療師ギルドの一部で用いられている。

大規模災害が起きた時などに、その対策やその後の復旧作業等で魔術師や医療師も多数派遣されたり駆り出されたりするからだ。

ここで言う大規模災害とは、台風や集中豪雨、津波、地震などの天災だったり、あるいは魔物暴走や魔族の襲撃などを指す。

ちなみに、ギルドならどこでも転移門があるという訳でもない。

薬師ギルドや鍛冶ギルドには基本無縁のものだし、逆に商人ギルドにとっては物資運搬のために喉から手が出るほど欲しいだろうが、運用コストを考えると絶対に使わないであろうことは明白だ。

故に、もし転移門を使いたいとなった時には、向かう先は冒険者ギルドもしくは魔術師ギルドの二択ということになるのである。

そうして魔術師ギルド総本部に辿り着いたライトとレオニス。

建物の外、入口のには誰もいない。

朝も早い時間なので人通りもほとんどなく、朝の静けさだけが漂う。

「……ピィちゃん、ギルドの中で待ってるのかな?」

「かもな。とりあえず中に入るか」

待ち合わせしているはずのピースの姿が見当たらないので、二人はとりあえず魔術師ギルド総本部の建物の中に入る。

中に入り、ロビーを一通り見渡すも、やはりピースの姿は見当たらない。

レオニスは仕方なく、ロビー奥の受付窓口に向かった。

「おはようさん。俺達ピースとここで待ち合わせしているんだが、どこにいるか知らないか?」

「あ、レオニスさん、おはようございます。マスターピースは昨日から、一足先にプロステスに向かわれております」

「何? そうなのか?」

「はい。マスターピースの有給休暇スケジュールを見た秘書の方に、どうやら向こうでの仕事を持たされたようでして……」

レオニスからの問いかけに、困ったような苦笑いで答える受付嬢。

今日ライト達といっしょにプロステスに行くはずだったピースは、どうやら仕事とともに一足先にプロステスに派遣?されたようだ。

せっかくの有給休暇だというのに、仕事を持たされるとはピースも哀れである。

「マスターピースから、レオニスさん宛にお手紙を預かっております」

受付嬢が机の下の引き出しから封書を取り出し、カウンター越しにレオニスに手渡した。

受付嬢から受け取った手紙を、レオニスはその場で封を切って中の手紙を検める。

その手紙には『レオちんへ プロステスにて待つ ピース』とだけ書かれていた。まるで果し状のような手紙である。

レオニスは手紙に目を通した後、ふぅ、と小さくため息をつきながら手紙を空間魔法陣に仕舞い込む。

その後すぐに、受付嬢に再び声をかけた。

「そうか……そしたら俺達がピースとともに、ここからプロステスに向かう予定だったという話は聞いているか?」

「あ、はい、それはマスターピースからも伺っております。本日お二人がこちらにいらしたら、転移門使用を許可するように指示も受けております」

「そりゃ良かった。ここで『お前ら部外者には転移門を使わせん!』とか言われたら、どうしようかと思ったぜ」

「アハハハハ……さすがにそれはありませんよ。マスターピースの秘書からもその許可は下りてますし」

レオニスのチクリとした嫌味?に、受付嬢も苦笑い継続のまま力なく笑う。

受付嬢の話を聞いていると、どうもピースの秘書というのがかなり強い力を持っている印象を受ける。下手をすれば、総本部マスターであるピースよりも力が強い可能性すらある。

だがしかし、ピースの性格や言動を思えばそれも致し方ないことなのかもしれない。

師匠のフェネセンほどではないが、ピースもかなり自由奔放で気まぐれな性格だ。そんなピースを魔術師ギルドの総本部マスターとして祀り上げ、日々執務机に繋ぎ止めておくには、巧みな手綱捌きでピースを上手く導く者がいなければならない。

きっとピースの秘書を務める者が、その役割を担っているのだろう。さながら敏腕マネージャーといったところか。

「じゃ、早速転移門を使わせてもらうが、転移門はどこにある?」

「そこの廊下の突き当たりの右側に、事務室がございます。転移門はその事務室のさらに奥の部屋にあります」

「分かった、ありがとう」

レオニスもライト同様、魔術師ギルドの転移門は一度も使用したことがないので、その在処を受付嬢に尋ねる。

受付嬢の話を聞くに、どうやら冒険者ギルドの転移門と同じで事務室の奥に設置されているようだ。

場所を確認したレオニスは、早速ライトとともに奥の事務室に向かっていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

魔術師ギルド総本部からプロステス支部に移動したライトとレオニス。

移動先は行きと同じく、プロステス支部内の事務室奥の転移門専用部屋。そこから事務室に出ると、そこにはピースがいた。

「あッ、レオちん!おはよーぅ!」

「お、ピースじゃねぇか。何だ、朝っぱらからここで仕事してたのか?」

「ううん、仕事はもうほとんど終わってんだけどさ!レオちん達がこっちに来ると思って、ここで待ってたの!」

先に事務室に入ってきたレオニスの姿を見たピースが、一目散で駆け寄ってくる。

ピースは嬉しそうにレオニスの両手を握りながら、レオニスの後ろにいたライトにも声をかける。

「ライっちもおはよう!我が魔術師ギルドプロステス支部にようこそ!」

「ピィちゃん、おはよう!朝から仕事なんて、大変だね」

「ぃゃー、それほどでもあるかなぁ♪」

ライトから朝の挨拶とともに労いの言葉をかけられたピース、ニヨニヨと嬉しそうにはにかみながらクネクネしている。

このクネクネとした奇妙な動き、師匠のフェネセンにそっくりである。

「仕事がもう終わってんなら、早速今から出かけるか?」

「うん!でも小生、まだ朝ごはん食べてないのよねー」

「そうなの? お仕事で忙し過ぎて食べられなかったの?」

「ンにゃ、レオちんとライっちといっしょに食べたくて待ってたの!」

朝ごはんがまだだと言うピースに、ライトが心配そうに声をかける。

だがそれは、ライト達の到着を待っていたが故のことのようだ。

ピースもライト達とお出かけすることを、よほど楽しみにしていたと見える。

「じゃあ、どこで朝ごはん食べる? もう開いているお店とかある?」

「ンー、さすがにこの時間じゃまだ開いているお店はないから、お外の公園でピクニックよろしく食べる?」

「そうだね、それもいいかも!」

「じゃ、とりあえず外に出るか」

時刻は朝の七時半頃。

日が高くなれば真夏の炎天下となり、外で食事をする気など失せてしまうが。この時間ならまだ木陰で気持ち良く過ごせるだろう。

三人は早速魔術師ギルドプロステス支部を出て、近くの公園に向かった。