軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第61話 皆でお泊まり

お風呂から上がったアルをライトから受け取り、居間に移動して大きなバスタオルでワシャワシャと水気を取るレオニス。

その後すぐに、レオニスの温風の風魔法でアルの毛をゆっくりと優しく乾かしていく。

ご機嫌かつ気持ち良さそうに身を任せるアル、銀碧色の艷やかな毛が乾いていくにつれてふさふさと輝いていく。

その横で、シーナが半ば呆れたように苦笑いしながらその様子を見つめている。

『アル……あなた、本当にもう……何というか、しょうのない子ねぇ……』

「クゥン?」

「アルのかーちゃんよ、心配すんな。子供でいられるのは今のうちだけだ。アルだっていずれは立派な銀碧狼の王者として君臨する日が来る」

『だといいのですが、ねぇ……』

そんな会話をしていると、ライトが風呂場から居間に戻ってきた。

「レオ兄ちゃーん、ぼくの髪も乾かしてもらっていいー?」

「おう、いいぞー。ちょうど今アルの毛を乾かし終えたところだからなー」

ライトもアル同様、レオニスの温風の風魔法で優しく乾かしてもらう。レオニスがアルの『お風呂上がり担当』を務めるようになって以来、アルだけでなくライトもこのレオニスの温風で髪を乾かしてもらうようになっていた。

