軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第557話 人魚達との約束

友好の握手を交わした後は、炎の女王以外の属性の女王達の安否などを伝える。

海中ではいつものように美味しいスイーツを出して、おしゃべりしながら楽しいお茶会!とはできないのが甚だ残念である。

『炎の女王や水の女王だけでなく、火の女王や闇の女王にまで会ったのね』

「ああ。皆恙無く元気ではあったが、やはり廃都の魔城の奴等に狙われているようでな」

『その廃都の魔城という場所が海から近ければ、姉妹達の代わりに私が不埒な輩を沈めて一掃してやるのに』

「「…………」」

海の女王の物騒な言葉に、ライト達は顔を引き攣らせながら乾いた笑みを浮かべるしかない。

もし本当に廃都の魔城が海から近ければ、海の女王の手によって海に沈められて一網打尽だろう。残念ながら廃都の魔城は海から離れた場所にあるので、海の女王の力押しは効かないが。

というか、もしそんな一気に敵を殲滅してしまったら、ゲームの醍醐味である冒険ストーリーや攻略なども全て木端微塵の台無しである。

現実世界に生きる者にとっては何とももどかしいことだが、ゲームの世界として考えれば『艱難辛苦を乗り越えて、成長とともに少しづつ目標達成していく』というゲーム要素は必須だ。

そしてこのサイサクス世界の根幹がBCOで成り立っている以上、そうしたゲーム要素を排除することは困難なのだ。

「ま、他の女王達の安否確認も引き続き俺達が行うから心配すんな」

『そうね、陸の上のことは陸の上に生きる者に託すしかないわね。私の姉妹達の力になってあげてちょうだいね』

「任せとけ」

『そしたら私もその対価として、貴方達にアレをあげないとね』

海の女王はそう言うと、手のひらに魔力を込めて海の勲章を二つ作り出した。

『はい。これは海の女王だけが作れる『海の勲章』よ。大事にしてね』

「うわぁ……赤とピンクが混ざってて、とても可愛らしい色ですね!」

『これは珊瑚の色よ。色とりどりの珊瑚は、それはもう美しくてまさに海の宝石なのよ』

「珊瑚か、とても綺麗なものなんだな」

海の女王から手渡された勲章を見て、ライトもレオニスも感嘆する。

海の勲章というからには青色を想像してしまいがちだが、海の女王が作り出したそれは赤系と桃色系が微妙な配合で混ざり合っている。

海の女王によると、それは珊瑚の色がモチーフとなっているらしい。

ライトとレオニスは、それぞれアイテムリュックや空間魔法陣に勲章を仕舞う。

「さ、海の女王の無事も確認できたことだし、そろそろ帰るか」

「うん!海の女王様、こんなに綺麗な勲章をいただけて本当に嬉しいです!ありがとうございます!」

『まぁ、そんなに喜んでもらえるなんて、私も嬉しいわ。またいつでもこの海底神殿に遊びにいらっしゃい』

「はい!」

勲章のお礼にペコリと頭を下げるライトに、海の女王も気を良くして微笑む。

さすがに先程の人魚達のように胸を撃ち抜かれはしないが、それでも海の女王に『また遊びにおいで』と言わしめるライトの手腕の凄さよ。まさに『掴みはオッケー!』である。

「レオ兄ちゃん、帰りの方向は分かる?」

「ンー、一度水面に上がって顔を出せば島が見えるんじゃね?」

「それもそっか」

『道案内が必要なら、あの子達に頼めばいいわ』

帰り道の相談をする二人に、海の女王が助言をする。

海の女王の視線の先を見ると、神殿の柱の後ろに隠れてこちらをチラチラと伺う人魚達がいた。

神殿の中にいる三人の視線が、自分達に向けられたことに気づいた人魚達。慌ててササッ!と柱の陰に隠れるも、海の女王の『貴女達、こちらにいらっしゃい』という鶴の一声でそそくさと全員出てきた。

