軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第495話 天空島への行き方

翌月曜日。

この日のライトは、一日家でのんびりと過ごそうと考えていた。

サイサクス世界での人生において、初めての泊まりがけ遠征をこなして帰ってきたのが一昨日のこと。

昨日は昨日でオーガの里にラウルを連れて行ったりと結構動き回ったので、今日は一日骨休めの日にしよう、という訳だ。

ちなみに明日はレオニスとともに暗黒の洞窟に潜ることになっている。暗黒の洞窟の最奥には暗黒神殿があり、そこに闇の女王が住まうとされているためだ。

あれもこれもどれもそれも、こなすなら春休みのうち!とばかりに精力的に立ち回るライト。

明日の暗黒神殿探検のためにも、今日は家でゆっくり休んで体調を万全に整えなくっちゃね!という訳である。

とはいえ、一日中ベッドの上でゴロゴロしているのも何だかもったいない気になってくるライト。

こういう時には、マイページをチェーック!するのが一番である。

特にクエストイベントの進捗状況のチェックは重要だ。

ライトの記憶では、クエストイベントも終盤に差し掛かっている。その分集めなければならない素材の難易度がますます上がり、お題一つクリアするにもかなり困難になってきた。

だがその分やり甲斐もある。

クエストのお題として出てくるからには、その素材はこの世界のどこかに必ず存在しているのだ。それを探し、見つけて、手に入れる。まさに宝探しそのものである。

いや、それだけではない。クエストクリアする度に、いろんな魔導具や生産職用スキル、回復剤の生成レシピなど様々な技術やアイテムが手に入れられるのだ。

やり甲斐のみならず、途轍もなく有益な実利まで得られる。

将来冒険者になりたいライトにとって、このクエストイベントは最重要課題であり、何としても全クリアしたいものだった。

早速ライトはマイページを開き、クエストイベントのページを開く。

そして最新ページの9ページ目を、渋い顔をしながら眺めている。

「No.41の『閃光草の針葉』なぁ……閃光草の生息地、まさかの天空島だったとは……すっかり忘れてた。そういやBCOの交換所の強化素材にも閃光草関連がいくつかあって、たまーにそれ目当てで天空島出かけてたわ」

「つーか、特殊条件を満たさずに一体どうやって天空島まで行けってんだ……いくらクエストイベント終盤だからって、こんなん無理ゲー過ぎるやろがえ……」

ライトがぶつぶつと独り言を洩らす。

クエストイベントの最新ページの一番上に出された『41.閃光草の針葉10個』というお題。

その対象である閃光草の生息地を、以前レオニスに買ってもらった【全世界植物大全/最新版】で調べたところ。何と天空島であることが判明したのだ。

天空島と言えば、かつてライトもBCOでよく出かけていた冒険フィールドと同名の地名である。

それは地上にあるのではなく、文字通り空に浮かぶ島々のことだ。

BCOにおける天空島への行き方は、場所が場所だけに通常の冒険フィールドとは全く異なる。

まずここで、BCOにおける冒険フィールドの解説をしよう。

冒険フィールドは『通常フィールド』と『特殊フィールド』の二種類がある。

通常フィールドは、冒険ストーリーを進めていくことでストーリー中に登場する様々な街に行けるようになる場所。

一方特殊フィールドとは、冒険ストーリーには直接関係のない特殊な場所や土地などを指しており、天空島もその一つである。

通常フィールドならば、冒険ストーリーを進めれば自動的に行けるようになる。だが、特殊フィールドは冒険ストーリーをこなすだけでは出現しない。

ユーザーが特殊フィールドに行けるようになるには、いくつかの方法があるのだ。

一つは『イベントで地図アイテムを入手する』。

ショップ購入や期間限定イベントの報酬などで地図アイテムを入手し、それを使用することで一定時間だけその地図が示す所に行ける、というものだ。

ライトがこれまでに二回行った『幻の鉱山』も、実はこれに当たる。

それらは基本的に一回限りの使い切り消費アイテムだが、ゲーム内通貨のGで買えたりイベント報酬で入手できるため、無課金者でも頑張れば行けるというお財布に優しいシステムだ。

もう一つは『特定の課金任務に??回以上参加する』という条件。それを達成すれば、その報酬として各種特殊フィールドに行けるようになる。

いわゆる隠しキャラや隠し通路など同類で、ボーナスフィールドのようなものである。

ちなみにその回数が『??』になっているのは、参加回数に応じてフィールドのランクが上がっていくからだ。

一回参加で『天空島第一フィールド』、三回参加で『天空島第二フィールド』、五回参加で『天空島第三フィールド』といったように、その回数に応じて難易度が低いフィールドから順次解放されていくのだ。

課金額に応じて解放されるフィールドが増えていくという、実にお財布に優しくないシステム。如何にもソシャゲにありがちな、ぶっちゃけた話があからさまな課金販促策である。

だが、運営側も慈善事業でゲーム提供している訳ではないので致し方ない。こうした営業努力も必要なのだ。

まぁね、あちらさんの中の人だってサーバー代やら社員のおまんま代やら、それなりに稼がなきゃならんしねー。さすがに半ニートの俺は廃課金者にはなれんが、それでもゲーム存続のために多少のお布施はしても罰は当たるまい。特殊フィールドの解放程度なら数千円で済むしな!

