軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第561話 思わぬ出会いと思わぬ激励

翌日の朝。

マキシ達がフォルを連れて一階の食堂に下りると、既にライトやレオニスがいた。

「おはようございます。待たせてしまってすみません!」

「おはよう。俺達も今来たところだから気にすんな」

「おはよーう。ミサキちゃん達も良く寝れた?」

「皆おはよーう!ふわふわのフォルちゃんに、母様やマキシ兄ちゃんともいっしょに寝れてすっごく嬉しかった!フォルちゃん、ありがとうね!」

「クルルゥ」

「皆様おはようございます。本日もよろしくお願いいたします」

それぞれに朝の挨拶を交わし、空いている席に適当に着く。

全員揃ったところで朝食を食べ始めるとともに、今日の予定を改めて確認する。

「えーと、今日は午前中に冒険者ギルドと魔術師ギルドに行ってスタンプ集めしてー」

「お昼はどこかの公園で食べて、午後は市場で買い物して」

「三時には家に帰って、皆でおやつを食べてから八咫烏の里に帰る、だな」

昨晩のデザートタイムの時に大まかに決めたルートを、ライト、レオニス、ラウルの順に述べて再確認する。

ミサキとアラエルは、今日八咫烏の里に帰る。二羽の人族観察のために、午前も午後も目一杯予定が詰まっているのだ。

「レオニスちゃん、ライトちゃん、ラウルちゃん、マキシ兄ちゃん。今日も一日、よろしくお願いします」

「よろしくお願いいたします」

ミサキとアラエルが、改めて深々と皆に頭を下げお辞儀をする。

族長一族だけあって二羽とも礼儀正しく立派だなぁ、とライトは思う。

「ミサキちゃんもアラエルさんも、そんな堅苦しくならないで。今日も一日、皆といっしょにたくさん楽しみましょうね!」

「「はい!」」

明るく元気に語りかけるライトに、ミサキもアラエルも笑顔になるのだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうして朝の清々しい空気がまだ残る中、ライト達は屋敷を出る。

まずは冒険者ギルドに向かうライト達。いつもの見慣れた冒険者ギルドラグナロッツァ総本部の建物に近づくにつれ、人の行列が見えてきた。

「おおー、もう人が並んでるね!」

「黄金週間ももう中日だからなー、他の街からスタンプを集めに来る者も増えてくるさ」

「え、スタンプラリーをはしごする人もいるの!?」

「そりゃあな、移動にかかる手間暇や労力を惜しまなければ可能さ。スタンプカードは街ごとに一人一枚と決まってはいるが、街を跨いで複数獲得するのは禁止されちゃいないしな」

「そうだったんだ……」

意外なことに、スタンプカードの一人一枚という制限は他の市町村には及ばないらしい。

イベントの性質上他の街からの観光客は大歓迎だし、街の移動や宿泊などで経済活動が活発になるのは良いことだからだろう。

ということは、ライト達もその気になれば転移門を駆使して複数のスタンプラリーを制覇することもできる訳だ。

もっとも、レオニスにはそこまでする気はないようだが。

早速行列の最後尾に並び始めるライト達。

ここでライトがふとあることを思いつき、ラウルに尋ねる。

「あ、そういえば。ラウル達は昨日のうちに冒険者ギルド総本部のスタンプもらったの?」

「いや、まだもらってない」

「どうして?」

「昨日は建物の中の方に用事があったし。それに、どうせスタンプもらうならまたご主人様達といっしょにくればいいと思ってな」

「そっか、ぼく達を待っててくれたんだね、ありがとう!」

皆でそんな会話をしているうちに、目当てのスタンプ設置所が見えてきた。

他のスタンプ設置所同様に簡易テントが作られていて、スタンプ押印自体はサクサクと進むのだが、何だか様子がおかしい。

行列が前に進む割にはあまり人が捌けないし、前に進むほど謎の熱気に包まれている気がする。

そうして後数人でスタンプを押してもらえる頃になった時、その理由が判明した。

スタンプ押印係の横に、何とマスターパレンが座っていたのだ。

「あ、あれ、パレンさんじゃない?」

「あッ、あれは……黄金週間初日の鑑定祭りで、審査委員長してた人ですね!」

「お、ホントだ。マスターパレンが直々に握手してんのか。まーた派手な衣装でおめかしして……道理でここが異様に混む訳だ」

「ギルドマスターが直々に握手してくれるのはありがたいが……あれを衣装と呼んでいいもんなのか?」

マスターパレンの姿を確認したライト達。

本日のマスターパレンの出で立ちは、黄金色のネクタイと黄金色のビキニパンツ一丁。いわゆる『裸ネクタイ』というスタイルだ。

マスターパレンが誇る筋骨隆々の美しい肉体に、まとうは眩いばかりに煌めく黄金色のネクタイ&パンイチのみ。シンプルな中にもゴージャスさを備えた、黄金週間ならではの完璧なスタイルである。