『ィャーン、女王ちゃんってばいつから気づいてたのー?』

『最初っからよ』

『ンもー、女王ちゃんのイケズぅー』

『私達、女王ちゃんが心配で心配で仕方なかったのよ!』

『でも、ニンゲンとのお話が無事終わったようで、安心したわ!』

呼ばれた途端にいそいそと海の女王の周りに集まり、わらわらと群がるように海の女王にまとわりつく。

人魚達は本当に海の女王を心から慕っているようだ。

『貴女達が見守ってくれたおかげよ。ありがとう』

『ホント!? 私達、役に立った!?』

『ええ、もちろんよ。いつも貴女達を頼りにしているわ』

『ヤッター!女王ちゃんに褒められたー!』

『女王ちゃん、大好き!』

海の女王の言葉に、さらに舞い上がり歓喜する人魚達。

全員がキャーキャー言いながら海の女王にハグをしまくっていて、もはやライト達からは海の女王が人魚に埋もれて全く見えない状態である。

五人のナイスバディな人魚達に埋もれて、海の女王は窒息しないのだろうか?

『お客人が陸に帰るので、帰りも貴女達が案内してあげてくれる?』

『もちろんよ!』

『ささ、ライト君、お姉さん達といっしょに泳ぎながら帰りましょう!』

「ありがとうございます!お姉さん達といっしょに帰れるなんて、ぼく嬉しいな!」

海の女王から離れた人魚達、今度は一斉にライトに群がる。

帰り道の案内役を快く引き受けてくれた人魚達に、ライトは明るい笑顔で応える。

ペカーッ☆と輝くその笑顔のあまりの眩しさに、思いっきり胸を射抜かれる人魚D、E。

仰け反る人魚D、Eの、あぅッ!はぁッ!という小さな呻き声とともに、ズガーーーン!バキューーーン!という効果音がどこからともなく聞こえてきた、気がする。

二人の人魚が同時に倒れ込んだのを見て、他の三人が『うんうん、やっぱそうなるよねー』『二回目の私だって、まだ目眩がするもの!』とか言いながら、人魚D、Eを介抱する。

『ハァ、ハァ、ハァ……こ、これが、さっき貴女達が受けていた衝撃だったのね……』

『た、確かにこれは、瞬時に海に還りそうになるわ……』

人魚D、Eも心を落ち着かせるために、ヒッヒッフー、ヒッヒッフー……と人魚流深呼吸を数回繰り返す。

そんな人魚達の様子を見ていた海の女王は、心配そうに呟く。

『あの子達、大丈夫かしら……?』

「大丈夫じゃね? さっきここに来る前もああなってたし」

『一度医療師に診てもらうように言うべきかしら?』

「ありゃ医療師じゃどうにもならんと思うぞ」

『えッ、そんなに難しい病なの!?』

「いや、放っときゃ普通に戻るから心配要らんぞ」

レオニスの言葉に、人魚達の身を案じる海の女王がガビーン!顔でショックを受けている。

美麗な女王のガビーン!顔はなかなかに見れるものではないが、そんな驚愕の表情でも麗しさが損なわれないのはさすがである。

「じゃあな」

「海の女王様、またお会いしましょう!」

レオニスの後ろで時折振り返っては大きく手を振るライトに、海の女王もまた小さく手を振りながら二人を見送っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