ふんわり優しく乾かしてくれるレオニスの風魔法がとても心地良く、ライトにとっても大好きなひと時になったのだ。

「さ、お前達の風呂上がりの世話も終えたし、俺も軽く風呂入ってくるかな」

「そうだねー、レオ兄ちゃんも今日はぼくといっしょにたくさんお出かけしたもんねー」

「そういうこと。お前達はアルのかーちゃんと先に、ベッドで寝ててもいいぞー」

『…………!!』

レオニスはそう言い残すと、さっさと風呂場に向かってしまった。

シーナの方は、レオニスの突然の提案に吃驚したまま声も出ない。

そんなシーナの様子を、ライトが不思議そうに見ている。

「アルのお母さん、どうしたの?今日はアルといっしょに、ここに泊まっていくんでしょ?」

『い、い、いや、私達はそんなつもりでは……』

「えー、だってもう夜も遅いよ?」

「クゥン、クゥン!」

シーナは困惑しているが、アルはお泊まりする気満々のようである。

ライトもアルのつやつやふっさふさの毛をブラシで整えながら、シーナに懇願する。

「アルもせっかくお風呂に入って綺麗になったばかりだし、温まった身体も冷えちゃうよ」

「もうすぐ秋だし、夜のお外はだんだん寒くなってきてるし。お風呂上がりのアル、風邪ひいちゃうかも」

「アルのお母さんも、アルといっしょに泊まっていってくれる……んだよ、ね?」

上目遣いでシーナを見つめるライト。

そのあからさまにキュートなおねだり目線に、思いっきり胸を射抜かれるシーナ。

仰け反るシーナの、クッ!という小さな呻き声とともに、ズキューーーン!という効果音がどこからともなく聞こえてきた、気がする。

『し、仕方ないですね、今夜はもう遅いことですし……アル、今日だけですよ?』

「ワォンワォン!」

母の許しを得たアルは、嬉しそうに吠える。

ライトもそれを聞き、喜びながらシーナに抱きつく。

「アルのお母さん、ありがとう!ぼく、すっごく嬉しい!」

『い、いえいえ、こちらの方が泊めてもらう立場ですし……』

「ううん、泊めてもらうとか泊めてあげるとかじゃなくって、またアルといっしょにベッドで寝れることが、ぼくにはとっても嬉しいの!」

「アル、いっしょに寝ようね!」

「ワォン!」

ライトとアルは、きゃらきゃらと喜び笑い合いながら早速ベッドのある寝室に向かう。

シーナは半ば呆然としていたが、一人と一匹が去った後の静けさに、ハッ!と我に返る。

『な、何故こんなことに……』

『人の子、特にレオニスとライトに関わっていると、どうにも調子が狂いますね……』

『しかし、アルはとても楽しそうですし……私も何故だか悪い気はしませんがね……』

小声で呟くシーナの背後から、レオニスが声をかける。

「何だ?アルのかーちゃん、どうした?」

『ぁひゃぁんッ!』

突然のことに、リアルで少しだけ飛び上がってしまったシーナ。

レオニスは、一人で入浴する分にはそんなに長く湯船に浸かる方ではないので、もう風呂から上がってきたようだった。

『ななな何ですか、急に!おおお脅かさないでください!』

「あ、びっくりさせちゃった?そりゃすまん、何か一人でブツブツ言ってたようだから」

『……いえ、こちらこそお恥ずかしいところを見せました……』

「いや、こっちもびっくりさせて悪かった」

ラフな部屋着姿で、濡れた髪をタオルでワシャワシャと拭きながら居間の椅子にどっかりと座るレオニス。

その姿はもはや色香ダダ漏れどころのレベルではなく、まさしく文字通り『水も滴るいい男』の権化そのものなのだが。

果たしてそれは、異種族である銀碧狼にも通じるものなのかどうかは定かではない。

「ライトとアルは、もう寝たのか?」

『え、ええ、先程仲良く寝室に向かったようですが……』

「アルのかーちゃん、あんたはどうする?」

『どうする、と言いますと?』

「いや、もちろん今夜のことさ。アルといっしょにこの家に泊まっていくんだろう?」

レオニスにもライトと同じ質問をされて、先程のライトとの問答を思い出したのかシーナの顔がボフン!と音を立てて赤く染まる。

『……ッ……コホン、ええ、ライトにも先程そのように頼まれましたし、アルも泊まる気満々だったようですので』

「そっか、そうだよな、もう夜も遅いことだし」

『本当にすみませんね、私としてはここまで世話になるつもりなどなかったのですが』

「いいや、こっちが好きでやってることだ、そんなに畏まらずに楽にしていってくれ」

『心遣い、感謝します』

シーナはレオニスに向かって一礼する。

レオニスは軽やかに笑う。

「アルのかーちゃんは、本当に律儀というか真面目なんだなぁ」

「アルとは真反対、とまでは言わんが。ここではアルくらい気楽に過ごしてくれていいんだぜ?」

「まぁでも……人族以外の種族から見れば、俺達人族なんざ信用できねぇだろうことも痛いほど分かるけどな」

レオニスの顔が僅かに曇り、苦笑いの中にも寂寥感が漂う。

そう、人族の行いの悪さは古今東西世界を問わずどこでも同じようなものなのだ。

『……ええ、そうですね。人族の業の深さは昔から、そして今でもその本質、奥の奥は変わらないでしょう』

「ああ、残念なことに返す言葉もない」

『ですが……レオニスにライト、貴方方二人は信用できる。私はそう思っています』

「それは……ああ、とても嬉しいな。ありがとう、ライトだけでなく俺のことまで信用してくれて」

『ええ、だってレオニス、貴方はライトの育ての親ですもの。ライトが信用できて、貴方が信用できない理由などありませんわ』

『それに……何より、我が子アルがここまで信頼し、心を寄せる。それだけでも信用に値するというものです』

「そうだな……アルとライトは親友同士だからな」

レオニスが嬉しそうに答える。

「アルとライト、銀碧狼族と人族の絆が 永久(とこしえ) に続くことを心から願うよ」

『ええ、本当に―――そうあってほしいですね』

レオニスとシーナは、お互いの瞳を見つめ合う。

レオニスの天色の瞳と、シーナの青緑の瞳。

どちらも吸い込まれそうなほどに澄み切ったその色は、互いの視線を捉えて離さない。

「……さて、ではその絆の架け橋たるライトとアルの様子を見に行くとするか」

『ええ、もしかしたらもうすっかり寝ているかもしれませんね』

「ハハハッ、そうだな、二人とも今日はたくさん移動したから疲れてるだろうしな」

『アルは本当に落ち着きのない子ですからねぇ……さぞ疲れたことでしょう、ほぼ自業自得とも言えますが』

そんな会話を交わしながら、レオニスとシーナは寝室に様子を見に向かった。