軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第67話 イードとの触れ合い

ライト達が新設転移門の試運転と、屋敷の周辺確認および通学路の下見を行った翌日。

ライトはいつも通り、カタポレンの森の家で過ごしていた。

こうしてのんびりとした時間を過ごせるのも、今日明日だけ。明後日からは、いよいよラグーン学園での学生生活が始まるのだ。

入学を二日後に控えているということもあり、今日は午前中のみ鍛錬を行い、お昼以降は休みということになった。

「レオ兄ちゃん、お昼食べた後にさぁ、目覚めの湖に連れてってくれる?」

「ん?イードんとこに行きたいのか?」

「うん。学校始まる前にね、少しだけ会いに行っておきたいなぁと思って」

「そうだな、これから秋になってどんどん寒くなっていくし、水場に行くなら今のうちのほうがいいかもしれんな」

「レオ兄ちゃん、よろしくねー」

「はいよー」

ライトはレオニスより早くに昼食を終え、台所でイードへの手土産『魔物のお肉たっぷり激ウマ絶品スペシャルミートボールくん・こぶし大』を急いで用意する。

これまでにも何度か他のものをイードに差し入れしてみたのだが、一番反応が良くて最も喜ぶのはこれなので、結局これを定番の土産とすることになったのだ。

「よし、今日はこぶし大じゃなくて超特大の頭サイズにしよう」

「持ち運びはレオ兄ちゃんの空間魔法陣に入れてもらえば良し、と」

何やらぶつぶつと独り言を言いながら、準備を進めるライト。

支度を終えて、レオニスのもとに向かう。

「レオ兄ちゃん、支度出来たよー」

「おう、んじゃ行くかー」

「あ、お土産はこれ、空間魔法陣に入れて持ってってね」

「あいよー」

二人は目覚めの湖に向けて、駆け出していく。

レオニスほどの速度はまだまだ出せないが、それでも頑張って森の中を駆けるライト。

懸命に走るライトを、レオニスは微笑みながら見つめる。

途中休みを挟みながら駆けること1時間弱、お目当ての目覚めの湖に到着した。

「レオ兄ちゃーん、疲れたぁー、中央の小島まで飛んで連れてってぇぇぇぇ」

「何だ何だライト、今日は甘えん坊さんか?」

「だってぇー、今日は湖の水で濡れたくないしー、泳ぎたくなーい」

「しゃあないな、ほれ、王子様抱っこさせろ」

「うぃー」

レオニスに王子様抱っこされる前に、ライトが木登りをするかの如くレオニスの胴体部分にしがみつく。

それはさながら、木登りをする猿もしくは母猿の腹ににしがみつく子猿そのものである。

「ちょ、おま、猿じゃないんだからッ」

「猿でもいいー、王子様抱っこと大して変わらないー」

「あーもう、しゃあないなぁ、んじゃ行くぞー」

「らじゃ」

レオニスは仕方なく、そのままの態勢で湖中央の小島まで飛ぶ。

ストン、とゆっくりレオニスが小島に着地すると、ライトはぴょい、と地に降りた。

早速レオニスに手土産の特製ミートボール頭大を出してもらい、湖面に向かって呼びかける。

「おーい、イード、いるー?」

ライト達が来た時から気配を察知して待ち構えていたのか、ライトの呼び声が終わるか終わらないかのうちに、湖から勢い良くイードが飛び出してきた。

その水飛沫で、結局はずぶ濡れになるライトとレオニス。

いや、水飛沫なんて可愛らしいもんじゃない、ザバババーと轟音を立てて落ちてくるプチ滝行である。

「やーん、イードのせいでずぶ濡れなっちゃったじゃないかー」

『キュイ?』

「……ま、イードに怒っても仕方ないよね。だってここ、イードのおうちだもんね」

「だな。濡れた服はすぐに乾かしてやるさ、濡れ鼠で風邪ひいちゃマズいからな」

服を脱ぎながら、パンイチになり上着やズボンの水を絞るレオニス。

ライトもそれに倣い、パンイチで服の水をジャバジャバと絞る。

まだ陽気が良く、日の高いうちだからこそ出来る芸当だ。

ここにもし女性が一人でもいたなら、それもアウトだが。

「はい、イードにお土産ー」

『キュイイイイ♪』

ライトとレオニスは、小島の中にある木々から落ちて乾ききった小枝を適当に拾い集め、火を起こして小さな焚き火にして火にあたる。水に濡れた身体を冷やさないようにするためだ。

ライトはパンイチ姿のまま、レオニスから出してもらった手土産をいそいそとイードに渡す。

それを嬉しそうに受け取るイード、早速大好物を口に放り込む。

レオニスもこれまたパンイチ姿のまま、二人分の濡れた服を火から少し離れたところで風魔法でまとめて少しづつ乾かしている。

三者三様、なかなかにシュールな絵面である。

「イード、ぼくねー、これから学校に通うことになったんだー」

『キュルル?』

「学校に通うようになるとね、これからは今までのようにのんびりしていられないんだー」

『シュルゥ』

「でも、これからもたまにイードのところに遊びに来てもいい、よね?」

『キュイイイイ♪』

「うん、ありがとう、イード」

ライトとイードはまだ念話もできていないはずだが、それでも何となく会話が成立してしまう不思議。

ライトは、ふと先日聞いた話を思い出す。

「あ、そういえばイード、こないだアルとアルのお母さんがここに来たんだって?」

『キュシュルル』

「アルは楽しそうだったけど、お母さんの方は何だか複雑そうだったねぇ」

『キュルルゥ?』

「でも、お母さんもきっとイードのことをお友達だって認めてくれるよ。だってイードは、ぼくとアルとレオ兄ちゃんの友達だもん」

『キュイイイイッ♪』

ライトの言葉を聞き、嬉しそうに燥ぐイード。

当然水飛沫が上がるが、今度はレオニスも用心して水を弾く防御結界を張っておいたので、濡れずに済んだ。

「イード、その時にアルのお母さんにも脚のおすそ分けしたんだってね?」

『キュシュルルゥ』

「イードのことだから、大して痛くもないだろうし怪我のうちにも入らないだろうけど」

「それでも心配だから、一応これあげるね、はい」

そういいつつ、ライトはエクスポーションの大瓶を自分の鞄から取り出す。

「イードの脚、後からいくらでも生えてくるからって、たくさん切り取っちゃダメだからね?」

『キュイイイイ』

イードに軽く注意しながら、大瓶の蓋を開けて中身のエクスポーションをイードの下に潜り込んでストローを差し込み、飲ませてあげている。

一方のイードはというと、これまた素直にライトの言うことを聞きながら、器用に足を上げてライトを踏み潰さないように避けつつ、エクスポーションをチュウチュウと吸い上げてこくこくと飲んでいる。

何とも摩訶不思議な光景だが、レオニスは心の中で考える。

(ライトは、本当に心優しい子に育ってくれているな)

(しかも、種族の壁などものともしないし、偏見や差別もない)

(学園生活で、もっともっとたくさんの友達ができるといいな)

レオニスは微笑みながら、ライトとイードのやり取りを眺めていた。