軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第55話 手がかりを求めて

「レオ兄ちゃん、明日ディーノ村に連れてってくれないかな?」

ライトは昼食時に、レオニスに話を切り出した。

「ディーノ村?何でだ?」

レオニスは不思議そうな顔をして、ライトに聞き返す。

「んーとね、ディーノ村ってぼくの父さんや母さん、それにレオ兄ちゃんの故郷でもあるでしょ?」

「学園が始まる前に、父さんと母さんのお墓参りして、これからラグナロッツァの学園に通うことになりましたって、報告したいの」

「ラグナロッツァでの学園生活が始まったら、今のような気ままな過ごし方もできなくなるし」

「それに、散策も兼ねてのんびりお散歩とかもしたいなーって思って」

「それなら、気分転換で身体を休めることにもなるでしょ?」

ライトはもっともらしい理由を並べ立てて、レオニスを説得する。

もちろんそれらの理由、お墓参りで報告したいとかのんびり散歩で気分転換等々は決して嘘やこじつけなどではなく、本当にそうしたいと思っているのだが。

「んー、そうだな……墓参りで報告したいってのは、当然っちゃ当然だな」

「俺も久しくグラン兄達の墓参りしてないし」

「よし、じゃあ明日は二人でディーノ村に行くか」

「うん!ありがとう、レオ兄ちゃん!」

レオニスの快諾をもらえて、ライトは素直に喜んだ。

ついでに転職神殿のことにも探りを入れてみる。

「ところでさ、レオ兄ちゃん。ディーノ村って父さんや母さんのお墓の他に、何かあるの?」

「ん?何かって、何だ?」

「例えばほら、観光名所のようなところとか……」

「ディーノ村の観光名所ぉー?…………んんんんん、あの村にそんないいもんはないぞ…………?」

レオニスが顔を顰めながら、首を上下左右に捻りつつ一生懸命に考え込む。

そこまで頭捻らなきゃ出てこないの?つーか、ナンボ捻ってもひとつも出てこないほどなーもないの?

自分の故郷なのに、そんなド田舎扱いしないでも……と思わなくもないが、実際に森と山脈に接する超ド田舎なので致し方ないことかもしれない。

「え、そうなの?教会とか寺院とか神殿とか、そういうのもひとつもないの?」

ライトはさり気なく『神殿』という言葉を織り込む。

他の類似品を先にいくつか挙げておいて、最も知りたいことを一番最後に持ってくるという、とても!高度な!会話テクニック!を駆使しているのだ。

「んーーー……そういや、旧教神殿跡地なら……人里から少し離れた山奥に、あった、はず、だが……」

ディーノ村の神殿!やっぱり存在したんだ!

……ん?レオ兄、今何てった?

旧教?神殿、跡地?一体何のことだ?

「神殿あるんだね、行ってみたいなー!」

「でも、旧教って何?神殿跡地ってことは、壊されたりして今は誰もいないの?」

ライトは神殿行きたいアピールをした後に、感じた疑問をそのまま口にしてみる。

「あー……旧教ってのは、大昔にあったアヴェルブ教という、かつて存在した宗教のことだ」

「今はもう存在しない。何がどうしてそんなことになったのかは分からんが、過去に壮絶な宗教弾圧があった、ということしか後世に伝わっていないんだ」

「ディーノ村の外れの方に、その旧教の神殿の跡地がある」

「かつてはその旧教の名を、口にすることさえ許されなかったらしい」

「今の時代は、さすがにそこまでの忌避感や弾圧などはないが」

「それでも、年寄りの中には旧教と聞いただけで顔を顰めたり、怯えたりする者もいるとは聞く」

若干複雑そうな表情で、ディーノ村にあるという神殿のことを語るレオニス。

その話の中には、旧教だの跡地だの弾圧だの、かなり不穏な単語が飛び交っているが……まぁ、今の時代はそこまでではない、というレオニスの言葉を信じる他ない。

「神殿跡地っていうくらいだから、遺跡みたいな感じかなぁ?」

「レオ兄ちゃん、ぼく、明日そこにも行ってみたい!」

「遺跡とか跡地とか、勉強にもなると思うんだけど……どうかな?」

上目遣いでレオニスを見つめるライト。

そのあからさまにキュートなおねだり目線に、思いっきり胸を射抜かれるレオニス。

仰け反るレオニスの、グハッ!という呻き声とともに、ズキューーーン!という効果音がどこからともなく聞こえてきた、気がする。

「お、おう、そうだな……歴史的にも貴重な遺跡であることには違いないし、ライトの勉強にもなるよな」

「じゃあ、明日は旧教神殿跡地にも足を延ばしてみるか」

「わーい!レオ兄ちゃん、ありがとう!」

『跡地』という穏やかではない名称に、若干の不安を覚えないわけではない。

だが、それでも転職神殿の手がかりになるかもしれない場所に行ける。それを自分の目で直に確かめることができる。

そのことに、ライトは胸を弾ませていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

翌日、レオニスとライトはお弁当や花束を持って、ディーノ村に出かけた。

まずはお墓参りをして、その次にどこか草原あたりで昼食を摂り、それから旧教神殿跡地の見学をして、最後にディーノ村の冒険者ギルドに立ち寄る。こんな予定を大まかに立てていた。

レオニスも今日は狩りの仕事などではないが、旧教神殿跡地という人里離れた秘境?に行くということで、万が一魔物が出て戦闘などの事態が起きた場合を想定して、深紅のロングジャケット他フル装備の出で立ちだ。

それは、敬愛するグランとレミのお墓参りもするための、正装的な意味合いも兼ねているのだろう。

グランとレミの墓は、ディーノ村が見渡せる小高い丘の上にあった。

そこには二人の墓標があるのみで、他の人のお墓などは一切ない。どちらもレオニスが作った、素朴なお墓だ。

二人が育った故郷がよく見渡せるように、と全てレオニスが手配したらしい。

グランの墓には、実は遺骨も何も入っていないという。例の先遣隊全滅の際、遺体が見つからなかったからだ。

逆に、あの時遺体が確認できた方が稀だったというくらいだから、致し方ないことではある。

グランの墓の横には、同じく小さな墓標が建てられていた。レミの墓である。

ライトとレオニスは、双方の墓にそれぞれ花束を添えて、目を瞑り祈る。

「父さん、母さん。ぼく、これからラグナロッツァの学園に通うことになりました」

「それもこれも、全てレオ兄ちゃんのおかげです」

「ぼくとレオ兄ちゃんのことを、ずっとずっと、見守ってください」

ライトは小さな声で、墓前にて報告をする。

レオニスはライトの横で、静かにグランの墓標を見つめていた。

「グラン兄、レミ姉。二人の息子であるライトは、こんなに立派に育っているよ」

「俺もライトに教わることが多くてさ、どっちが大人でどっちが子供だか、全く分かりゃしない」

「ライトが一人前になるまで、もう少し時間はかかると思うが」

「ライトが一日も早く、より立派な冒険者になれるように、俺にできることは何でもして支えていくよ」

「俺がライトに追い越されるところを……しっかりと見ててくれよ、グラン兄、レミ姉」

レオニスも囁くような小声で、二人の墓標に向かって語りかける。

穏やかで優しい風に時折包まれながら、静かな時間がゆっくりと流れていった。