海底神殿を出てすぐに、レオニスが人魚達に話しかける。

「ここからラギロア島や他の島が見えるか確認したい。一度水面に上がってもいいか?」

『いいわよー』

ライト達は人魚とともに水面に向かって浮上する。

だんだんと日の光が強くなり、水中の明るさも増していく。

そうして頭を海上に出したライト達。

キョロキョロと周囲を見回して、島や陸地が見える範囲にあるかどうか探すレオニス。

「ンー、海上からじゃよく見えんな。ちと上から見るか」

そう呟くと、レオニスは海から飛び出してスーッ、と上空に飛んでいった。

それを見た人魚達は、ギョッとした顔になる。本日二度目の目がまん丸&点である。

『えッ!? ニンゲンって、空を飛べるの!?』

『ウソーン、そんなの聞いたことないわよ!?』

『海中でも普通に息できて空も飛べるとか、一体何事?』

『やっぱりアレ、ニンゲンじゃなくて別の新種の生き物じゃない?』

『『『そうかもー』』』

またも人魚達に好き放題言われるレオニス。

レオニス当人は既にかなり高い位置にいて、人魚達の言葉が聞こえていないことだけは幸いか。

でもまぁ普通の人間は飛べないので、彼女達が驚愕してしまうのも致し方ない。

そこは慌ててライトが人魚達に釈明する。

「えーとですね、あれはレオ兄ちゃんの服に飛行の付与魔法が施されてまして。そのおかげで、短時間だけだけど空も飛べるんです」

『服に魔法を付与してるの? まぁ、それは便利そうね!』

『私達も服や髪飾りに魔法を付与すれば、何かできることが増えるかしら?』

「防御魔法を付与したものを身に着けておくと、外敵に襲われた時に身を守ってくれますよー」

『それ、いいわね!そしたら防御魔法を使える仲間に頼んでみようかしら』

「防御魔法以外にも、体力回復魔法とか魔力回復魔法を付与しておけば―――」

ライトと人魚達がキャイキャイと会話をしている間、レオニスは上空から周辺をぐるりと見渡す。

「あー、ラギロア島はあっちか……海底神殿って、結構離れた沖にあるんだな」

「他に近い島とかは……なさそうだな。やっぱラギロア島経由で来るしかないか」

レオニス達が今いる場所から、1kmくらい離れたところにラギロア島が見える。

ラギロア島以外の島が近くにあれば、海底神殿を再訪する際にそこを経由しようかとも考えたのだが、ラギロア島以外に陸地らしきものは見当たらない。

しゃあない、次にまた海底神殿を訪ねる時にもラギロア島を通ってくるしかないか……と考えつつ、下降してライト達のもとに戻るレオニス。

水中で立ち泳ぎのようにぷかぷかと浮いている、ライトと五人の人魚達。何やら楽しげに会話をしているようだ。

「そしたら、今度人族が作った可愛らしい髪飾りや腕輪なんかを持ってきますね!」

『ホント!? 嬉しいー、ありがとう!』

『じゃあ、ライト君にはこれをあげる!』

「これは……笛、ですか?」

『そう、私達人魚が仲間を呼ぶ時に使う呼び笛よ。これを海辺で使えば、必ず人魚が現れるわ』

レオニスが上空で陸地を探している間に、何とライトは人魚達と物々交換をする約束をしていた。

話の流れとしては『付与魔法、いいわね!』→『私達も髪飾りにつけようかしら』→「髪飾りなら、人族の街にも可愛くて綺麗なものがたくさん売ってますよ」→『ホント!? それ欲しい!』→「じゃあ今度お土産に持ってきますね!」という具合だ。

『この近くで使ってくれれば私達の誰かが迎えに行くし、ここから遠く離れた海でも仲間の人魚が気づいて様子を見に現れるわ』

「ありがとうございます!お姉さん達に似合う髪飾りを探してきますね!」

『あぁーン、何て可愛いことを言ってくれるの!?』

『お姉さん達、またライト君が来てくれるのをずっと待ってるからね!』

「おごごご……お、お姉さん、く、苦ちぃ……」

先程海の女王が埋もれたように、今度はライトが人魚達のハグに埋もれている。

「ライト……恐ろしい子!」

ナイスバディの美女達に埋もれるライトを、その少し上空で飛行したまま見下ろししているレオニス。

そのモテ男っぷりだけでなく、次にまた人魚達と会う約束を既に取り付ける要領の良さに半ば絶句しつつ、白目を剥きながら慄くレオニスだった。