「マスターパレンがパンイチなのは日常茶飯事だ。ラウル、お前も冒険者になったならあの程度で驚いてちゃいかんぞ?」

「そ、そうなのか……冒険者にとっては、あの姿が当たり前のことなのか……」

「ま、アレが許されるのはこの世で唯一人、マスターパレンだけだがな。俺等や他の凡人がやったら普通に警備隊にとっ捕まるわ」

「だよな……それ聞いてちょっと安心したわ」

事も無げに言うレオニスに、ラウルは驚愕する。

妖精のラウルにとって、裸体になることは別に恥ずかしいことでも何でもない。とはいえ、人族にとっては基本的に恥ずべきことだということを、人里に長いこと住んできたラウルは既に学んでいた。

しかし、これまでラウルが人族の常識として学んでいたことにも例外が存在することを知り、改めて人族の常識や慣習の奥深さを痛感する。

もっとも、マスターパレンのような常識をはるかに凌駕する存在自体、この世に数人程度しかいないのだが。

まずはレオニスが先頭に立ち、スタンプカードを差し出しがてら横にいるパレンに話しかける。

「よう、マスターパレン。黄金週間中も働いているとは、ご苦労さん」

「おお、レオニス君ではないか。何のこれしき、私にとってはラグナロッツァの市民達と直接触れ合える、貴重な機会なのだよ」

「そうか、マスターパレンらしい素晴らしい考えだな」

スタンプ押印係がカードにスタンプを押した後、その横でパレンがカードを持ってきた人一人一人に対して丁寧かつ熱い握手を交わしている。

これが、この冒険者ギルド総本部のスタンプ設置所の壮絶な人気の秘訣であり、混んでいる所以である。

何だかアイドルの握手会みたいだなー、とライトは内心考えているが、実質それとほぼ同義である。

「パレンさん、こんにちは!」

「おお、ライト君!君ともゆっくり話したいのだが、なかなか機会に恵まれなくてすまない」

「いいえ、そんなことないです!パレンさんはギルドマスターで、とてもお忙しい立場の方なんだから当然です!」

「ははは、そう言ってもらえると気が楽になるよ。いつもレオニス君から聞いているが、君は本当に賢くて礼儀正しい子だな」

「そ、そんな……」

パレンに褒められて、照れ臭そうにはにかむライト。

ライトの目標はレオニスだが、パレンもまた偉大な冒険者であり憧れの人なのだ。

ガッチリとライトと握手した次は、ラウルの番だ。

「次はラウル君か。冒険者になって早々に大変な目に遭ったようだが、その後体調の方はどうだね?」

「その節は心配かけてすまなかったな。ご主人様のおかげで、今はもうこの通り何ともない」

「そうか、それは良かった。ラウル君が無事生還してくれたことは、本当に不幸中の幸いだった。他の者であれば、間違いなく命を落としていたことだろう」

「まぁな……」

「ラウル君、これからのますますの活躍、期待しているぞ」

「おう、任せとけ」

ラウルが瀕死の重傷を負った例の件について、パレンが言及する。

冒険者登録時以降、ラウルはパレンに一度も会っていなかった。だが、こうして自分の身を案じてくれていたことを知り、ラウルはありがたく思う。

ラウルの次はマキシの番だ。

マキシはパレンとは直接対面したことはないが、パレンは優しい笑みを浮かべてマキシに話しかける。

「君もレオニス君の関係者かね?」

「は、はい。ラウルの友達で、レオニスさんの屋敷に居候させてもらっているマキシといいます!」

「ラウル君の友達、か……ということは、君もまた特別な存在なのだな」

マキシの言葉に、パレンは大凡のことを察する。

妖精の友達を称する者が、普通の人間な訳がないのだ。

だがパレンは、この場でそれ以上言及したりはしない。

脳筋族の頂点のような人だが、それ以上に細やかな気配りができる真の紳士なのである。

皆一通りスタンプをゲットしたところで、レオニスが改めてパレンに声をかける。

「マスターパレン、黄金週間中ずっと仕事してて大変だろうが頑張ってな」

「ああ、レオニス君もたまにはこうしてとことん休日を楽しんでくれたまえ」

「パレンさん、お仕事頑張ってくださいね!」

「ライト君も学業頑張るんだぞ」

「冒険者としてまた世話になる、これからもよろしくな」

「ああ、こちらこそラウル君には大いに期待している」

「あの、僕もいつか冒険者登録していいですか!?」

「もちろんだとも。いつでも登録しに来てくれたまえ」

パレンの爽やかな笑顔と激励の言葉に、特にライトとマキシは大感激している。

何ならスタンプをゲットしたこと以上に、パレンとの握手や会話に大喜びしているようだ。

だが、人気者のパレンといつまでも話していては、後の人に迷惑がかかってしまう。名残は尽きぬが、早々にその場を立ち去るライト達。

思わぬ出会いと思わぬ激励に励まされつつ、次の予定に移るのだった。