前世ではスマホの画面を見ながら、特殊フィールドが実装される度にそんなことを呟きながら少額課金していたライト。

天空島への行き方を思案するついでに、微課金者だった頃の前世のことも懐かしげに思い出している。

だがしかし、肝心の天空島への行き方に関しては懐かしむ余裕など全くない。

ライトはイベントページを藪睨みしつつ、うんうんと唸り続ける。

「レオ兄は、天空島にはフェネぴょんの飛行魔法?絨毯に乗せてもらって行ったって言ってたけど……今フェネぴょんがどこにいるか分かんないし……」

「そもそも毎回フェネぴょんに連れて行ってもらわなきゃ行けないようじゃ、この先天空島関連の素材採取も満足にできないってことになるんだよなぁ……どうすりゃいいんだ、これ」

天空神殿に行った経験があるレオニスに、天空島にはどうやって行ったのか先日聞いたライト。

その時の答えは『フェネセンの魔法で空飛ぶ絨毯みたいなの空高く飛ばして、皆それに乗せてもらった』というものだった。

フェネセンほどの天才大魔導師ならば、なるほどそれも可能だろう。

だがしかし、この方法は兎にも角にもフェネセンが近くにいなければ成立しない。

さて、そうするとどうしたものか。ライトは懸命に考え込む。

ここでライトはクエストイベントの報酬にCP、BCOでの課金通貨があったことを思い出す。

ライトは改めて最新ページのクエストのお題を見返した。

「あったあった……43の氷蟹の甲羅3個で50CP、45の青色のねばねばで100CPもらえるのか」

「しかし、それでも合計150CPじゃ到底500CPには足りんのだが……」

「この先のクエスト報酬で、もっとたくさんのCPが獲得できる、のかも?」

BCOで天空島の各種フィールドを解放するには『天空神殿討伐権』という課金任務を購入して、任務完了させる必要があった。

その購入金額は500CP、日本円で500円である。

残念ながら、9ページ目の時点では500CPには全く足りない。

だが、このクエストイベントは9ページ目が最終ページではない。

ライトの記憶では、この手のクエストイベントは少なくとも10ページ以上、50個以上のお題が出されていた。つまり、この先にもまだクエストがいくつも控えているはずなのだ。

「この先500CP貯めて『天空神殿討伐権』を購入すれば、少なくとも『天空島第一フィールド』には行けるようになるはずだ。だが……」

「その『天空神殿討伐権』を、一体どこで購入すりゃいいんだ?」

クエストイベントの報酬に、初めてCPが登場したのを目にした時。

ライトが真っ先に考えたことは『え? CP? この世界でCP使えるとこ、あんの?』だった。

実際ライトは今までにCPという特殊な通貨を、このサイサクス世界で一度も見たことがない。

だが、特殊フィールドである天空島がこのサイサクス世界にも実在すること、天空島が原産地である閃光草がクエストのお題として出てくること等々を鑑みると、CPが使える場所だって必ずどこかにあるはずだ!とライトは考えた。

だってそうだろう、使えもしない通貨なんて一体何の意味がある? CPを使える場所があるからこそ、イベント報酬として出てきているはずなのだ。

如何にあの 創造神(うんえい) が、普段から壮絶なポンコツだったとしても、だ。よもや使えない通貨を褒美として寄越すような、鬼畜な所業はさすがにしないだろう。そこまで無能集団ではないはずだ……よね?

ライトはあれこれ考察しながら、BCOの生みの親サイサクスのポンコツぶりを思い出すにつれ次第に不安になってくる。

つーか、これだけ苦労しながらお題をクリアした報酬に、使い道が全く用意されてなかったら……俺、泣いちゃうよ?

もし万が一、俺が生きている間に一度もCPを使うことなく世を去ったら……本気で呪い祟るからね?

猛烈な不安にかられたライト、ハッ!とした顔になったかと思うと目をギュッ、と閉じ首を横にブンブン!と振る。

ネガティブ思考に囚われたままでは先に進めない!と考えたからだ。

ライトには後ろを向いている暇などない。罠を恐れて尻込みするよりも、己の望む未来を掴むために前進あるのみ!なのだ。

気を取り直し、CPを使えそうな場所や手がかりはないか、懸命に考えるライト。

しばらく悩んでいるうちに、ふとライトの脳裏にとある人物の顔が思い浮かんだ。

その人物は、鮮緑色の髪に鮮やかな紅緋色の瞳、殷紅色のローブを着た若い女性。

「……今の四次職【神霊術師】をマスターしたら、ヴァレリアさんに聞いてみよう」

誰に言うでもなくライトがぽつりと呟いたのは、この世界の真実を、誰よりも知っているであろう魔女の名。

ライトが今職業システムで就いている求道者光系四次職【神霊術師】をマスターした暁に、その褒美として聞ける質問が決まった瞬間だった。